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2026.07.23 らしくコラム

セキュリティトークン基盤の要件と外注の判断軸

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として証券・金融システムの開発を受託

証券トークン・ブロックチェーンのイメージ

この記事のポイント

  • セキュリティトークン(ST)は金融商品取引法上の「電子記録移転有価証券表示権利等」であり、資金決済法上の暗号資産とは法的カテゴリが異なります。
  • STOでは発行体・第一種金融商品取引業者・信託銀行等が関わり、STプラットフォーム上で発行・移転・権利者管理を一体的に処理します。
  • 二次流通ではPTS(私設取引システム)との連携や監査証跡・分別管理の設計が必要になり、内製と外注のどちらで進めるかの判断が求められます。

セキュリティトークンとは?電子記録移転有価証券表示権利等としての位置づけ

デジタル投資基盤のイメージ

セキュリティトークン(ST)とは、日本STO協会(JSTOA)の説明によれば「株券や社債券などの有価証券に表示される権利を、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示したもの」であり、このSTを発行して行う資金調達の総称がSTO(セキュリティトークン・オファリング)と呼ばれています*1。まず押さえておきたいのは、STが金融商品取引法という法律の枠組みで規制される有価証券である点です*7

第二種金融商品取引業協会の解説では、STは「みなし有価証券について、ブロックチェーンの技術を用いて電子化(トークン化)した有価証券」と位置づけられており、原則として一項有価証券として規制されると説明されています*5。有価証券表示権利のトークン化を含めた総称が「電子記録移転有価証券表示権利等」であり*6、資金決済法が規律する暗号資産とは法的カテゴリが異なる点は明確に区別しておく必要があるでしょう。

この区別は、システム開発の外注先を選ぶうえでも出発点になります。暗号資産交換業向けの取引モニタリングやインサイダー取引管理を目的としたシステムと、STの発行・移転・権利者管理を目的とした基盤とでは、準拠すべき業規制や自主規制の体系がそもそも異なるためです。本稿では、STOによる資金調達の流れと関係者を整理したうえで、システムに求められる要件と、内製・外注の判断軸を公式情報に基づいて解説します。

図
図:STOにおける資金調達の流れ(発行体→第一種業者(信託活用も)→STプラットフォーム→投資家・PTSでの二次流通)

STOによる資金調達の流れと関係者

STOの手続きでは、STプラットフォームを中心に証券発行のプロセスが処理される点が大きな特徴です*1。発行体が資金調達ニーズを持ち、第一種金融商品取引業者が募集・私募の取扱いや引受けを担い、投資家に販売するという流れが基本形になります。金融庁の研究会に日本STO協会が提出した資料では、現状のST発行は不動産関連の信託受益証券が先行しており、信託銀行が資産の保管や受益権の管理を担う受益証券発行信託スキームが中心になっていると報告されています*3。社債やLP出資持分をトークン化した発行事例も存在すると同資料は述べています*3

証券会社が電子記録移転権利の募集・私募の取扱いを行う場合は第一種金融商品取引業の登録が必要になり、株式や社債と同様に行為規制や取引時確認、重要事項の説明義務等が課されます。発行体・第一種業者・信託銀行という複数の当事者が関わるため、システム基盤はそれぞれの役割分担を前提に設計しなければなりません。

3つの区分:トークン化有価証券・電子記録移転権利・適用除外電子記録移転権利

日本STO協会は、STを大きく3つに区分して整理しています*3。1つ目は株式・社債等の従来型有価証券を電子化した「トークン化有価証券」で、第一種金融商品取引業の対象です*3。2つ目は信託受益権や集団投資スキームといったみなし有価証券をトークン化した「電子記録移転権利」で、流通性の高さから原則として一項有価証券として扱われ、第一種業の対象へと格上げされます*3*5。3つ目は、譲渡制限を技術的に実装するなどして広く流通する蓋然性が事実上低いと認められる「適用除外電子記録移転権利」で、内閣府令により二項有価証券として扱われ、第二種金融商品取引業の対象にとどまります*5*6

この3区分のどれに該当するかによって、必要な業登録や開示義務は変わってきます。システム要件を検討する前段階として、対象スキームがどの区分に当たるかを法務・コンプライアンス部門とともに確定させておくことが欠かせない作業と言えるでしょう。

システムに求められる要件:発行・移転・権利者管理

発行段階で必要になる機能

発行段階では、銘柄情報やトークンの発行数量を管理する機能に加え、発行体・信託銀行・第一種業者それぞれが参照する情報を整合させる仕組みが必要になります。日本STO協会は「電子記録移転権利等の発行市場を担う基幹システムのガイドライン」を定めており*2、発行市場を担うシステムには一定の水準が求められていることがうかがえます。

移転・権利者管理段階で必要になる機能

移転段階では、権利の移転を記録し権利者名簿を更新する仕組みが中心になります。金融庁の研究会では、権利移転に伴う第三者対抗要件の明確化や、確定日付をデジタル化する実証の状況が論点として挙がっており*4、法的な対抗要件と技術的な記録をどう整合させるかが実務上の課題として残っています。権利者管理においては、日本STO協会が定める「顧客資産の分別管理の適正な実施に関する規則」や「電子記録移転権利に係る分別管理ガイドライン」への対応も欠かせません*2

約定・決済とPTSでの二次流通対応

STの二次流通は、私設取引システム(PTS)を通じて行われます。日本STO協会は「私設取引システムにおける電子記録移転権利の取引等に関する規則」を自主規制規則として定めており*2、PTSでST取引を行う場合はこの規則への対応が前提になります。

金融庁の研究会では、決済をT+0(約定と同日の決済)で実現するには証券会社側で大規模なシステム改造が必要になる点、決済に用いるステーブルコインの普及がまだ十分でない点、小口化によって事務負荷が増す点が課題として指摘されました*4。あわせて、PTSの認可プロセスを柔軟化する検討も進められています*4。約定・決済の基盤を構築する際は、こうした制度側の検討状況を踏まえ、将来の仕様変更を見込んだ設計にしておくことが望ましいでしょう。

監査証跡・分別管理と既存証券基盤との連携

日本STO協会の自主規制規則には、「電子記録移転権利等に係る事故の確認申請等に関する規則」が含まれています*2。事故発生時の確認申請を前提とした規則が存在すること自体が、発行から移転、決済に至るまでの操作履歴を監査証跡として残しておく必要性を示していると考えられます。

あわせて、顧客資産の分別管理に関する規則・ガイドラインや、預託の受入れに関する規則への対応も求められています*2。証券会社が既に保有する勘定系・決済系のシステムとST基盤を連携させる部分は業界横断的な標準が定まっていない領域も多く、各社の既存基盤の構成に合わせた個別設計が必要になりやすい点も見落とせません。

内製構築と外注委託のコスト構造比較

ST基盤の内製構築と外部パートナーへの委託では、専門知識の範囲やリスク対応の重心が異なります。以下の表に主な違いを整理しました。

比較項目 内製構築 外注委託
必要な専門知識 金商法・自主規制規則の理解、ブロックチェーン基盤、証券決済システムの知見を社内に維持する必要があります STプラットフォームや証券基盤の構築実績を持つ専門パートナーが対応します
自主規制対応 JSTOAの各種規則・ガイドラインへの適合を自社で継続的に確認します*2 規則改定への追随を含めて委託先が対応します
監査証跡・分別管理体制 分別管理ガイドラインに沿った体制を自社で設計・運用します*2 体制設計から運用監視までを含めて委託できます
既存基盤との連携 勘定系・決済系システムとの接続方式を自社で検討します 複数の証券基盤との連携実績を踏まえた設計を任せられます

導入の進め方と外注判断のポイント

STO基盤の導入は、次の順序で検討を進めると整理しやすくなります。第一に、対象とするスキームが株式・社債等のトークン化有価証券なのか、信託受益権等の電子記録移転権利なのか、あるいは適用除外電子記録移転権利なのかを確定します*3*5。第二に、確定した区分に応じて第一種・第二種いずれの金融商品取引業登録が必要になるかを法務部門とともに確認します。第三に、STプラットフォームの選定と、発行・移転・権利者管理機能の要件定義に進みます。

第四に、PTSでの二次流通を想定する場合は関連する自主規制規則への対応可否を確認し*2、第五に分別管理・監査証跡の体制を設計します。これらの工程を自社だけで完結させるには、金商法の理解とシステム開発の双方に通じた人材が必要になり、体制構築だけで相応の時間を要するケースが多いでしょう。専門パートナーに委託すれば、複数の自主規制規則への対応実績や証券基盤との連携知見を活用でき、要件定義から構築までの期間を圧縮しやすくなります。

まとめ:セキュリティトークン基盤整備の3つの判断軸

本稿ではセキュリティトークンの法的位置づけと、STOによる資金調達の流れ、システムに求められる要件を公式情報に基づいて整理しました。要点は次の3つに集約されるでしょう。第一に、STは金融商品取引法上の電子記録移転有価証券表示権利等であり、資金決済法上の暗号資産とは法的カテゴリが異なります*5*6。第二に、システムには発行・移転・権利者管理に加え、PTSでの約定・決済、監査証跡・分別管理体制まで一体的な設計が求められます*2*4。第三に、対象スキームの区分確定から自主規制対応、既存基盤との連携まで、内製で完結させるか外部パートナーに委託するかは、自社の専門人材の有無を踏まえて早い段階で判断する必要があります。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、証券・金融分野のシステム開発を元請(プライムベンダー)として受託しています。セキュリティトークンの発行・移転・権利者管理基盤の要件定義から、PTS連携、分別管理・監査証跡体制の設計、既存の証券決済基盤との連携まで一貫して対応する体制を整えています。自社での対応可否にご不安がある企業様は、まずは対象スキームの整理からご相談ください。

よくある質問

セキュリティトークンは暗号資産と同じ規制を受けますか。

いいえ、異なります。セキュリティトークンは金融商品取引法上の「電子記録移転有価証券表示権利等」として規制される有価証券であり*6、資金決済法が規律する暗号資産とは法的カテゴリが異なります*5。両者を混同したシステム要件で検討を進めると、必要な業登録や自主規制対応を見誤るおそれがあります。

STOの資金調達にはどのような関係者が関わりますか。

発行体、募集・引受けを担う第一種金融商品取引業者、資産保管や受益権管理を担う信託銀行、そしてSTプラットフォームが主な関係者です*1*3。現状は不動産関連の信託受益証券を中心に発行事例が積み上がっています*3

電子記録移転権利と適用除外電子記録移転権利の違いは何ですか。

流通性の高さと規制区分が異なります。電子記録移転権利は原則として一項有価証券として第一種金融商品取引業の対象になるのに対し*3*5、譲渡制限などにより流通性が事実上低いと認められる適用除外電子記録移転権利は二項有価証券として第二種金融商品取引業の対象にとどまります*5*6

セキュリティトークンの二次流通はどのように行われますか。

私設取引システム(PTS)を通じた取引が中心になります。日本STO協会は「私設取引システムにおける電子記録移転権利の取引等に関する規則」を定めており*2、決済のT+0化やPTS認可プロセスの柔軟化など制度面の検討も進められています*4

ST基盤の開発は内製・外注のどちらで進めるべきですか。

自主規制規則への対応や監査証跡・分別管理体制の設計、既存の証券基盤との連携まで自社人材で完結できるかどうかが判断軸になります*2。専門パートナーへの委託は、複数の自主規制規則への対応実績を活用できる点が利点です。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:一般社団法人日本STO協会「STO(Security Token Offering)」投資家の皆様へ(https://jstoa.or.jp/investor/sto/
  2. *2 出典:一般社団法人日本STO協会「定款・自主規制規則等・諸規則」(https://jstoa.or.jp/about/articles/
  3. *3 出典:金融庁「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第11回)配布資料 一般社団法人日本STO協会提出資料(https://www.fsa.go.jp/singi/digital/siryou/20230606/2jstoa.pdf
  4. *4 出典:金融庁「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第11回)議事録(https://www.fsa.go.jp/singi/digital/gijiroku/20230606.html
  5. *5 出典:一般社団法人第二種金融商品取引業協会「電子記録移転権利」用語集(https://www.t2fifa.or.jp/investors/glossary/detail/543/
  6. *6 出典:一般社団法人第二種金融商品取引業協会「電子記録移転有価証券表示権利等」用語集(https://www.t2fifa.or.jp/investors/glossary/detail/544/
  7. *7 出典:金融商品取引法(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000025


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