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2026.06.23 らしくコラム

PdM(プロダクトマネージャー)不足を業務委託で補完する進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

プロダクトマネジメントのイメージ

この記事のポイント

  • PdM(プロダクトマネージャー)の不足は、比較的新しい職種で経験者が少ないことと、ビジネス・技術・UXを横断するスキルの広範さが重なり、採用難が続いています
  • 業務委託で補完できる範囲(市場調査・ロードマップのたたき台・要件優先順位付け)と、自社で担うべき範囲(プロダクトの最終意思決定・社内調整)を切り分けることが成功の鍵です
  • 委託先の選定では「プロダクト領域の実績」「コミュニケーション体制」「知見移転の仕組み」の3軸で評価することで、委託終了後の空洞化リスクを抑えられます

PdM(プロダクトマネージャー)とは — What/Whyを担うプロダクト戦略の専任職

チーム協働のイメージ

PdM(プロダクトマネージャー)とは、プロダクトの「What(何を作るか)」と「Why(なぜ作るか)」を定義し、プロダクトが届ける価値を高め続ける責任を担う専門職です。市場調査・ユーザーリサーチをもとにプロダクトビジョンを描き、ロードマップを策定し、開発・デザイン・ビジネスの各チームが同じ方向を向けるよう調整します。

STEP 1 課題整理 不足範囲・ 委託可否判断 STEP 2 委託先選定 実績・体制・ 知見移転確認 STEP 3 要件定義 委託範囲・ 権限・成果物 STEP 4 並走・連携 定例レビュー・ ドキュメント STEP 5 内製化・ 継続判断 採用活動と並行 知見移転完了
図:PdM不足を業務委託で補完する基本ステップ(課題整理〜内製化・継続判断)

PdMが担う主な業務には、ユーザーリサーチ・競合分析・プロダクトビジョンの策定、プロダクトロードマップの設計と優先順位付け、要件定義と受け入れ基準の明確化、そして開発・デザイン・マーケティング・営業などのステークホルダーとの調整が含まれます。

PdMの役割を理解するうえで重要なのが、PjM(プロジェクトマネージャー)との違いです。PjM(プロジェクトマネージャー)はプロダクト開発の「How(どうやって作るか)」と「When(いつ届けるか)」を管理する役割で、スケジュール・リソース・リスク・品質の管理が中心業務です。PdMが「正しいものを作る」ことを担い、PjMが「正しく作る」ことを担うと整理できます。

この違いを混同すると、採用・外注の際に必要なアウトプットとずれが生じます。「PdMを雇ったつもりがプロジェクト進行管理しかできない人材だった」というケースや、その逆も起こりえます。PdM不足を業務委託で補完する際も、この役割の明確化が最初の前提になります。

PdMが不足・採用難な理由:新しい職種・広範スキル・内製化需要の3重苦

PdMが慢性的に不足している背景には、職種としての歴史が浅いこと、求められるスキルの広範さ、そして事業会社でのプロダクト内製化ニーズの急拡大という3つの要因が重なっています。

まず、PdMは比較的新しい職種で、体系的な経験者の母数が少ないという現実があります。エンジニアやデザイナーとは異なり、PdMを育成するための確立した職種ルートやカリキュラムが整っていないため、実務経験を積んだ人材が市場に少ない状態が続いています。

次に、求められるスキルが広範です。PdMにはビジネス理解(市場分析・競合把握・収益モデルの理解)、技術的素養(開発フロー・技術的制約の理解)、UX感覚(ユーザーリサーチ・ユーザービリティへの理解)、そしてコミュニケーション力(経営・開発・デザイン・顧客を結ぶ調整力)が同時に求められます。これらすべてを実務レベルで備えた人材は、採用市場でも希少です。

経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)では、高位シナリオで2030年に約79万人規模のIT人材不足が見込まれており*1、プロダクト開発に関わる職種全体で採用競争が激しくなっています。その中でもPdMは、事業会社がデジタルプロダクトの内製化を加速させるにつれて需要が高まる一方、供給が追いつかない状況が続いています。

育成も容易ではありません。PdMは他の技術職と異なり、「プロダクトを通じてユーザーと事業の両方に価値を届ける」という実践の繰り返しを通じてしか身につかない判断力が核心にあります。座学研修だけでPdMを育成することは難しく、社内に経験者がいない環境ではメンタリングも難しいという現実があります。

業務委託で補完する選択肢:フリーランス・支援サービス・顧問型の使い分け

PdM不足を業務委託で補完する方法には、大きく3つの形態があります。自社の状況とフェーズに応じた使い分けが大切です。

委託形態 向いているケース 主な留意点
フリーランスPdM 特定フェーズ(市場調査・MVP仕様策定など)に集中的に関与してほしい場合。
稼働量を柔軟に調整したい場合
スキルレベルの見極めが難しい。
社内カウンターパートが必要。
業務範囲・成果物を事前に明確化する必要がある
PdM支援サービス プロダクト組織の立ち上げや仕組みづくりを支援してほしい場合。
チームとして動いてほしい場合
個人より費用が高くなることがある。
支援の範囲・期間・成果物を契約段階で詰めることが大切
顧問・アドバイザー型 経営・事業戦略レベルのプロダクト意思決定に助言が欲しい場合。
月数回の壁打ちで判断の質を高めたい場合
実務の手を動かすことは基本的に含まれない。
自社で実行できる担当者を別途用意する必要がある

フリーランスPdMは、個人との直接契約で特定の業務を委託する形態です。市場調査・ロードマップのたたき台・プロダクトバックログの整理・ユーザーインタビューの設計など、スコープが限定された専門業務を依頼するケースが多くなります。稼働時間を柔軟に調整しやすい反面、スキルレベルのばらつきがあるため、選定時の見極めが重要です。

PdM支援サービスは、企業として組織的にPdMの機能を提供するサービスで、チームや仕組みづくりの支援まで含むケースもあります。個人委託に比べてサービス品質が安定しやすく、プロダクト組織の立ち上げや改善に取り組む場合に向いています。

顧問・アドバイザー型は、経験豊富なPdM経験者が月に数回のセッション形式で相談に応じる形態です。経営判断レベルのプロダクト意思決定に助言が欲しい場合や、自社の担当者のメンタリングを依頼したい場合に活用できます。実務を直接担うのではなく、自社の判断を支援する位置づけです。

委託で任せられる範囲と自社で担うべき範囲

PdMの業務委託で失敗するケースの多くは、「委託すべき範囲」と「自社で担うべき範囲」の境界が曖昧なまま始まることに起因します。どこまでを外部に頼れるかを正確に理解することが、委託の効果を高めるうえで重要です。

業務委託に向いている業務:調査・分析・仕様整理

委託に向いている業務の共通点は、専門スキルが必要で、かつ「社内の人間でなければできない意思決定を伴わない」ことです。具体的には以下の業務が委託に適しています。

  • 市場調査・競合分析・ユーザーリサーチの設計と実施
  • プロダクトロードマップのたたき台の作成と整理
  • プロダクトバックログの整理と優先順位付けの補助
  • ユーザーストーリーの記述・受け入れ基準の明文化
  • KPI設計や計測の仕組みづくりの支援

これらはいずれも専門知識と経験が求められる一方、適切な情報と権限を渡せば外部の専門家が担うことができます。

自社で担うべき業務:意思決定・社内調整・説明責任

プロダクトに関わる最終的な意思決定は、自社の責任者が担う必要があります。「この機能を作るかどうか」「ロードマップのこの方向で進めるか」といったGo/No-Go判断を外部委託のPdMに委ねてしまうと、プロダクトの方向性が社外の判断に依存するリスクが生まれます。

社内の部門間調整(営業・CS・開発・経営陣との調整)も、自社の権限と関係性を持つ人間が担うほうが実行力を持ちます。委託PdMが社内調整をすべて担う体制にすると、委託終了後に調整の知見が社外に流出し、組織としての調整能力が育ちません。

経営陣への説明責任も自社側が担うべき領域です。委託PdMが資料を作ることはできますが、最終的な意思決定の責任を負えるのは社内の担当者です。これらを念頭に、委託開始前に「自社のカウンターパートが誰か」を明確にしておくことが大切です。

業務委託時の注意点:権限・情報共有・知見移転を契約に含める

オフィスでの協働のイメージ

PdMの業務委託を進めるうえで、委託を誤ると生じる主なリスクは2つあります。ひとつは「委託PdMに権限と情報が渡らず、表面的な成果物しか上がらない」こと、もうひとつは「委託終了後に知見が社外に流出し、プロダクト知識が空洞化する」ことです。これらをあらかじめ防ぐ仕組みが必要です。

権限と情報共有:委託PdMが動けるための前提条件

PdMが機能するためには、プロダクトに関する情報(ユーザーデータ・売上データ・チームの状況・経営の意図)へのアクセスと、ステークホルダーとの対話ができる環境が必要です。これらを制限したまま委託してしまうと、ロードマップや要件定義が実態と乖離したものになります。

一方で、委託PdMに渡してよい情報の範囲は、NDA(秘密保持契約)を締結したうえで業務に必要な範囲に限定することが基本です。個人情報の取り扱いやシステムのアクセス権限(プロダクション環境へのアクセスの要否など)は、契約前に確認しておくことをお勧めします。

知見移転:委託終了後も知識が社内に残る仕組みを作る

PdM委託でよく起こるのは、「委託期間中は良いアウトプットが出ていたが、終了後に誰もプロダクト全体像を把握できない状態になった」というケースです。これを防ぐために、以下を契約の成果物・プロセスに含めることをお勧めします。

  • プロダクトロードマップとその背景にある判断根拠のドキュメント
  • ユーザーリサーチの結果と活用方針の整理
  • KPI設計と計測ロジックの説明
  • 定期的な社内担当者への共有セッション(週次または隔週)

委託開始と同時に社内担当者(将来のPdM候補となる人材)を1名アサインし、業務に並走させながら知識を移転していく体制が、長期的なリスク低減につながります。

費用・単価の目安(市場参考値)

PdMの業務委託費用は、委託する業務の範囲・稼働時間・経験年数・担当フェーズによって大きく異なります。以下に示すレンジはあくまで市場参考値であり一次資料ではないため、具体的な金額は複数社・複数人への個別見積もりで確認してください。

フリーランスPdMへの業務委託(月次契約)

フリーランスPdMへの業務委託は月次の稼働量に応じた単価契約が一般的です。週の稼働日数・担当するフェーズ・プロダクト領域の専門性によって単価の幅が生まれます。スタートアップや新規プロダクト立ち上げフェーズに特化した経験者は、より高い単価水準になる傾向があります。

フリーランス向けのマッチングプラットフォームを通じた場合と、紹介・直接契約の場合では、手数料分の差が生まれることがあります。いずれの場合も、委託する業務の範囲・成果物・稼働日数を明確にしたうえで見積もりを取ることが大切です。

PdM支援サービス・顧問型

企業としてPdM支援を提供するサービスでは、月次の定額プランを設定しているケースがあります。顧問・アドバイザー型では、月に数回のセッション形式のプランから、より継続的な伴走支援まで形態が異なります。

いずれの形態でも、「実際に何をアウトプットしてもらうか」「その成果物を社内でどう活用するか」が費用対効果を左右します。単価の高低だけでなく、自社の課題に対する解決の質を評価軸に選定することをお勧めします。

PdM委託先の選び方:プロダクト実績・体制・知見移転の3軸

PdMの業務委託で成果を出すには、委託先の選定が重要なポイントです。プロダクト領域での実績・コミュニケーション体制・知見移転の仕組みの3軸で評価することをお勧めします。

プロダクト実績軸:自社プロダクトの領域・フェーズとの近さ

PdMの実績は、担当したプロダクトの種類(BtoB SaaS・BtoC アプリ・社内システムなど)とフェーズ(立ち上げ・成長・改善・撤退)によって活かせる知見が大きく異なります。自社が直面している課題に近い経験を持つPdMかどうかを確認することが大切です。

過去のプロダクトでどのような意思決定を行ったか、どのような結果につながったかを具体的に聞くことで、実務レベルの判断力を把握できます。実績の開示を嫌がる場合は、匿名化した事例として聞くことも選択肢です。

体制軸:社内とのコミュニケーション設計

委託PdMが社内チームとどのように連携するかの設計が、成果の質を左右します。定例ミーティングの頻度・形式、非同期コミュニケーションのツール・ルール、社内のカウンターパートとの役割分担を事前に合意しておくことが重要です。

また、委託PdMが自社のチームと良好な関係を築けるかどうかも重要です。PdMはエンジニアやデザイナーと密接に連携する役割のため、コミュニケーションスタイルのフィットを面談段階で確認することをお勧めします。

知見移転軸:社内人材の育成・学習を設計に組み込む

PdM委託で中長期的に価値を出すためには、委託期間中に社内の担当者がPdMの考え方・手法・判断基準を学ぶ機会を設けることが大切です。「委託先が手を動かすだけ」の関係では、終了後に社内に知識が残りません。

委託先が定期的に社内担当者向けの解説や背景説明を行うか、社内担当者を業務プロセスに巻き込んで「見て学ぶ」環境を作れるかどうかを、選定段階で確認することをお勧めします。

LASSICのIT事業部では、プロダクト開発支援を含むIT人材の補完・チーム体制構築をご相談いただけます。詳細はIT開発支援サービスページをご覧ください。

まとめ:PdM不足を業務委託で補完するための3つの判断軸

本稿では、PdM(プロダクトマネージャー)の役割とPjM(プロジェクトマネージャー)との違い、不足・採用難の背景、業務委託による補完の選択肢・委託範囲・注意点・委託先の選び方を整理しました。要点を3つにまとめます。

第一に、PdMとはプロダクトの「What/Why」を担う専門職であり、「How/When」を担うPjMとは役割が明確に異なります。採用・外注を検討する前にこの区別を社内で共有しておくことが、ミスマッチを防ぐ前提になります。

第二に、業務委託で任せられる範囲(調査・分析・仕様整理・優先順位付けの補助)と、自社で担うべき範囲(最終意思決定・社内調整・経営への説明責任)を切り分けることが、委託の効果を高める鍵です。カウンターパートとなる社内担当者を確保したうえで委託に入ることが大切です。

第三に、委託先の選定ではプロダクト領域の実績・コミュニケーション体制・知見移転の仕組みの3軸で評価することをお勧めします。委託終了後も社内にプロダクトの知識・判断軸が残るよう、最初から知識移転を設計に組み込むことが長期的なリスク低減につながります。

よくある質問

PdM(プロダクトマネージャー)とPjM(プロジェクトマネージャー)の違いは何ですか?

PdM(プロダクトマネージャー)はプロダクトの「What(何を作るか)」と「Why(なぜ作るか)」を担う役割で、市場調査・ロードマップ策定・要件の優先順位付け・ステークホルダー調整が中心業務です。一方、PjM(プロジェクトマネージャー)はプロダクトの「How(どう作るか)」と「When(いつ作るか)」を担い、スケジュール管理・リソース調整・リスク管理・進捗報告が主な業務です。混同すると採用や外注の際に必要なアウトプットとずれが生じる可能性があります。

フリーランスPdMに業務委託するとき、何を委託してよいですか?

フリーランスPdMに向いている業務は、市場調査・競合分析・ユーザーインタビュー設計・プロダクトロードマップのたたき台作成・要件整理・プロダクトバックログの優先順位付けなど、スコープが区切れる専門的な作業です。一方、プロダクトの最終意思決定(Go/No-Go判断)・社内の部門間調整・経営陣への説明責任は自社のPdM相当者または経営者が担う必要があります。委託だけでプロダクト戦略全体を外出しにすると、中長期のプロダクト方向性が空洞化するリスクがあります。

PdM業務委託の費用はどのくらいが目安ですか?

以下は市場参考値であり一次資料ではないため、個別見積もりで確認してください。フリーランスPdMへの業務委託では、経験年数・担当領域・稼働時間によって月額単価の幅が大きくなります。顧問・アドバイザー型では月数回の壁打ちセッション形式のプランもあります。PdM支援サービスでは月次の定額プランを設定している事業者もあります。いずれも実際の業務範囲・成果物・稼働日数を明確にしたうえで見積もりを取ることをお勧めします。

PdMを業務委託で採用する際、失敗しないための注意点はありますか?

主な注意点は3つあります。第一に、委託するPdMに適切な権限と情報を渡さないと、ロードマップや要件定義が表面的なものになりがちです。第二に、社内に意思決定できるカウンターパートがいない場合は委託PdMが動けなくなります。社内窓口を明確にすることが大切です。第三に、委託期間終了後に知見が社外に流出しないよう、ドキュメント整備と社内への知識移転を契約に含めることをお勧めします。

PdMを内製採用するのと業務委託で補完するのは、どちらが向いていますか?

プロダクトが中核事業であり長期的にプロダクト組織を育てる方針であれば、内製採用が向いています。一方、プロダクト立ち上げ期や特定フェーズ(市場調査・MVP仕様策定など)に集中的にPdMの知見が必要な場合、あるいは採用活動に時間がかかる間の繋ぎとして活用する場合は業務委託が現実的な選択肢です。内製採用と業務委託は排他ではなく、業務委託で走りながら並行して採用活動を進める体制も有効です。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

LASSICに相談するメリット

LASSICのIT事業部は、元請(プライムベンダー)としてシステム開発・プロダクト開発支援を受託しています。IT人材の不足を補完するチーム体制の構築から、プロダクト開発の上流工程の支援まで、プロジェクトの状況に合わせてご相談いただけます。


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  1. *1 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年公表)— 高位シナリオ(IT需要の伸びを高位に想定した場合)で2030年に約79万人規模のIT人材不足が見込まれることを示す調査報告書。URL: https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf


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