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2026.07.08 らしくコラム

RedisとValkey、ライセンス変更後の移行を外注

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

データストア基盤

この記事のポイント

  • 2024年にRedis社がライセンスをRSALv2/SSPLへ変更したことで、BSDライセンスを継承するValkeyが新たな選択肢として登場しました。
  • Redis継続かValkey移行かの判断には、ライセンス条件・利用バージョンの互換性・マネージドサービス対応など複数の観点の確認が欠かせません。
  • 移行を外注する際は、互換性検証と移行手順の設計を担える体制を持つパートナーの選定が成果を左右します。

2024年のRedisライセンス変更、BSDから離れた経緯

データ基盤の運用

Redis・Valkeyのライセンス移行とは、代替データストアへ切り替えるかどうかを検討する取り組みを指します。背景にあるのは、Redis社が2024年に採用したライセンス変更です*1。切り替えると判断した場合は、BSD系ライセンスを継承するValkeyなどへの移行作業を進めます。

Redis社は2024年3月20日、公式ブログでライセンス変更を発表しました*1。略称はRSALv2・SSPLv1の2種類です。正式名称はそれぞれRedis Source Available License v2、Server Side Public License v1といいます。同社は「Redis 7.4以降はこの2つのデュアルライセンスに移行し、BSD 3条項ライセンスでの配布を終える」と説明しています*1。同じ発表の中では、OSI(Open Source Initiative)の定義にも言及しています*1。「この変更によりRedisはオープンソースではなくなる」とも明記しています*1。無償版の名称も、この時点で「Redis OSS」から「Redis Community Edition」に変わりました*1

ライセンス変更の背景には、クラウドベンダーがRedisのコードをそのまま商用マネージドサービスとして提供している状況への問題意識があったとみられます。この変更を受けて、AWSとGoogle Cloudはそれぞれ独自にRedisのフォーク版を保守する方針を選びました*2。この経緯は、Redis社CEOが2025年に公開したブログでも「AWSとGoogleは独自のフォークを保守するようになった」と振り返られています*2

Linux Foundation傘下のValkey、その互換性の範囲

Valkeyは、Redis社のライセンス変更を受けて2024年3月に発足したプロジェクトです。Linux Foundationは同月、Valkeyコミュニティの発足を発表しました*3。発表にはAWS・Google Cloud・Oracle・Ericsson・Snapが参加しています。発表資料には「Valkeyは Redis 7.2.4をベースに開発を継続し、BSD 3条項ライセンスの下で利用・配布を続ける」と明記されています*3

公式サイト(valkey.io)は、Valkeyを「オープンソース(BSD)の高性能キー・バリュー型データストア」と位置づけています*4。あわせて「Linux Foundationが後ろ盾となり、永続的にオープンソースであり続ける」とも説明しています*4。ガバナンス面では、特定企業に依存しないオープンガバナンスモデルを採用し、コミュニティ主導での開発を継続する方針です*3

互換性の範囲は、Valkey公式の移行ドキュメントに具体的に示されています*5。ValkeyはRedis OSS 7.2.4のフォークであるため、「Redis OSS 7.2およびそれ以前のバージョンと互換性がある」とされます*5。RDB(データ全体のスナップショット形式)・AOF(更新コマンドの実行ログ形式)ファイルも、Redis OSS 7.2形式との互換性を持ちます*5。ただし「Redis Community Edition 7.4以降が生成したRDBファイルには互換性がない」と明記されている点には注意が必要です*5。通信プロトコルはRESP2・RESP3(Redis Serialization Protocolの2系統・3系統)に対応しています*5。そのため既存のRedisクライアントライブラリは、コード変更なしで接続できるとされています*5

なお「Valkeyはドロップイン・リプレースメント(無変更で置き換え可能な製品)である」という表現があります。これはAWSなどクラウドベンダーの案内資料で使われる言い回しです*6。valkey.io自体は「Redis OSSのオープンソースかつベンダー中立な継続版」という表現を用いています*4。移行を検討する際は、まず自社が保有するRedisのバージョンを確認することが大切です。Community Edition 7.4以降かどうかで、必要な手順が変わります。

2025年のAGPLv3追加、Redis継続という選択肢

Redis社は2025年5月1日、公式ブログでライセンス方針の追加を発表しました*2。追加されたのはAGPLv3(GNU Affero General Public License v3)というOSI承認のオープンソースライセンスです。同社は「Redis 8からAGPLv3をライセンスの選択肢に追加する」と説明しています*2。これは既存のRSALv2・SSPLv1を置き換えるものではなく、利用者が3種類のライセンスから選べる形に広げる措置です*7

Redis社CEOは同ブログで、2024年3月の決断を振り返っています*2。「SSPLへの移行によってAWSとGoogleが独自フォークを保守する状況にはなったが、コミュニティとの関係を損ねた」という内容です*2。また2024年11月、Redisの共同創業者であるSalvatore Sanfilippo氏(antirez)が開発者として復帰した経緯にも触れています*2。この復帰が、AGPLv3追加の判断材料になったと説明しています*2

公式のライセンスページによると、Redis Open Source 8.0.0以降は3種類のライセンスから選べます*7。具体的にはRSALv2・SSPLv1・AGPLv3です。RediSearch・RedisJSON・RedisTimeSeries・RedisBloomといった拡張機能も、Redis 8のコア機能に統合されました*7。これらも同じ3ライセンス体系の対象です。一方、Redis CloudやRedis Softwareといった商用製品は、引き続き商用ライセンスの対象です*7

AGPLv3はOSI承認のオープンソースライセンスです*7。社内のOSSポリシー上「OSI承認ライセンスであること」を要件とする組織にとっては、Redis継続という選択肢が再び現実的になったと言えます。ただしAGPLv3は、コピーレフト(改変後も同じ条件でのソースコード公開を求める仕組み)性の強いライセンスです。ネットワーク経由でソフトウェアを利用させるサービスに対しても、ソースコード開示義務が及びます。自社の法務部門の判断基準と照らし合わせた確認が欠かせません。

Redis継続かValkey移行か、判断の4つの視点

RedisからValkeyへ移行するかどうかは、自社のライセンスポリシー・利用中のバージョン・マネージドサービスの利用有無によって判断が分かれます。以下の4つの視点で整理すると、検討の優先順位が見えやすくなります。

ライセンス条件が自社ポリシーに適合するか

OSSポリシー上「OSI承認ライセンスに限定する」という要件を持つ組織にとって、RSALv2・SSPLv1は選択が難しいライセンスです*7。AGPLv3のみがOSI承認の対象になります。一方Valkeyは、従来通りのBSD 3条項ライセンスを維持しているため、ライセンス要件の面では確認事項が少なくなります*4

利用中のRedisバージョンがCommunity Edition 7.4以降かどうか

Valkeyへの移行難易度は、利用中のバージョンによって変わります。Redis OSS 7.2以前を使っている場合は、Valkeyとの互換性が確認されています*5。すでにCommunity Edition 7.4以降へアップグレード済みの場合は、RDBファイルの非互換という制約に直面します*5

クラウドのマネージドサービスをどう使うか

AWSは2024年10月8日、Valkeyの提供開始を発表しました*8*9。対象はAmazon MemoryDBとAmazon ElastiCacheの両サービスです。Google Cloudも2024年8月31日、Memorystore for Valkeyのプレビュー提供を発表しています*10。マネージドサービス上での切り替えを検討する場合は、提供元クラウドの公式ドキュメントで対応バージョン・移行手順を確認する必要があります。

コミュニティ・エコシステムの継続性をどう見るか

ValkeyはLinux Foundation傘下で複数企業が共同運営する体制です*3。公式サイトの参加企業一覧には、マネージドサービスを提供する企業が名を連ねています*11。具体例としてAWS・Google Cloud・Oracle Cloud Infrastructureが挙げられます。ほかにTencent Cloud・DigitalOcean・Aivenも参加企業です。特定企業への依存を避けたい場合、この体制は判断材料の一つになるでしょう。

比較軸 Redis(Open Source 8.0以降) Valkey
ライセンス RSALv2・SSPLv1・AGPLv3から選択*7 BSD 3条項*4
開発・ガバナンス体制 Redis Inc.が主導*7 Linux Foundation傘下・複数企業の共同運営*3
互換性の範囲 自社の最新版として継続開発*7 Redis OSS 7.2以前と互換。Community Edition 7.4以降のRDBは非互換*5
主要クラウド対応 Redis Cloud等、Redis Inc.提供のマネージドサービス*7 Amazon MemoryDB/ElastiCache、Google Memorystore等*8*9*10

移行前に確認すべき技術的な非互換ポイント

移行作業のコード

Valkeyへの移行を計画する際は、ライセンス面の判断だけでなく、技術的な非互換ポイントの洗い出しが欠かせません。確認を怠ると、移行後にデータ復元や接続エラーといった障害につながる恐れがあります。

RDB・AOFファイルの互換範囲を誤ると復元できない

Valkey公式ドキュメントは、Redis Community Edition 7.4以降が生成したRDBファイルとの互換性がない旨を明記しています*5。この制約を把握しないままバックアップファイルを移行先に投入すると、データを復元できない事態を招きかねません。移行前には、現行環境のRedisバージョンとRDB形式を確認する作業が欠かせません。

クライアントライブラリとLuaスクリプトの動作検証

ValkeyはRESP2・RESP3に対応しており、既存のRedisクライアントライブラリは基本的にコード変更なしで接続できるとされています*5。ただし、特定バージョン向けに実装されたLuaスクリプトや拡張コマンドについては、ステージング環境での個別の動作確認が推奨されます。この検証には、通信プロトコルの仕様理解とアプリケーション側の実装知識の両方が求められます。

移行体制に必要なスキルと工数

Valkey移行を内製で完結させる場合、ライセンス条件の確認、現行バージョンの棚卸し、クライアント互換性検証、負荷試験という一連の工程を担う人員が必要です。特にRedisクラスタの構成が複雑な環境では、レプリケーション設定やクラスタリング方式の差分確認にも専門知識が求められます。社内に該当スキルを持つ人材が不在の場合、検証工程だけでも想定より長い期間を要することがあります。

移行外注の選定基準と進め方

Redis/Valkeyの移行を外注する場合、汎用的なクラウド移行会社ではなく、インメモリデータストア固有の運用実績を持つパートナーを優先することが大切です。

Redis/Valkey双方の実績を持つパートナーを選ぶ

移行の外注先を選ぶ際は、Redisの運用実績に加えて、Valkeyへの移行支援実績を持つパートナーを優先します。提案段階で「ライセンス条件の整理」「現行バージョンの互換性診断」「移行後の負荷試験」まで踏み込んで提案してくる会社かどうかを確認するとよいでしょう。

マネージドサービス移行への対応可否

主要クラウドのマネージドサービスへの移行実績があるかどうかも確認ポイントです。具体的な例として、Amazon MemoryDB for Valkeyが挙げられます*8。ほかにAmazon ElastiCache for Valkeyの対応実績も確認します*9。Google Cloud Memorystore for Valkeyへの対応実績も同様です*10。オンプレミス環境からの移行を検討している場合は、移行先の運用形態(自己運用かマネージドサービスか)まで含めた提案力を評価します。

外注プロジェクトの進め方

移行プロジェクトは、一般的に「ライセンス影響確認→互換性検証→移行実施→運用定着」の4フェーズで進みます。ライセンス影響確認では、自社が利用中のRedisバージョンとライセンス条件を照合し、移行の要否を判断するという流れです。互換性検証フェーズでは、ステージング環境でクライアントライブラリ・Luaスクリプト・データ形式の動作を確認します。

移行実施フェーズでは、本番切り替えのタイミングと切り戻し手順をあらかじめ定めておくことが重要です。運用定着フェーズでは移行後の監視体制を整え、Valkey側の新しいバージョンリリース情報を継続的に確認する体制を構築します。

まとめ:Redisライセンス変更への対応で押さえる3つの判断軸

本稿では、2024年のRedisライセンス変更の経緯とValkeyの位置づけ、移行判断のポイント、外注先選定の基準を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、Redisは2024年にBSDからRSALv2/SSPLv1へ、2025年にAGPLv3を追加する形でライセンス体系を変えています*1*2。自社のOSSポリシーと照らした確認が、対応の出発点になります。第二に、ValkeyはLinux Foundation傘下でBSDライセンスを維持しています。ただし互換性の対象はRedis OSS 7.2以前であり、Community Edition 7.4以降との間にはRDB非互換という制約があります*5。第三に、移行を進める場合はライセンス確認・互換性検証・マネージドサービス対応まで一貫して支援できる外注先の選定が、移行後の障害リスクを抑える鍵になります。

LASSICに相談するメリット

LASSICは元請としてシステム保守・運用を受託しており、Redis/Valkeyを含むインメモリデータストアの運用支援に対応しています。ライセンス条件の整理から互換性検証、移行後の運用監視まで一貫してサポートできる体制です。

よくある質問

Valkeyへの移行は必須ですか?

いいえ、必須ではありません。Redis Open Source 8.0.0以降は、AGPLv3を含む3種類のライセンスから選択できます*7。自社のOSSポリシーがAGPLv3を許容する場合は、Redis継続も選択肢になります。一方、コピーレフト性の弱いライセンスを求める場合は、BSD 3条項を維持するValkeyへの移行を検討する余地があります*4

Redis Community Edition 7.4以降のデータはValkeyにそのまま移行できますか?

単純なファイルコピーでは移行できない場合があります。Valkey公式ドキュメントは、Redis Community Edition 7.4以降が生成したRDBファイルとの互換性がないと明記しています*5。移行する場合は、レプリケーション等RDB以外の移行手段を検討し、事前にステージング環境で動作確認することが大切です。

AWSやGoogle CloudでValkeyを使う場合、マネージドサービスはありますか?

あります。AWSは2024年10月、Valkey対応の提供開始を発表しました*8*9。対象はAmazon MemoryDB for ValkeyとAmazon ElastiCache for Valkeyの2サービスです。Google Cloudも2024年8月、Memorystore for Valkeyのプレビュー提供を発表しています*10。利用中のクラウドで対応バージョンや料金体系を公式ドキュメントで確認することをおすすめします。

移行外注の費用相場や期間の目安はどれくらいですか?

支援範囲(ライセンス影響確認のみ・互換性検証込み・移行実施まで)や既存環境の規模によって幅があります。一次情報として公表された費用相場は確認できていません。まずは対象クラスタ数・データ量を整理したうえで、複数社から見積もりを取得して比較することをおすすめします。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:Redis Inc.「Redis Adopts Dual Source-Available Licensing」(redis.io、2024年3月20日公開)
  2. *2 出典:Redis Inc.「Redis is now available under the AGPLv3 open source license」(redis.io、2025年5月1日公開)
  3. *3 出典:Linux Foundation「Linux Foundation Launches Open Source Valkey Community」(プレスリリース、2024年3月)
  4. *4 出典:Valkey公式サイト「valkey.io
  5. *5 出典:Valkey公式ドキュメント「Migrating from Redis OSS to Valkey
  6. *6 出典:AWS「Amazon ElastiCache announces support for Valkey」(What’s New、2024年10月8日)
  7. *7 出典:Redis Inc.「Redis Software and Redis Open Source Licenses」(redis.io公式ライセンスページ)
  8. *8 出典:AWS「Amazon MemoryDB announces support for Valkey」(What’s New、2024年10月8日)
  9. *9 出典:AWS「Amazon ElastiCache announces support for Valkey」(What’s New、2024年10月8日)
  10. *10 出典:Google Cloud「Announcing Memorystore for Valkey」(Google Cloud Blog、2024年8月31日)
  11. *11 出典:Valkey公式サイト「Participants」ページ

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