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2026.09.04 採用支援コラム

類似プロジェクトの参照の割合|設計書が少ない案件の引き継ぎ方

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

層状の曲面が重なる抽象的な画

この記事の結論

  • IPAの集計では、自社内の類似プロジェクトを参照して開発した案件の割合は71.1%です。
  • 開発方法論(設計を進める決まった手順)を使っていない案件は43.9%で、4割強を占めます。
  • 案件を引き取る前に、開発のほかにプロジェクト管理や品質保証、移行が含まれていないかを確かめます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

担当者が辞めた案件を引き継ぐことになったが、設計書が少なく、どこから読めばよいか分からない。社内に似た案件があったはずなのに、誰に聞けばよいのかも分からない——。開発の現場では、担当者が抜けた案件の引き継ぎで、こうした戸惑いが起こりがちです。類似プロジェクトの参照とは、新しい案件を開発するときに、自社内で過去に手がけた似た案件の設計や進め方を参考にすることです。

IPAの集計では、開発のときに社内の似た案件を参照した案件が7割強にのぼります。引き継ぐ側が、参考にできる前例を社内で探せる場合が多いということです。ただし万能ではなく、似た案件が社内にあっても、その資料が引き継ぎに使える形で残っているとは限りません。本記事では、担当者が抜けた案件を引き取る開発責任者や採用の担当者に向けて、類似プロジェクトを参照する割合、開発方法論やフレームワークを使う割合、案件に含まれる作業、そして引き取る前に確かめたい点を整理します。

類似プロジェクトの参照とは

IPA(情報処理推進機構)の「ソフトウェア開発分析データ集2022」は、企業から集めた開発プロジェクトのデータを分析した資料です。これまでに収集した5,546プロジェクトの数値データから分析したと記されており、公開は2022年9月26日、最終更新は2025年8月28日です。*1 類似プロジェクトの参照は、この資料の本編A3.2節で、案件の性質を表す項目の一つとして集計されています。

IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」の図から作成した図。公開2022年9月26日・最終更新2025年8月28日、これまでに収集した5,546プロジェクトから分析されており事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されていること、本編A3.2節が主要なプロファイル以外のその他のプロジェクトプロファイルと位置づけられていること、件数と比率は本編の図に示された値で合計と割合は図の値から計算したこと、図ごとにNが違い738から1382まであり同じプロジェクトの集合ではないこと、Copyright 2022 IPAであること、案件の中身を示す5つのプロファイルとして自社内の類似プロジェクトの参照が71.1%で552件のN776で前回値69.4%・開発フレームワークの利用が60.7%で632件のN1042で前回値59.7%・開発方法論の利用が56.1%で414件のN738で前回値はほぼ同じ・業務パッケージの利用が14.0%で194件のN1382で前回値15.1%・新技術の利用が8.6%で90件のN1050で前回値は同様であること、開発方法論の56.1%はなし324件を除いた414件から計算した値で本編は6割弱と記していること、開発方法論の内訳はなしが43.9%の324件・構造化分析設計が20.5%の151件・オブジェクト指向分析設計が17.8%の131件・データ中心アプローチが11.2%の83件・その他が6.6%の49件であること、図A3-2-1の作業概要は件数だけで分母が示されておらず複数回答であることとソフトウェア開発1458件・プロジェクト管理931件・品質保証641件・移行554件・インフラ構築308件・現地の環境構築と調整281件・保守270件・運用構築194件・顧客教育125件・業務支援124件・コンサルティング5件・その他具体的作業3件であること、本編がほとんどがソフトウェア開発を含んでおり約10割で次いでプロジェクト管理が6割強と記しており図にも本文にも分母は書かれていないこと、引き取る前に見る6つはどの作業を含む案件かを数え社内に参照した前例があるか探し方法論に依っているかを確かめフレームワークの有無を確かめ業務パッケージの有無を確かめ新しい技術を使っているか確かめることであること、開発だけを引き取るつもりでいると管理と品質保証と移行が漏れること、この集計から読めないのは作業概要の分母・どの方法論が引き取りやすいか・参照した前例が残っているか・使ったフレームワークの種類・項目どうしの組み合わせ・2022年より後の傾向であること、図表の対応はA3-2-1がデータ白書2018の図表4-2-6でA3-2-2が4-2-9でA3-2-3が4-4-2でA3-2-4が4-5-2でA3-2-5が4-5-3でA3-2-6が4-5-4であることをまとめた図

A3.2節は、案件の特徴を示す項目のうち主要なもの以外を集めた節で、本編では「その他のプロジェクトプロファイル」と呼ばれています。ここに6つの図が並んでいます。作業概要、新技術の利用、業務パッケージの利用、類似プロジェクトの参照、開発方法論の利用、開発フレームワークの利用です。*2 どれも規模や、かかった人数と時間ではなく、案件がどう作られたかを尋ねた項目です。引き継ぐ側が、プログラムを読む前に何を確かめておくかを考える材料になります。

注意したいのは、図ごとに答えた案件の数(N)が違うことです。いちばん少ない開発方法論は738件、いちばん多い業務パッケージは1,382件で、差は600件を超えます。同じ案件の集まりではないので、項目どうしの割合を引き算して比べることはできません。

類似プロジェクトを参照する割合

本編の図A3-2-4によると、自社内の類似プロジェクトを参照した案件は552件、参照しなかった案件は224件でした。Nは776で、参照した案件の割合は71.1%、参照しなかった案件は28.9%です。*2 2014年度から2019年度の集計では69.4%で、今回とほぼ同じ水準です。社内の前例を見ながら作る進め方は、この間に大きく変わっていません。

担当者が辞めていても、同じような構成の別の案件の設計書を読んだり、その案件に詳しい人から話を聞いたりできれば、設計の考え方をつかむ手がかりが得られます。引き継ぎが決まったら、担当者がまだ社内にいるうちに、どの案件を参考にしたのかを聞いておくと進めやすくなります。

一方で、3割弱にあたる224件は、社内の前例を参照せずに作られています。こうした案件では、参考にできる社内の案件がありません。引き継ぐ側は、残っている設計書とプログラムそのものから読み解くことになるため、引き継ぎにかける期間を長めに見ておくのが無難です。社内に知識を移す進め方は、内製化支援をナレッジ移転と伴走で進める方法で扱っています。

開発方法論はどれくらい使われているか

開発方法論とは、分析や設計をどのような手順と考え方で進めるかを定めた型のことです。本編の図A3-2-5は、開発方法論の利用を5つの区分で示しており、Nは738です。最も多かったのは「なし」で、324件、43.9%でした。使っている側では、構造化分析設計が151件で20.5%、オブジェクト指向分析設計が131件で17.8%、データ中心アプローチが83件で11.2%、その他が49件で6.6%です。*2

3つの方法論の違いを簡単に書くと、構造化分析設計は処理を段階に分けて設計する方法、オブジェクト指向分析設計はデータと処理をひとまとまりの単位として設計する方法、データ中心アプローチは扱うデータの構造から設計する方法です。

使っている側を合わせると414件で、Nの738件で割ると56.1%になります。2014年度から2019年度の集計とも、ほぼ同じ水準です。*2

引き継ぐ側から見ると、注意が要るのは「なし」の4割強です。決まった型に沿って作られていれば、同じ型を知っている人を担当に充てることで、設計の意図を推測しやすくなります。型のない案件では、設計の意図を推測できず、設計の考え方を一つずつ担当者や資料で確かめていくことになります。担当者が足りないまま古いシステムの刷新に取りかかった場合の集計は、レガシー刷新を止めるのは理解不足ではなく要員の不足で扱っています。

フレームワーク・業務パッケージ・新技術

開発フレームワークは、プログラムの骨組みや共通の処理をあらかじめ用意した土台です。図A3-2-6では、利用した案件が632件、利用しなかった案件が410件でした。Nは1,042で、利用した案件の割合は60.7%、利用しなかった案件は39.3%です。*2 2014年度から2019年度の59.7%とほぼ同様です。

引き継ぐ側から見ると、6割の案件ではプログラムの土台となる仕組みが決まっていることになります。使っているフレームワークの書き方に慣れた人が担当すれば、プログラムを読む速さが上がることが期待できます。どのフレームワークを使っているかは案件ごとに違うので、引き継ぎの最初に名前を確かめ、それを使った経験のある人を探します。

業務パッケージは、会計や販売管理といった業務向けにあらかじめ作られたソフトウェア製品です。図A3-2-3では、業務パッケージを利用した案件は194件、利用しなかった案件は1,188件でした。Nは1,382で、利用した案件は14.0%、利用しなかった案件は86.0%です。*2 2014年度から2019年度の15.1%とほぼ同様の水準です。パッケージの上に作られた案件では、製品の設定で済ませた部分と、独自にプログラムを書き足した部分を分けて読むことになります。

新技術の利用は、図A3-2-2で90件、8.6%でした。利用していない案件は960件で91.4%、Nは1,050です。*2 2014年度から2019年度の集計と同様の水準です。9割強の案件は新しい技術を使っていないので、引き継ぐ側が一から学ぶ技術は、多くの案件で限られます。

案件に含まれる作業

本編の図A3-2-1は、開発プロジェクトに含まれる作業を12の区分で示しています。最も多いのはソフトウェア開発の1,458件で、プロジェクト管理が931件、品質保証が641件、移行(古いシステムから新しいシステムへの切り替え)が554件と続きます。*2 ほかに、インフラ構築(サーバーやネットワークの準備)が308件、現地の環境構築と調整が281件、保守が270件、運用構築が194件、顧客教育が125件、業務支援が124件、コンサルティングが5件、その他の具体的な作業が3件です。

この図は、1つの案件が複数の作業を含む集計(複数回答)で、件数だけが示されています。分母は図にも本文にも書かれていないため、件数から割合を計算することはできません。本編は、ほとんどの案件がソフトウェア開発を含み、次いでプロジェクト管理を含むものが6割強としています。*2

件数の大小を見ると、開発以外の作業も多くの案件に含まれていることが分かります。プロジェクト管理、品質保証、移行は、いずれも数百件にのぼります。引き継ぎの話はプログラムから始まりがちですが、実際に引き取るのは、テストの計画や実際に業務で使う環境への切り替えの手順、進み具合の管理まで含めた仕事になる場合があります。移行を委託する進め方はシステム移行・データ移行を外注する進め方で、同じ資料から外部に委託した工数の割合を見た記事は外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場で扱っています。

引き取る前に確かめる6つの点

ここまでの集計を引き継ぎの手順に置き換えると、確かめる点は6つになります。1つ目は、案件にどの作業が含まれるかです。開発のほかに、プロジェクト管理、品質保証、移行が含まれていないかを確かめます。2つ目は、社内に参照した前例があるかです。担当者がいるうちに、参考にした案件の名前と、その案件に詳しい人を聞いておきます。

案件の中身を示す5つの項目(IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」図A3-2-2〜図A3-2-6をもとに作成。開発方法論の56.1%は図の件数から計算。図ごとにNが違う。Copyright 2022 IPA)
項目 当てはまる案件の割合 件数 N 2014〜2019年度の集計
自社内の類似プロジェクトの参照 71.1% 552 776 69.4%
開発フレームワークの利用 60.7% 632 1,042 59.7%
開発方法論の利用 56.1% 414 738 ほぼ同じ
業務パッケージの利用 14.0% 194 1,382 15.1%
新技術の利用 8.6% 90 1,050 同様

3つ目は開発方法論、4つ目は開発フレームワークです。どちらも、使っていれば同じものを知る人を担当に充てられ、設計の意図やプログラムの書き方を推測しやすくなります。5つ目は業務パッケージの有無です。パッケージの上に作られていれば、製品の設定と、独自に書き足したプログラムを分けて確かめます。6つ目は新しい技術の有無です。多くの案件は既に知られた技術で作られているので、新しい技術を使った箇所があれば、そこを先に書き出しておきます。

順番にも理由があります。含まれる作業が分からないと、どの資料を読めばよいかが決まらないためです。開発だけを引き取るつもりでいたのに、移行や品質保証まで引き受けることになった、という食い違いは、1つ目の確認で防げます。

外部に委託するときに確認しておきたい点

6つの点を確かめる作業は、担当者への聞き取りと、資料の読み込みに分けられます。何を確かめるかを決め、担当者から話を聞くのは、案件の事情を知る社員が行うほうが確実です。一方で、設計書やプログラムを読み込み、使われている技術や含まれる作業を一覧にする作業は、外部の専門人材に任せることもできます。

委託するときは、何をいつまでに任せるかを作業名と期間で伝えます。たとえば「既存の設計書とプログラムから、使っているフレームワークと業務パッケージの一覧を作る。期間は1か月」のように書けば、委託先も必要な経験を判断しやすくなります。引き継ぎの数か月だけ人を増やし、引き継ぎが終わったら社員だけで担当する使い方であれば、フリーランスを含む業務委託が合います。

まとめ:案件を引き取る前に確かめておきたい3つの点

担当者が抜けた案件を引き取る準備をするうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、社内に参照した前例があるかを、担当者がいるうちに聞いておくこと。第二に、開発方法論とフレームワークを使っているかを確かめ、同じものを知る人を担当に充てること。第三に、開発のほかにプロジェクト管理や品質保証、移行が含まれていないかを、最初に確かめることです。この3点を踏まえておけば、「プログラムだけ引き継いだつもりが、移行の手順まで任されていた」という事態を避けやすくなります。引き継ぎの進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

確かめる点が決まったら、次は資料の読み込みや一覧づくりを誰に任せるかを決めることになります。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

ソフトウェア開発分析データ集2022は、今後更新されますか

更新の予定はありません。IPAは、事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記しています。*1 2022年までの集計として、自社の案件と比べる目安に使います。

この資料には、どのようなデータが集められていますか

IPAは2005年から、企業の業務システムを中心とするエンタプライズ分野の開発データを集めてきました。2020年に書籍版の名称を変えて、現在の分析データ集の形になっています。*4 本編のほかに、業種編3編、サマリー版、マンガ解説版、グラフデータも公開されています。

集計の数値を社内の資料に使うときに、気をつけることはありますか

IPAが定める使用条件に従います。グラフデータの著作権はIPAが保有しており、使用条件では著作権表示の明記が求められています。*3 引用するときは「Copyright 2022 IPA」の表示を添えておきます。

過去のデータ白書の図と比べることはできますか

本編には、各図が過去のデータ白書2018のどの図表に対応するかが注記されています。類似プロジェクトの参照(図A3-2-4)は図表4-5-2、開発方法論(図A3-2-5)は図表4-5-3、作業概要(図A3-2-1)は図表4-2-6に対応します。*2

案件の引き継ぎを相談したいとき

引き取る前に何を確かめるかの整理からご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。出典:公開日・最終更新日、5,546プロジェクトから分析したこと、事業終了に伴い今後の発行予定はないことの記述を参照(2026年9月確認)
  2. *2 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。出典:A3.2節の図A3-2-1〜図A3-2-6の件数・比率とIPAの記述、データ白書2018との図表の対応を参照(2026年9月確認)
  3. *3 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022グラフデータ」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000103288.zip)。出典:同じ図の値の確認と使用条件を参照。著作権はIPAが保有(Copyright 2022 IPA)(2026年9月確認)
  4. *4 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/index.html)。出典:業種編3編・サマリー版・マンガ解説版・グラフデータという構成と、2005年からのデータ収集の沿革を参照(2026年9月確認)




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