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システム保守を内製化するかの判断基準|5つの問いで決める手順
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- システム保守の内製化は、全部を社内か外部かの二択ではなく、作業ごとに持ち分を決める判断です。
- 資料、担当の社員、2人以上の体制、勤務時間内の一次対応、製品の保守の5つの問いを上から順に確かめます。
- どの行き先でも保守の方針と保守依頼の判断は社内に残し、外部との境目の作業は手順書に書きます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
保守を任せている会社から値上げの連絡が来た。社内に戻したいが、夜中の障害に誰が対応するのか見当がつかない——。システムの保守を長く外部に頼んできた企業では、こうした迷いが起こりがちです。システム保守の内製化とは、稼働中のシステムの不具合の修正や環境の変化への対応といった保守の作業を、委託先から社内に移すことです。
内製化すれば、直したい点をすぐに直せる、仕組みの中身が社内に残る、といった利点があります。ただし万能ではなく、資料や人がそろわないまま切り替えると、障害の対応そのものが止まります。本記事では、保守を内製にするか委託を続けるかで迷っている情報システムの担当者に向けて、3つの行き先の違い、5つの問いで決める手順、一部を外部に残すときの分け方、そして判断に迷ったときに外部に相談できる範囲を整理します。
目次
システム保守の内製化とは
経済産業省の「システム管理基準」(2023年4月26日版)は、保守の作業を次の4つの区分に分けています。*1 内製化を考えるときは、まず自社の保守依頼がどの区分に多いかを見ておくと、社内に移す作業の中身がはっきりします。
- 是正保守:インシデント(障害や問題)の原因を取り除くための保守
- 適応保守:システム環境の変更に対応し、正常な稼働を保つための保守
- 完全化保守:機能や使い勝手の改良・拡張の要求に応える保守
- 予防保守:インシデントを未然に防ぐ、または再発を防ぐための保守
同じ基準は、保守体制の整え方として、保守専任の部署を置く形と、開発部署との共同体制などの形を挙げ、どちらにも外部委託先を含めています。*1 つまりシステム保守の内製化は「全部を社内か、全部を外部か」の二択ではありません。作業ごとに社内と外部の持ち分を決める判断だと考えるほうが、実態に合います。
内製・一部委託・委託の違い
IPA(情報処理推進機構)の「非機能要求グレード2018」も、保守の作業(メンテナンス作業)の分担を、利用者側がすべて行う、一部を行う、委託先がすべて行う、の3段階で整理しています。*2 本記事でもこれに合わせ、判断の行き先を「社内で持つ」「一部を外部に残す」「委託を続ける」の3つとします。

| 行き先 | 社内が持つもの | 外部が持つもの | 向いている場面 | 気をつける点 |
|---|---|---|---|---|
| 社内で持つ | 保守の方針と判断、修正と改良の作業、障害の一次対応 | 必要なときに単発で頼む作業だけ | 資料がそろい、社員2人以上で回せて、勤務時間内に止められるシステム | 社員の異動や退職で止まらないよう、手順書を更新し続ける |
| 一部を外部に残す | 保守の方針と判断、日中の修正と改良 | 夜間・休日の一次対応、製品の保守、専門の知識が要る作業 | 夜間も止められない、または専門の作業が残るシステム | 社内と外部の境目の作業を、契約と手順書に書く |
| 委託を続ける | 保守の方針、保守依頼を受けるかの判断、結果の受け入れ確認 | 作業と一次対応のほぼすべて | 資料や担当する社員がまだそろわない段階 | 資料の引き取りと社員の配置を、委託の間に進める |
どの行き先でも、保守の方針と、保守依頼を受けるかどうかの判断は社内に残ります。システム管理基準も、保守方針(外部委託方針を含む)を定めて周知することを、保守体制の整備の最初の項目に置いています。*1 委託を続ける場合でもここを委託先任せにしないことが、のちに内製へ切り替えるときの土台になります。
5つの問いで決める手順
判断は、次の5つの問いを上から順に確かめて進めます。「いいえ」が出た時点で行き先が決まり、すべて「はい」なら社内で持つ形に進みます。上の問いほど、切り替えたときに保守が止まる危険に直結します。
| 問い | はいのとき | いいえのとき | 確かめる資料 |
|---|---|---|---|
| 問い1:保守に要る資料は社内にそろうか | 問い2へ | 委託を続け、資料を先に引き取る | 構成の情報、システム構成図、プログラム一覧 |
| 問い2:保守を担う社員を置けるか | 問い3へ | 委託を続け、社員の配置を先に決める | 組織図、保守依頼の記録 |
| 問い3:2人以上で同じ作業を回せるか | 問い4へ | 一部を外部に残し、並んで作業しながら移す | 作業ごとの担当の一覧 |
| 問い4:社員の勤務時間で一次対応が足りるか | 問い5へ | 夜間・休日の一次対応を外部に残す | 運用時間の取り決め、障害の記録 |
| 問い5:機器や製品の保守まで社内で扱えるか | 社内で持つ | 製品の保守契約を外部に残す | 保守契約の一覧、製品のサポート期限 |
問い1の資料は、システム管理基準が、開発や運用の工程から保守に引き継ぐ情報として挙げているものです。*1 これが委託先の手元にしかない状態で切り替えると、社員は何をどこで直せばよいのか分からなくなります。問い3は、作業が1人の社員に偏っていないかを見る問いです。1人しか分からない作業は、その人が休むだけで止まります。
問い4の運用時間について、非機能要求グレードは「定時内」「夜間のみ停止」から「24時間無停止」までの段階を示しています。*2 自社のシステムがどの段階にあたるかを先に決めておけば、夜間の一次対応を社員が持てるのか、外部に残すのかを判断できます。
一部を外部に残すときの分け方
問い3から問い5のどこかで「いいえ」が出た場合は、作業ごとに社内と外部の持ち分を分けます。非機能要求グレードは、委託先の対応時間帯やエスカレーション(有識者への引き上げ)の待機の仕方、機器とソフトウェアの保守契約を、委託先と合意する項目として並べています。*2 これを手がかりにすると、境目を決めやすくなります。

- 社内に残す:保守の方針、保守依頼を受けるかどうかの判断、改良(完全化保守)の優先順位、結果の受け入れ確認
- 日中は社内、夜間・休日は外部:障害の一次対応(最初の切り分けと連絡)。外部の対応時間帯を契約に書く
- 外部に残す:機器やOS、ミドルウェア(OSと業務アプリの間で動く基盤のソフト)などの製品の保守と、専門の知識が要る作業
- 移しきるまで外部が支える:1人しか分からない作業。外部と社員が並んで作業し、手順書ができた順に社内へ移す
分けたあとは、境目の作業の受け渡しを手順書に書きます。夜間に外部が一次対応した障害を、翌朝どの形で社員に引き継ぐのか。ここがあいまいなままだと、同じ障害を2度調べることになります。
製品の保守契約は、内製化してもすぐには切らずに残す選択肢を持っておきます。非機能要求グレードは、保守契約を結ぶと運用コストが増えるように感じられるものの、問題が起きた際の費用を考えると、結果として運用コストが小さくなる場合があるとしています。*2
判断に迷ったときに相談できる範囲
5つの問いのうち、資料がそろっているか、作業が1人に偏っていないかは、社内だけでは見えにくいことがあります。判断に迷ったときは、次のような範囲で外部の手を借りられます。保守会社を比べるときの見方はシステム保守会社の選び方で扱っています。
- 今の保守の棚卸し:保守依頼の記録から、4つの区分ごとの作業の量と担当を洗い出す
- 資料の整備:システム構成図やプログラム一覧を、社員が読める形に直す
- 並走の計画:外部と社員が同じ作業を一緒に行い、担当を移す順番と見直しの時期を決める
- 夜間・休日の体制づくり:一次対応の手順と、翌朝の社員への引き継ぎの形を決める
相談するときは、次の点を先に確かめておくと、出てきた提案をそのまま5つの問いの判断に使えます。
- 範囲:棚卸し、資料の整備、並走、夜間の体制のどこまでを頼むか
- 期間:社内に移しきるまでの期間と、途中で見直す時期
- 体制:社内の窓口は誰で、何を社内で決めるか
- 費用の決まり方:作業の期間に対して払うのか、成果物に対して払うのか
- 引き継ぎ:作った資料と手順書を、社内で直せる形で受け取れるか
まとめ:システム保守の内製化で確かめておきたい3つの点
システム保守の内製化を判断するうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、行き先を「社内で持つ」「一部を外部に残す」「委託を続ける」の3つで考え、二択にしないこと。第二に、資料、担当の社員、2人以上の体制、勤務時間内の一次対応、製品の保守の5つの問いを、上から順に確かめること。第三に、一部を外部に残すときは、夜間の一次対応や製品の保守など境目の作業の受け渡しを、契約と手順書に書いておくことです。この3点を踏まえておけば、「社内に戻したら夜間の障害に誰も出られなかった」という事態を避けやすくなります。今の保守の棚卸しや並走の計画づくりに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
内製化に切り替えるまでにどのくらいの期間がかかりますか
決まった期間はなく、資料の整い方と、外部と社員が並んで作業する期間の長さで決まります。並走の期間は、手順書ができた作業から順に社内へ移すと区切りやすくなります。委託契約の更新時期から逆算して、見直しの時期を先に決めておくのがおすすめです。
保守を内製化すると費用は下がりますか
下がるとは限りません。委託費は減っても、担当する社員の人件費や育成の時間、製品の保守契約の費用は残ります。比べるときは、委託費だけでなく、社員が保守にかける作業の時間も同じ表に並べます。
一度内製化したあとで委託に戻すことはできますか
できます。その場合も、資料と手順書が社内に残っていれば、新しい委託先への引き継ぎを進めやすくなります。委託に戻すときも、保守の方針と保守依頼を受けるかどうかの判断は社内に残しておきます。
システム保守の内製化のご相談
今の保守の棚卸しや資料の整備から、社員との並走、夜間・休日の一次対応の分担まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:経済産業省「システム管理基準」(令和5年4月26日)(https://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/sys-kansa/sys-kanri-2023.pdf)。出典:Ⅱ.6 保守プロセスのうち、Ⅱ.6.1 保守体制の整備(保守方針・保守体制・保守で必要な情報の連携)と、Ⅱ.6.2 保守計画の保守区分(是正保守・適応保守・完全化保守・予防保守)を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「非機能要求グレード2018」(システム基盤の非機能要求に関する項目一覧)(https://www.ipa.go.jp/archive/digital/iot-en-ci/jyouryuu/hikinou/ent03-b.html)。出典:項目一覧(2018年4月)のうち、A.1.1.1 運用時間(通常)、C.5.1.1・C.5.2.1 保守契約、C.5.4.1 メンテナンス作業役割分担、C.5.6 サポート要員(対応時間帯・エスカレーション対応)を参照(2026年10月確認)