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2026.07.17 らしくコラム

電子申請システムの選び方|自治体の窓口DXとオンライン化

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム開発・保守運用を受託

図1

この記事のポイント

  • 電子申請システムは、住民や事業者が行政手続をオンラインで申請し、職員が受付・審査を行う窓口DXの基盤です。社内の申請承認ワークフローや電子委任状とは対象が異なります。
  • 総務省の自治体DX推進計画では、子育て・介護関係の26手続について、原則すべての自治体でマイナポータルからマイナンバーカードを用いたオンライン接続を検討することとされています。
  • 選び方の軸は、ぴったりサービス連携・マイナンバー(公的個人認証)連携・受付審査・手数料の電子収納の4要素と、基幹系システムとの連携範囲です。外注時はこの範囲の切り分けが検討材料になります。

自治体の窓口DXが直面する課題——紙・来庁を前提とした行政手続

図2

自治体の行政手続は、長らく紙の申請書と窓口来庁を前提に組み立てられてきました。住民は開庁時間に合わせて役所へ足を運び、申請書を手書きし、順番を待って窓口へ提出します。職員側も、受け取った紙の内容を基幹系システムへ手入力し、内容を確認しながら審査を進める運用が一般的でした。この形は、住民の移動や待ち時間、職員の入力負荷といった負担を各所に生みます。

こうした状況を変える取り組みが、国の主導で進んでいます。総務省が公表している自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画では、自治体フロントヤード改革の推進、情報システムの標準化・共通化、マイナンバーカードの普及促進などが重点項目に位置づけられています*3。窓口のあり方そのものを見直し、来庁しなくても手続を進められる環境づくりが柱の一つです。

行政手続のオンライン化について、総務省は自治体向けの手順書を公表しています。第3.0版は2024年(令和6年)4月24日付で、オンライン化を進める過程を「推進体制の整備」「オンライン化する手続の検討」「仕様確認・調達」「サービスの実装・運用」という段階で整理しています*2。この工程を支える仕組みが、本稿でとりあげる電子申請システムです。まずは全体像を図で確認しましょう。

図
図:電子申請システムがつなぐオンライン手続の流れ(申請→マイナ認証→受付審査→電子収納・通知)

図のように、電子申請は住民・事業者による申請から、認証、自治体側の受付・審査、手数料の納付や結果通知までが一続きの流れになります。紙と来庁を前提とした運用を、この流れへ置き換えていくのが窓口DXの中心的なテーマだといえるでしょう。

電子申請システムとは、行政手続を住民・事業者がオンラインで完結させる仕組み

電子申請システムとは、住民や事業者が自治体に対して行う行政手続を、オンライン上の申請フォームで受け付け、職員側の受付・審査までをデジタルでつなぐ仕組みを指します。窓口へ来庁して紙で提出していた申請を、パソコンやスマートフォンから送信できるようにする点が核になります。

国が用意する共通基盤の代表例が、デジタル庁が運営するマイナポータルの「ぴったりサービス」です。ぴったりサービスは、住民が地域や制度から手続を探せる「手続検索」、一部の手続をオンラインで申請できる「オンライン申請」、申請書を作成して印刷し窓口に提出する「申請書の作成・印刷」という機能を備えています*4。申請の途中で内容を保存し、都合のよいタイミングで再開できる点も特徴です*4

オンライン申請にあたっては、マイナンバーカード、またはスマートフォン用の署名用電子証明書を設定した端末で電子署名が利用できます*4。本人確認をオンラインで済ませられるため、来庁せずに手続を進める道が開けます。総務省の自治体DX推進計画では、子育て・介護関係の26手続について、原則としてすべての自治体で、マイナポータルからマイナンバーカードを用いたオンライン接続を検討することとされています*3

さらに、自治体の基幹系システムとぴったりサービスをつなぐ仕組みも整備されています。デジタル庁が公開するマイナポータルAPIには「電子申請等情報受取等API」があり、マイナポータル経由で送信された電子申請の情報を、自治体側のシステムで受け取れるようになっています*5。このAPI連携を用いることで、申請から庁内処理までをエンドツーエンドでオンライン化する構成が実現できます*5。電子申請システムの開発では、この共通基盤とどう接続するかが設計の起点になります。

社内ワークフロー・電子委任状との違い——自治体の行政手続オンライン化に特化

「電子申請」という言葉は幅広く使われるため、隣接する仕組みと混同されがちです。当サイトでも、社内の申請承認ワークフローや電子委任状といったテーマを別途とりあげています。ここでは、自治体の電子申請システムがそれらとどう違うのかを整理しておきます。

社内の申請承認ワークフローは、企業や組織の内部で、稟議や各種申請を電子的に回して承認する仕組みです。対象は自社の従業員であり、承認者や決裁ルートも組織の規程に沿って設計されます。電子委任状は、法人の代表者が使用人などに代理権を与えたことを電子的に証明する仕組みで、取引や手続の場面で権限の裏づけとして使われるものです。いずれも「誰が何を承認・委任したか」を扱う点に重心があります。

これに対し、自治体の電子申請システムが扱うのは、住民や事業者が行政機関に対して行う手続です。役所の外にいる不特定多数の申請者を受け付け、公的個人認証によって本人確認を行い、職員が制度の要件に沿って審査します。誰でも申請者になり得ること、マイナンバーカードによる本人確認と連携すること、手数料の収納や結果通知まで含むことが、社内ワークフローや電子委任状との大きな違いです。

言い換えると、電子申請システムは「自治体の行政手続のオンライン化(窓口DX)」に特化した仕組みだといえます。この違いを踏まえずに社内向けのワークフロー製品をそのまま流用しようとすると、公的個人認証や共通基盤との連携で想定外の追加開発が生じることがあります。導入検討の初期に、対象がどちらの領域なのかを明確にしておくとよいでしょう。

電子申請システムの4つの機能要素——申請フォーム・マイナ連携・受付審査・電子収納

図3

電子申請システムを選ぶうえで押さえたいのが、機能を構成する4つの要素です。それぞれが独立しているわけではなく、申請から手続完了までを一続きにつなぐ役割を担います。順に見ていきましょう。

申請フォーム——ぴったりサービス連携と独自フォーム

入口となるのが、住民・事業者が入力する申請フォームです。子育て・介護関係の手続のように国が標準化を進める領域では、ぴったりサービスに用意されたフォームを活用する選択肢があります*3。一方、自治体固有の手続については、自前のフォームを設計する必要が出てきます。どこまでを共通基盤に寄せ、どこからを独自に作り込むかが、フォーム設計の分かれ目です。

フォームの使い勝手は申請の完了率にも影響します。検討対象となるのは、入力項目の設計、途中保存への対応、スマートフォンでの操作性などでしょう。ぴったりサービスでは申請内容の途中保存と再開に対応しているため*4、独自フォームでも同等の体験を用意できるかどうかが比較の観点になります。

マイナンバー(公的個人認証)連携——オンラインの本人確認

行政手続では、申請者が本人であることの確認が欠かせません。オンラインでこれを担うのが、マイナンバーカードを用いた公的個人認証です。ぴったりサービスでは、マイナンバーカードやスマートフォン用の署名用電子証明書によって電子署名が利用できます*4。この仕組みと連携できるかどうかが、電子申請システムの中核的な要件です。

本人確認の水準は手続によって異なります。氏名や住所の確認で足りる手続もあれば、電子署名まで求める手続もあるでしょう。導入する手続ごとに、どの認証水準が必要かを整理し、システムがそれに対応できるかを見極める必要があります。認証まわりを軽視すると、後から手続を追加する際に作り直しが発生しかねません。

受付・審査・進捗管理——職員側の窓口業務

申請を受け取った後の庁内処理も、電子申請システムの重要な範囲です。職員は、届いた申請の内容を確認し、要件に照らして審査し、必要に応じて申請者へ補正を依頼します。この一連の流れを画面上で管理できると、紙の受け渡しや手入力の負担が減ります。

前述のとおり、マイナポータルAPIの電子申請等情報受取等APIを使えば、マイナポータル経由の申請情報を自治体側のシステムで受け取れます*5。受け取った情報を基幹系システムへどう引き渡すか、進捗をどの単位で管理するかは、自治体ごとの業務フローに合わせた設計が求められます。職員側の使い勝手は、オンライン化が現場に定着するかどうかを左右する要素です。

手数料の電子収納——オンライン決済への対応

住民票の写しや各種証明のように、手数料が発生する手続では、オンラインでの納付手段が必要になります。総務省の手順書は、手数料を伴う手続について電子決済への対応を求めており、申請時に金額が定まる手続と、審査を経て金額が定まる手続の双方を想定して整理しています*2

決済の種類やタイミングは手続の性質によって変わります。金額が事前に確定する手続ではその場での決済がなじみますが、審査後に金額が決まる手続では、後から納付を案内する流れが必要です。導入予定の手続がどちらに該当するかを洗い出し、システムが両方の流れに対応できるかを確認しておくと、収納まわりの手戻りを抑えやすくなります。

電子申請システムの開発を外注するときの確認点

電子申請システムは、共通基盤との連携、本人確認、庁内処理、収納と、関わる領域が広い仕組みです。そのため、開発を外部へ委託する場合は、依頼範囲の切り分けが選定の分かれ目になります。ここでは実務的な確認点を挙げます。

第一に、共通基盤との連携範囲です。ぴったりサービスの活用と独自フォームの開発をどう組み合わせるか、電子申請等情報受取等APIを通じた基幹系連携をどこまで担ってもらうかを、契約前に具体化しておく必要があります*4*5。連携部分は仕様が公開されている一方で、自治体ごとの業務差を吸収する作り込みが生じやすい領域です。

第二に、標準化・共通化の動きとの整合です。基幹業務システムについては、2021年(令和3年)に成立した地方公共団体情報システムの標準化に関する法律に基づき、20の業務を対象とした標準準拠システムへの移行が進められています*6。標準準拠システムは、原則として令和7年度(2025年度)末までにガバメントクラウド上へ移行することが目指されてきました*6。電子申請システムが連携する先の基幹系がどの段階にあるのかを踏まえて、接続方式を設計してもらう視点が欠かせません。

第三に、手続の追加・変更への対応力です。オンライン化は一度に全手続を対象にするわけではなく、段階的に広げていくのが現実的です。総務省の手順書も、推進体制の整備から実装・運用までを段階として示しています*2。当初は少数の手続から始め、後から対象を増やす前提で、フォームや認証、収納の設定を柔軟に追加できる構成かどうかを確認するとよいでしょう。

第四に、運用・保守の体制です。電子申請システムは公開後も、制度改正や様式変更、共通基盤の仕様更新に追随し続ける必要があります。開発だけでなく、運用フェーズでの改修や問い合わせ対応まで一貫して任せられるかどうかは、長期的な負担を左右する論点です。委託先の運用実績や体制を、開発力とあわせて見ておくことをおすすめします。

まとめ:電子申請システムの選び方で押さえる3つの軸

本稿では、自治体の窓口DXを担う電子申請システムについて、公的情報をもとに整理しました。要点は3つの軸に集約できるでしょう。第一に、電子申請システムは住民・事業者の行政手続をオンラインで受け付け、職員側の受付・審査までをつなぐ仕組みであり、社内の申請承認ワークフローや電子委任状とは対象が異なります。マイナポータルのぴったりサービスや公的個人認証との連携が土台になります*4

第二に、機能は申請フォーム・マイナンバー連携・受付審査・手数料の電子収納の4要素で捉えると比較しやすくなります。どこまでを共通基盤に寄せ、どこからを独自に作り込むかが設計の分かれ目です。第三に、外注時は共通基盤との連携範囲、基幹系の標準化との整合、手続追加への対応力、運用・保守体制という観点で委託先を見極めると、導入後の手戻りを抑えやすくなります*2*6。自治体ごとの手続構成や基幹系の状況によって最適な組み方は変わるため、現状を診断したうえで検討を進めることが実務的でしょう。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、行政・自治体向けを含むシステム開発と保守運用を元請(プライムベンダー)として受託しています。ぴったりサービスや電子申請等情報受取等APIとの連携設計から、独自申請フォームの開発、公的個人認証への対応、基幹系システムとの接続、公開後の運用・保守まで、一貫した体制でご支援します。導入対象の手続や基幹系の状況を踏まえ、内製・外注の切り分けや段階的な導入計画からご相談いただけます。

よくある質問

電子申請システムと社内の申請承認ワークフローは何が違いますか。

社内の申請承認ワークフローは、企業や組織の内部で稟議や各種申請を電子的に回して承認する仕組みで、対象は自社の従業員です。一方、自治体の電子申請システムは、住民や事業者が行政機関に対して行う手続を対象とし、マイナンバーカードによる公的個人認証や手数料の電子収納まで含む点が異なります。

ぴったりサービスを使えば自前の開発は不要になりますか。

ぴったりサービスは手続検索やオンライン申請、申請書の作成・印刷といった機能を提供します*4。子育て・介護関係など標準化が進む手続では活用しやすい一方、自治体固有の手続では独自フォームの設計や基幹系との連携で開発が生じます。どこまでを共通基盤に寄せるかを整理して検討することになります。

マイナポータル経由の申請を庁内システムで受け取れますか。

デジタル庁が公開するマイナポータルAPIには電子申請等情報受取等APIがあり、マイナポータル経由で送信された電子申請の情報を自治体側のシステムで受け取れます*5。このAPI連携により、申請から庁内処理までをエンドツーエンドでオンライン化する構成が実現できます。

手数料が発生する手続もオンライン化できますか。

総務省の手順書は、手数料を伴う手続について電子決済への対応を求めています*2。申請時に金額が定まる手続と、審査を経て金額が定まる手続の双方が想定されており、導入する手続がどちらに該当するかを洗い出し、システムが両方の流れに対応できるかを確認しておくとよいでしょう。

電子申請システムの開発を外注する際、何を確認すればよいですか。

共通基盤との連携範囲、基幹系システムの標準化との整合、手続の追加・変更への対応力、公開後の運用・保守体制の4点が主な確認事項です。ぴったりサービスや電子申請等情報受取等APIとの接続をどこまで担うかを契約前に具体化し、段階的に手続を増やせる構成かどうかを見極めることが大切です*2*5*6

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:総務省「自治体の行政手続のオンライン化」(自治体DXの推進)(https://www.soumu.go.jp/denshijiti/index_00003.html )
  2. *2 出典:総務省「自治体の行政手続のオンライン化に係る手順書【第3.0版】」(2024年4月24日)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000944057.pdf )
  3. *3 出典:総務省「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第5.0版】」(2025年12月17日)(https://www.soumu.go.jp/main_content/001045879.pdf )
  4. *4 出典:デジタル庁「ぴったりサービスについて」(マイナポータル)(https://app.oss.myna.go.jp/Application/resources/about/index.html )
  5. *5 出典:デジタル庁「電子申請等情報受取等API」(マイナポータルAPI 仕様公開サイト)(https://developers.digital.go.jp/documents/mynaportal-api/specification/receiveinfo/ )
  6. *6 出典:総務省「自治体情報システムの標準化・共通化」(https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/chiho/jichitaijoho_system/index.html )


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