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システムリプレイスの費用の内訳と見積もりで確かめる5つの点
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- システムリプレイスの費用は工数が中心で、IPAの集計では再開発の工数のうち製作が中央値31.4%を占めます。
- JUASの調査では規模が大きいほど予算の超過が増え、500人月以上では42.2%が予定を超えています。
- 保守を続ける場合と並べて比べ、見積もりは範囲・期間・体制・費用の決まり方・引き継ぎをそろえて比べます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
いまのシステムは動いているが、保守の費用が年々かさんでいる。作り直したほうが安いのか、見積もりの金額が妥当なのかが分からない——。古くなった業務システムを抱える情報システム部門では、こうした迷いが起こりがちです。システムリプレイスとは、使い続けてきたシステムを、業務のアプリケーションも含めて新しいシステムに置き換えることです。
保守を続ける場合と比べてから判断する必要があります。ただし万能ではなく、問題が一部の機能に限られるなら、作り直さないほうが合う場合もあります。本記事では、システムの担当者やIT投資を判断する方に向けて、リプレイスの費用の内訳、金額の決まり方、保守を続ける場合との比較、そして見積もりで確かめておきたい5つの点を整理します。
システムリプレイスとは
システムリプレイスの費用を考えるときは、まず何を置き換えるのかをはっきりさせます。機器だけを新しくする場合と、業務のアプリケーションまで作り直す場合とでは、費用の中身がまったく違います。
- システムリプレイス:業務のアプリケーション、データ、動かす環境をまとめて新しいシステムへ置き換える
- 改修:いまのシステムを残したまま、一部の機能を直したり加えたりする
- サーバーのリプレイス:アプリケーションはそのままで、動かす機器だけを新しくする
- クラウド移行:動かす場所をクラウドへ移す。アプリケーションを作り直すかどうかは別に決める
IPA(情報処理推進機構)のソフトウェア開発のデータ集では、開発プロジェクトを新規開発・改修・保守・再開発などの種類に分けて集計しています。再開発に当たるものは全体の7.2%で、改修・保守の51.5%や新規開発の29.1%に比べて少ない種類の開発です。*1 何度も経験する仕事ではないため、社内に見積もりを比べる目安が残っていないこともあります。機器の更新だけを考えている場合はサーバーリプレイス外注、クラウドへ移す費用は基幹システムのクラウド移行費用で扱っています。
リプレイス費用の内訳
システムリプレイスの費用の大半は、人が作業する時間、つまり工数にかかる費用です。工程ごとの配分が分かれば、見積書の金額を確かめやすくなります。

IPAのデータ集は、再開発のプロジェクト63件について、基本設計から総合テストまでの5つの工程に工数がどう配分されたかを集計しています。中央値で見ると、プログラムを作る製作の工程が31.4%と最も大きく、結合テストが20.9%、詳細設計が15.2%、基本設計が14.3%、総合テストが13.6%でした。*1
テストの2つの工程を合わせると、製作に近い比重になります。見積書でテストの費用が極端に小さい場合は、どの試験が含まれているかを確かめておきます。このデータは基本設計から総合テストまでの5工程が対象で、実際のリプレイスでは次の費用が加わります。
- 現状調査と要件定義:いまのシステムが何をしているかを洗い出し、新しいシステムの要件を決める
- データ移行:古いシステムのデータを整え、形式を変えて新しいシステムへ移す
- 切り替えと並行稼働:新旧のシステムを同時に動かし、結果を比べる期間の費用
- 教育と手順書:利用者への説明、運用の手順書の作り直し
- 新しい環境:サーバーやクラウドの利用料、ソフトウェアのライセンス
費用はどう決まるのか
見積もりの金額は、おおまかには工数に技術者の単価を掛け、ライセンスや環境の費用を加えたものです。工数を大きく左右するのは主に次の3つです。
- 規模:画面・帳票・ほかのシステムとのつなぎ口の数と、いまの機能をどこまで引き継ぐか
- いまのシステムの分かりやすさ:設計書が現状と合っているか、仕様を知る人が社内に残っているか
- データの量と状態:移すデータの件数と、重複や入力の揺れがどれだけあるか
規模が大きいほど、見積もりどおりに収まりにくくなる点にも注意が必要です。JUAS(日本情報システム・ユーザー協会)が2025年に東証上場企業などのIT部門長を対象に行った調査では、システム開発で予算が「予定より超過」したプロジェクトの割合は、100人月未満で10.8%、100〜500人月未満で36.2%、500人月以上で42.2%でした。*2 人月は、1人が1か月働く作業量を表す単位です。
リプレイスでは、仕様を調べて初めて分かる作業が後から出てきます。最初の見積もりを1つの金額で受け取らず、現状調査を終えた段階で見積もりを出し直す取り決めにしておくと、予算の見通しを立てやすくなります。
保守を続ける場合との比較
リプレイスを考えるときは、いまのシステムの保守を続ける場合と並べて比べます。JUASの同じ調査では、IT予算のうち現行ビジネスの維持・運営に充てる予算と、新しい施策に充てる予算の比は75.9対24.1でした。*2 IT予算が増える理由では「既存システム・基盤の刷新・更新・増強」が最も多く、2025年度の計画で66.3%の企業が挙げています。*2
| 比べる点 | 保守を続ける | リプレイスする |
|---|---|---|
| 費用の払い方 | 保守費を毎月・毎年払い続ける | 開発期間にまとまった費用を払い、稼働後は新しいシステムの保守費に替わる |
| 始めるまでの期間 | いまの契約のまま続けられる | 現状調査から切り替えまで準備の期間が要る |
| 社内の負担 | 障害や問い合わせへの対応が中心 | 要件の確認、テストへの参加、データの確認に担当者の時間が要る |
| 主なリスク | 古い技術を直せる人がいなくなる | 予算や期間の超過、切り替えのときの業務の停止 |
| 向いている場面 | 業務の変化が小さく、保守の体制が保てている | 製品の保守期限が近い、直すたびに費用と時間がかさむ |
どちらがよいかは場面で変わります。業務が安定していて保守の体制が保てているなら、続けたほうが総額を抑えられることもあります。反対に、OSやミドルウェアの保守期限が近いなら、リプレイスの費用と比べる価値があります。いまの保守費が妥当かどうかはシステム保守費用の根拠と妥当性の見極め方で確かめられます。
見積もりで確かめる5つの点
リプレイスを外部に頼むときは、金額を比べる前に、見積もりの前提がそろっているかを確かめます。次の5つは、そのまま依頼先への相談の準備にも使える項目です。

- 範囲:どの機能・帳票・つなぎ口を引き継ぎ、どれをやめるか。データ移行と教育が含まれているか
- 期間:現状調査、開発、テスト、並行稼働のそれぞれに何か月を見込んでいるか
- 体制:誰が責任者で何人が関わるか。社内の担当者がどの作業に何時間加わる前提か
- 費用の決まり方:工程ごとの工数と単価が分かれているか。仕様が変わったときの扱いが決まっているか
- 引き継ぎ:稼働後の保守を誰が受け持つか。設計書やテストの記録が自社に残るか
金額だけを並べると、範囲の狭い見積もりが安く見えてしまいます。開発費の見積もり全般の見方は業務システム開発の費用相場、古いシステムの移し方ごとの費用の違いはレガシーシステム刷新の費用相場にまとめています。
まとめ:リプレイス費用で確かめておきたい3つの点
システムリプレイスの費用を判断するうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、見積もりの工数が工程ごとに分かれていて、データ移行や並行稼働まで含まれているかを見ること。第二に、現状調査の後に見積もりを出し直す前提で、予算に余裕を持たせておくこと。第三に、保守を続ける場合の費用とリスクを同じ表に並べて比べることです。この3点を踏まえておけば、「安い見積もりを選んだのに、後から追加の費用が出てきた」という事態を避けやすくなります。見積もりの比べ方や進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
システムリプレイスの費用の相場はいくらですか
公的な調査で、リプレイスの金額の相場を示したものは公表されていません。金額は規模、いまのシステムの状態、データの量で大きく変わります。現状調査を経た見積もりで、工程ごとの工数を確かめるのが確実です。
リプレイスの間、いまのシステムの保守費はどうなりますか
新しいシステムが稼働するまでは、いまのシステムの保守費も払い続けます。並行稼働の期間は新旧両方の費用がかかるため、いつ旧システムを止めるかを計画の段階で決めておきます。
見積もりはいつ頼めばよいですか
製品の保守期限が決まっているなら、そこから逆算して早めに相談します。現状調査に時間がかかるうえ、調査の後で見積もりを出し直すことも多いため、期限の直前では比べる時間が足りなくなります。
システムリプレイスの費用と進め方のご相談
現状調査から見積もりの前提づくり、データ移行、稼働後の保守まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「ソフトウェア開発分析データ集2022」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。出典:1.2節 図1-2-1(開発プロジェクトの種別の構成)と、A3.3.10「工程別工数:再開発」表A3-3-10(工程別の実績工数の比率・N=63の中央値)を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)「企業IT動向調査報告書2026」(https://juas.or.jp/library/research_rpt/it_trend/)。出典:調査概要(2025年9〜10月実施、東証上場企業とそれに準じる企業4,500社のIT部門長が対象、回答957社)、図表2-1-3 IT予算の増加理由、2.1(4)IT予算の配分、図表7-1-2 プロジェクト規模別・年度別のシステム開発の予算遵守状況を参照(2026年10月確認)