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UI/UXデザイナー不足を外注・委託で補完する進め方
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- UI/UXデザイナーは絶対数が少なく採用リードタイムが長期化しやすいため、外注・業務委託が現実的な補完手段になっています。
- 委託先選定では、ポートフォリオの見た目だけでなくUXプロセスの深さ・Figma連携・ドメイン理解を評価軸に使うことが大切です。
- 発注から稼働までの5ステップと、失敗を防ぐデータ所有権・契約設計のポイントを押さえることで安定した外注体制を築けます。
目次
UI/UXデザイナー採用難の現状と背景
UI/UXデザイナーとは、ユーザーリサーチから情報設計(IA)・プロトタイプ・ユーザービリティテストまでを一貫して担い、製品・サービスの「使いやすさ」と「体験の質」を設計する専門職です。
採用市場では需要が供給を大きく上回る状況が続いており、中途採用を開始しても数か月以内に即戦力を確保できないケースが少なくありません。UX設計・情報設計・プロトタイピングを一人でこなせる人材は特に希少であり、採用担当者が「スキルセットに合う候補者が面接に来ない」と感じる場面は珍しくない状況です。
専門職としての絶対的な人員不足
日本国内でUI/UXデザイナーとして活動している人材は推定約5,200人とされています*1。この推計は情報サービス業の従事者数にデザイナー比率とUI/UX適性率を掛け合わせたものであり、企業の採用需要と比較すると絶対数の少なさが際立ちます。
Indeed上のUI/UXデザイナー求人数は2025年2月時点で約5,000件に達し、同時期に転職活動中のデザイナーを約339名と推計した場合、有効求人倍率は約14.7倍という水準です*1。この倍率はあくまで民間サービスのデータを用いた推計値ですが、採用競争の厳しさを示す目安として参照できます。
年収水準の上昇も採用難に拍車をかけています。正社員UI/UXデザイナーの平均年収は648万円(Indeed調査・2025年10月時点)*2、フリーランス・業務委託の平均年収は847.5万円(フリーランススタート・エン・ジャパン株式会社・2025年10月時点)*3と報告されており、採用コストに加えて処遇引き上げの負担も重くなっています。
採用活動を長期化させる3つの要因
UI/UXデザイナーの採用が長引く背景には、次の3つの要因があります。第一に、評価の専門性の問題です。ポートフォリオの見た目を評価できても、UXリサーチの設計力や情報設計の論理性を見抜くには採用側にもデザイン知識が必要であり、採用基準の設定が難しくなります。
第二に、職能の曖昧さです。UI(画面設計)とUX(体験設計)は密接ですが、求めるスキルの重心が企業ごとに異なります。求人票のミスマッチが生じやすく、応募者との認識齟齬から選考が長引きます。
第三に、フリーランス・業務委託市場の充実です。優秀なUI/UXデザイナーほど正社員として拘束されるより、複数案件を掛け持つ働き方を選ぶ傾向があります。正社員採用で待ち続けるより、業務委託という入口から関係を築くほうが現実的なケースもあります。
採用vs外注—UI/UXデザイナーを確保する選択肢の比較
UI/UXデザイナー不足を解消するアプローチは、大きく「正社員採用」「フリーランス・業務委託」「デザイン制作会社への委託」の3つに整理できます。それぞれの特徴を以下の表で比較します。
| 確保方法 | 稼働開始までの目安 | コスト特性 | スケール柔軟性 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 正社員採用 | 半年〜1年以上かかる場合もある | 採用コスト+固定人件費(平均年収648万円程度*2) | 低い(雇用継続義務あり) | 採用競争が激しく、採用後のオンボーディングにも時間がかかります。 |
| フリーランス・業務委託 | 数週間〜1か月程度 | 月額60〜70万円が相場(クロスデザイナー調査・2024年5月)*4 | 高い(プロジェクト単位で調整可能) | 稼働継続や知識移転の設計が必要です。 |
| デザイン制作会社委託 | 数週間〜数か月(要件定義期間含む) | 成果物単位の見積もりが多く、プロジェクト規模に依存 | 中程度(追加発注で調整可能) | 内製チームとの密接な連携が必要で、仕様変更への対応コストが発生しやすいです。 |
長期的に継続した設計業務が必要なら正社員採用が理想ですが、採用には時間がかかります。プロジェクト単位での補完や採用活動と並行した体制確保が目的なら、フリーランス・業務委託が現実的な選択肢です。
外注・委託を選ぶべき4つのケース
UI/UXデザイナーの外注・業務委託が特に有効なケースを4つ整理します。自社の状況と照らし合わせて、外注が現実解かどうかを判断する材料にしてください。
プロジェクト単位の短期ニーズ
新機能リリースやアプリのリニューアルなど、特定のプロジェクトでUX設計が必要になるケースがあります。このような局所的なニーズに対して正社員を雇用すると、プロジェクト完了後に業務量が減り、処遇を維持し続けることが難しくなります。プロジェクト型の外注であれば、必要な期間だけ専門人材を確保できます。
採用コスト・リードタイムを回避したい
UI/UXデザイナーの採用は、エージェント費用・選考期間・オンボーディング期間を合算すると、実際に戦力となるまでに多くのコストと時間がかかります。外注ならエージェント経由でも数週間程度で稼働できる場合があり、急ぎのプロダクト開発や競合との時間的競争が求められる局面で有効です。
特定スキルだけ補完したい
UXリサーチのみ、Figmaを使ったUIコンポーネント設計のみ、といった特定の工程だけを補完したい場合も外注が向いています。社内のプロダクトマネージャーやエンジニアが担える工程と、専門家に任せるべき工程を切り分けて発注することで、コストを抑えながら品質を担保できます。
内製エンジニアとの協働体制を先に試したい
正社員採用の前に「外部デザイナーと自社開発チームが連携できるか」を試したいケースがあります。業務委託であれば、Figmaのデザインファイル共有・Slackでの非同期コミュニケーション・スプリントレビューへの参加など、実際の協働体制を小さく試してから、関係を継続・深化させる判断ができます。
委託先の選定で確認すべき評価軸
UI/UXデザイナーの外注・業務委託では、委託先の選定が成果を左右します。ポートフォリオの見た目だけで判断すると、実際の設計プロセスや実装との連携で齟齬が生じることがあります。以下の4つの評価軸を基準に候補を絞ることを推奨します。
ポートフォリオで見るUXプロセスの深さ
優れたUI/UXデザイナーのポートフォリオは、完成したビジュアルだけでなく「なぜこの設計にしたか」の過程が示されています。ユーザーインタビューの設計・課題の定義・ワイヤーフレームの変遷・ユーザービリティテスト結果の反映といった、UXリサーチから改善サイクルまでの思考プロセスが記録されているかを確認してください。
「デザインが綺麗かどうか」ではなく「課題解決のプロセスが論理的かどうか」で評価することが大切です。制作背景・課題設定・判断の根拠が明示されているポートフォリオを持つデザイナーは、発注後の設計コミュニケーションも円滑になる傾向があります。
情報設計(IA)・プロトタイプ・ユーザービリティテストの対応範囲
UI/UXデザイナーと一口に言っても、得意工程は個人によって異なります。IA(情報アーキテクチャ)設計からユーザービリティテストまで一貫して対応できる人材は少なく、UIビジュアルに特化した人材とUX上流設計が得意な人材では求める役割が異なります。
発注前に「担当してほしい工程」を整理し、対応可能な範囲を具体的に確認することが大切です。特にユーザービリティテストの設計・実施・結果分析まで対応できるかどうかは、プロダクトの体験品質に直結するポイントです。
Figma・デザインシステムと実装連携の実績
現在のプロダクト開発では、Figma(フィグマ:UIデザイン・プロトタイピングの統合ツール)を使ったデザインシステムの構築と、エンジニアへのハンドオフ(設計仕様の引き渡し)が一般的です。Figmaのコンポーネント設計・Auto Layout・Dev Mode(開発者向け仕様表示)を理解したうえで設計できるかどうかを確認してください。
実装連携の経験が薄いデザイナーに依頼した場合、デザインファイルとコードの乖離が生じ、エンジニアがデザイン通りに実装できないという問題が起きることがあります。フロントエンドエンジニアとの協働経験がある人材を優先すると連携コストを下げやすくなります。
ドメイン理解と業種経験
BtoB業務システム・ECサイト・モバイルアプリ・医療系システムなど、UX設計に求められる知識はドメインによって大きく異なります。過去に類似ドメインの設計経験がある委託先であれば、ユーザーの行動特性や業界特有の制約を踏まえた提案を受けやすくなります。
初期のブリーフィング(要件説明)の段階で、委託先がどの程度のドメイン理解を持っているかを測るために、業務フローや利用ユーザーの特性について質問してみることが参考になります。
発注から稼働までの5ステップ
UI/UXデザイナーの外注・業務委託を初めて進める企業向けに、発注から稼働開始までのステップを整理します。各工程で確認すべきポイントを押さえることで、稼働後の手戻りを減らせます。
ステップ1:委託スコープと職能の整理
「何を・どの工程まで・どのアウトプットで納品してもらうか」を発注前に定義します。UXリサーチ・IA設計・ワイヤーフレーム・UIビジュアル・プロトタイプ・デザインシステム構築のうち、どの工程が必要かを社内で整理してから候補探しに進むことで、要件のミスマッチを防げます。
ステップ2:候補先の探索とスクリーニング
フリーランスエージェント(デザイン専門エージェント・クラウドソーシング)や知人紹介、デザイン制作会社への打診など、複数経路で候補を集めます。最低3〜5名・3〜5社は比較検討することを推奨します。スクリーニング段階でポートフォリオと過去の案件概要を確認し、要件に合いそうな候補を絞り込みます。
ステップ3:ポートフォリオ評価と面談
前述の評価軸(UXプロセスの深さ・対応工程範囲・Figma連携・ドメイン理解)に沿ってポートフォリオを評価します。面談では「このデザインでなぜこの判断をしたか」「エンジニアにどう仕様を伝えるか」といった具体的な質問を通じて、実務力を確認します。
ステップ4:契約締結と条件の明文化
業務委託契約の締結時には、成果物の定義・納期・デザインデータ(Figmaファイルなど)の所有権・秘密保持(NDA)・再委託の可否を明確にします。特にデザインデータの所有権は、委託終了後も社内で継続活用できるよう、契約書に「発注者帰属」と明記することが重要です。
ステップ5:キックオフと定例体制の構築
稼働開始後は、プロダクトの背景・ターゲットユーザー・技術的制約を共有するキックオフミーティングを実施します。週次または隔週の定例を設けて、設計の方向性確認・フィードバック・エンジニアとのハンドオフ状況を継続的に確認する体制を作ることで、外部デザイナーの稼働品質を維持しやすくなります。
外注・委託で失敗しないための3つのリスク管理
UI/UXデザイナーの外注では、期待通りの成果が出ないケースも存在します。よくある失敗パターンとその対策を3点に絞って解説します。
情報引き継ぎとデザインデータの所有権
委託終了時に最も問題になりやすいのが、デザインデータの引き継ぎ漏れです。FigmaファイルやコンポーネントライブラリがデザイナーのPersonalアカウントに紐づいたまま契約終了した場合、社内でデータにアクセスできなくなるリスクがあります。
契約書に「成果物・デザインデータの著作権・所有権は発注者に帰属する」と明記したうえで、稼働中から社内の組織アカウント(Figma Organization等)でデータを管理する運用を徹底してください。委託終了前に引き継ぎドキュメント(デザインシステムの説明・コンポーネント一覧・修正手順)の納品を契約条件に含めることも有効です。
内製エンジニアとの仕様連携
外部デザイナーと内製エンジニアの間で仕様の認識齟齬が生じると、実装後に大規模な修正が発生します。防止策として、Figmaの Dev Mode やコメント機能を活用し、デザイン仕様(余白・フォントサイズ・インタラクション)をデザイナーがエンジニア向けに明示する習慣を作ります。
デザインレビューにエンジニアを参加させ「実装可能かどうか」をデザイン段階で確認するプロセスを設けることも大切です。フロントエンドとデザインの技術的な整合性確保については、実装担当エンジニアとデザイナーが直接会話できる機会を定例に組み込むことが現実的な対策です。
スコープ外の巻き込みを防ぐ契約設計
外注・委託でよくある問題の一つが、当初スコープ外の業務を「ついでに」依頼され続けるケースです。デザイン修正の細かい追加依頼・仕様変更対応・他チームへの説明資料作成などが積み重なると、デザイナーの稼働が圧迫され、本来の成果物の品質が低下します。
スコープ変更が生じた際の追加見積もり・合意プロセスを契約書に定めておくことで、両者の期待値を揃えやすくなります。また、プロジェクトの進捗管理ツール(JiraやNotionなど)でタスクを可視化し、週次で消化量・残量を共有する習慣が、スコープ管理の実効性を高めます。
まとめ:UI/UXデザイナー不足を外注で補完する3つの判断軸
本稿では、UI/UXデザイナーの採用難の背景から、外注・業務委託による補完の進め方・委託先評価・リスク管理まで整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。
第一に、UI/UXデザイナーは国内の専門職の絶対数が少なく、採用競争も激しいため、正社員採用にこだわりすぎるとプロジェクトの遅延につながりやすい状況です。プロジェクト型ニーズや採用活動との並走には、フリーランス・業務委託を現実的な選択肢として検討することが大切です。
第二に、委託先の選定ではポートフォリオの完成度だけでなく、UXリサーチから情報設計・プロトタイプ・ユーザービリティテストまでのプロセス記録と、Figmaを使った実装連携の経験を評価軸に置くことで、稼働後の品質リスクを低減できます。
第三に、デザインデータの所有権・エンジニアとの仕様連携・スコープ管理の3点を契約前・稼働中に整備しておくことが、外注を成果につなげる前提条件です。内製化を将来的に目指す場合でも、外注期間中に設計ドキュメントを社内に蓄積する習慣が、知識移転の基盤になります。
よくある質問
UI/UXデザイナーの業務委託とフリーランス活用は、どのような企業規模に向いていますか。
スタートアップから大手企業まで幅広く活用されています。特に、継続的にデザイン人員を抱えるほどの案件量はないが特定プロジェクトでは専門性が必要、という状況の中小・中堅企業に向いています。正社員採用の準備期間中の補完手段としても有効です。
UI/UXデザイナーを業務委託で採用する際、どの程度の費用を見込めばよいですか。
フリーランスUIデザイナーの月額単価相場は60〜70万円程度が目安とされています(クロスデザイナー調査・2024年5月時点)*4。UXリサーチや上流設計まで対応できる経験豊富なデザイナーは月100万円を超える場合もあります。制作会社への委託は成果物単位の見積もりが多く、プロジェクト規模によって費用が変動します。
社内にデザイナーがいない場合、要件定義はどう進めればよいですか。
デザイナーがいなくても、「改善したいユーザーの体験課題」「想定するユーザー像」「現状の課題(離脱ポイント・操作上の不満等)」を整理することが出発点です。委託先のデザイナーやエージェントに「上流から一緒に整理してほしい」と相談することで、要件定義をサポートしてもらえる場合があります。
UI/UXデザイナーの外注とフロントエンドエンジニアの外注は別に考えるべきですか。
基本的には別の職能として切り分けて考えることをお勧めします。UI/UXデザイナーはリサーチ・情報設計・体験設計が主な役割であり、フロントエンドエンジニアはその設計を実際にコードで実装する役割を担います。双方を同一人物が担えるデザイナー(いわゆるデザインエンジニア)も存在しますが、高単価かつ希少です。まず「どちらのリソースが不足しているか」を明確にしてから委託先を探すと、ミスマッチを防ぎやすくなります。
外注したデザイン成果物の著作権は発注側に帰属しますか。
契約書に明示しない場合、著作権は制作者(受託者)側に帰属するケースがあります。発注側が自由に利用・改変・継続活用できるようにするには、「成果物の著作権は発注者に譲渡する」旨を業務委託契約書に明記することが必要です。Figmaファイルなどのデザインデータの所有権についても同様に、契約段階で明文化することをお勧めします。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:石倉秀明「日本のUI/UXデザイナー市場の動向と将来展望」De:partment(2025年)― Indeedデータと情報サービス業統計を用いた推計値
- *2 出典:Indeed「日本でのUI/UXデザイナーの給与(Indeed調べ)」(2025年10月時点)
- *3 出典:フリーランススタート(エン・ジャパン株式会社)「UI・UXデザイナーのフリーランス求人・案件」(2025年10月時点)
- *4 出典:クロスデザイナー「フリーランスUIデザイナーの採用で押さえておきたい単価の相場やスキルを解説」(2024年5月時点・想定年収819.9万円、月額中央値65万円)