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貿易管理システム|輸出入・通関の煩雑な実務を仕組み化
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として貿易・輸出入システムの開発・運用を受託
この記事のポイント
- 貿易管理システムは、輸出入・通関の実務(インボイスやパッキングリスト、HSコード、原産地証明、該非判定など)を一つの基盤で扱う仕組みです。書類作成から通関連携、法令確認までを支えます。
- 通関手続きは保税地域を管轄する税関官署への輸入(納税)申告から輸入許可までの一連の流れであり、HSコードの特定が関税額の算定を左右します。
- 一般的なERP・販売管理との違いは、EPAの原産地証明や安全保障貿易管理(該非判定)といった貿易固有業務を扱う点にあります。外注時は法令対応と既存システム連携が確認の軸です。
目次
輸出入・通関の実務が煩雑になる理由——書類と法令が幾重にも絡む
貿易取引では、国内の受発注とは比べものにならない数の書類と法令が関わってきます。輸出者は取引条件を決めたうえで、貨物を輸出できるかどうかを判断し、インボイス(送り状)やパッキングリスト(梱包明細)を整え、税関へ申告し、船積みまでを段取りする必要があります。こうした工程は担当者の経験に依存しやすく、Excelと個別ファイルの手作業で運用している企業も多いのが実情です。
さらに輸出入では、品目ごとにHSコード(輸出入統計品目番号)を特定し、相手国との経済連携協定(EPA)を使うのであれば原産地証明をそろえる作業が加わります。貨物の性質によっては、安全保障貿易管理上の該非判定も欠かせない関門です。工程が一つでも滞れば、通関や船積みのスケジュール全体が後ろ倒しになりかねず、属人的な運用のままでは担当者の不在がそのまま業務の停止につながります。
本稿は、こうした貿易固有の実務を一つの基盤にまとめる「貿易管理システム」について、税関やJETRO、経済産業省などの公式情報をもとに整理します。開発を外注する際に確認したい点まで解説します。
貿易管理システムとは、輸出入・通関の実務を一元管理する仕組み
貿易管理システムとは、輸出入や通関にまつわる一連の業務を一つの基盤で扱う仕組みです。受注や契約の情報をもとに、インボイスやパッキングリストといった貿易書類を作成し、HSコードや原産地の情報を保持し、通関に必要なデータをまとめて管理できるようにします。国内取引を主眼に置いた販売管理システムとは、扱う情報の幅が大きく異なります。
具体的に扱う機能は、企業の取引形態によって幅があります。一般には次のような領域が対象になります。
- 貿易書類の作成・管理:インボイス、パッキングリスト、船荷証券などの書類を、取引データから一貫して作成します。
- HSコードと関税の管理:品目ごとのHSコードを保持し、相手国の関税率や規制の確認に活用します。
- 原産地・EPA管理:経済連携協定を使う際の原産地規則の確認や、原産地証明の準備を支えます。
- 為替・決済管理:外貨建ての取引金額や、信用状(L/C)を用いた決済の情報を管理します。
- 通関連携:通関に必要なデータを整理し、通関業者や電子申告システムとの受け渡しに備えます。
- 該非判定の管理:安全保障貿易管理上の判定結果や関連資料を記録し、輸出可否の確認履歴を残します。
これらの機能は、国内の販売管理システムやERPと重なる部分もありますが、貿易固有の書類と法令対応が中心にある点が特徴です。次章から、通関・輸出入業務の要点を具体的に見ていきます。
通関・輸出入業務の要点——HSコード・原産地証明・該非判定
貿易管理システムが支える業務のうち、実務で負荷が高いのは通関、HSコードの特定、原産地証明、該非判定の4つです。それぞれの要点を、公式情報をもとに整理します。
通関手続き——保税地域を管轄する税関への申告と輸入許可
外国から到着した貨物を国内へ引き取るには、原則として貨物が保管されている保税地域を管轄する税関官署へ、輸入(納税)申告を行う必要があります*1。税関は書類の審査と必要な検査を行い、関税や内国消費税、地方消費税の納付を確認したうえで、輸入を許可する流れです*1。輸入申告は輸入者本人が行うほか、財務大臣の許可を受けた通関業者へ代理・代行を依頼することもできます*1。
なお、関税関係法令以外の法令(他法令)で輸入に許可や承認が必要な貨物は、税関の輸入許可を受ける前に、所管省庁の許可・承認を得ておく必要があります*1。こうした確認漏れは通関の差し戻しにつながるため、システム上で必要書類を管理する意義は小さくありません。
HSコード——関税額の算定を左右する国際共通の品目番号
HSコードは、「商品の名称及び分類についての統一システムに関する国際条約(HS条約)」に基づく品目番号です*2。あらゆる貿易品目を21の部に大分類し、上2桁を類、上4桁を項、上6桁を号として、6桁で国際的に共通化されています*2。2022年7月時点で、159の国およびEUがHS条約に加盟しています*2。
日本国内では、6桁の後ろに統計細分やNACCS用の桁を加えた10桁で運用します*2。輸入申告で用いる関税額の多くはHSコードごとの関税率で計算されるため、コードの特定を誤ると正しい税額を算定できないのが実務上の要点です*2。分類に迷う場合は、輸入前に税関へ品目分類を照会できる事前教示制度が用意されています*3。
原産地証明とEPA——関税優遇の根拠をそろえる
EPA(経済連携協定)を活用すると、輸入国で関税の優遇を受けられる場合があります*4。その根拠となるのが、輸出する品物が協定の原産地規則を満たす「原産品」であることを示す原産地証明です*4。税関は日本からの輸出にあたり、HS番号の確認、EPA対象かどうかの確認、原産地規則の確認、原産性を証明できるかの確認という順に検討する流れを示しています*4。
原産地の証明方式には、第三者機関が発給する特定原産地証明書のほか、輸出者などが自ら申告する自己申告制度があります*4。いずれの方式でも、原産地規則の判断根拠を記録として残す必要があり、システムで品目や原材料の情報を管理する意味は大きいといえます。
該非判定と安全保障貿易管理——輸出できるかどうかの確認
安全保障貿易管理は、大量破壊兵器や通常兵器の開発などに転用されるおそれのある貨物や技術の輸出を、外国為替及び外国貿易法(外為法)に基づいて規制する制度です*5。輸出しようとする貨物や技術が規制リストに該当するかどうかを見極める作業を、該非判定と呼びます*5。該当すれば経済産業大臣の輸出許可が必要となり、非該当であってもキャッチオール規制の確認は別途求められます*5。
キャッチオール規制は、リスト規制の対象品以外でも、用途や需要者に着目して許可を求める仕組みです*6。輸出者が用途や需要者を確認した結果、大量破壊兵器などの開発に用いられるおそれがあると判断される場合(客観要件)や、経済産業大臣から許可申請をすべき旨の通知を受けた場合(インフォーム要件)には、許可申請が必要になります*6。判定結果や確認履歴を残す運用は、監査対応の観点からも欠かせません。
ERP・販売管理システムとの違い——貿易固有業務をどこまで扱うか
ここまで見てきた業務は、国内取引を主眼に置いたERPや販売管理システムだけでは扱いきれない領域を含みます。両者は在庫や会計の面で重なりますが、貿易特有の書類や法令対応の有無が分かれ目です。混同したまま要件を決めると、通関や該非判定の運用が抜け落ちるおそれがあります。
| 観点 | ERP・販売管理システム | 貿易管理システム |
|---|---|---|
| 主な対象業務 | 国内の受発注・在庫・会計 | 輸出入・通関を含む貿易業務*1 |
| 扱う書類 | 見積書・注文書・請求書など | インボイス・パッキングリスト・船荷証券など |
| 品目コード | 自社の商品コードが中心 | HSコード(輸出入統計品目番号)を管理*2 |
| 関税・関連法令 | 想定外のことが多い | 関税率・EPA原産地規則・外為法(該非判定)に対応*4*5 |
| 決済・通貨 | 円建てが中心 | 外貨建て・信用状(L/C)を想定 |
| 通関との連携 | 基本的に対象外 | 通関に必要なデータの整理・受け渡しを想定*1 |
もちろん、ERPの拡張モジュールで貿易業務の一部を賄う構成もあります。重要なのは、自社の輸出入の量や取引国、EPA活用の有無をふまえて、どこまでを一つのシステムで扱うかを見極めることです。既存の販売管理や会計との連携範囲も、あわせて整理しておくと判断がぶれません。
貿易管理システムの開発を外注する際に確認したいこと
貿易管理システムは、法令対応と既存システム連携が品質を左右します。開発を外注する際は、次の点を委託先とすり合わせておくと、後戻りを抑えやすくなります。
対象とする貿易業務の範囲を明確にする
まず、輸出のみか輸入も含むか、EPAや該非判定まで扱うかといった範囲を定めます。範囲があいまいなままだと、通関連携や原産地管理が見積りから抜け落ちがちです。自社の取引の実態を棚卸ししたうえで、優先度を委託先と共有しておくと認識のずれを防げます。
法令・制度改定への追随を確認する
関税率やHSコード、EPAの原産地規則、安全保障貿易管理の規制品目は、制度改定で見直されることがあります*3*6。マスタや判定ロジックをどう更新するか、改定時の保守体制まで含めて確認しておくと、運用開始後の負担を抑えられます。制度情報の一次情報を、税関や経済産業省の公表資料でたどれる体制かどうかも見ておきたい点です。
既存システムとのデータ連携を設計する
貿易管理システムは、販売管理や会計、通関業者や電子申告システムとの間でデータをやり取りします。連携の方式やデータ項目の対応関係を早い段階で設計しておくと、二重入力や転記ミスを減らせます。既存システムの改修範囲も、あわせて見積りに含めることが大切です。
内製移管と保守の体制を見据える
稼働後は、担当者の異動や取引国の追加に応じて設定を変える場面が出てきます。ドキュメントの整備状況や、社内で運用を引き継げるかどうかを、契約前に確認しておきたいところです。外注と内製の切り分けは、自社の貿易実務にどれだけ専任の人手を割けるかで変わってきます。
まとめ:貿易管理システムで輸出入・通関を仕組み化する要点
本稿では、貿易管理システムの役割と、通関・輸出入業務の要点を公式情報に沿って整理しました。ポイントは3つに集約できます。第一に、貿易管理システムはインボイスやHSコード、原産地証明、該非判定といった貿易固有の実務を一つの基盤で扱う仕組みです。第二に、通関は保税地域を管轄する税関への申告から輸入許可までの流れであり、HSコードの特定が関税額の算定を左右します*1*2。第三に、EPAの原産地証明や外為法に基づく該非判定への対応こそが、一般的なERP・販売管理システムとの違いです*4*5。輸出入の量や取引国、EPA活用の有無をふまえ、どこまでを一つのシステムで扱うかを見極めることが、外注の判断の出発点になります。
よくある質問
貿易管理システムと販売管理システムはどう違いますか。
販売管理システムは国内の受発注や在庫、請求を主に扱う仕組みです。貿易管理システムは、これに加えてインボイスやパッキングリスト、HSコード、原産地証明、該非判定といった貿易固有の業務まで対象とします*2*4。輸出入の比重が高い企業ほど、貿易業務を扱える基盤が必要になります。
HSコードは自社で特定する必要がありますか。
HSコードは輸出入の申告に用いる品目番号で、関税額の算定を左右する重要な情報です*2。分類に迷う場合は、輸入前に税関へ品目分類を照会できる事前教示制度を利用できます*3。システム側で品目とHSコードの対応を管理しておくと、申告のたびの確認負担を抑えられます。
EPAの原産地証明にはどのような方式がありますか。
原産地の証明方式には、第三者機関が発給する特定原産地証明書と、輸出者などが自ら申告する自己申告制度があります*4。どちらの方式でも、原産地規則を満たす根拠を記録として残すことが要点です*4。品目や原材料の情報をシステムで管理しておくと、証明の準備を進めやすくなります。
安全保障貿易管理(該非判定)にもシステムで対応できますか。
該非判定そのものは、規制の定義と自社製品の仕様を照らし合わせて人が判断する作業です*5。システムでは、判定結果や確認履歴、根拠資料をひも付けて記録する運用を支えられます。リスト規制に加えてキャッチオール規制の確認も残しておくと、監査や社内点検に対応しやすくなります*6。
開発を外注する場合、何を確認すればよいですか。
対象とする貿易業務の範囲、法令・制度改定への追随方法、既存の販売管理や会計との連携範囲が、まず確認したい項目です。加えて、稼働後の保守体制や内製への引き継ぎやすさもすり合わせておくと、後戻りを抑えやすくなります。検証環境での確認範囲を契約前に明確にしておくと、切替時のトラブルを減らせます。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:税関「1101 輸入通関手続の概要(カスタムスアンサー)」(https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1101_jr.htm)
- *2 出典:JETRO(日本貿易振興機構)「HSコード」(貿易・投資相談Q&A)(https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010701.html)
- *3 出典:税関「品目分類とHS」(https://www.customs.go.jp/zeikan/seido/bunrui_hs.htm)
- *4 出典:税関「EPAの自己申告制度を利用した日本からの輸出について」(https://www.customs.go.jp/roo/information/epa/epa_ex.html)
- *5 出典:JETRO(日本貿易振興機構)「輸出における安全保障貿易管理の規制品目・内容に対する該非の確認方法:日本」(貿易・投資相談Q&A)(https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-001028.html)
- *6 出典:経済産業省「補完的輸出規制(キャッチオール規制)」(https://www.meti.go.jp/policy/anpo/catchall.html )