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2026.07.17 らしくコラム

クレーム管理システム|苦情対応の記録と再発防止を仕組み化

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として業務システムの開発・保守を受託

クレーム管理のイメージ

この記事のポイント

  • クレーム管理システムは、苦情の受付・記録から原因分析、是正処置、再発防止、VOC(顧客の声)の集計・傾向分析までを一元化し、対応の履歴を組織に残す仕組みです。
  • 苦情対応の国内規格JIS Q 10002:2019は「受理・追跡・調査・対応・是正処置・再発防止」を含む苦情対応プロセスの指針を示しており、システム設計の下敷きになります。
  • 問い合わせ管理やヘルプデスクが「回答して完結」を主眼とするのに対し、クレーム管理は「記録と再発防止・品質改善への連携」に軸足を置く点が違いになります。

苦情対応が属人化し、記録も再発防止も社内に残らないという課題

苦情対応のイメージ

顧客からの苦情は、電話・メール・フォーム・営業担当への口頭連絡など、複数の入口から日々届きます。ところが受付の窓口が分かれていると、誰がいつ何を受け、どこまで対応したのかが担当者の記憶やメールボックスに閉じてしまいがちです。担当者が不在のときに二次連絡が入り、経緯が引き継がれないまま対応が止まる、といった事態も起こります。

図
図:クレーム管理システムが受け持つ苦情対応の流れ(受付・記録→初期評価→調査・是正→再発防止→VOC分析)

対応そのものは一件ごとに片づいても、記録が残らなければ「同じ原因の苦情が何度も届いている」という事実に気づけません。件数や種類を後から集計しづらく、経営や品質部門へのフィードバックも遅れがちです。苦情対応の国内規格であるJIS Q 10002:2019も、記録を利用・管理する手順を定めていない場合、苦情対応が形骸化しやすい点に触れています*1

クレーム管理システムは、こうした「受付の分散」「記録の欠落」「再発防止の不在」という3つの課題に対して、受付から記録・分析・改善までを一本の流れでつなぐ役割を担います。本稿では、その中身と、問い合わせ管理との違い、開発を外注する際の確認点を、公的な情報をもとに整理していきます。

クレーム管理システムとは——苦情対応プロセスを記録として残す仕組み

クレーム管理システムとは、顧客から寄せられた苦情の受付・記録・追跡・調査・対応・再発防止までを一元管理し、対応履歴とその傾向を組織の資産として残すための仕組みです。設計の下敷きになるのが、苦情対応マネジメントの国内規格JIS Q 10002:2019(ISO 10002:2018に対応)になります*1*2

この規格の正式名称は「品質マネジメント−顧客満足−組織における苦情対応のための指針」です*1。苦情を「製品若しくはサービス又は苦情対応プロセスに関して、組織に対する不満足の表現であって、その対応又は解決を、明示的又は暗示的に期待しているもの」と定義しています*1。公益社団法人消費者関連専門家会議(ACAP)の解説によると、この規格は2005年に制定され、2015年、2019年と改訂されてきました*3

JIS Q 10002は認証を義務づける規格ではなく、苦情対応プロセスの計画・設計・運用・改善についての「指針」を提供するものです*1。そのため、規格をそのまま導入するというより、自社の苦情対応の設計思想として参照し、システムの要件に落とし込む使い方が現実的でしょう。ACAPは、苦情対応プロセスを通じて得た情報が製品・サービスやプロセスの改善につながる点を、この規格の意義として挙げています*3

規格が示す苦情対応プロセスは、コミュニケーション、受理、追跡、受理通知、初期評価、調査、対応、決定事項の伝達、苦情対応の終了、という段階で構成されます*4。クレーム管理システムは、これらの段階をシステム上の状態(ステータス)として管理し、どの苦情がどの段階にあるのかを可視化する道具だと捉えると理解しやすくなります。

問い合わせ管理との違い——記録と再発防止・品質改善に軸足を置く

クレーム管理システムは、問い合わせ管理システムやヘルプデスクツールと機能が重なる部分があります。ただし、主眼の置き方が異なる点は見逃せないところです。問い合わせ管理は「届いた質問に正確かつ迅速に回答し、その場で完結させる」ことを中心に据えます。一方でクレーム管理は、回答して終わりではなく、その先の「記録・原因分析・再発防止・品質改善への連携」に軸足を置きます。

JIS Q 10002は、苦情を分類・分析し「システム的問題なのか、単発的問題なのか又は繰り返し発生する問題なのか、傾向を明確にする」ことを求めています*1。さらに「苦情の再発及び発生を予防するために、現存する問題及び苦情につながる潜在的な問題の原因を除去する処置をとる」ことも明記しています*1。つまりクレーム管理では、一件の対応が完了した後にこそ、原因分析と再発防止という次の工程が控えているわけです。

この違いは、蓄積した情報の使い道にも表れます。問い合わせ管理では「よくある質問」をFAQ化して自己解決を促す方向に向かうことが多いのに対し、クレーム管理では蓄積した苦情をVOC(Voice of Customer、顧客の声)として集計し、製品・サービスや業務プロセスそのものの改善につなげます。消費者庁も、消費者の声を起点に企業価値の向上と社会課題の解決を同時に目指す「消費者志向経営」を推進しており、苦情や相談を経営に活かす発想はこうした潮流とも重なります*5

したがって、既存の問い合わせ管理やチャットボットと併用しつつ、苦情に特化した記録・分析・改善の層を別に持つ、という構成も選択肢になります。両者は競合するものではなく、役割分担で補い合う関係だと考えられます。

機能要素——受付記録・原因分析・是正処置・VOC分析の4本柱

品質改善のイメージ

クレーム管理システムに求められる機能を、JIS Q 10002が示す苦情対応プロセスに沿って4つの柱に整理します*1*4

1. 苦情の受付・一次対応と記録

複数の入口から届く苦情を一つの台帳に集約し、受け付けた時点で識別コードを付けて記録します。JIS Q 10002は、最初に苦情が報告された時点で確認できた情報と識別コードを記録すること、そして受理をただちに申出者へ通知することを求めています*4。システム化することで、受付日時・対応者・対応状況が自動的に履歴として残り、担当者が代わっても経緯を引き継げるようになります。個人情報を含む記録の識別・収集・分類・保管・廃棄の手順を定めておく点も、規格が触れているところです*1

2. 原因分析・是正処置・再発防止

受け付けた苦情は、重大性や影響度などの基準で初期評価を行い、優先度を付けて調査へ進めます*1。調査で原因を特定したうえで、その場の是正だけでなく、原因を除去して再発を防ぐ処置まで踏み込むのがクレーム管理の要点です*1。システム上では、苦情に対して原因区分・是正内容・再発防止策をひも付けて記録し、後から「同種の原因がどれだけ繰り返されているか」を追える形にしておきます。

3. エスカレーションと対応期限の管理

重大な苦情や解決が長引く案件は、担当者だけで抱えず、上位者や関連部門へ引き上げる必要があります。JIS Q 10002は、苦情を性質に応じてできる限り迅速に対応することを原則の一つに挙げています*1。システムに対応期限やエスカレーションの条件を設定しておけば、期限が近づいた案件を通知したり、一定時間を過ぎた案件を上位者に自動で引き上げたりでき、対応の遅れや放置を防ぎやすくなります。

4. VOC集計・傾向分析と品質改善への連携

蓄積した苦情は、種類・原因・製品・発生部門などの切り口で集計し、傾向を可視化します。JIS Q 10002が求める分類・分析は、単発の問題と繰り返し発生する問題を切り分け、優先して手を打つべき領域を見極めるための土台になります*1。この集計結果を品質部門や開発部門へ定期的にフィードバックし、製品・サービスやプロセスの改善に反映する流れをつくることで、苦情対応が「処理」から「改善の起点」へと変わっていきます。規格も、苦情対応プロセスの継続的改善を通じて製品・サービスの品質を継続的に改善できる、としています*1

開発を外注する際に確認したい5つの点

クレーム管理システムは、パッケージ製品やSaaSの活用で足りる場合もあれば、既存の基幹システムや問い合わせ管理と連携させるために個別開発を選ぶ場合もあります。外部のパートナーへ開発を委託する際に、事前にすり合わせておきたい点を5つ挙げます。

第一に、対応プロセスの設計です。自社の苦情対応をどの段階(受付・初期評価・調査・是正・再発防止・終了)に分け、それぞれをどのステータスで管理するかを、JIS Q 10002の枠組みを参照しながら定義しておくと、要件が明確になります*1*4。第二に、既存システムとの連携範囲です。問い合わせ管理・CRM・基幹システムのどこまでとデータをやり取りするのか、受付チャネル(メール・フォーム・電話記録)をどう取り込むのかを整理します。

第三に、個人情報の取り扱いと権限設計です。苦情には氏名・連絡先や取引内容が含まれるため、閲覧・編集の権限をどう分けるか、記録の保管期間と廃棄の手順をどうするかを設計段階で詰めます*1。第四に、集計・分析の要件です。どの切り口で傾向を見たいのか、レポートを誰にどの頻度で共有するのかを具体化しておくと、後からの手戻りを抑えられます。第五に、運用・保守の体制です。公開後の項目追加やワークフロー変更、障害時の対応をどこまで委託先が担うのかを、契約の範囲として明確にしておくことが望まれます。

これらを整理せずに開発へ進むと、「記録はできるが分析ができない」「連携の範囲が曖昧で二重入力が残る」といったずれが生じやすくなります。要件定義の段階で、対応プロセスと分析の目的を言語化しておくことが、実務上の分かれ目になります。

まとめ:クレーム管理システムで押さえる3つの判断軸

本稿では、クレーム管理システムの中身を、苦情対応の国内規格JIS Q 10002:2019を軸に整理してきました。要点は3つに集約できます。第一に、クレーム管理システムは苦情の受付・記録から原因分析、是正処置、再発防止、VOC分析までを一元化し、対応履歴を組織に残す仕組みだという点です*1。第二に、問い合わせ管理が回答して完結させることを主眼とするのに対し、クレーム管理は記録と再発防止・品質改善への連携に軸足を置きます*1。第三に、外注の際は対応プロセスの設計、既存システム連携、個人情報の権限設計、集計要件、運用体制という5点を要件定義で言語化しておくことが、実装後のずれを抑える鍵になります。苦情という顧客の声を、処理で終わらせず改善へつなぐ設計こそが、このシステムの価値だといえます。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、業務システムの開発・保守を元請(プライムベンダー)として受託しています。苦情対応プロセスの整理から、受付・記録・是正・再発防止・VOC分析までを見据えた要件定義、既存の問い合わせ管理や基幹システムとの連携、公開後の運用・保守まで、一貫して対応する体制を整えています。現状の苦情対応フローの棚卸しから、内製・外注の切り分けまでご相談いただけます。

よくある質問

クレーム管理システムと問い合わせ管理システムはどう違いますか。

問い合わせ管理は届いた質問へ回答してその場で完結させることを主眼とします。これに対しクレーム管理は、回答後の記録・原因分析・是正処置・再発防止、そしてVOCとしての傾向分析と品質改善への連携に軸足を置きます*1。両者は競合せず、役割分担で併用する構成も選べます。

JIS Q 10002の認証を取得しないと導入できないのですか。

いいえ。JIS Q 10002:2019は認証を義務づける規格ではなく、苦情対応プロセスの計画・設計・運用・改善についての指針を提供するものです*1。認証取得は必須ではなく、規格を自社の苦情対応やシステム要件の設計思想として参照する使い方が一般的です*3

既存の問い合わせ管理やCRMと連携できますか。

連携範囲は要件定義で決める事項になります。受付チャネル(メール・フォーム・電話記録)の取り込みや、問い合わせ管理・CRM・基幹システムとのデータ連携をどこまで行うかを整理したうえで設計します。連携範囲が曖昧なまま進めると二重入力が残りやすいため、事前のすり合わせが大切です。

苦情の記録に含まれる個人情報はどう扱えばよいですか。

苦情には氏名・連絡先や取引内容が含まれることが多く、記録の識別・収集・分類・保管・廃棄の手順をあらかじめ定めておく必要があります*1。システム側では閲覧・編集の権限を役割ごとに分け、保管期間と廃棄の運用を設計段階で詰めておくと、後からの手戻りを抑えられます。

開発を外注する場合、まず何を準備すればよいですか。

自社の苦情対応を受付・初期評価・調査・是正・再発防止・終了といった段階に分け、それぞれをどのステータスで管理するかを言語化しておくと要件が明確になります*4。あわせて、集計したい分析の切り口と、レポートの共有先・頻度を具体化しておくと、開発後のずれを抑えやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:日本規格協会「JIS Q 10002:2019 品質マネジメント−顧客満足−組織における苦情対応のための指針」(JIS検索・kikakurui.com掲載)(https://kikakurui.com/q/Q10002-2019-01.html
  2. *2 出典:ISO「ISO 10002:2018 Quality management — Customer satisfaction — Guidelines for complaints handling in organizations」(ISO公式)( https://www.iso.org/standard/71580.html )
  3. *3 出典:公益社団法人消費者関連専門家会議(ACAP)「Q2. ISO 10002/JIS Q 10002とはどのような規格ですか。」(https://www.acap.or.jp/activity/iso10002/i002/
  4. *4 出典:公益社団法人消費者関連専門家会議(ACAP)「Q4. ISO 10002/JIS Q 10002はどのような内容ですか。」(https://www.acap.or.jp/activity/iso10002/i004/
  5. *5 出典:消費者庁「消費者志向経営の推進」( https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_partnerships/consumer_oriented_management/ )


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