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2026.07.16 らしくコラム

電子記録債権(でんさい)システム|手形の電子化と資金化

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として業務システムの開発・運用を受託

図1

この記事のポイント

  • 電子記録債権(でんさい)は、電子債権記録機関の記録原簿への電子記録を効力発生の要件とする金銭債権で、手形や売掛債権の問題点を克服する目的で電子記録債権法(2008年12月1日施行)に基づき創設されました。でんさいシステムは、この債権の発生・譲渡・分割・資金化を扱う業務基盤です。
  • 全国銀行協会は2026年度末(2027年3月末)までに電子交換所における紙の手形・小切手の交換枚数をゼロにする目標を掲げており、でんさい等の電子記録債権への切替えが代替手段として位置づけられています。
  • 自社資金を可視化する資金管理(TMS)や、請求書を発行する請求業務とは異なり、でんさいシステムは「債権そのものの電子化と流通」を扱います。外注時は対象業務の範囲、でんさいネットとの接続、会計・販売管理との連携、資金移動を伴うがゆえの内部統制が確認の軸になります。

紙の手形が抱える課題——2026年度末に迫る電子交換所での交換廃止

図2

取引先への支払いに約束手形を使い続けている企業は、いま静かな期限に直面しています。全国銀行協会は、2026年度末(2027年3月末)までに電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにする目標を掲げ、産業界や政府とともに電子化への取組みを進めています*4。金融庁も、2027年度初から電子交換所における手形・小切手の交換を廃止する計画を示しました*5。紙の手形を前提にした支払い・回収の運用は、遠からず見直しを迫られる局面にあるといえるでしょう。

図
図:でんさいが扱う債権の流れ(発生記録→譲渡記録→分割譲渡→割引による資金化→支払期日の自動決済)。

紙の手形には、以前から実務上の負担が指摘されてきました。用紙への記入や押印、取立依頼といった事務が発生し、金額に応じた収入印紙も必要です。現物である以上、保管中の盗難や紛失、郵送中の事故というリスクも避けられません。受取側にとっても、支払期日まで資金が寝てしまい、期日前に資金化するには裏書譲渡や手形割引といった手続きを踏む必要がありました。こうした手形・売掛債権の問題点を克服する目的で創設されたのが、電子記録債権という制度です*1

本稿では、この電子記録債権を扱う「でんさいシステム」について整理していきます。制度の仕組みはでんさいネットや全国銀行協会、金融庁が一次情報を公開しているため、そこで確認できる事実に基づいて解説する構成です。あわせて、当サイトでも扱ってきた資金管理(TMS)や請求業務との違い、システムの中核機能、そして開発を外注する際の確認点まで順に見ていきましょう。

電子記録債権(でんさい)とは——記録原簿への電子記録で発生する金銭債権

電子記録債権とは、電子債権記録機関の記録原簿に電子記録することを、その効力発生の要件とする金銭債権です*1。手形のような紙の券面や、売掛債権のような当事者間の合意ではなく、記録機関の原簿に記録された事実そのものが債権の存在を裏づけます。この制度は、事業者(特に中小企業)の資金調達の円滑化などを図るために創設され、根拠となる電子記録債権法は2007年6月に成立し、2008年12月1日に施行されました*1*3。手形や指名債権(売掛債権等)が抱えてきた問題点を克服した金銭債権という位置づけになります*1

この電子記録債権を全国的な規模で記録・流通させる社会インフラとして運営されているのが、でんさいネットです。運営主体は株式会社全銀電子債権ネットワークで、全国銀行協会が全額を出資して設立した子会社であり、2013年2月18日にサービスを開始しました*3。「でんさい」は同社の登録商標であり、金融機関を通じて全国の企業が同じ仕組みを利用できる点に特徴があります*2。近年は、インターネット・バンキングや基本手数料を不要とした「でんさいライト」も2024年11月に提供が始まっており、利用の裾野は広がりつつあるようです*3

「でんさい」と「でんさいシステム」は、混同されがちですが別のものです。「でんさい」はでんさいネットが扱う電子記録債権そのものを指します。一方で「でんさいシステム」は、自社の債権・債務業務のなかで、でんさいの発生記録の請求や譲渡、割引の申込、支払データの管理といった処理を回すための業務システムを指すのが一般的でしょう。金融機関やでんさいネットが提供する窓口と接続し、自社の会計・販売管理と債権情報をやり取りする役割を担います。手形の発行・受取をシステム化してきた企業が、その延長線上ででんさいへ切り替えるケースも増えています。

電子化によって得られる効用も、一次情報で挙げられています。支払企業では収入印紙が不要となり、郵送のコストも抑えられる点が特徴です。現物がないため盗難・紛失のリスクを下げられ、用紙への記入・押印や取立依頼といった事務の負担も軽くなります。受取企業にとっては、取引金融機関を通じて支払期日前に資金化できる道が開かれる点も利点でしょう*2。こうしたメリットは、手形の電子化を検討する際の出発点になります。

資金管理(TMS)・請求業務との違い——債権そのものの電子化と流通を担う

でんさいシステムを検討するとき、当サイトでも扱ってきた資金管理システム(TMS)や請求書発行・販売管理のシステムと役割が重なるのではないか、という疑問が出やすいところです。結論からいえば、扱う対象がそれぞれ異なります。ここを整理しておかないと、要件が重複したり、逆に肝心の機能が抜け落ちたりしかねません。

資金管理システム(TMS)は、複数の口座やグループ会社にまたがる残高を集約し、「いま自社にいくら資金があり、これからどう動くか」という資金ポジションと資金繰りを可視化する仕組みです。主眼は自社資金の見える化と調達・運用の判断にあります。請求書発行や販売管理のシステムは、取引に基づいて請求データを作成し、売上や入金の状況を管理する仕組みで、いわば「請求という業務プロセス」を担う存在です。どちらも重要ですが、債権を第三者へ譲渡したり、期日前に資金化したりといった「債権の流通」そのものを扱う機能は、本来の目的ではありません。

これに対してでんさいシステムが扱うのは、債権そのものの電子化とその流通です。記録原簿に発生記録を行って債権を生み出し、譲渡記録によって第三者へ移転し、必要に応じて分割し、割引によって支払期日前に現金化する——こうした債権のライフサイクルを電子的に回すことが中心になります*1*2。自社資金の残高を眺める(TMS)のでも、請求書を起票する(請求業務)のでもなく、「債権という資産を電子的に動かす」点が根本的な違いといえるでしょう。三者の関係を整理すると、次の通りです。

観点 資金管理(TMS)/請求・販売管理 電子記録債権(でんさい)システム
主に扱う対象 自社の資金残高・資金繰り/請求データと売上・入金 債権そのもの(電子記録債権)の発生・移転
中心となる役割 資金の可視化と調達・運用判断/請求業務の効率化 債権の電子化と流通(譲渡・分割・割引)*1*2
外部との接続 銀行接続や社内システム連携が中心 金融機関を介したでんさいネットとの接続*3
期日前の資金化 直接の機能ではない 割引により支払期日前に資金化できる*2

もっとも、三者は対立するものではありません。でんさいで受け取った債権の入金予定を資金管理(TMS)の資金繰り予測に取り込んだり、販売管理で確定した売上をもとにでんさいの発生記録を請求したりと、連携させて使うのが現実的です。大切なのは、「資金を見る仕組み」「請求を起こす仕組み」「債権を電子的に動かす仕組み」を切り分けて要件を定めることでしょう。役割を整理しておくと、でんさいシステムの守備範囲と、既存システムとの連携範囲がはっきりします。

でんさいの仕組み——発生記録・譲渡記録・分割譲渡・割引による資金化

図3

でんさいシステムの要件を考えるには、でんさいネットが扱う債権の流れを押さえておく必要があります。中核となるのは、発生記録・譲渡記録・分割譲渡・割引という一連の記録と処理です。ここでは、それぞれの勘所を順に見ていきます。

発生記録——記録原簿に記録して債権を生み出す

でんさいは、でんさいネットの記録原簿に「発生記録」を行うことで発生します*3。手形でいえば振り出しに相当する行為で、支払う側(債務者)または受け取る側(債権者)が、金融機関を通じて発生記録を請求します。記録される内容には、債権金額や支払期日、債務者・債権者の情報などが含まれます。券面という現物を作らず、原簿への記録が債権の存在を裏づける点が、紙の手形との根本的な違いです。支払期日には、債務者の口座から自動的に引き落とされ、債権者の口座へ入金されるため、取立てのために手形を持ち込むといった手続きは要りません*1*3

譲渡記録——債権を第三者へ移転する

受け取ったでんさいは、記録原簿に「譲渡記録」を行うことで第三者へ譲渡できます*3。仕入先への支払いに、受け取ったでんさいをそのまま充てるといった使い方が可能です。紙の手形における裏書譲渡に相当しますが、裏書欄が足りなくなる、といった物理的な制約はありません。電子的な記録として譲渡の履歴が残るため、誰から誰へ債権が移ったかを原簿上でたどれる点も、電子化ならではの特徴でしょう。

分割譲渡——必要な金額だけ分けて譲渡する

でんさいでは、債権を分割して譲渡することもできます*3。紙の手形は、一枚の券面を分割できないため、額面の一部だけを支払いに充てるといった使い方は困難でした。これに対しでんさいは、必要に応じて債権を分割し、その一部だけを譲渡したり資金化したりできます。たとえば額面の大きなでんさいを受け取った企業が、支払いに必要な金額分だけを仕入先へ譲渡し、残りは手元に置く、といった柔軟な運用が可能になります。この分割譲渡は、手形にはなかった電子記録債権ならではの利点として挙げられることが多い機能です。

割引——支払期日前に資金化する

手元のでんさいは、取引金融機関を通じて支払期日前に資金化できます*2。これが割引にあたる仕組みで、期日を待たずに現金が必要な場合に、金融機関がでんさいを買い取る形で早期の資金化を可能にします。前述の分割譲渡と組み合わせれば、保有するでんさいのうち必要な金額分だけを割引に回し、残りは期日まで保有する、といった選択もできます。資金繰りの調整弁として使える点は、受取側にとって実務的なメリットになるでしょう。ただし割引には金融機関ごとの条件が伴うため、実際の可否や費用は取引金融機関に確認する必要があります。

これら発生・譲渡・分割・割引の各処理は、金融機関を介してでんさいネットの記録原簿へ反映されます。でんさいシステムを構築する際は、自社の債権・債務業務のどこで、どの記録を、どのタイミングで請求するかを設計し、金融機関やでんさいネットとの接続、そして会計・販売管理とのデータ連携につなげていくことになります。

電子記録債権(でんさい)システムの開発を外注する際に確認したいこと

でんさいシステムは、でんさいネットとの接続、既存システムとの連携、そして資金移動を伴うがゆえの内部統制が品質を大きく左右します。開発を外注する際は、次の点を委託先とすり合わせておくと、後戻りを抑えやすくなります。

対象とする債権・債務業務の範囲を明確にする

まず、でんさいで扱う業務の範囲を洗い出すことが出発点です。支払側として発生記録の請求を行うのか、受取側として譲渡・分割・割引まで活用するのか、あるいは双方を担うのかによって、必要な機能は変わります。既存の手形業務のうち、どこまでをでんさいに置き換えるのかも論点になるでしょう。範囲があいまいなままだと、分割譲渡や割引といった機能が見積りから抜け落ちがちです。自社の取引実態と、支払・回収のどちらに重心があるかを整理し、優先度を委託先と共有しておきましょう。

でんさいネット・金融機関との接続方式を確認する

でんさいの発生記録や譲渡記録は、金融機関を通じてでんさいネットへ請求します*3。したがって、取引金融機関がどのような窓口やインターフェースを提供しているか、自社システムからどう連携するかを、早い段階で確認しておくことが大切です。金融機関によって提供される接続の形態は異なるため、対象とする金融機関を前提に、接続方式や連携できるデータの範囲を委託先と詰めておくと、後工程の手戻りを減らせます。この確認を後回しにすると、設計の前提が崩れかねません。

会計・販売管理とのデータ連携を設計する

でんさいの発生・譲渡・入金の情報は、会計処理や債権管理と密接に結びつきます。販売管理で確定した売上をもとに発生記録を請求し、でんさいの入金予定を資金管理(TMS)の資金繰り予測へ取り込み、消込を会計と整合させる——こうした連携の方式をあらかじめ設計しておくことが重要です。連携のデータ様式やタイミングを早めに固めておくと、二重入力や転記ミスを抑えられます。既存システムの改修範囲も、あわせて見積りに含めておきましょう。

内部統制・セキュリティと保守体制を見据える

でんさいシステムは、債権の発生や譲渡、資金化という、実際の資金移動につながる操作を扱います。そのため、会計システム以上に内部統制とセキュリティが問われます。誰がどの記録を請求・承認できるかの権限管理、承認フロー、操作ログの保全といった仕組みを、要件の段階から組み込んでおく必要があるでしょう。金融機関との接続に用いる認証情報の管理方法も重要な論点です。あわせて、制度や金融機関側の仕様が変わった際にどう追随するか、改定時の保守体制まで含めて確認しておくと、運用開始後の負担を抑えられます。稼働後の内製移管を見据えるなら、ドキュメントの整備状況も確かめておきたいところです。

まとめ:手形の電子化と資金化を仕組み化する要点

本稿では、電子記録債権(でんさい)とそれを扱うでんさいシステムについて、でんさいネット・全国銀行協会・金融庁の一次情報に沿って整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、でんさいは記録原簿への電子記録を効力発生の要件とする金銭債権であり、手形・売掛債権の問題点を克服する目的で電子記録債権法に基づき創設されました*1。第二に、自社資金を可視化する資金管理(TMS)や請求業務とは異なり、でんさいシステムは債権そのものの電子化と流通——発生・譲渡・分割・割引——を扱う点に本質があります*2*3。第三に、外注時は対象業務の範囲、でんさいネット・金融機関との接続、会計・販売管理との連携、そして資金移動を伴うがゆえの内部統制が確認の軸になります。2026年度末に迫る紙の手形・小切手の交換廃止という期限も踏まえ、自社の取引実態を棚卸ししたうえで、どこまでをでんさいへ切り替えるかを見極めることが、検討の出発点になるといえるでしょう*4*5

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)として業務システムの開発・運用を受託しています。電子記録債権(でんさい)システムでは、扱う債権・債務業務の範囲整理から、金融機関を介したでんさいネットとの接続設計、会計・販売管理・資金管理(TMS)とのデータ連携、資金移動を伴うがゆえの内部統制・セキュリティ設計、制度改定への追随や内製移管までを一貫して支援します。手形からの切替えの検討段階からでも、ご相談いただけます。

よくある質問

電子記録債権(でんさい)と手形は何が違うのですか。

手形が紙の券面を前提とするのに対し、でんさいは電子債権記録機関の記録原簿への電子記録を効力発生の要件とする金銭債権です*1。券面がないため、収入印紙が不要になり、盗難・紛失のリスクを下げられ、記入・押印や取立依頼といった事務負担も軽くなります*2。また支払期日には自動で入金・引落が実行され、必要に応じて債権を分割して譲渡することもできます*3

「でんさい」と「でんさいシステム」はどう違いますか。

「でんさい」は、でんさいネット(株式会社全銀電子債権ネットワーク)が扱う電子記録債権そのものを指す登録商標です*2。一方「でんさいシステム」は、自社の債権・債務業務のなかで、でんさいの発生記録の請求や譲渡、割引の申込、支払データの管理といった処理を回すための業務システムを指すのが一般的です。金融機関やでんさいネットの窓口と接続し、会計・販売管理と債権情報を連携させる役割を担います。

でんさいを支払期日前に資金化することはできますか。

取引金融機関を通じて、支払期日前に資金化できます*2。これが割引にあたる仕組みで、期日を待たずに現金が必要な場合に活用できます。でんさいは債権を分割して譲渡することもできるため、必要な金額分だけを資金化し、残りは期日まで保有するといった運用も可能です*3。ただし割引の可否や費用は金融機関ごとの条件によるため、取引金融機関への確認が必要になります。

紙の手形はいつまで使えるのですか。

全国銀行協会は、2026年度末(2027年3月末)までに電子交換所における手形・小切手の交換枚数をゼロにする目標を掲げ、電子化への取組みを進めています*4。金融庁も、2027年度初から電子交換所での手形・小切手の交換を廃止する計画を示しています*5。廃止に向けて、でんさい等の電子記録債権やインターネットバンキングによる振込への切替えが代替手段として案内されています*4

でんさいシステムの開発を外注する場合、何を確認すればよいですか。

まず、支払側・受取側のどちらを担い、発生・譲渡・分割・割引のどこまでを扱うか、対象業務の範囲を整理します。次に、取引金融機関を介したでんさいネットとの接続方式を確認します*3。会計・販売管理・資金管理(TMS)とのデータ連携方式も設計しておくとよいでしょう。加えて、資金移動につながる操作を扱うため、権限管理・承認フロー・操作ログといった内部統制とセキュリティを要件段階から組み込むことが重要です。制度・金融機関仕様の改定への追随と保守体制もすり合わせておきましょう。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:でんさいネット(株式会社全銀電子債権ネットワーク)「電子記録債権とは(でんさいアカデミー)」(https://www.densai.net/about/academy/origin/ )
  2. *2 出典:でんさいネット(株式会社全銀電子債権ネットワーク)「でんさいネットについて」(https://www.densai.net/about/ )
  3. *3 出典:一般社団法人 全国銀行協会「全銀電子債権ネットワーク(でんさいネット)」(https://www.zenginkyo.or.jp/abstract/efforts/system/densai/ )
  4. *4 出典:一般社団法人 全国銀行協会「紙の手形・小切手 利用廃止へ」(https://www.zenginkyo.or.jp/tegata-kogitte-haishi/ )
  5. *5 出典:金融庁「手形・小切手機能の全面的な電子化について」(https://www.fsa.go.jp/policy/tegatakogitte/tegatakogitte.html )


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