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devops導入コスト削減効果の進め方と実践ポイント
LASSIC IT事業部|プライムベンダーとしてシステム保守・運用を受託

この記事のポイント
- DevOps導入は、リリース工程の自動化と運用監視の標準化により、開発リードタイムと障害復旧時間の短縮を同時に狙える。
- DORA「State of DevOps Report 2024」(世界の実務者3万9千人超が対象)によれば、最上位(エリート)層はオンデマンドでのデプロイと1日未満の変更リードタイムを実現していると報告されている。
- 内製のみで進めるか外注を併用するかは、CI/CD整備状況・運用標準化の進捗・人材確保リードタイムの3点で判断するのが現実的である。
目次
DevOps導入とは、開発と運用を一気通貫で自動化し、変更速度と安定性を両立する取り組み
DevOps導入とは、開発(Development)と運用(Operations)の組織・プロセス・ツールを一気通貫でつなぎ、リリースの自動化と運用監視の標準化を進めることで、変更速度と安定性を同時に高める取り組みを指す。DORA「Accelerate State of DevOps Report 2024」(世界の実務者3万9千人超を対象とした2024年版調査)では、最上位(エリート)層はオンデマンドでのデプロイ、1日未満の変更リードタイム、1時間未満の障害復旧を実現していると報告されている*1。
DevOpsは特定のツールを指す概念ではない。CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)、構成管理、監視・観測性、インシデント対応など複数のプラクティスの集合体である。コスト削減効果は、これらを業務に組み込み、人手作業を減らすことで生まれる。
コスト増を招く3つの状況:手作業デプロイ・属人化監視・障害対応の長期化

DevOps導入を検討する現場では、以下のような運用コストの増加を抱えていることが多い。
状況1:手作業デプロイで夜間・休日対応が常態化する
本番リリースを手作業で行う運用では、リリース時の確認・切戻し手順が属人的になる。夜間・休日の対応が常態化し、運用要員の負担が積み上がる。リリース回数が増えるほど人件費が増える設計となっている点が課題である。
状況2:監視・障害対応が属人化し復旧時間がばらつく
監視ダッシュボード・アラート閾値・障害対応手順がエンジニア個人の経験に依存していると、対応者によって復旧時間が大きくばらつく。重要システムでは、復旧時間のばらつきが事業損失につながる。
状況3:変更失敗時の影響範囲が把握できない
リリース後の不具合発覚時、どのバージョン・どのコミットが原因かを切り分けるのに時間がかかる状況では、変更失敗のたびに長時間の停止が発生する。事業規模が拡大するほど、運用品質の維持が事業収益の前提条件となる。
DevOps導入の効果を3領域で見る:CI/CD自動化・運用標準化・障害対応短縮
DevOps導入で得られる効果は、3つの領域に整理できる。各領域とも、ツール導入だけでは効果は出ない。プロセスと人材教育を同時に整える必要がある。
領域1:CI/CD自動化によるリリース工程の人件費削減
ビルド・テスト・デプロイの自動化は、リリース1回あたりの作業時間を削減できる。リリース頻度が高い事業ほど削減効果が見込め、自動化への投資回収が早まる。DORA調査でも、高頻度でデプロイする組織と低頻度の組織の間でリードタイムに差があると報告されている*1。
領域2:運用標準化による属人化解消
監視ダッシュボード・アラート設計・障害対応Runbookを標準化することで、対応者による品質差を抑えられる。新人エンジニアでも初動対応ができる状態を作ることが、運用人件費の最適化につながる。
領域3:障害対応短縮による事業影響の最小化
障害検知から復旧までの時間(MTTR、平均復旧時間)を短縮すると、ユーザー影響と問い合わせ件数の双方を減らせる。EC・SaaSなど稼働率がそのまま売上に直結する事業では、MTTR短縮の経済効果が見込める。
DevOps導入で失敗する典型シナリオ:PoC止まり・本番未到達
DevOps導入で発生しがちな失敗シナリオを整理する。次節の実践ステップとは役割が異なり、本節は「事前に避けるべき落とし穴」を、次節は「具体的な実行手順」を扱う。
失敗1:ツール導入だけで終わりPoCから本番に進めない
CI/CDツール・監視ツールを導入したものの、運用ルール・組織体制が変わらず、PoCのまま塩漬けになるケースがある。ツール導入と並行して、リリース承認フロー・運用担当の役割定義を見直す必要がある。
失敗2:効果指標を設計しないまま導入を進める
DORAのFour Keys(デプロイ頻度・変更リードタイム・変更失敗率・MTTR)など、計測する指標を最初に決めずに進めると、導入効果を経営層に説明できない。導入前の現状値を計測してから着手することが、その後の意思決定の材料になる。
失敗3:開発と運用の対立構造が解消されない
開発チームと運用チームの目標設定がバラバラだと、「速くリリースしたい開発」と「安定運用したい運用」の対立が続く。共通指標(Four Keys)と共通の目標設定が組織変革の前提となる。
DevOps導入の4ステップ:現状分析・パイプライン設計・運用標準化・効果測定

失敗パターンを踏まえた実践ステップを示す。前節が「何が起きるか」だとすれば、本節は「どう動くか」にあたる。
ステップ1:Four Keys測定で現状値を把握する
導入の前に、デプロイ頻度・変更リードタイム・変更失敗率・MTTRの4指標を計測し、現状値をベースラインとして記録する。導入後の効果を定量比較できる土台が必要である。
ステップ2:CI/CDパイプラインを業務要件に合わせて設計する
ビルド・自動テスト・脆弱性スキャン・デプロイの各工程をパイプラインに組み込む。CI/CDツール(GitHub Actions、Jenkins、GitLab CIなど)を用い、すべてを一度に自動化しようとせず、最も手作業が多い工程から段階的に進めることが現実的である。
ステップ3:運用標準化と障害対応Runbookを整備する
監視ダッシュボード・アラート閾値・障害対応Runbook(手順書)を文書化し、当番エンジニアが誰でも初動対応できる状態を作る。監視・観測性ツール(Datadog、New Relicなど)を併用し、Runbookは実際の障害対応で更新を重ねることで実用性が増す。
ステップ4:Four Keys再計測でROIを経営に報告する
導入から3〜6か月の節目で、導入推進チームはベースラインと比較した改善幅を可視化する。経営層への報告には工数削減・障害減少の双方を含め、投資判断の根拠とする。
外注活用の判断軸:内製固執・ツール先行・指標未設計を避ける
DevOps導入を内製のみで進めるか、外注を併用するかは事業特性で判断が分かれる。IPA「DX動向2025」(日米独3か国比較調査)は日本企業の85.1%でDXを推進する人材が「やや不足」「大幅に不足」のいずれかと回答したと報告しており*2、経済産業省が2019年に公表した「IT人材需給に関する調査」でも、高位シナリオでは2030年に最大約79万人のIT人材不足が試算されている*3。内製固執が現実的でない局面が多いのが現状である。
判断軸1:CI/CD整備状況が初期段階かどうか
CI/CDツールの導入経験が社内にない場合、外部パートナーから初期構築・運用設計の知見を得るほうが立ち上がりが速くなる。社内に経験者がいる場合は、内製で進めつつ難所のみ外注する形が有効である。
判断軸2:運用標準化の進捗
運用ドキュメント・障害対応Runbookが整備されていない場合、外部パートナーと並走しながら標準化を進めることで、運用負荷を抑えられる。標準化済みであれば、内製主体で運用を維持できる。
判断軸3:人材確保のリードタイム
DevOpsエンジニア・SRE(Site Reliability Engineer、信頼性向上を担うエンジニア)の採用は、社内採用ルートだけだと半年から1年規模のリードタイムを要する。短期間にチームを立ち上げる必要がある場合は、外部パートナーの並走が現実解となる。専門パートナーに依頼した場合と内製した場合の違いを、技術領域・人件費・立ち上げ期間の3点で比較することが、意思決定の前提となる。
まとめ:DevOps導入によるコスト削減効果の判断軸
DevOps導入によるコスト削減効果を、CI/CD自動化・運用標準化・障害対応短縮の3領域から整理してきた。判断の要点は3点に整理できる。DevOpsはツール導入ではなく、プロセス・組織・指標を含めた取り組みであり、Four Keys(デプロイ頻度・変更リードタイム・変更失敗率・MTTR)を計測したうえで進める。失敗シナリオを避けるため「ツール先行・指標未設計・組織分断」を初期段階で排除する。そして内製と外注の判断は、CI/CD整備状況・運用標準化進捗・人材確保リードタイムの3点で決める。これらを押さえると、DevOpsの投資効果を継続的に経営層へ示せる体制が整う。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:DORA/Google Cloud「Accelerate State of DevOps Report 2024」(2024年)
- *2 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」(2025年)
- *3 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」(2019年)