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悪臭防止法の規制基準と臭気測定の記録を管理
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
本記事のテーマは悪臭防止法における規制基準・臭気測定・記録のシステム化であり、大気を対象とする大気汚染防止法や排水を対象とする水質汚濁防止法とは、対象・根拠法が異なります。
この記事のポイント
- 悪臭防止法は都道府県知事(市長)が指定する規制地域内で、特定悪臭物質濃度規制または臭気指数規制のいずれかに基づく規制基準を定めます。
- 規制基準は敷地境界線・気体排出口・排出水の3区分で定められ、事業者には順守と必要に応じた測定・記録が求められます。
- 多拠点で事業を展開する事業者では、拠点ごとの規制内容と測定・苦情対応の記録をシステム化して管理する必要性が高まっています。
目次
悪臭防止法とは?規制地域の指定と二つの規制方式
悪臭防止法とは、工場その他の事業場における事業活動に伴って発生する悪臭について必要な規制を行い、生活環境を保全することを目的とした法律です*1。1971年(昭和46年)に公布された法律で、都道府県知事(市の区域内は市長)が住民の生活環境を保全するため悪臭を防止する必要があると認める地域を「規制地域」として指定します*1。
図:悪臭防止法における規制対応の流れ(規制地域確認→規制基準把握→測定・記録→勧告・命令対応)
規制地域内の事業者は、都道府県知事等が定める規制基準を順守する義務を負います。規制基準には、特定悪臭物質の濃度で定める方式と、臭気指数で定める方式の2種類があり*1、どちらを採用するかは規制地域ごとに異なります。自社の事業場が該当する規制地域と規制方式は、所管の自治体窓口で個別に確認する必要があるでしょう。
都道府県知事等が指定する規制地域という枠組み
規制地域の指定は、全国一律ではなく都道府県知事(市の区域内は市長)が地域の自然的・社会的条件を踏まえて行います*1。畜産・食品・化学・廃棄物処理・下水処理等の事業場が複数の都道府県にまたがって展開する場合、拠点ごとに規制地域の該当有無が異なる可能性がある点に注意が必要です。
新設の工場・事業場が規制地域内に立地しているかどうかは、稼働開始前に確認しておくべき事項です。既存拠点についても、自治体による規制地域の見直しや条例改正によって規制内容が変わる場合があるため、定期的に最新情報を確認する運用が欠かせません。
大気汚染防止法・水質汚濁防止法との対象の違い
悪臭防止法が規制するのは、事業活動に伴って発生する「におい」です。ばい煙等の大気汚染物質を規制する大気汚染防止法や、排出水中の汚染物質を規制する水質汚濁防止法とは、対象物質も根拠法も異なります。当サイトには水質汚濁防止法を扱う別記事もあり、本記事では悪臭防止法に対象を絞って解説します。
3つの法律は、届出先の窓口や求められる記録様式が異なる場合があります。同じ事業場が大気汚染防止法・水質汚濁防止法・悪臭防止法のすべてに該当するケースも珍しくないため、法律ごとに管理台帳を分けて運用するか、根拠法をタグ付けした共通の記録基盤で管理するかを、拠点を増やす前に検討しておく価値があるでしょう。
特定悪臭物質濃度規制と臭気指数規制—どちらを採るかは自治体で異なる
特定悪臭物質濃度規制とは、不快なにおいの原因となり生活環境を損なうおそれのある物質として政令で指定された特定悪臭物質の濃度によって規制する方式です*1。現在、アンモニア・メチルメルカプタン・硫化水素・トリメチルアミン等、22物質が特定悪臭物質として指定されています*4。
特定悪臭物質濃度規制と22物質の考え方
22物質は物質(物質群)ごとに測定方法が異なり、捕集方法や分析装置も個別に定められています*4。事業場からどの物質が発生しているかを把握したうえで、該当する物質の測定方法に沿って濃度を確認する必要があります。特定悪臭物質濃度規制を採る規制地域では、この物質ごとの規制基準値との比較が順守判断の基本になります。
臭気指数規制の計算式と数値の考え方
臭気指数とは、人間の嗅覚によってにおいの程度を数値化したものです*1。臭気指数は「臭気指数=10×log(臭気濃度)」という式で算出され*2、敷地境界線の規制基準は6段階臭気強度表示法の「臭気強度2.5から3.5」に対応する「臭気指数10から21」の範囲で自治体ごとに定められます*2。特定悪臭物質濃度規制では捕捉しにくい複合臭にも対応できる方式とされ、どちらの方式を採用するかは規制地域を所管する自治体の条例・規則によって異なるため、公式情報での確認が欠かせません。
どちらの方式を採用するかは、規制地域を所管する自治体が地域の悪臭発生源の実態を踏まえて判断する事項であり、事業者側が選択できるものではありません。多拠点で異なる業種・工程を抱える事業者ほど、拠点ごとの採用方式を個別に把握しておく必要があるでしょう。
敷地境界線・気体排出口・排出水—事業者が順守すべき3つの規制基準
規制基準は、事業場の敷地境界線・気体排出口・排出水という3つの箇所についてそれぞれ定められます*1。3区分の考え方を整理すると、次のようになります。
| 規制箇所 | 通称 | 考え方 |
|---|---|---|
| 敷地境界線 | 1号基準 | 事業場の敷地境界線上での濃度・臭気指数を規制します。 臭気強度2.5〜3.5に対応する範囲で自治体が数値を定めます*2。 |
| 気体排出口 | 2号基準 | 煙突等の排出口から排出される特定悪臭物質の濃度を規制します。 排出口の高さ・排出ガス量等に応じて基準値が算定されます*1。 |
| 排出水 | 3号基準 | 事業場から公共用水域等に排出される水中の特定悪臭物質濃度を規制します*1。 |
3つの規制基準と事業者の順守義務
畜産・食品・化学・廃棄物・下水処理等の事業場では、工程によって敷地境界線・気体排出口・排出水のいずれか、または複数の基準が同時に適用される場合があります。どの基準が自社のどの工程に適用されるかを整理せずに運用すると、対応漏れにつながりやすいでしょう。順守状況を継続的に把握するには、基準の適用箇所と数値を拠点ごとに一覧化しておくことが望まれます。
下水処理・廃棄物処理のように排出水を伴う事業場では、排出水の規制基準(3号基準)が敷地境界線・気体排出口の基準と別に適用される点に留意が必要です。処理工程の途中で発生する悪臭と、放流先の水質に関する悪臭の両方を視野に入れた点検体制を組む必要があるでしょう。
臭気測定の実務と改善勧告・改善命令への対応
特定悪臭物質濃度規制の対象物質は、物質ごとに定められた採取・分析方法で測定します*4。臭気指数規制の場合は、人の嗅覚を用いて臭気の程度を判定する官能試験の考え方に基づいて数値化されます*1。いずれの方式でも、測定の実施主体・頻度・記録の様式は法律本文に一律の定めがあるわけではなく、規制地域を所管する自治体の指導・条例に沿って個別に確認する必要があります。
測定方法と記録の位置づけ
都道府県知事等は、規制地域における大気中の特定悪臭物質の濃度または臭気指数について必要な測定を行う責務を負っています*1。臭気指数の測定に用いる嗅覚測定法では、市町村等からの委託により測定業務を担う人材の質を確保するため、悪臭防止法第13条に基づく国家資格「臭気判定士」の制度が設けられています*5。事業者が自主的に測定を委託する場合も、この資格を持つ人材が関わっているかを確認材料の一つにできます。
事業者側としても、自主的な測定・記録を積み重ねておくと、規制基準への適合状況を客観的に示す材料になります。測定結果や点検記録を残していない状態では、後日の指摘に対して迅速に説明することが難しくなるでしょう。
改善勧告・改善命令という段階的な手続き
市町村長は、事業場が規制基準に適合せず住民の生活環境が損なわれていると認めるときは、その事業者に対して改善勧告を行うことができます*1。勧告に従わない場合には改善命令に進み、命令に違反すると罰則の対象になり得る仕組みです*1。勧告・命令のいずれを受けた場合も、改善内容と改善後の測定結果を記録として残しておくことが、その後の対応を円滑にする前提になります。
多拠点・苦情対応管理の難しさとシステム化の要件
畜産・食品・化学・廃棄物・下水処理等を複数拠点で営む事業者では、拠点ごとに規制地域の該当有無・採用される規制方式・規制基準の数値が異なる場合があります。これに加えて、近隣住民からの臭気に関する苦情への対応履歴も拠点別に発生するため、紙や表計算ソフトだけで管理すると、どの拠点でいつ何を測定し、どう対応したかを横断的に把握しにくくなります。
苦情対応の記録が拠点間で共有されない状態が続くと、同一拠点で繰り返し寄せられる苦情に対して都度個別対応となり、改善勧告に発展した際の説明にも時間を要しかねません。担当者の異動が重なる時期には、過去の測定結果や勧告への対応履歴が引き継がれず、同じ確認作業を一からやり直す事態も起こり得ます。
システム化に求められる要件は、主に次の4点に整理できます。
- 拠点台帳:拠点ごとの規制地域該当有無・採用方式(濃度規制/指数規制)・規制基準値を記録する機能
- 測定・点検スケジュール:測定の実施予定と実施履歴を拠点別に管理し、期限が近づくと通知する機能
- 苦情と対応履歴:住民からの苦情内容・受付日・対応内容・完了状況を紐づけて記録する機能
- 記録と証跡管理:測定結果・改善勧告への対応記録を電子データとして保存し、必要な際にすぐ提示できる機能
これらを自社で開発する場合、業務要件の整理・データベース設計・通知機能の実装・既存台帳データの移行など、複数分野の開発工数が必要になります。拠点数や取り扱う規制方式が多いほど、要件定義から本番稼働までに検討すべき事項も増えていくでしょう。専門パートナーに委託すれば、複数拠点・複数規制方式を横断する台帳設計の知見を活用でき、社内だけで要件を詰め切る場合より負担を抑えやすくなります。
まとめ:悪臭防止法対応を止めない記録管理の3つの判断軸
本稿では悪臭防止法の規制地域・規制基準・臭気測定と記録の考え方を、環境省・自治体の公式情報に基づいて整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、規制地域の指定と規制方式(特定悪臭物質濃度規制・臭気指数規制)は自治体ごとに異なり、一律の基準では判断できません*1。第二に、規制基準は敷地境界線・気体排出口・排出水の3区分で定められ、事業者には測定・記録による順守状況の把握が求められます*1。第三に、多拠点・多工程で事業を展開する事業者ほど、拠点台帳・測定スケジュール・苦情対応履歴・記録の証跡をシステム化することで、改善勧告等への対応漏れを防ぎやすくなるでしょう。
よくある質問
悪臭防止法の規制基準は全国どこでも同じですか。
いいえ、同じではありません。規制地域の指定や規制基準の数値は都道府県知事(市長)が地域の状況に応じて個別に定めており*1、特定悪臭物質濃度規制と臭気指数規制のどちらを採るかも自治体によって異なるでしょう。事業場ごとに所管自治体の公式情報で確認する必要があります。
特定悪臭物質濃度規制と臭気指数規制はどちらを選べばよいですか。
規制方式は事業者が任意に選べるものではなく、規制地域を指定する都道府県知事(市長)が条例・規則等で定めます*1。自社の事業場がどちらの方式の対象になっているかは、所管自治体の環境部局に確認することが欠かせません。
臭気測定はどのくらいの頻度で行う必要がありますか。
悪臭防止法本文には全国一律の測定頻度が明文化されておらず、規制地域を所管する自治体の指導内容や事業場の状況に応じて個別に確認する必要があります。改善勧告・改善命令を受けた場合は、改善状況を示すための測定・記録が特に重要になります*1。
複数の事業場・拠点を抱える場合、どのような点に注意すべきですか。
拠点ごとに規制地域の該当有無・規制方式・規制基準の数値が異なる場合があるため、拠点台帳と測定・点検スケジュール、苦情内容と対応履歴を紐づけて管理しないと対応漏れに気づきにくくなります。記録を電子化し証跡として保存しておくと、改善勧告等を受けた際にも対応状況を迅速に提示できます。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
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ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:環境省「悪臭防止法の概要」(https://www.env.go.jp/air/akushu/low-gaiyo.html)
- *2 出典:神奈川県「悪臭防止法の概要」(https://www.pref.kanagawa.jp/docs/pf7/akusyu/gaiyou.html)
- *3 出典:悪臭防止法(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/346AC0000000091/)
- *4 出典:環境省「特定悪臭物質測定マニュアル」(https://www.env.go.jp/air/akushu/law/post_37.html)
- *5 出典:環境省「令和8年度臭気判定士試験 受験申請について」(https://www.env.go.jp/press/press_05066.html)