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2026.07.09 らしくコラム

フィーチャーストア構築を外注する判断軸

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

データ基盤のイメージ

この記事のポイント

  • フィーチャーストアとは、学習時と推論時で同じ特徴量を使えるように一元管理し、値のずれを防ぐための基盤です。
  • 保存の仕組みは、履歴を蓄積する「オフラインストア」と、低遅延で最新値を返す「オンラインストア」に分かれます。
  • Feast・Amazon SageMaker Feature Store・Vertex AI Feature Store・Databricks Feature Storeなど、OSSとマネージドサービスの双方に選択肢があります。

フィーチャーストアとは、学習と推論の特徴量を一元管理し不整合を防ぐ基盤

機械学習データのイメージ

フィーチャーストア(特徴量管理基盤)とは、機械学習モデルへの入力となる特徴量を一元的に登録・保存し、学習時と推論時で同じ値を提供する仕組みを指します*1*3。AWSはこの不整合を「トレーニング・サービング・スキュー」と呼び、モデルの精度に影響しかねない一般的な課題だと説明しています*1

特徴量の保存先は、目的に応じて2種類に分けて管理するのが基本的な考え方です。まとまった履歴データを扱う「オフラインストア」と、最新の値を低遅延で返す「オンラインストア」です*1

図
図:フィーチャーストアを構成するオフラインストアとオンラインストアの役割分担

両者は別々の仕組みではなく、同じ特徴量の定義から履歴用と最新値用の両方を作り分ける点が特徴です*1。この関係を理解すると、次章以降の仕組みの違いが把握しやすくなります。

複数のモデルやアプリケーションが同じ特徴量を参照する環境ほど、定義のずれが起きたときの影響範囲は広がりやすくなります。フィーチャーストアを挟んでおけば、どのモデルが同一の特徴量に依存しているかも後から把握しやすくなるでしょう。

MLOpsにおける位置づけ——特徴量管理に特化した基盤

MLOps(機械学習モデルの開発から運用までを継続的に回すための実践方法)は、データ準備・学習・評価・デプロイ・監視まで幅広い工程を対象とします。フィーチャーストアはこのうち、特徴量の定義・保存・提供という一部分に特化した基盤です。

特徴量を一元管理しないまま、学習用と推論用の処理コードを別々に実装すると、同じ特徴量のはずが微妙に異なる値を計算してしまう場合があります*1。Feastは特徴量をバージョン管理されたリポジトリ内でコードとして登録し、データソースとモデルバージョンに紐づける方式でこの課題に対応しています*2

データ基盤(データウェアハウスやデータレイク)からモデルの学習・推論までをつなぐ工程の中で、フィーチャーストアは「特徴量の受け渡し口」を担う中間層と位置づけられます。

一般的なMLOpsの工程は、データ準備・特徴量エンジニアリング・学習・評価・デプロイ・モニタリングの順に並びます。この中でフィーチャーストアが担うのは、特徴量エンジニアリングの結果を後工程の学習・推論へ一貫した形で渡す部分に限られます。

具体的な場面を挙げると、学習時はノートブック上のコードで特徴量を計算し、推論時はアプリケーション側で別のロジックを実装する、という二重実装が典型的な原因です*1。フィーチャーストアはこの二重実装をなくし、同じ計算結果を両方の場面で参照できるようにします*4

オフラインストアとオンラインストアの仕組みの違い——同じ定義から履歴と最新値を生成する

フィーチャーストアの中核は、1つの特徴量定義から履歴データと最新値の両方を作り分ける仕組みです。SageMaker Feature Storeでは、特徴量をバッチまたはストリーミングで取り込み、オフラインストアとオンラインストアの両方、あるいは一方に反映できます*1

ストリーミング取り込みでは同期API(PutRecord)を使い、更新を検知するとすぐに最新値を反映します*1。一方のバッチ取り込みは、まとまったデータをオフラインストアへ書き込む方式です*1。オフラインストアはAppend-only(追記専用)の構成で、過去の全履歴を保持します*1

ストリーミング取り込みには即時反映という利点があります。AWSは、更新を検知するとすぐに新しい値を公開できるため、特徴量の鮮度を高く保てると説明しています*1。鮮度をどこまで求めるかは、モデルが参照する特徴量の性質によって変わってくるでしょう。

両者の役割を整理すると次の通りです。

項目 オフラインストア オンラインストア
主な用途 学習用データセットの抽出・分析*1 リアルタイム推論への特徴量提供*1
保持するデータ 履歴を蓄積する追記型の記録*1 各特徴量の最新値のみ*1
典型的な応答速度 バッチ処理が中心*1 数ミリ秒単位の低遅延読み取り*1*5
取り込み方法 バッチ取り込み*1 ストリーミング取り込み(同期API)*1
典型的な保存基盤 オブジェクトストレージ・DWH(例:S3、BigQuery)*1*5 低遅延KVストア(例:Bigtable)*5

特徴量の定義・共有・バージョン管理——チーム間の再実装を防ぐ

特徴量管理でよく起こる課題は、複数のデータサイエンスチームが同じ特徴量を別々に作り直してしまうことです。Googleはこれを、企業がフィーチャーストアを導入する主な理由の一つとして挙げています*5

Feastでは「フィーチャービュー」という単位で複数の特徴量をまとめ、エンティティ(顧客IDや商品IDなど特徴量が紐づく対象)に関連づけて管理します*2。SageMaker Feature Storeでも、特徴量は「フィーチャーグループ」としてメタデータとともに登録され、名前や説明、作成日といった条件で検索・発見できます*1

Databricksの仕組みは、ガバナンス面をさらに重視した設計です。特徴量テーブルをUnity Catalog(組織全体のデータ資産を一元管理するカタログ)に登録し、系統管理とワークスペース間の共有・発見を可能にしています*4

フィーチャーグループのメタデータには、作成者・データソース・バージョンなどの情報をタグとして追加できます*1。また多くのフィーチャーストアは、運用を始めた後でも特徴量グループのスキーマを追加・変更できる設計になっており、要件の変化に合わせて育てていくことが可能です*1

代表的な選択肢——OSSのFeastとクラウド各社のマネージドサービス

特徴量管理のイメージ

フィーチャーストアは自社で構築するOSSと、クラウドベンダーが提供するマネージドサービスに大きく分かれます。代表的な選択肢を整理すると次の通りです。

名称 提供形態 主な特徴
Feast OSS(自社構築・運用) オンライン・オフライン双方の主要な実装に対応する汎用フレームワークです。特徴量をバージョン管理されたコードとして登録します*2*3
Amazon SageMaker Feature Store AWSマネージド フィーチャーグループ単位でオンライン・オフラインを選べます。オフラインデータはAthenaで直接クエリできます*1
Vertex AI Feature Store Googleマネージド BigQueryをオフラインストアとして使います。Bigtableを中心とした低遅延オンライン提供と組み合わせます*5
Databricks Feature Store Databricksマネージド Unity Catalogに特徴量テーブルを登録します。ガバナンスと系統管理を一体で提供します*4

いずれも学習時と推論時の値を揃える設計思想は共通しています。ただし既存のデータ基盤や運用体制との適合度によって、選択は変わってくるでしょう。

内製と外注の分かれ目——特徴量パイプライン運用の工数で判断する

フィーチャーストアの導入自体は、OSSであれば無償で試せます。ただし本番運用まで見据えると、必要な知識は多岐にわたります。データパイプラインの構築、オンラインストアの低遅延運用、特徴量の鮮度監視、既存のデータ基盤との接続などです*1*2

値のずれを放置すると、学習時に高い精度が出ていたモデルが本番では性能を落とす事態につながりかねません*1。原因の特定にも時間がかかりやすく、運用担当者の負荷が増えていきます。

内製で対応するには、データエンジニアリング・MLOpsパイプラインの設計・利用中のクラウドサービスの運用知識が欠かせません。既存のデータ基盤やアプリケーション構成によって、必要な工数は大きく変わってきます。

専門パートナーに委託する場合は、要件定義からパイプライン構築、運用監視までを一括して依頼できるかどうかが選定の分かれ目になります。内製では既存の運用担当者が通常業務と並行して対応するため、検証に割ける時間が限られる場合があります。

。利用中のクラウドサービスや既存のデータ基盤によって適した構成は変わるため、現状を診断したうえで内製・外注を検討することが実務的です。

まとめ:フィーチャーストア構築で押さえる3つの判断軸

本稿ではフィーチャーストアの仕組みと代表的な選択肢を、公式情報をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、フィーチャーストアは学習時と推論時の特徴量を一元管理し、値のずれを防ぐ基盤です*1。第二に、保存の仕組みは履歴を扱うオフラインストアと低遅延なオンラインストアに分かれ、同じ定義から両方を作り分けます*1*2。第三に、FeastのようなOSSとクラウド各社のマネージドサービスでは運用の負荷が異なり、既存のデータ基盤や運用体制に応じて内製と外注の判断が変わってきます*4*5

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、機械学習基盤・データ基盤の構築・運用を元請(プライムベンダー)として受託しています。特徴量パイプラインの要件定義から、オフライン・オンラインストアの構成設計、既存データ基盤との接続、運用監視までを一貫して対応する体制を整えています。既存の学習・推論環境への影響を抑えながら導入を進めたい企業様は、現状の構成診断からご相談いただけます。

よくある質問

フィーチャーストアはどのような企業に向いていますか。

複数のモデルやチームで同じ特徴量を再利用する機会が多い企業ほど、導入の効果が出やすいといえます*5。Googleは特徴量の再実装によるコスト増を、企業がフィーチャーストアを検討する主な理由の一つとして挙げています*5。モデルの数が少なく特徴量もシンプルな場合は、優先度を見極めることが大切です。

FeastのようなOSSと、クラウド各社のマネージドサービスは何が違いますか。

Feastは自社でインフラを用意して運用するOSSのフレームワークです*3。一方でAmazon SageMaker Feature StoreやVertex AI Feature Storeは、ストレージや低遅延サービングの基盤をクラウド側が管理します*1*5。運用体制と既存のクラウド利用状況によって、適した選択肢は変わってきます。

既存のBigQueryやデータウェアハウスをそのまま使えますか。

Vertex AI Feature Storeでは、BigQueryをそのままオフラインストアとして使う構成が公式に提供されています*5。この構成はデータの重複コピーを避けられる点が特徴です*5。他のサービスでも、既存のデータ基盤との接続方法は選択肢によって異なるため、事前の確認が欠かせません。

train/serving skewとはどのような問題ですか。

train/serving skewとは、学習時と推論時で特徴量の計算方法や値が微妙に異なってしまう現象です*1。AWSはこれをモデルの精度に影響しかねない一般的な課題だと説明しています*1。フィーチャーストアは特徴量の定義と処理コードを一元管理することで、この不整合を抑える設計になっています*1*4

構築を外注する場合、何を確認すればよいですか。

既存のデータ基盤・利用中のクラウドサービスとの接続方法、オンラインストアの低遅延要件への対応方針をまず確認します。加えて、特徴量の鮮度監視や運用フェーズの体制まで委託範囲に含まれるかをすり合わせることが大切です。契約前に検証環境での確認範囲を明確にしておくと、本番移行後のトラブルを抑えやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:AWS「Create, store, and share features with Feature Store」(Amazon SageMaker AI Developer Guide)(https://docs.aws.amazon.com/sagemaker/latest/dg/feature-store.html
  2. *2 出典:Feast「Concepts overview」(Feast公式ドキュメント)(https://docs.feast.dev/getting-started/concepts/overview
  3. *3 出典:Feast公式サイト(https://feast.dev/
  4. *4 出典:Databricks「Feature engineering and serving」(Databricks公式ドキュメント)(https://docs.databricks.com/en/machine-learning/feature-store/index.html
  5. *5 出典:Google Cloud Blog「New Vertex AI Feature Store: BigQuery-Powered, GenAI-Ready」(2023年10月10日)(https://cloud.google.com/blog/products/ai-machine-learning/new-vertex-ai-feature-store-bigquery-powered-genai-ready


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