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2026.09.28 採用支援コラム

業務委託エンジニアと進めるクラウド移行、移行計画に書く6つの項目




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • クラウド移行の移行計画は、業務・システム・データの3つの移行を対象に、移行方式を決めてから書き始めます。
  • 移行計画書の案やデータ変換の設計は業務委託エンジニアに任せ、関係者との調整と、切り替えても業務に支障がないかの判断は社内に残します。
  • 移行判定の基準と、うまくいかないときに元のシステムに戻す条件は、誰が見ても同じ判断になる書き方で移行計画に書きます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

クラウド移行を業務委託エンジニアに手伝ってもらうことになったが、移行計画に何を書けばよいのか社内で答えられない。委託先から移行計画書を受け取ったものの、どこを確かめればよいのか分からない——。自社でサーバーを持って動かしてきたシステムをクラウドへ移す案件では、こうした戸惑いが起こりがちです。クラウド移行の移行計画とは、新しい環境で業務を始めるまでに要る切替えの作業を、対象、方法、体制、日程まで書き出した計画のことです。

デジタル庁の標準ガイドラインは、政府の情報システムについて、移行計画書の案を開発の請負先に作らせ、発注する側が確かめる手順を定めています。民間の案件でも、委託先に何を書いてもらい、社内で何を決めるかを分ける手がかりになります。ただし万能ではなく、手順をそのまま当てはめると文書が増えすぎることもあります。本記事では、開発の現場を回すマネージャーに向けて、移行計画の前に決める移行方式、移行計画に書く6つの項目、業務委託エンジニアに任せる作業と社内に残す判断、そして移行判定と切り戻しの決め方を整理します。

打ち合わせ室の木目の机を囲んで並ぶ、オレンジ色の布張りの椅子を写した写真。人も文字も写っていない

クラウド移行の移行計画とは

デジタル庁の標準ガイドラインには、手順を詳しく説明した解説書があり、移行を「業務移行」「システム移行」「データ移行」の3つに大別しています。業務移行は、いまの業務から新しい業務のやり方に切り替える作業で、切替えの時期や期間、拠点、方法を決めて計画します。システム移行は、本番環境を整えて利用者が使える状態にする作業で、古いシステムの停止や、連携先のシステムの接続先を新しいシステムに切り替える作業も含みます。データ移行は、いまのシステムが持つデータを変換して新しいシステムに入れる一連の作業です。

解説書は、移行ではデータ移行が注視されがちだが、業務とシステムの移行も欠かせないと書いています。連携先のシステムや、新しい画面で仕事をする担当者まで含めて計画しておかないと、データは移ったのに業務を始められません。

移行計画書は、一度で完成させる文書ではありません。解説書は、移行の対象や方法、体制と役割、必要な環境とツール、準備作業と実際の移行作業の内容と日程を書いたものを「移行計画書の案」と呼んでいます。開発やテストで変更が入ることを前提に、設計の段階では案を作り、遅くともデータ移行、環境整備、本番移行の各段階を始める前に、発注する側が確定させるとしています。*2

なぜ移行方式を先に決めるのか

移行計画の中身は、クラウドへの移り方で大きく変わります。デジタル庁の「政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」は、クラウドへの移り方として、システムを作り直して全面的にモダン化(新しい技術や考え方を取り入れて作り替えること)する「全面的な刷新」と、一部をマネージドサービス(クラウド事業者が運用まで担うサービス)に置き換える「基盤の変更」を挙げています。

同じ方針は、移行を2回に分ける「二段階移行」を、移行作業が2回になって総費用が増えるおそれがあるとして、できる限り避けるよう求めています。それでもアプリケーションの改修を最小限にしてインフラだけをクラウドに移すしかない場合は、それを第一段階とし、アプリケーションも含めた第二段階の刷新を最初から計画しておくとしています。先に挙げた「基盤の変更」は、この第一段階に当たります。大規模で難しいシステムについては、サブシステムなどの単位に分け、優先度を決めて順に刷新するよう求めています。*3

この方式は、移行計画を立てる前に社内で決めておきます。一度で移すのか、二段階で移すのか、サブシステムごとに順に移すのかが決まっていなければ、移行計画書に書く対象も日程も決められません。基本方針は、刷新ではいまのシステムの機能や作りをそのまま引き継ぐことを前提にせず、「データ移行のある新規システム」として考えるよう求めています。*3 いまの仕様は参考にとどめて新しい仕様で作り、そこへ必要なデータだけを移すという考え方です。

移行計画に書く6つの項目

移行計画書を確かめる観点として、解説書は表7-5「移行計画書の確認観点の例」で、移行データ調査、移行データ整備、本番環境構築、移行リハーサル、移行判定、本番切替えの6つの確認項目を挙げています。*2 解説書が確かめるとしている点を、移行計画に書いておく内容として並べると、次のようになります。

移行計画に書く6つの項目(DS-110 表7-5の確認観点をもとに整理)
項目 書いておく内容
移行データ調査 いまのシステムのファイルとデータの形式、使っているコード体系(社員番号や商品番号などの付け方)、外字(通常の文字コードに無い、個別に作った文字)の使用、不備のあるデータの有無。移すデータを確定する手順
移行データ整備 データを過不足なく変換する手順、不備のあるデータの直し方、新しいシステムで増えるデータ項目に入れる値、件数や合計値による整合性の確かめ方、移行データの機密を守る対策
本番環境構築 本番環境に用意する資源、構築の手順、各手順の作業量と期間の見積り、発注側と委託先の体制と役割
移行リハーサル 作業量と移行にかかる時間の見積り、リハーサルに使うデータと環境、発注側の関わり方、見つかった問題の扱い
移行判定 判定する項目、客観的で曖昧さのない判定基準、基準を満たさないときのやり直しの手順
本番切替え 切替えの手順、業務に支障が出ない方式か、切替えがうまくいかないときに元に戻す条件と方法

クラウドでは機器の搬入はありませんが、ネットワークやサーバーの設定、疎通テスト(システム同士がつながるかの確認)の作業に過不足がないかは同じように確かめます。表7-5では、どの項目にも「リスクが網羅的に挙げられ、対応策等が整理されているか」という確認の観点が並んでいるので、項目ごとに起こりうる問題と対応策を書き添えておきます。

解説書は移行リスクの例として、移行作業中に利用者へのサービスが止まる期間が出ること、システム方式の変更で連携先のシステムからアクセスできなくなること、データ移行で一部のデータが失われることを挙げています。*2 クラウド移行ではシステムの置き場所が変わるので、連携先のシステムの接続設定をいつ、誰が変えるかも移行計画に書いておきます。

業務委託エンジニアに任せる作業

標準ガイドラインの手順では、移行計画書の案を作るのは設計・開発の請負先です。発注する側は、その案が要件定義(システムに求めることを決めた文書)と合っているかを確かめ、移行リスクを下げるために、連携先のシステムの担当など関係する機関や事業者と調整します。移行に要るデータ変換やツールの設計、移行手順書の作成も請負先に求める作業です。*1 業務委託エンジニアに頼む場合も、この分け方がそのまま使えます。

移行計画書の案から本番切替えまでの7つの段階と、主に担う側を示した図。1. 設計の段階で移行計画書の案を作る(委託先が作り、社内が確かめる)、2. 開発・テストの段階で移行ツールと移行手順書を作る(委託先が作り、社内が承認する)、3. 移行計画書を確定する(社内が関係者と調整する)、4. リハーサルを複数回行う(委託先が行い、社内が結果を確かめる)、5. 移行判定で3つの条件を確かめる(社内)、6. 本番移行と、例外データを含むデータの確認(両者で協力)、7. 稼働判定と本番切替え(社内が判定し、両者で切り替える)。出典はデジタル庁「DS-100 デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」第3編第7章。

一方で、社内に残す判断があります。一つは関係者との調整で、解説書は、移行計画書を作るにあたり、いまの委託先やシステムの利用者と調整し、現在の業務とシステムの状況を十分に把握するよう求めています。もう一つは稼働判定、つまり新しいシステムに切り替えても業務に支障が出ないかの判断です。解説書は、業務移行は請負先では最終的な確認ができないため、職員による稼働判定が欠かせないとしています。*2 民間の会社なら、業務を担う部門の社員がこの判断に加わります。

データ変換にも社内の手が要ります。解説書によれば、データ変換にはコード値(区分を表す番号)の付与や重複データの統合・除去などさまざまな作業があり、機械的な変換だけでなく、発注側の職員が確認や修正をする場合もあります。どのデータを移し、どの古いデータを移さないかは、業務を知る社内の担当者が決めます。

移行手順書の書き方も、委託先に伝えておきたい点です。解説書は、移行手順書を、作業の経験や担当者のスキルに左右されず、誰がやっても間違えずに作業と確認ができる書き方にするよう求めています。手順書は、業務委託エンジニアの契約が終わったあとも社員が読んで作業できる形で受け取ります。

誰に頼むかにも注意が要ります。基本方針は、刷新の費用の見積りは、マネージドサービスを使った構成などのモダン技術に詳しい事業者に頼むことが欠かせないとし、そうでない事業者の見積りは従来の方式を守るためのものが多く、正しい意思決定を妨げるとしています。*3 業務委託エンジニアを選ぶときは、マネージドサービスを使った移行の経験を確かめておきます。

移行判定と切り戻しの決め方

本番の移行を始めてよいかを決めるのが移行判定です。標準ガイドラインは、次の3つの条件をすべて満たす場合に限り、本番移行を始めるとしています。*1

  • 受入テスト(発注側が行う最後の確認のテスト)で、要件定義に沿った内容で、設定した品質基準をすべて満たしたと認められる
  • 指定されたプロジェクトでは、第三次工程レビュー(政府の管理組織が移行の前に行う審査)で問題なく妥当と判断される
  • 移行計画書の内容とリハーサルの結果が適正と判断される

2つ目の審査は政府の仕組みなので、民間の案件なら、社内のシステム部門の責任者による確認の場に置き換えます。リハーサルは、できる限り本番と同じ環境とデータを使い、本番と同じ手順と日程で行う予行演習です。解説書は、リハーサルを複数回計画して実行し、結果を見て手順やツールを直したうえで、もう一度リハーサルで確かめるよう求めています。*2

切り戻し(新しいシステムへの切替えをやめて元のシステムに戻すこと)の条件と方法も、移行計画の段階で決めておきます。表7-5も、切戻しの条件と方法が明確か、移行判定の基準に曖昧さがないかを確認の観点に挙げています。たとえば「決めた時刻までに主要なデータの照合が終わらなければ元のシステムに戻す」のように、誰が見ても同じ判断になる書き方にしておきます。

移行方式の選び方は「クラウド移行戦略と移行方式の選び方」で、本番切替えの当日の段取りは「システム移行のカットオーバー計画」で扱っています。

つまずきやすい点

一つ目は、いまのシステムの規模をそのまま前提に計画を立ててしまうことです。基本方針は、多数の画面や帳票、大量のバッチ処理(まとめて自動で行う処理)で大きくなったシステムの規模を前提に見積りを取ると、非常に高額になり刷新の計画自体が頓挫してしまうとしています。*3 画面や帳票、バッチ処理を減らせないかを先に検討してから、移行計画を書きます。

二つ目は、移したデータの確認を移行ツールの結果だけで済ませることです。標準ガイドラインは、データを変換・移行したあとは、移行後のデータだけでなく例外データなども確認するよう求めています。*1 解説書は、手作業で入れたり直したりしたデータも確認の対象とし、複数の関係者で作業を分けるときは確認に漏れが出ないよう配慮するとしています。業務委託エンジニアと社員で作業を分けるなら、どのデータを誰が確かめるかを表にしておきます。

三つ目は、文書を作ること自体が目的になってしまうことです。基本方針は、使われない大量の文書に工数と期間を割くのではなく、クラウドではまず実機の環境で作ってみて、試行錯誤と評価のあとに確定した内容だけを必要な文書として納品物にすることが重要だとしています。*3 移行計画書も、自社の案件で要る項目から書き始め、リハーサルの結果を見て書き直していくとよいでしょう。

まとめ:移行計画で確かめておきたい3つの点

業務委託エンジニアとクラウド移行の移行計画を立てるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、一度で移すのか、二段階で移すのか、サブシステムごとに移すのかという移行方式を、移行計画書を頼む前に社内で決めること。第二に、移行データ調査から本番切替えまでの6つの項目を移行計画に書き、移行計画書の案やデータ変換の設計は委託先に任せつつ、関係者との調整と業務の稼働判定は社内に残すこと。第三に、移行判定の基準と切り戻しの条件を、誰が見ても同じ判断になる書き方で決め、リハーサルを繰り返して確かめることです。この3点を踏まえておけば、「データはクラウドに移ったのに、連携先のシステムがつながらず業務を始められない」という事態を避けやすくなります。移行計画の立て方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

移行計画書の案やデータ変換の設計を任せられる人が、社内にいないことがあります。クラウドの構成と移行の作業を経験した専門人材に、業務委託で開発に加わってもらう方法も選べます。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

民間企業のクラウド移行でも、デジタル庁のガイドラインに従う必要がありますか

従う義務はありません。標準ガイドラインは政府情報システムの整備と管理で遵守するルールとして定められ、解説書は参考とする文書と位置づけられています。*1 民間の案件では、移行計画書の項目や確認の観点を、社内の手順を作るときの下敷きとして使う形になります。

移行計画書と移行手順書は、どう違いますか

移行計画書は、移行の対象や方法、体制と役割、環境とツール、作業の内容と日程をまとめた計画です。解説書は、計画書と手順書のあいだに「移行要領」という文書を置き、移行計画書の案をもとに手順書を作るうえで守るルールをまとめたものとしています。移行手順書は、移行作業の項目ごとに、作業の手順と確認する内容を書いたものです。

クラウドとオンプレミスを併用したまま運用してもよいですか

基本方針は、クラウドとオンプレミス(自社でサーバーを持つ形)を組み合わせてデータを処理・保存する形は、システムが複雑になり費用も高くなるとして、避けるよう求めています。*3 ただし、オンプレミスからクラウドへの移行期、データを複数の場所に重ねて保管する場合、ネットワークの遅れを許容できない処理がある場合は例外としています。移行の途中で一時的に併用するのは、この例外に当たります。

移行の作業で分かったことは、運用を担う委託先にも伝えるべきですか

伝えておきます。標準ガイドラインは、設計・開発の請負先に対し、運用と保守の担当者へ設計書、作業の経緯、残っている課題を引き継ぐよう求めています。移行を担当した業務委託エンジニアと運用を担う担当者が別の場合は、移行の結果と残った課題を文書で受け渡す時期を、移行計画の日程に入れておくと漏れを防げます。

クラウド移行を任せる人を探したいとき

移行計画書の案づくりからデータ移行の作業まで、担える人材の確保をご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

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出典

  1. *1 参考:デジタル庁「DS-100 デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」(PDF)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/54d8725e/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_01.pdf)。出典:2026年6月12日 デジタル社会推進会議幹事会決定。ドキュメントの位置付け、第3編第7章4.4)「移行の計画・設計」、5.3)「移行ツールの実装及び移行データ・移行手順書等の作成」、8.「移行の実施・管理」、9.「引継ぎ」を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:デジタル庁「DS-110 デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン解説書」(PDF)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/50952dae/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_03.pdf)。出典:2026年6月12日版。第7章4.の解説(10)〜(13)(移行の定義、移行計画書の案、移行リスク、データ変換)、5.の解説(3)(移行要領・移行手順書)、8.の趣旨と解説(1)〜(3)、表7-5「移行計画書の確認観点の例」を参照(2026年9月確認)
  3. *3 参考:デジタル庁「DS-310 政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針」(PDF)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/a612d406/20250619_resources_standard_guidelines_guideline_08.pdf)。出典:2025年5月27日 デジタル社会推進会議幹事会決定。1.4 表1-1(モダン化、マネージドサービス、Rebuild、Replatform)、3.4 マルチクラウド等について、3.5 1)〜2)、3.9 1)(二段階移行、一括刷新、データ移行のある新規システム)、3.9の図3-3の説明を参照(2026年9月確認)




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