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クラウド移行アセスメント(現状分析)を外注で進める
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- クラウド移行アセスメント(現状分析)は、既存資産の棚卸しから移行可否・移行方式の判定までを担う移行前の工程です。
- AWS・Azure・Google Cloudは、資産の検出からコスト試算までを支援する専用のディスカバリーツールを提供しています。
- 内製か外注かは、対象資産の規模とツールを運用できる体制の有無によって判断が分かれます。
目次
クラウド移行アセスメントとは、既存資産の棚卸しと移行可否判定を行う工程
クラウド移行アセスメント(現状分析)とは、クラウド移行を計画する前に、既存のサーバー・アプリケーション・データ・ライセンス・依存関係を洗い出し、移行の可否や移行方式(6R)の適性、コスト・リスクを見積もる工程を指します。AWSやAzure、Google Cloudは、この工程を支援する専用のディスカバリーツールをそれぞれ提供しています*1*5*6。
アセスメントは資産棚卸しから始まり、依存関係分析・移行可否判定・コスト試算を経て、最終的な移行計画のインプットになります。次章以降では、各工程で確認すべき点と、外部委託する際の判断軸を整理します。
なぜ移行前にアセスメントが必要か——想定外コストと手戻りのリスク
アセスメントを省略して移行を進めると、想定外のリスクに直面しやすくなります。既存システムの依存関係を把握せずに個別のサーバーだけを移行すると、連携先のシステムが停止したり、移行後に性能要件を満たせなかったりする事態が起こり得ます。
AWS Migration Evaluatorは、オンプレミス環境の過剰プロビジョニングを事前に発見できるとしています*1。リソースを必要以上に確保したまま移行すれば、クラウド側でも同様に過大なコストを払い続けることになりかねません。
ライセンスの扱いも見落とされがちな論点です。Migration Evaluatorは既存ライセンスの持ち込み(BYOL)とライセンス込みの料金プランを比較する機能を備えており*1、この比較を怠るとコスト試算の前提そのものがずれてしまいます。
現状分析で実施する5つの工程——棚卸しから移行計画への反映まで
①資産棚卸し——サーバー・アプリケーション・データの洗い出し
最初の工程は、対象となるサーバー・アプリケーション・データベース・ライセンスの棚卸しです。AWS Application Discovery Serviceは、エージェントレス収集(VMware vCenterを経由する方式)とエージェント型収集(Windows・Linuxへの直接インストール)、ファイルベースの取り込みという3つの方式で、オンプレミス環境のデータを収集する仕組みでした*2。
ただし同サービスは新規顧客への提供を終了しており、AWSは後継としてAWS Transformの利用を案内しています*2*3。AWS Transformは、発見(Discovery)から切り替えまでの移行ライフサイクル全体を自動化するワークベンチとして提供されています*3。
②依存関係分析——システム間の連携を可視化する
棚卸しと並行して欠かせないのが、システム間の依存関係分析です。あるサーバーを先行して移行すると連携する別のシステムに影響が及ぶ可能性があり、ネットワーク接続やプロセスの依存関係を事前に把握しておく必要があります*2。
Azure Migrateも依存関係分析の機能を備え、データセンター内のサーバー間のネットワーク依存関係を可視化することで、重要な依存関係を見落とさずに移行計画を立てられるとしています*5。
③移行可否判定——移行方式(6R)の適性を評価する
棚卸しと依存関係の情報が揃うと、各資産をどの移行方式で扱うかを判定できます。リホスト・リプラットフォーム・リファクター・リパーチェス・リタイア・リテインといった移行方式(6R)ごとの適性を、資産の特性に応じて見極める工程です。
Google Cloud migration centerも、収集した資産情報にもとづき技術的な適合度を評価し、リホスト・リプラットフォーム・リファクターなど複数の移行戦略を提案する機能を備えています*6。移行方式の判定は、このあとの詳細な移行計画に引き継がれます。
④コスト・リスク試算——TCOと移行後の費用を見積もる
移行可否の判定と並行して、コストの試算も進めます。AWS Migration Evaluatorは、オンプレミス環境とクラウド環境の総所有コスト(TCO。導入から運用までを含めた総費用)を比較し、コスト削減の機会を特定する目的で提供されています*1。
Azure Migrateも、オンプレミスとAzureのコストを比較する「ビジネスケース」の作成機能を持ち、キャッシュフローの年次比較や、資本支出から運用支出への構造変化を示せます*5。Google Cloud migration centerも、現在のリソース構成にもとづき将来のクラウド費用を予測するTCOレポートを生成します*6。具体的な費用感は別記事で整理しています。
⑤移行計画への反映——優先順位と実行計画をまとめる
最後の工程は、これまでの結果を移行計画に落とし込むことです。どの資産から着手するか、どの移行方式を採用するか、想定コストとリスクをどう見積もるかを1つの計画書に整理し、実際の移行プロジェクトに引き渡します。
ここまでの現状分析が終わった段階で、実際のシステム・データ移行の実行フェーズに進みます。
組織の移行準備度を測るMigration Readiness Assessment
資産単位の分析に加えて、AWSは組織そのものの移行準備度を評価するMigration Readiness Assessment(MRA)という手法も提供しています。MRAは、AWS CAF(Cloud Adoption Framework。クラウド活用を組織的に進めるための考え方の枠組み)が定めるビジネス・人材・ガバナンス・プラットフォーム・セキュリティ・運用という6つの観点で、組織の現状を質問形式で評価する手法です*4。
この評価によって、自社が今どの段階にあるのか、どこに強みと弱みがあるのかを把握でき、ギャップを埋めるための計画づくりにつながります*4。技術的な資産の棚卸しだけでなく、体制面の準備度も合わせて確認しておくと、移行計画の実現性が高まるといえるでしょう。
ディスカバリーツール比較——AWS・Azure・Google Cloudの主要サービス
資産棚卸しに使う主要なディスカバリーツールを整理すると、次の通りです。
| 項目 | AWS | Azure | Google Cloud |
|---|---|---|---|
| 主なツール | Migration Evaluator/AWS Transform*1*3 | Azure Migrate*5 | migration center*6 |
| 主な機能 | TCO比較・ライセンス比較・依存関係マッピング*1 | 検出・評価・移行を1つの画面で管理*5 | 資産検出・TCOレポート・技術フィット評価*6 |
| 収集方式 | Agentless Collector等の専用収集ツール*1*2 | Azure Migrateアプライアンスまたはコレクター*5 | 自動スキャンまたは手動アップロード*6 |
| 料金 | ビジネスケースの依頼を起点に提供*1 | 無料サービスとして提供*5 | Preview提供・詳細料金は個別確認*6 |
3社とも、資産の検出からコスト試算までを一連のプロセスとして提供している点は共通しています。一方でAzure Migrateは無料サービスと明記されているのに対し、AWS Migration Evaluatorはビジネスケースの依頼を起点とする提供形態であり、料金や利用開始の手続きが異なります*1*5。
マルチクラウドで移行を検討する企業は、対象クラウドごとにツールの提供形態や収集方式が異なる点を踏まえ、どのツールを組み合わせるかを事前に整理しておく必要があります。
内製でアセスメントを進める場合に必要なスキルと工数
アセスメントを内製で進めるには、複数の専門知識が求められます。対象クラウドのディスカバリーツールの操作方法、収集したデータの分析、依存関係の読み解き、移行方式(6R)の判定基準の理解などです*2*5*6。
資産の規模が大きくなるほど、収集したデータの整理と分析に要する工数も増えていきます。既存の運用担当者が通常業務と並行してこの作業を担当する場合、依存関係の見落としや、移行方式の判定に時間を要するといった負荷が生じやすくなります。
。対象システムの数やマルチクラウド構成の有無によって、必要な工数は大きく変わってきます。
内製と外注の判断軸——アセスメントを外部委託する際の進め方
内製か外注かの判断は、対象資産の規模とディスカバリーツールを運用できる体制の有無で分かれます。少数のサーバーであれば自社での対応も選択肢になりますが、複数クラウドやレガシーシステムが混在する環境では、ツールの選定自体に専門知識が要ります。
外部パートナーに委託する場合は、依頼できる範囲を事前に確認することが大切です。資産棚卸しの実施、依存関係分析、移行方式(6R)の判定、コスト・リスク試算、移行計画書の作成までを一括して依頼できるかどうかが、選定の分かれ目になります。
アセスメントの結果は、その後の移行プロジェクトの土台になります。外注する場合も、成果物として棚卸し結果・依存関係図・6R分類・コスト試算・移行計画のインプットを受け取れるかどうかを、契約前に確認しておくとよいでしょう。
まとめ:クラウド移行アセスメントで押さえる3つの判断軸
本稿ではクラウド移行アセスメント(現状分析)の工程と、内製・外注の判断軸を公式情報にもとづき整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、アセスメントは資産棚卸し・依存関係分析・移行可否判定・コスト試算・計画反映という5つの工程で構成されます*1*2*6。第二に、AWS・Azure・Google Cloudはそれぞれディスカバリーツールを提供していますが、料金や収集方式には違いがあります*1*5*6。第三に、対象資産の規模やマルチクラウド構成の有無が、内製と外注を判断する材料になります。
よくある質問
クラウド移行アセスメントにはどのくらいの期間がかかりますか。
対象となるサーバーやアプリケーションの数、依存関係の複雑さによって必要な期間は変わります。ディスカバリーツールによる自動収集を使う場合でも、収集したデータの分析や移行方式の判定には相応の時間を要するため、事前に対象範囲を確定させておくことが大切です。
ディスカバリーツールの利用に料金はかかりますか。
Azure Migrateは無料サービスとして提供されています*5。一方でAWS Migration Evaluatorはビジネスケースの依頼を起点とする提供形態であり*1、Google Cloud migration centerも記事執筆時点ではPreview提供のため、詳細な料金は各社の窓口で確認する必要があります*6。
複数のクラウドを比較検討する場合、ツールは1つに絞るべきですか。
1つに絞る必要はありません。マルチクラウドを検討している場合は、比較対象となる各クラウドのディスカバリーツールをそれぞれ使い、収集したデータを統一した基準で比較する進め方が現実的です。
移行方式(6R)はアセスメントの段階で確定しますか。
アセスメントの段階では、資産ごとの適性を判定する材料が整う段階であり、確定は次の移行計画の工程で行うのが一般的です。判定の詳しい考え方は移行方式に特化した別記事で解説しています。
アセスメントを外注する場合、どのような成果物を受け取れますか。
資産棚卸しの結果、依存関係の可視化資料、移行方式(6R)の分類、コスト・リスクの試算結果、移行計画へのインプットという成果物を受け取れる委託先を選ぶのが基本です。契約前に成果物の範囲を具体的に確認しておくと、移行計画への引き渡しがスムーズになります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:AWS「Migration Evaluator」(https://aws.amazon.com/migration-evaluator/)
- *2 出典:AWS「What is AWS Application Discovery Service?」(AWS Application Discovery Service User Guide)(https://docs.aws.amazon.com/application-discovery/latest/userguide/what-is-appdiscovery.html)
- *3 出典:AWS「AWS Transform」(https://aws.amazon.com/transform/)
- *4 出典:AWS Prescriptive Guidance「Assess phase」(Strategy for Migration and Modernization)(https://docs.aws.amazon.com/prescriptive-guidance/latest/strategy-migration/assess-phase.html)
- *5 出典:Microsoft「About Azure Migrate」(Microsoft Learn)(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/migrate/migrate-services-overview)
- *6 出典:Google Cloud「Migration Center overview」(https://docs.cloud.google.com/migration-center/docs/migration-center-overview)