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会計事務所向け業務システム|顧問先・申告・進捗を一元管理
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として業務システムの開発・運用を受託
この記事のポイント
- 会計事務所向け業務システムは、顧問先の管理と担当割り当て、申告・決算の進捗と税務カレンダー(期限管理)、資料・証憑の回収と共有、報酬請求・工数管理を核とする「事務所運営」の基盤です。記帳や仕訳を担う会計ソフトとは役割が分かれます。
- 汎用の会計ソフトや顧客管理(CRM)とは領域が異なります。会計事務所向け業務システムは、多数の顧問先ごとに異なる決算期と申告期限を担当者別に把握し、資料の回収状況まで一元的に追えるように設計する点で切り分けて要件を定めることが出発点になります。
- 法人税の確定申告は事業年度終了日の翌日から2か月以内、所得税は原則2月16日から3月15日までと、顧問先ごとに期限が分散します。外注時は顧問先・担当管理、申告決算の進捗、資料回収、報酬工数、既存の会計ソフトやe-Tax・eLTAXとの連携が確認の軸になります。
目次
顧問先と申告の期限管理が「Excelと担当者の記憶」で回らなくなる——会計事務所が抱える課題
会計事務所や税理士法人では、顧問先ごとに決算期が異なり、それぞれに月次の巡回監査、決算、申告という期限が積み重なります。担当者ごとに受け持つ顧問先が違ううえ、資料の回収状況も先方の事情でばらつくため、事務所全体でいまどの顧問先がどの工程にいるのかが見えにくくなりがちです。顧問先が増えるほど、この分散は静かに繁忙期のボトルネックへと変わっていきます。
期限の分散が悩ましいのは、単なる非効率にとどまらないからです。法人税の確定申告書の提出期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内とされており*2、顧問先の決算期がばらつく事務所では、毎月のように別々の期限が到来します。個人の所得税の確定申告は原則2月16日から3月15日まで*3と時期が集中するため、繁忙期には資料回収の遅れが申告の遅延に直結しかねません。
資料・証憑の回収も見落とせない論点でしょう。どの顧問先から何がまだ届いていないのかが担当者の頭の中にしかない状態では、事務所として抜け漏れを検知できません。電子帳簿保存法では令和6年1月から電子取引データの保存が義務化されており*6、顧問先とやり取りする証憑の形も紙と電子が混在しているのが実情です。本稿では、こうした課題に応える「会計事務所向け業務システム」について、その役割と中核機能、会計ソフトや汎用CRMとの違い、開発を外注する際の確認点を、税理士法や国税庁の一次情報を確認しながら整理していきます。
会計事務所向け業務システムとは——顧問先・申告・進捗を一元管理する事務所運営の基盤
会計事務所向け業務システムとは、会計事務所や税理士法人が抱える顧問先の情報と担当割り当て、申告・決算の進捗と税務カレンダー(期限管理)、資料・証憑の回収と共有、そして報酬の請求と工数の集計までを一元的に管理する、事務所運営の基盤を指します。顧問先の帳簿を記帳するための道具ではなく、多数の顧問先への対応を事務所としてさばくために設計される点に、この仕組みの本質があるといえるでしょう。
具体的には、顧問先ごとに決算期・申告区分(法人税・所得税・消費税など)・契約している業務範囲・担当者を保持し、申告や納付の期限が近づいた案件を自動で抽出します。担当者は自分の受け持つ顧問先の進捗を一覧で確認し、事務所の管理者は全体の負荷や遅延の兆しを俯瞰できるようになります。属人的だった対応履歴を、根拠と証跡のある仕組みへ置き換えるわけです。
この一元化がもたらす価値は、事務の効率化だけにとどまりません。税理士業務は、税理士法第2条が定める税務代理・税務書類の作成・税務相談を中核とする専門業務であり*1、期限内の適正な申告が事務所の信頼の土台になります。顧問先ごとの進捗と期限を仕組みで可視化しておくと、誰が対応しても一定の手順が踏まれ、レビューの証跡が残る状態を保ちやすくなるでしょう。この状態は、繁忙期の負荷平準化という観点からも意味を持ちます。
会計ソフト・汎用CRMとの違い——「記帳」でも「営業管理」でもなく「事務所運営」に特化する
会計事務所向け業務システムを検討する際、「会計ソフトや一般的なCRMで代用できるのでは」という疑問が生じやすいところです。いずれも顧客や数字を扱うため混同されがちなのですが、三者は前提とする業務がはっきり異なります。この違いを整理しておかないと、肝心の期限管理や資料回収の機能が抜け落ちたまま導入が進みかねません。
会計ソフトは、仕訳の入力や試算表・決算書の作成といった「記帳・会計処理」を担う道具です。顧問先の帳簿そのものを作る局面で力を発揮しますが、事務所が抱える多数の顧問先の申告期限を担当者別に束ねて管理したり、資料の回収状況を追ったりする用途は主目的ではありません。一方の汎用CRMは、業種を問わず見込み客や商談の進捗を管理する営業支援の道具であり、税務特有の申告区分や期限の考え方は標準では持ち合わせていないのが一般的でしょう。
これに対して会計事務所向け業務システムは、顧問先という既存の契約先を軸に、決算期・申告期限・担当・資料・報酬を横串で管理する「事務所運営」に特化します。言い換えれば、会計ソフトは「顧問先の帳簿を作る」土台、CRMは「新規の商談を追う」土台、業務システムは「顧問先対応そのものを回す」土台だと整理できます。三者は対立するものではなく、会計ソフトと連携させ、CRMで獲得した見込み客を顧問先として引き継ぐ構成も現実的です。守備範囲が違うため、要件は切り分けて定める必要があります。三者の関係を整理すると、次の通りです。
| 観点 | 会計事務所向け業務システム | 会計ソフト | 汎用CRM |
|---|---|---|---|
| 主目的 | 顧問先対応と事務所運営の管理 | 記帳・仕訳と決算書の作成 | 見込み客・商談の営業管理 |
| 中心に置く対象 | 顧問先・担当・申告期限 | 勘定科目と取引データ | リードと案件のパイプライン |
| 期限の扱い | 申告・納付期限を税務カレンダーで一元管理 | 決算処理の締めが中心 | 商談の期日管理が中心 |
| 資料・証憑 | 回収状況の可視化と共有を組み込む | 仕訳の根拠として保存 | 標準機能としては想定されにくい |
当サイトでは汎用の会計システムや顧客管理(CRM)についても別途取り上げています。帳簿の作成そのものを効率化したい場合は会計ソフト、新規開拓の営業を管理したい場合はCRMが対象になり、本稿で扱う会計事務所向け業務システムは、顧問先対応の管理を事務所全体で仕組み化したい事務所向けの選択肢だと理解しておいてください。
中核となる4つの機能要素——顧問先管理・申告決算の進捗・資料回収・報酬工数
会計事務所向け業務システムの要件を考えるうえで、中核となる機能は大きく4つに整理できます。顧問先の管理と担当割り当て、申告・決算の進捗と税務カレンダー、資料・証憑の回収と共有、そして報酬請求と工数管理です。順に勘所を見ていきましょう。
顧問先の管理と担当割り当て
システムの土台になるのが、顧問先台帳の管理です。顧問先ごとに、法人か個人か、決算期、契約している業務範囲(記帳代行・巡回監査・申告・給与計算など)、報酬体系、そして主担当と副担当を保持し、いつでも参照できる状態にします。担当者の異動や退職があっても引き継ぎが滞らないよう、顧問先と担当の対応関係を組織の情報として残すことが求められるでしょう。
担当割り当てを仕組みで持っておくと、事務所全体の負荷の偏りも見えてきます。特定の担当者に繁忙期の案件が集中していないか、経験の浅い担当者に難度の高い顧問先が偏っていないかを、管理者が俯瞰して調整できるようになります。顧問先ごとの対応履歴や連絡記録もあわせて残せば、担当者が変わっても対応の一貫性を保ちやすくなるところです。
申告・決算の進捗と税務カレンダー(期限管理)
会計事務所の業務は、顧問先ごとに異なる期限との闘いでもあります。法人税の確定申告書の提出期限は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内であり*2、個人の所得税の確定申告は原則2月16日から3月15日までです*3。消費税も課税期間に応じて申告期限が定められています。システムには、顧問先ごとの決算期からこれらの期限を逆算し、月次巡回・決算・申告といった工程の進捗をステータスで管理する役割が期待されます。
税務カレンダーとして期限を一元化しておけば、期限が近づいた案件を自動で抽出し、担当者へアラートを届けられます。事務所の管理者にとっては、どの顧問先がどの工程で止まっているのかを一覧で把握でき、遅延の兆しを早い段階でつかめる点が価値でしょう。申告データはe-Tax(国税電子申告・納税システム)やeLTAX(地方税ポータルシステム)を通じて電子申告するのが一般的であり*4*5、これらの手続きの状況とも突き合わせられる設計にしておくと、提出済みか否かの確認も含めて進捗を追えるようになります。
資料・証憑の回収と共有
申告・決算の進捗を左右するのが、顧問先からの資料・証憑の回収です。どの顧問先から何がいつ届いたのか、まだ届いていない資料は何かを可視化できると、督促の抜け漏れを抑えられます。紙と電子が混在する現状では、受領した証憑を電子で保管し、担当者間で共有できる仕組みの価値が高まっています。
ここで押さえておきたいのが、電子帳簿保存法への対応です。同法では令和6年1月から、電子的に授受した取引情報(電子取引データ)を一定の要件のもとで電子のまま保存することが義務づけられました*6。会計事務所は顧問先の証憑を預かって処理する立場にあるため、回収した電子データを検索可能な形で保存・共有できるかどうかが、実務の要件に関わってきます。資料の回収状況と保存を一体で扱える設計にしておくことが望まれるところです。
報酬請求と工数管理
事務所運営の観点で欠かせないのが、報酬の請求と工数の管理です。顧問先ごとに顧問料・決算料・記帳代行料などの報酬体系が異なるため、契約内容にもとづいて請求を作成し、入金の消し込みまで追える仕組みが求められます。スポットの業務が発生した際に、請求漏れを防げるようにしておくことも要点でしょう。
あわせて、担当者がどの顧問先にどれだけの時間を割いているかという工数を記録できると、顧問料の妥当性の検証につながります。手間のかかる顧問先と報酬が見合っているか、繁忙期の残業がどの案件に起因しているかを、データで把握できるようになるわけです。報酬と工数を突き合わせられる状態は、事務所の採算管理と価格の見直しを支える材料になります。
会計事務所向け業務システムの開発を外注する際に確認したいこと
会計事務所向け業務システムは、既存の会計ソフトや電子申告との連携、顧問先ごとに異なる期限や報酬体系への対応、そして資料の回収・保存の設計が品質を大きく左右します。開発を外注する際は、次の点を委託先とすり合わせておくと、後戻りを抑えやすくなります。
対象とする業務範囲と顧問先の規模を明確にする
まず、記帳代行・巡回監査・申告・給与計算のどこまでをシステムで扱うのか、顧問先が法人中心か個人中心か、何件規模を想定するのかを決めることが出発点になります。業務範囲によって必要な管理項目は変わり、顧問先が増えれば期限管理や資料回収の作り込みも増えていきます。範囲があいまいなままだと、肝心の進捗管理機能が見積りから抜け落ちがちです。既存の運用フローを棚卸ししたうえで、システム化する範囲を線引きしておきましょう。
申告期限・税務カレンダーの管理要件を織り込む
顧問先ごとに決算期が異なり、法人税・所得税・消費税で期限の考え方も違うため*2*3、税務カレンダーの管理要件は初期に握っておくことが重要でしょう。期限をどう自動算出するか、アラートを誰にどのタイミングで通知するか、電子申告の状況とどう突き合わせるか——こうした点を委託先と詰めておくと、繁忙期の運用に耐える設計になります。税制改正で期限や区分の扱いが変わることもあるため、後からルールを見直せる形にしておく視点も欠かせません。
既存の会計ソフト・e-Tax・eLTAXとの連携を設計する
会計事務所向け業務システムは、単独で完結する仕組みではありません。顧問先の帳簿を扱う会計ソフトや、電子申告を行うe-Tax・eLTAXと、どこまでデータを連携させるかを早い段階で設計しておくことが求められます*4*5。二重入力を減らすために、顧問先マスタや進捗データをどこまで受け渡すかを決めておきたいところです。既存システムの改修範囲まで含めて見積りに織り込んでおくと、後戻りを抑えられます。
資料の保存要件・権限管理と保守体制を見据える
会計事務所は顧問先の財務情報や証憑という機微な情報を預かるため、誰がどのデータを閲覧・操作できるかという権限管理と、操作の履歴を残すログが要件の段階から求められます。電子帳簿保存法が求める電子取引データの保存にも対応できるよう、保存の要件を設計に織り込むことが大切です*6。加えて、税制改正や電子申告の様式変更に追随できるよう、ルールを後から見直せる形にしておくかどうかも、長く使ううえで差になるでしょう。制度や仕様が変わった際に誰がどう改修するのか、稼働後の保守体制まで含めて確認しておくと、運用開始後の負担を抑えられます。委託先が会計事務所の実務と税務の勘所を理解しているかは、選定の分かれ目になります。
まとめ:顧問先対応と期限管理を仕組みで支えるために押さえる要件
本稿では、会計事務所向け業務システムについて、その役割と中核機能、会計ソフトや汎用CRMとの違い、外注時の確認点を、税理士法や国税庁の一次情報に沿って整理しました。要点は3つに集約できるでしょう。第一に、本システムは顧問先の管理と担当割り当て、申告・決算の進捗と税務カレンダー、資料・証憑の回収と共有、報酬請求・工数管理を一元化する事務所運営の基盤であり、多数の顧問先への対応を事務所として束ねる役割を担います。第二に、記帳・仕訳を担う会計ソフトや営業を管理する汎用CRMとは前提とする業務が異なり、要件は切り分けて定めることが大切です。第三に、法人税の申告は事業年度終了日の翌日から2か月以内、所得税は原則2月16日から3月15日までと顧問先ごとに期限が分散するため*2*3、外注時は業務範囲、期限管理、会計ソフトやe-Tax・eLTAXとの連携、資料の保存要件と権限管理、保守体制が確認の軸になります。顧問先対応を担当者の記憶から仕組みへ移すことが、繁忙期の負荷や期限の抜け漏れを抑える検討の出発点になるといえるでしょう。
よくある質問
会計事務所向け業務システムは、会計ソフトで代用できないのですか。
会計ソフトは仕訳の入力や決算書の作成といった記帳・会計処理を担う道具で、顧問先の帳簿そのものを作る局面で力を発揮します。一方、会計事務所向け業務システムは、多数の顧問先の決算期・申告期限を担当者別に束ねて管理し、資料の回収状況や報酬・工数まで追う事務所運営の基盤で、役割が分かれます。両者を連携させ、記帳は会計ソフト、顧問先対応の管理は業務システムと切り分けて要件を定めることが現実的でしょう。
顧問先ごとに違う申告期限は、システムでどう管理できますか。
法人税の確定申告は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内*2、個人の所得税の確定申告は原則2月16日から3月15日まで*3と、顧問先ごとに期限が分散します。システムでは、顧問先の決算期や申告区分からこれらの期限を逆算し、税務カレンダーとして一元化して、期限が近づいた案件を自動抽出し担当者へアラートを届ける設計が考えられます。e-TaxやeLTAXの申告状況と突き合わせれば、提出済みか否かの確認もあわせて行えます*4*5。
電子帳簿保存法への対応は、業務システムに関係しますか。
関係します。電子帳簿保存法では令和6年1月から、電子的に授受した取引情報を一定の要件のもとで電子のまま保存することが義務づけられました*6。会計事務所は顧問先の証憑を預かって処理する立場にあるため、回収した電子取引データを検索可能な形で保存・共有できるかどうかが実務の要件に関わります。資料の回収状況と保存を一体で扱える設計にしておくと、対応の実効性を示しやすくなります。
会計事務所向け業務システムは、税理士業務そのものを自動化するのですか。
いいえ。税理士業務は税理士法第2条が定める税務代理・税務書類の作成・税務相談を中核とする専門業務です*1。会計事務所向け業務システムは、この専門業務を担当者が滞りなく遂行できるよう、顧問先の管理や申告・決算の進捗、資料回収、報酬・工数といった事務所運営を支える位置づけになります。判断そのものを代替するのではなく、期限や進捗を可視化して抜け漏れを抑えることが役割です。
会計事務所向け業務システムの開発を外注する場合、何を確認すればよいですか。
まず、記帳代行・巡回監査・申告・給与計算のどこまでを扱うのか、顧問先の規模と法人・個人の別を整理します。次に、顧問先ごとに異なる申告期限を算出する税務カレンダーの管理要件と、アラートの通知方式を要件段階から織り込むことが重要です*2*3。加えて、既存の会計ソフトやe-Tax・eLTAXとの連携*4*5、電子帳簿保存法に対応した資料の保存要件*6、権限管理と操作ログ、稼働後の保守体制を設計に含めます。委託先が会計事務所の実務と税務の勘所を理解しているかが、選定の分かれ目になるでしょう。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:e-Gov法令検索「税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)」第2条ほか( https://laws.e-gov.go.jp/law/326AC1000000237 )
- *2 出典:国税庁「確定申告書の提出期限」(法人税質疑応答事例)( https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/group_faq/19.htm )
- *3 出典:国税庁「No.2020 確定申告」(タックスアンサー)( https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm )
- *4 出典:eLTAX 地方税ポータルシステム「eLTAXの概要」(地方税共同機構)( https://www.eltax.lta.go.jp/eltax/gaiyou/ )
- *5 出典:国税庁「e-Tax 国税電子申告・納税システム」( https://www.e-tax.nta.go.jp/ )
- *6 出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」( https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm )