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ServiceNow人材(ITSM)不足を外注で補う進め方
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- ServiceNowの運用・開発に必要な役割(管理者・開発者・アーキテクト)と認定(CSA/CAD等)を整理し、内製が難しい理由を確認できます。
- ITSM・ITOM・HRSDなどモジュールごとの専門性や、GlideScript・Flow Designer・IntegrationHubといった固有技術の論点を解説します。
- 不足を外注で補うときの委託形態の選び方と、インスタンス運用・アップグレードを含めた5ステップの進め方を紹介します。
目次
ServiceNow人材が不足する背景と固有の難しさ
ServiceNow人材を外注で補うとは、ITSM(ITサービスマネジメント)プラットフォームであるServiceNowの管理・開発・運用を担う専門人材を、自社で抱えきれない領域について外部パートナーへ委ねる取り組みです。インスタンスの設定、ワークフローの開発、定期アップグレードへの追従といった作業を、認定保有者を含む外部チームと分担しながら進める手法です。
IT人材全体の需給ギャップという前提
経済産業省が2019年に公表した「IT人材需給に関する調査」では、需要の伸びを中位と仮定した場合、2030年にはIT人材が約45万人不足し、高位の前提では約79万人規模の不足になる可能性があると試算されています。*1
この需給ギャップは特定の製品に限った話ではありませんが、ServiceNowのように習得に専門的な学習と認定を要するプラットフォームでは、人材確保の難しさがより顕在化しやすい傾向があります。
ServiceNow固有の人材難 ― 認定とバージョン追従
ServiceNowは管理・開発の前提知識を体系化した認定制度を持ち、後述するCSA(Certified System Administrator)が多くの認定の起点に位置づけられています。*2こうした体系的な学習を経た人材の採用・育成には時間がかかります。
加えてServiceNowは「ファミリーリリース」と呼ばれる定期的なバージョン更新を提供しており、インスタンスはこれに追従する必要があります。*3新機能の評価やカスタマイズの影響確認を継続的に行える体制を、社内人材だけで維持するのは負担が大きくなりがちです。
必要な役割と認定 ― 管理者・開発者・アーキテクト
ServiceNowの運用・開発に必要な人材は、担う役割によって求められるスキルと認定が異なります。不足している役割を見極めることが、外注範囲を決める出発点になります。
管理者(Administrator) ― CSAが起点
管理者はインスタンスの設定、ユーザー・権限管理、フォームやリストの構成、基本的なワークフロー設定などを担います。ServiceNowが提供する認定のうち、CSA(Certified System Administrator)はプラットフォームの設定・実装・保守に関する知識とスキルを確認するもので、多くの上位認定の前提として位置づけられています。*2
開発者(Developer) ― CADで検証される領域
開発者はスクリプトを用いたカスタムアプリケーションの構築、データモデル設計、API連携などを担当します。CAD(Certified Application Developer)は、ServiceNowプラットフォーム上でアプリケーションを設計・開発・デプロイする知識とスキルを確認する認定です。*2スクリプトを書き、APIを扱う領域を担う人材の専門性を示す指標になります。
実装スペシャリスト・アーキテクト
特定モジュールの導入を専門に担う役割としては、CIS(Certified Implementation Specialist)と呼ばれる、モジュール別に分かれた実装認定があります。*2さらに、複数モジュールやインスタンス全体の設計方針・ガバナンスを統括するアーキテクト的な役割も存在します。アーキテクトは技術知識に加え、業務プロセスとの整合や拡張時の保守性まで見据えた判断が求められるため、確保がとりわけ難しい層です。
| 役割 | 主な担当領域 | 関連する認定 | 外注での補完しやすさ |
|---|---|---|---|
| 管理者(Administrator) | インスタンス設定・権限管理・基本ワークフロー | CSA | 運用代行として委託しやすい |
| 開発者(Developer) | カスタムアプリ開発・スクリプティング・API連携 | CAD(CSAが前提) | スポット〜継続開発で委託しやすい |
| 実装スペシャリスト | 特定モジュールの導入・初期構築 | CIS(モジュール別) | 導入プロジェクト単位で委託しやすい |
| アーキテクト | 全体設計・ガバナンス・拡張方針 | 上位認定・実務経験 | 確保が難しく外部知見の活用が有効 |
※認定の正式名称・前提条件・出題範囲はServiceNow University(公式)で公開されており、内容は更新される場合があります。最新の情報は公式サイトでご確認ください。*2
モジュール別の専門性 ― ITSM・ITOM・HRSDほか
ServiceNowは単一の用途ではなく、業務領域ごとに複数のモジュール(製品群)を提供しています。*3どのモジュールを使うかによって必要な知識が変わるため、不足している専門性を特定することが外注先選定の前提になります。
ITSM ― ITサービスマネジメントの中核
ITSMはインシデント管理・問題管理・変更管理・サービスカタログなど、ITサービス運用の中核を担うモジュールです。ITILの考え方に沿ったプロセス設計の知識と、ServiceNow上での実装スキルの両方が求められます。導入企業の多くが起点とする領域でもあります。
ITOM ― 運用の自動化と可視化
ITOM(IT Operations Management)は、構成管理データベース(CMDB)の整備、インフラの監視・イベント管理、サービスマッピングなど、IT運用の可視化・自動化を担います。インフラ知識とServiceNowの設定知識が交差する領域で、専門性の要求度が高くなりがちです。
HRSDほか ― IT部門以外への広がり
HRSD(HR Service Delivery)は人事関連の問い合わせ・手続きをワークフロー化するモジュールで、IT部門以外の業務へServiceNowを広げる際に用いられます。*3このほかCSM(Customer Service Management)など複数のモジュールがあり、対象モジュールごとに業務知識と実装スキルの組み合わせが異なります。外注を検討する際は、補完したい業務領域に対応した実績を持つパートナーかを確認することが大切です。
固有技術の論点 ― スクリプティング・Flow Designer・統合
ServiceNowのカスタマイズや拡張には、プラットフォーム固有の技術要素が関わります。これらは汎用的なWeb開発の知識だけでは補いきれないため、人材難の一因にもなっています。
スクリプティング(GlideScript)
ServiceNowではサーバーサイド・クライアントサイドのカスタマイズに、Glide APIを用いたJavaScriptベースのスクリプティング(一般にGlideScriptと呼ばれます)が用いられます。*3Business RuleやScript Includeといった仕組みを正しく使い分けるには、プラットフォームの実行モデルへの理解が必要です。
Flow Designer ― ノーコード/ローコードの自動化
Flow Designerは、ノーコード/ローコードでワークフローや自動化を構築できる仕組みです。*3スクリプトを書かずに業務プロセスを組める一方、複雑な分岐や外部連携を伴う場合には設計上の判断が必要になり、経験の差が成果物の保守性に影響しやすい領域です。
統合(IntegrationHub)と外部連携
IntegrationHubは、外部システムとの連携(統合)を構築・実行するための仕組みで、Flow Designerと組み合わせて利用されます。*3API連携や認証の扱いを含むため、ServiceNowの知識に加えて連携先システムの理解も求められます。統合の設計を誤ると、アップグレード時に動作確認の負担が増える要因にもなります。
内製が難しい理由と委託形態の選び方
ServiceNowを内製だけで運用・開発し続けることには、いくつかの構造的な難しさがあります。それを踏まえて委託形態を選ぶことが、外注を機能させる鍵になります。
内製が難しい主な理由
- 認定取得・育成に時間がかかる:CSAを起点に役割ごとの学習が必要で、即戦力の確保が難しい領域です。*2
- 定期アップグレードへの追従:ファミリーリリースのたびに評価・回帰確認が発生し、専任的な体制が求められます。*3
- 固有技術の幅:スクリプティング・Flow Designer・統合など、習得すべき技術領域が広範です。
- 属人化のリスク:少人数で運用すると、担当者の異動・退職時に運用が滞りやすくなります。
委託形態の整理
委託形態は、補完したい役割と社内の管理体制によって選びます。代表的な形態を整理します。
| 委託形態 | 向いているケース | 留意点 |
|---|---|---|
| 運用代行(管理者業務の委託) | 日常の設定変更・問い合わせ対応を任せたい | 対応範囲・SLA・エスカレーション経路を明確にする |
| 開発委託(請負・準委任) | カスタムアプリや統合の構築を依頼したい | 成果物の範囲・受入基準・保守の引き継ぎを定める |
| 導入プロジェクト委託 | 新規モジュールの初期構築を任せたい | 対象モジュールの実装実績を確認する |
| SES(人員提供) | 自社主導で進め、不足スキルだけを補いたい | 指揮命令・進捗管理・品質判断を自社で担う必要がある |
SES(システムエンジニアリングサービス。エンジニアの労働力を提供する形態)は、社内に設計判断や進捗管理の体制がある場合に適しています。設計方針の策定や成果物への責任まで委ねたい場合は、元請(プライムベンダー)として請け負える形態を選ぶ方が、運用全体のリスク管理がしやすくなります。
外注でServiceNow人材を補う5ステップ
外注を機能させるには、依頼前の整理と段階的な進め方が重要です。以下の5ステップは、現状把握から運用移転までの一貫した流れを示しています。
ステップ1 ― 現状のインスタンス・運用体制を棚卸し
まず、利用中のモジュール、カスタマイズの範囲、現在のバージョン、社内の担当者と保有認定を棚卸しします。どの役割(管理者・開発者・アーキテクト)が不足しているのかを具体化することで、外注範囲の議論が進めやすくなります。
ステップ2 ― 補完範囲と役割分担の定義
外注で補う範囲と社内に残す範囲を線引きします。日常運用は委託し、業務要件の意思決定は社内に残すといった分担を明確にすると、認識ずれを抑えられます。求める認定(CSA/CAD等)や対象モジュールの実績も要件として整理します。
ステップ3 ― 委託形態とパートナーの選定
前章で整理した委託形態をもとに、運用代行・開発委託・SESなどから適した形を選びます。対象モジュールの実装実績、セキュリティ管理体制(NDA・アクセス権限管理)、報告・エスカレーションの運用を確認します。複数社から提案を受けて比較検討することを推奨します。
ステップ4 ― 構築・運用の分担開始
選定したパートナーと作業を開始します。開発を伴う場合はサブプロダクション(開発・テスト用インスタンス)での検証を経て本番へ反映する流れを徹底し、変更管理のルールを共有します。短いサイクルでのレビューを設けると、進捗の透明性が高まります。
ステップ5 ― アップグレード追従と運用ナレッジの移転
ServiceNowはファミリーリリースで定期的に更新されるため、アップグレード時の評価・回帰確認の進め方をあらかじめ取り決めておきます。*3あわせて、設定内容・カスタマイズの仕様・対応手順をドキュメント化し、社内へ運用ナレッジを移転できるよう契約事項に含めておくと、属人化や委託先依存のリスクを抑えられます。
まとめ ― 外注で補完する3つの判断軸
本稿ではServiceNowのITSM運用・開発人材の不足を外注で補う方法を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。
第一に、不足している役割の特定です。管理者・開発者・アーキテクトのどの層が足りないのかを、CSA・CAD・CISといった認定の観点も交えて見極めることが、外注範囲を決める出発点になります。
第二に、対象領域の明確化です。ITSM・ITOM・HRSDなどモジュールごと、またスクリプティング・Flow Designer・統合といった固有技術ごとに必要な専門性は異なります。補完したい領域に対応した実績を持つパートナーを選ぶことが重要です。
第三に、委託形態の選択です。運用代行・開発委託・SESなどを社内の管理体制に合わせて選び、設計判断や成果物への責任まで委ねたい場合は元請(プライムベンダー)として請け負える形態を検討することが、運用全体のリスク管理につながります。
よくある質問
ServiceNowの運用は外注に任せ、社内には何も残さなくてよいですか?
日常の設定変更や問い合わせ対応を委託することは可能ですが、業務要件の意思決定やデータ・権限のガバナンスは社内に残すことが一般的です。何を委託し何を社内で担うかを線引きし、運用ナレッジが社内にも蓄積されるようドキュメント化と引き継ぎを契約に含めておくと、委託先依存のリスクを抑えられます。
外注先に求める認定(CSA・CAD等)はどう確認すればよいですか?
ServiceNowの認定はServiceNow University(公式)で体系が公開されており、CSAが多くの認定の起点に位置づけられています。外注先には、担ってほしい役割(管理者・開発者・実装スペシャリスト等)に対応する認定の保有状況と、対象モジュールでの実装実績をあわせてヒアリングすることが現実的です。認定名や要件は更新される場合があるため、公式情報での確認を推奨します。
ITSM以外のモジュール(ITOMやHRSD)も同じ外注先に頼めますか?
モジュールごとに必要な業務知識と実装スキルが異なるため、対応可否は外注先によって変わります。ITSMの実績があってもITOMやHRSDの実装経験が十分とは限りません。補完したいモジュールでの実績を個別に確認し、必要に応じて領域ごとに体制を組めるパートナーかを見極めることが大切です。
アップグレード(ファミリーリリース)への対応も外注できますか?
アップグレード時の影響評価や回帰確認を含めて委託することは可能です。ServiceNowは定期的にファミリーリリースを提供するため、更新のたびにカスタマイズへの影響確認が発生します。委託する場合は、評価・テスト・本番反映の進め方とスケジュールをあらかじめ取り決めておくと、更新対応を継続的に進めやすくなります。
小規模な利用でも外注でServiceNow人材を補う意味はありますか?
利用規模が小さくても、担当者が少人数で属人化している場合や、定期アップグレードへの追従が負担になっている場合には、外注で補う意義があります。まず必要な役割と範囲を絞ってスポットで委託し、運用が安定してから委託範囲を見直す段階的な進め方が、リスクと費用のバランスをとりやすい方法です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査 調査報告書」(2019年4月公表)
- *2 出典:ServiceNow「Training and Certification(ServiceNow University)」(公式・閲覧時点)
- *3 出典:ServiceNow「ServiceNow Product Documentation」(公式・閲覧時点)