LASSIC Media らしくメディア
情報コミッショナーの廃止、英国は2026年9月30日に移行
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 職は廃止、法人が残る:2026年9月30日からです*1。
- 委員は3名以上14名以下:非執行が多数を占めます*4。
- 既存の文書は読み替え:書き換えなくても通じます*3。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
契約書やプライバシー通知に監督機関の名前を書いている場合、その名前が制度の側で消えることがあります。英国で、その日が決まりました。
データ(利用およびアクセス)法2025(第9次施行ならびに経過および留保の規定)規則2026(SI 2026/1015)が2026年9月10日に制定され、2026年9月30日に三つの条を施行します*1。情報コミッショナーの職の廃止と、情報委員会への機能の移転です*1。
英国向けのサービスを持つ立場から、何が消えるのか、何が引き継がれるのか、手元の文書をどうするのかを順に見ていきます。
目次
三つの条が、別々のことをする
まず全体像です*1*2*3*4。
この規則は、データ(利用およびアクセス)法2025の第142条第1項および第143条第1項に基づく第9次の施行規則です*1。第2条が、2026年9月30日に施行する条を三つ挙げました*1。第117条第4項(a)、第118条(情報コミッショナーの職の廃止)、そして第119条(情報委員会への機能の移転)です*1。
順番が入れ替わっている点に注意が要ります*2。第117条は、すでに2025年8月20日に施行済みです(SI 2025/904 第2条(r)。ただし第4項(a)を除く)*2。同条はデータ保護法2018を改め、第114A条を挿入して情報委員会という法人を設立し、別表12Aがその詳細を定めるとしました*2。つまり、受け皿は1年前にできていたことになります*2。
あわせて第117条は、データ保護法2018の第3条に第8A項を入れて「委員会」は情報委員会(第114A条を見よ)を意味すると定義し、第206条の定義索引にも「委員会」=第3条を加えました*2。第4項は第205条第2項について、(l)を削り、(la)として別表12A第22項第6号を入れるものです*2。今回施行するのは、このうち(l)を削る部分です*1*2。
第118条が、職を消す条です*2。第1項は情報コミッショナーの職を廃止すると述べ、第3項から第7項がデータ保護法2018を改めます*2。第3条第8項の削除、第114条(情報コミッショナー)とその前の斜体の見出しの削除、第206条の定義索引からコミッショナーの項目の削除、第214条第1項(b)の削除、そして別表12(情報コミッショナー)の削除です*2。
個人データの扱いを監督する機関が制度として組み直される局面は、各国で形が違います。豪州が保健記録の執行を強めた例は保健記録の執行の仕組みで整理しました*2。
委員は3名以上14名以下、非執行が多数を占める
情報委員会の作られ方は、データ保護法2018へ挿入された別表12Aにあります*4。
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 第2項 | 委員の数は国務大臣が決める。3名以上14名以下。上限は規則で別の数に置き換えられる(否定決議手続) |
| 第3項 | 非執行の委員=国務大臣の推薦により国王が勅許状で任命する議長と、国務大臣が任命するその他の委員。執行の委員=非執行の委員が任命する最高執行責任者と、非執行の委員が任命するその他の委員 |
| 第3項 | 国務大臣は非執行の委員の任命の前に議長と協議し、非執行の委員は最高執行責任者の任命の前に国務大臣と協議する。執行の委員を置くかどうかと人数については、非執行の委員が最高執行責任者と協議する |
| 第4項 | 国務大臣は、非執行の委員の数が、実行可能な限り常に執行の委員の数より多くなるように、第2項と第3項の権限を行使しなければならない |
| 第1項 | 委員会は国王の使用人または代理人とはみなされず、国王の地位・免除・特権を享有するものともみなされない。その財産も国王の財産とはみなされない |
合議体へ移ること自体が、この改正の中心です*4。従来は一人の職に権限が集まっていました*2。それを議長と複数の委員からなる法人に置き換え、さらに非執行が執行を上回るという制約を条文で課しています*4。
国務大臣には直接の指名権もありますが、無条件ではありません*4。第3項第7号は国務大臣が指示により執行の委員の数の上限と下限を定めることができるとし、第3項第8号は委員会が非執行の委員の一人を議長の代理に任命できるとしました*4。
地位の規定も見落とせません*4。第1項が国王の使用人でも代理人でもないと明記したことで、国の機関としての免除や特権は及びません*4。独立の監督機関としての位置づけを、地位の面から書いた条文です*4。
任期は7年、同じ人が二度は務められない
人事の要件も、条文で細かく決められています*4。
| 項 | 内容 |
|---|---|
| 第5項 | 公正で開かれた競争により能力に基づいて選ばれた者でなければ、議長として推薦することも、委員として任命することもできない |
| 第6項 | 議長の推薦と非執行の委員の任命の前に、国務大臣は利益相反がないことを確認する。以後も随時確認し、必要と考える情報の提出を求められる。利益相反とは、委員としての職務の遂行に不利に影響しそうな財産上その他の利益をいう |
| 第7項 | 議長の任期は7年以内。延長しても通算7年を超えない。同じ人を2度は任命できない。本人の求めにより解任されうるほか、両院の上奏により国王が罷免できる |
| 第7項 | 上奏の動議は、国務大臣が、重大な非行、利益相反、情報提出の不履行、職務を果たせない・適さない・果たす意思がないのいずれかに該当すると認める旨の報告を提出した後でなければ行えない |
| 第9項 | その他の非執行の委員も任期は7年以内で、延長しても通算7年を超えず、再度の任命はできない。国務大臣と委員会への書面の通知で辞任でき、国務大臣は書面の通知により罷免できる |
再任を認めないという設計は、監督機関の独立性を人事の側から支える作りです*4。任期の延長はできても通算7年が上限で、期間が満ちたら別の人に替わります*4。
罷免の要件が四つに限られている点も同じ方向を向いています*4。重大な非行、利益相反、国務大臣が求めた情報を期限内に提出しなかったこと、そして職務を果たすことができない、適さない、または果たす意思がないことです*4。しかも議長については、国務大臣の報告と両院の上奏という二段の手続きが要ります*4。
副議長の扱いは第8項です*4。委員会への書面の通知で辞任でき、非執行の委員でなくなれば副議長でもなくなり、委員会が解任できます*4。
「情報コミッショナー」という語は、そのまま通じる
移行のいちばんの実務的な論点が、既存の文書に書かれた名称です*3。
第119条第1項は、情報コミッショナーの機能を情報委員会へ移転すると定めます*3。そのうえで第2項が読み替えの規定を置きました*3。第1項の結果として適切な限りにおいて、制定または作成の時期を問わず、法令その他の文書における情報コミッショナーへの言及は、表現のいかんを問わず、情報委員会への言及として扱われるという書き方です*3。
「その他の文書」まで含めた点が効いてきます*3。法令だけでなく、契約書、通知、社内の規程のように民間が作った文書も、この読み替えの対象として読めます*3。名称を書き換えなければ無効になる、という事態を避ける規定です*3。
第3項は「法令」の範囲を並べました*3。1978年解釈法第21条にいう従属法令に含まれる法令、ウェールズ議会のMeasureもしくは法律またはそれらに基づく文書に含まれる法令、スコットランド議会の法律またはそれに基づく文書に含まれる法令、北アイルランドの立法またはそれに基づく文書に含まれる法令、そして同化された直接法令です*3。連合王国の全域と、離脱後に引き継がれた法令まで届く範囲です*3。
進行中の事柄については、規則の第3条が受け皿を作りました*1。情報コミッショナーにより、または情報コミッショナーに関して行われた作為もしくは不作為、その他の事柄(法的手続きを含む)、および2026年9月30日の直前に行われつつあるものは、情報委員会により、または情報委員会に関して行われた、もしくは行われつつあるものとして扱われ、情報委員会が継続できるとされています*1。
会計だけは別扱いです*1。規則の第4条は、第118条が施行しても、2027年3月31日に終わる会計年度については、データ保護法2018の別表12第11項が情報コミッショナーの会計について引き続き適用されるとしました*1。ただし同項が情報コミッショナーへ課す義務は、情報委員会が果たします*1。年度の途中で組織が変わるための手当てです*1。
手元の文書で確認しておくこと
条文を実務へ落とすと、確認する点は四つに整理できます*1*3。
第一に、苦情や照会の宛先です*3。第119条第2項の読み替えにより、既存の記載がそのまま通じるとしても、実際の受付の窓口が変わるかどうかは別の問題です*3。英国の利用者へ案内している連絡先が、移行後も有効かを確認することになります*3。
第二に、契約書のデータ保護条項です*3。監督機関の名称を固有名詞で書いている条項、通知の宛先として定めている条項が対象です*3。読み替えで足りる場合が多いとしても、改訂の機会に合わせて現行の名称へそろえておくと、後の読み手が迷いません*3。
第三に、進行中の手続きです*1。規則の第3条により、2026年9月30日の直前に進行中のものも含めて継続できると定められています*1。照会や調査が係属している場合、手続きが振り出しに戻ることはありません*1。
第四に、関連する法令の参照です*3。データ保護法2018だけでなく、情報公開法や電子通信の規則など、情報コミッショナーを名指ししている法令は多岐にわたります*3。第119条第3項の範囲は広く取られているため、個別の法令ごとに改正を待つ必要はありません*3。
あわせて、条文の側の書き換えも別の規則で進んでいます*2。データ(利用およびアクセス)法2025(付随改正および経過規定)規則2026(SI 2026/386)が2026年3月26日に制定され、第117条、第118条、第119条第1項の結果として、各種の法令へ改正を行うものです*2。施行は原則として第119条が完全に施行されるときで、別表1の表に掲げられた規定は、対応する条項の施行と第119条の施行のいずれか遅い方に合わせて動きます*2。
同じデータ(利用およびアクセス)法2025から生まれた実務の枠組みは、監督機関の再編だけではありません。自動意思決定に関する実務規範の位置づけはAIと自動意思決定の実務規範で扱いました*2。
まとめ:英国の情報委員会への移行で押さえる3つの視点
英国では、データ(利用およびアクセス)法2025(第9次施行ならびに経過および留保の規定)規則2026が2026年9月10日に制定され、2026年9月30日に同法の第117条第4項(a)、第118条、第119条を施行します。押さえたい視点は三つあります。第一に、何が起きるか。第118条が情報コミッショナーの職を廃止し、データ保護法2018の第3条第8項、第114条とその見出し、第206条の定義索引の項目、第214条第1項(b)、別表12を削除します。第119条は情報コミッショナーの機能を情報委員会へ移転します。受け皿である情報委員会そのものは、2025年8月20日に施行した第117条がデータ保護法2018へ第114A条を挿入して法人として設立済みです。第二に、組織の形。データ保護法2018へ挿入された別表12Aにより、委員の数は国務大臣が決め、3名以上14名以下です。非執行の委員は勅許状で任命される議長と国務大臣が任命する委員、執行の委員は非執行の委員が任命する最高執行責任者ほかで、非執行の委員の数が実行可能な限り常に執行の委員より多くなるようにします。委員は公正で開かれた競争により能力に基づいて選ばれた者に限られ、議長もその他の非執行の委員も任期は7年以内で、再度の任命はできません。委員会は国王の使用人でも代理人でもなく、その財産も国王の財産とはみなされません。第三に、既存の文書の扱い。第119条第2項により、制定または作成の時期を問わず、法令その他の文書における情報コミッショナーへの言及は情報委員会への言及として扱われます。規則第3条は、2026年9月30日の直前に進行中のものを含めて情報委員会が継続できるとし、第4条は、2027年3月31日に終わる会計年度について別表12第11項を引き続き適用し、その義務は情報委員会が果たすと定めました。
よくある質問
いつから情報委員会になりますか。
2026年9月30日からです。データ(利用およびアクセス)法2025(第9次施行ならびに経過および留保の規定)規則2026の第2条が、同日に同法の第117条第4項(a)、第118条(情報コミッショナーの職の廃止)、第119条(情報委員会への機能の移転)を施行すると定めました。この規則は2026年9月10日に制定され、同法の第142条第1項および第143条第1項に基づいて作られています。なお情報委員会そのものは、2025年8月20日に施行した第117条によりデータ保護法2018へ挿入された第114A条で、すでに法人として設立されています。
契約書に書いた「情報コミッショナー」は書き換えが必要ですか。
法律上は、直ちに書き換えなくても通じます。データ(利用およびアクセス)法2025の第119条第2項は、第1項の機能の移転の結果として適切な限りにおいて、制定または作成の時期を問わず、法令その他の文書における情報コミッショナーへの言及を、表現のいかんを問わず情報委員会への言及として扱うと定めています。第3項の「法令」には、従属法令、ウェールズ議会、スコットランド議会、北アイルランドの立法とそれらに基づく文書、および同化された直接法令が含まれます。
委員会の構成はどうなりますか。
データ保護法2018へ挿入された別表12Aが定めています。委員の数は国務大臣が決め、3名以上14名以下です。上限は規則で別の数に置き換えられ、その規則は否定決議手続によります。非執行の委員は、国務大臣の推薦により国王が勅許状で任命する議長と、国務大臣が任命するその他の委員です。執行の委員は、非執行の委員が任命する最高執行責任者と、非執行の委員が任命するその他の委員です。第4項により、国務大臣は非執行の委員の数が実行可能な限り常に執行の委員の数より多くなるように権限を行使しなければなりません。
進行中の手続きはどうなりますか。
情報委員会が引き継ぎます。規則第3条は、情報コミッショナーにより、または情報コミッショナーに関して行われた作為もしくは不作為、その他の事柄(法的手続きを含む)、および2026年9月30日の直前に行われつつあるものを、情報委員会により、または情報委員会に関して行われた、もしくは行われつつあるものとして扱い、情報委員会が継続できるとしています。会計については規則第4条が別に定め、2027年3月31日に終わる会計年度についてはデータ保護法2018の別表12第11項が引き続き適用され、その義務は情報委員会が果たします。
外部の機関名を設定で持つ文書設計はLASSICへ
元請(プライムベンダー)として、通知文面の外部化・多言語の同期・締結済み文書の全文検索の設計をご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
出典
- *1 参考:英国法令データベース「The Data (Use and Access) Act 2025 (Commencement No. 9 and Transitional and Saving Provisions) Regulations 2026」(SI 2026 No. 1015 (C. 83)・2026年9月10日制定)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2026/1015/made)。施行の一次情報として。前文(データ(利用およびアクセス)法2025 第142条第1項および第143条第1項に基づく第9次の施行規則であること)、第2条(2026年9月30日に第117条第4項(a)、第118条、第119条が施行する旨)、第3条(情報コミッショナーにより、または情報コミッショナーに関して行われた作為・不作為その他の事柄(法的手続きを含む)と、同日の直前に行われつつあるものを、情報委員会のものとして扱い、情報委員会が継続できる旨)、第4条(第118条の施行にかかわらず、2027年3月31日に終わる会計年度についてデータ保護法2018 別表12第11項が引き続き適用され、その義務は情報委員会が果たす旨)、および説明覚書を確認した。確認日は2026年9月15日。(2026年9月確認)
- *2 参考:英国法令データベース「The Data (Use and Access) Act 2025 (Consequential Amendments and Transitional Provision) Regulations 2026」(SI 2026 No. 386・2026年3月26日制定)(https://www.legislation.gov.uk/uksi/2026/386/made)。付随改正の一次情報として。前文(データ(利用およびアクセス)法2025 第139条第1項・第2項に基づき、第139条第5項および第140条第2項・第4項に従って草案が両院の決議で承認されたこと、第117条・第118条・第119条第1項が情報委員会を法人として設立し情報コミッショナーの職を廃止して機能を移転することの結果として各種の法令へ改正を行うものであること、第67条および第91条に伴う軽微な改正と、情報コミッショナーの職にある者に関する年金の経過規定を含むこと)、ならびに第1条(第119条が完全に施行されるときに施行すること、別表1の表に掲げる規定は対応する条項の施行と第119条の施行のいずれか遅い方に合わせる旨)を確認した。確認日は2026年9月15日。(2026年9月確認)
- *3 参考:英国法令データベース「Data (Use and Access) Act 2025」第117条・第118条(情報委員会の設立と職の廃止)(https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2025/18/section/118)。改正の一次情報として。第117条(データ保護法2018への第114A条の挿入と法人としての情報委員会の設立、別表12Aの位置づけ、第3条第8A項の「委員会」の定義、第205条第2項の(l)の削除と(la)の追加、第206条の定義索引への追加、別表14が別表12Aを挿入し経過規定を設ける旨、ならびに第4項(a)を除いて2025年8月20日にSI 2025/904 第2条(r)により施行済みである旨)、および第118条(情報コミッショナーの職の廃止と、これに伴うデータ保護法2018の第3条第8項、第114条およびその見出し、第206条の索引の項目、第214条第1項(b)、別表12の削除)を確認した。確認日は2026年9月15日。(2026年9月確認)
- *4 参考:英国法令データベース「Data (Use and Access) Act 2025」第119条・別表14(機能の移転と情報委員会の組織)(https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2025/18/section/119)。移転と組織の一次情報として。第119条第1項(機能の移転)、第2項(制定または作成の時期を問わず、法令その他の文書における情報コミッショナーへの言及を情報委員会への言及として扱う旨)、第3項(「法令」に従属法令、ウェールズ議会のMeasureまたは法律とそれらに基づく文書、スコットランド議会の法律とそれに基づく文書、北アイルランドの立法とそれに基づく文書、同化された直接法令を含む旨)、ならびに別表14第1項が挿入するデータ保護法2018 別表12A(第1項の地位、第2項の3名以上14名以下という人数と規則による置換、第3項の非執行・執行の構成と協議、第4項の非執行が執行を上回る要請、第5項の能力に基づく公正で開かれた競争、第6項の利益相反とその定義、第7項の議長の7年以内の任期・再任の禁止・両院の上奏による罷免と国務大臣の報告の4つの事由、第8項の副議長、第9項のその他の非執行の委員の任期と罷免)を確認した。確認日は2026年9月15日。(2026年9月確認)