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2026.06.24 らしくコラム

Rustエンジニア不足を受託・委託で補完する進め方

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

rust programming code

この記事のポイント

  • Rustの学習コストは他言語と次元が異なり、採用・育成だけで半年以上のリードタイムを要する場合があります
  • 受託・委託で補完する際は「unsafe扱い・Tokio経験・C/C++移行支援力」という3軸で委託先を評価することが大切です
  • PoC(先行開発)から始め、契約形態と内製移行の出口戦略を先に握ることで、委託コストとリスクを抑えられます

Rustエンジニア不足の現状と採用難の理由

software engineer coding

Rustエンジニア不足とは、メモリ保護特性と高速性を言語仕様で両立するRustを扱えるエンジニアの供給が、クラウド・セキュリティ・組み込み・WebAssembly領域での需要拡大に追いついていない状態を指します。Stack Overflow「2025 Developer Survey」*1では、Rustが10年連続で「最も賞賛されるプログラミング言語」首位(72%)に選ばれており、エンジニアからの評価は高い一方、実務投入の絶対数は限られています。

採用・内製のみ 採用リードタイム 半年〜1年以上 所有権/借用の習得に数ヶ月 求人数は限られ高単価 開発開始まで時間がかかる プロジェクト遅延リスクあり 受託・委託で補完 既存実績ある委託先を活用 PoC から短期間で開始可能 unsafe/async 評価軸で選定 内製移行の出口戦略を同時設計 開発リスクを低減できる
採用・内製のみと受託・委託補完の比較

需要は拡大中:クラウド・セキュリティ・組み込み・WasmでRustが選ばれる理由

RustはGarbage Collectionを持たず、コンパイル時に所有権(ownership)と借用(borrowing)の検査でメモリ保護を保証します。この特性がC/C++と同等のパフォーマンスを求めるシステムプログラミング領域で評価されており、LinuxカーネルへのRustコードの正式採用(2022年以降)、MicrosoftのWindowsコンポーネントへの段階的な置き換え、AmazonのFirecracker VMM(AWS Lambdaの基盤)など、大手テック企業での採用事例が増えています。

WebAssembly(Wasm)との親和性も高く、フロントエンド・エッジコンピューティングへの拡張需要が加速しています。セキュリティ分野ではメモリ破壊脆弱性がリスクの大きな要因であることが知られており、NSA(米国家安全保障局)がメモリ保護機能を持つ言語への移行を推奨する文書を公表するなど、官公庁・重要インフラ領域でも注目が高まっています。

学習コストが採用難の根本原因:所有権・借用・ライフタイムの壁

Rustの学習難度は、所有権・借用・ライフタイムという3つの概念にあります。JavaやPythonではランタイム(GC)がメモリを管理しますが、Rustはプログラマーがコンパイル時にメモリの生存期間を正確に記述する必要があります。

borrow checker(借用チェッカー)はこれを検証するコンパイラ機能で、他言語経験者でも「borrow checkerと格闘する」段階を経ることが一般的です。JetBrains「State of Rust Ecosystem 2025」*3では、Rustを現在学習中のエンジニアが回答者の52%にのぼり、習得の途上にある人材が多いことがうかがえます。

実務でRustを使用しているエンジニアは同調査で26%にとどまっており、需要に対して即戦力として活用できる人材の絶対数は限られています。採用に踏み切っても、1人のエンジニアが実務レベルに達するまでに相当な時間を要するため、プロジェクトの立ち上げスケジュールと採用タイムラインを合わせることが難しいのが現状です。

委託・受託が現実解になる背景

Rustエンジニアの採用が困難な状況では、受託・委託によって開発力を外部から調達することが現実的な選択肢になります。ただし、Rust対応の委託先自体も市場では限られているため、パートナー選定の精度が成否を分けます。

内製化の限界:採用から戦力化まで半年〜1年のリードタイム

転職サイトの求人状況を見ると、国内のRust関連正社員求人は2026年4月時点で数百件程度の規模とされています。年収800万円以上の求人も相当数あり*4、採用競争は高水準になっています。さらに採用できたとしても、Rustを実務に投入できるレベルまで育成するには数ヶ月単位の時間が必要です。プロジェクトの開発開始時期が近い場合、採用・育成だけで間に合わないケースが多くあります。

経済産業省「IT人材需給に関する調査」(2019年)*2によれば、2030年には中位シナリオで約45万人のIT人材が不足すると試算されており、特に先端IT人材(AI・クラウド・セキュリティ等)の不足は約12.4万人に及ぶとされています。Rustを扱えるエンジニアはこの先端IT人材の中でも特に希少なカテゴリーに位置します。

Rust対応の委託先が少ない理由

SIerやベンダーの多くはJava・PHP・Python・Goなどの実績を積み上げていますが、Rust案件は相対的に新しく、実績を持つ企業の数は限られています。Rustの開発では、言語特性への深い理解がないと非同期処理・並行処理の設計が誤り、パフォーマンス上の恩恵を得られないまま保守コストだけが増えるリスクがあります。

また、unsafeブロック(Rustのメモリ保護保証を一時的に外すコード)の扱いは設計思想の質を直接反映します。unsafe多用は「Rustで書いたがCと変わらない」状態を生み、保護機能のメリットを失わせます。委託先の技術力を正しく評価するためには、Rustに固有の評価軸が必要です。

委託先を選ぶ5つの評価軸

Rust対応の委託先を選定する際は、通常のITベンダー評価に加えて以下の5軸を確認することが大切です。

評価軸 確認ポイント リスクのサイン
実プロダクト実績 GitHubリポジトリ・OSS貢献・納品事例があるか。
「Rustを扱える」ではなくリリース済みプロダクトがあるか確認する。
学習・研究のみでプロダクション実績がない。
言語選定の根拠を説明できない。
unsafeの扱い コードレビュー時にunsafeブロックの使用方針を明示できるか。
unsafe最小化の設計思想があるか確認する。
「パフォーマンスのためにunsafeを多用する」という回答。
safe Rustで同等設計が可能か検討していない。
非同期処理(Tokio/async-std)の経験 Tokio(非同期ランタイム)もしくはasync-stdを用いた実装経験があるか。
スレッド・チャネル・awaitの使い分けを説明できるか確認する。
同期処理のみの経験で非同期設計の実績がない。
バックエンドAPI・ネットワーク系の開発では必須スキル。
C/C++からの移行支援力 既存C/C++コードとのFFI(Foreign Function Interface)連携実績があるか。
段階的な移行計画を立案できるか確認する。
「全面書き直し」しか提案できない。
既存コードとの共存・段階移行の設計経験がない。
品質担保体制 cargo test・Clippy(静的解析)・Miri(未定義動作検査)の運用実績があるか。
CIパイプラインへの組み込み方針を確認する。
手動テストのみ。
Clippy警告を無視する運用方針。

実プロダクト実績の確認方法

委託先の実績確認は、GitHubの公開リポジトリとOSSへのコントリビューション履歴が有力な手がかりになります。プロダクション利用のある実装かどうかは、リポジトリのIssue数・スター数・コミット頻度などから推測できます。NDAの関係で具体的な案件名を開示できない場合でも、技術スタック・規模感・開発期間の概要を説明できる担当者であれば信頼性が高いと判断できます。

unsafeの扱いと設計思想の見極め方

Rustのメモリ保護保証はsafeコード内のborrow checkerによって成立しています。unsafeブロックはFFI(外部言語との連携)や特定のパフォーマンス最適化など、真に必要な箇所のみに限定するのが設計の定石です。提案段階でunsafeの使用方針を明示できない委託先は、Rustの言語思想への理解が浅い可能性があります。

非同期処理(Tokio/async-std)経験の確認

Web API・マイクロサービス・ネットワークプログラミング領域ではTokio(非同期ランタイム)の利用がほぼ前提となります。Tokioを用いた非同期処理は、Rustのasync/await構文と組み合わせることで高スループットなサーバー処理を実現できますが、タスクのスポーン・チャネル・エラーハンドリングの設計を誤ると、並行処理のデバッグが困難になります。事前に「async Rustの設計で困った点と解決策」を具体的に話せる担当者であるかを確認しましょう。

C/C++移行支援力の重要性

組み込み・システムプログラミング領域では、既存のC/C++コードベースとRustを段階的に共存させるFFI(Foreign Function Interface)の設計が必要です。全面書き直しはコストとリスクが高く、現実的ではないケースが多くあります。既存コードとの境界設計・データ型変換・エラーハンドリングの整合性について、具体的な提案ができる委託先かどうかを確認することが大切です。

品質担保体制とCargo toolchain

Rustのエコシステムには品質維持を支援するツールが充実しています。cargo testは単体・統合テストを標準で提供し、Clippy(linter)はRust固有のアンチパターンを検出します。Miriは未定義動作(undefined behavior)を検出できる実験的ツールです。これらをCIパイプラインに組み込んでいるかどうかは、チームの成熟度を測る指標になります。

受託・委託の進め方:3つのステップ

Rustの受託・委託を失敗なく進めるには、PoCから始めて契約形態を選択し、最終的な内製移行の出口を先に設計する3ステップが有効です。

ステップ1:要件の事前整理とPoC(小規模先行開発)

Rustを選定する技術的な根拠を最初に明確化します。「パフォーマンスが必要か」「メモリ保護が要件か」「Wasm出力が必要か」など、Rustでなければならない理由を整理します。GoやC++でも同等要件を満たせる場合、委託コストに見合うかどうかを再検討する余地があります。

要件が固まったら、全体開発の前に機能を絞ったPoCを委託することをお勧めします。PoCで委託先の技術力・コミュニケーション品質・コードの可読性を評価することで、本開発フェーズの契約判断をより根拠ある形でできます。PoCの規模は2〜4週間程度の小スプリントで、設計ドキュメントの品質も評価対象に含めましょう。

ステップ2:契約形態の選択(準委任 vs 請負)

Rust案件では、仕様確定が困難な先行フェーズには準委任(SES型)、成果物が明確に定義できるフェーズには請負を組み合わせるのが一般的です。Rustは設計段階でアーキテクチャの選択肢が多く(同期/非同期、unsafe境界の設計等)、詳細仕様が最初から確定しにくい場合があります。

準委任の場合は指揮命令関係に注意が必要です。委託先エンジニアへの直接の業務指示は偽装請負(労働者派遣法違反)のリスクがあります。作業管理はPM(プロジェクトマネージャー)経由で行い、成果物の受け入れ基準を書面で定めておきましょう。

ステップ3:内製移行の出口戦略

委託に頼り続けることはコスト増と技術的依存のリスクを伴います。委託契約の開始時点から「何のフェーズで内製へ移行するか」の出口戦略を握っておくことが大切です。委託先には以下の技術移転条件を契約に明示することをお勧めします。

  • ソースコード一式・設計ドキュメント・ADR(アーキテクチャ決定記録)の納品
  • テストカバレッジの目標値の設定(例:主要モジュール80%以上)
  • ペアプログラミング・コードレビューへの自社エンジニア参加機会の確保
  • Rust固有の設計判断の根拠をドキュメント化する義務の明記

内製移行の目安として、自社エンジニアが「コードを読んで変更できる」段階に達してから委託規模を段階的に縮小するスケジュールを引きましょう。Rustの学習コストを考えると、移行には半年〜1年程度の余裕を見ることが現実的です。

まとめ:Rustエンジニア不足を受託で補完する3つの判断軸

本稿では、Rustエンジニア不足が生じる背景・委託先の評価軸・進め方の3点を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。

第一に、Rustの採用難は所有権・借用・ライフタイムという言語固有の学習コストと、市場に流通する即戦力人材の絶対数の少なさに起因しています。採用・育成だけでスケジュールを組むと開発開始が遅れる可能性があります。

第二に、委託先の評価は通常のベンダー評価では不十分です。unsafe扱いの方針・Tokio/async経験・C/C++移行支援力という3軸をRust固有の確認事項として加えることで、委託品質の見通しが高まります。

第三に、PoC先行・契約形態の使い分け・内製移行の出口設計を最初に握ることで、委託コストとベンダー依存のリスクを抑えながら開発を進めることができます。Rust対応パートナーの探索には時間がかかる場合があるため、開発着手の3〜6ヶ月前からパートナー選定を開始することをお勧めします。

よくある質問

RustエンジニアはGoやPythonエンジニアより採用が難しいですか?

採用難易度は高い傾向があります。Stack Overflow「2025 Developer Survey」*1ではRustの賞賛度が72%と高い一方、JetBrains調査*3ではRustを専門プロジェクトで使用する開発者は回答者の26%にとどまります。学習コストが高いため、即戦力人材の市場流通量はGoやPythonと比べて少ない傾向があります。

Rust開発の委託費用はどのくらいが目安ですか?

Rustエンジニアの市場単価は相対的に高い傾向があります。正社員採用では年収600万〜1,000万円超の求人が多く*4、フリーランス・業務委託の場合もそれに準じた単価になります。費用については案件規模・期間・委託先によって幅があるため、複数社から見積を取得して比較することをお勧めします。

Rustのunsafeブロックはどのようなケースで使われますか?

unsafeは主に(1)C/C++ライブラリとのFFI連携、(2)ハードウェアへの直接アクセスが必要な組み込みコード、(3)高度なパフォーマンス最適化が必要な特定アルゴリズム実装などで使われます。safe Rustの範囲で実装できる場合にunsafeを使用するのは設計上の問題であるため、委託先の使用方針の確認が重要です。

既存のC/C++コードをRustに移行する場合、段階的に進めることはできますか?

段階的な移行は可能です。RustはFFI(Foreign Function Interface)を通じてC言語の関数を呼び出したり、Rustの関数をC側から呼び出したりする仕組みを持っています。全面書き直しではなく、セキュリティ上の重要度が高いモジュールや新規追加コンポーネントからRustに置き換えていくアプローチが実務では選ばれることが多くあります。

Rustを採用すべきでないプロジェクトはありますか?

Rustが適さないケースも存在します。短期間のプロトタイプ開発・スクリプト処理・チームにRust経験者がいない場合のプロダクション投入などは、学習コストとリードタイムが問題になる場合があります。「パフォーマンスやメモリ保護が要件として明確にある」「システムプログラミング・組み込み・WebAssemblyが対象」という条件が揃う場合に、Rustを選定する根拠が成立します。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

LASSICに相談するメリット

LASSICは元請(プライムベンダー)としてシステム開発・運用保守を受託しており、言語・技術スタックの選定段階から関与する体制を持っています。Rustを含む先端技術領域の案件についても、要件整理・PoC設計・内製移行支援まで一気通貫でご相談いただけます。


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  1. *1 出典:Stack Overflow「2025 Stack Overflow Developer Survey」(2025年)
  2. *2 出典:経済産業省「IT人材需給に関する調査(概要)」(2019年4月)
  3. *3 出典:JetBrains「State of Rust Ecosystem 2025」(2026年2月)
  4. *4 出典:リラシク「【2026年最新版】Rustエンジニアの年収と需要を徹底解説」(2026年)


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