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リモート開発チームの作り方|体制設計と人材確保の実務
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- リモート開発チーム構築とは、体制・コミュニケーション・開発プロセス・セキュリティを一体で設計し、遠隔のエンジニアを戦力化する取り組みです。
- 総務省の調査ではテレワークを導入している企業が広がっており、地方・遠隔地の人材を開発チームに組み込む土台はすでに整っています。
- 人材の確保方法には自社雇用・リモート人材サービス・開発委託の3つの選択肢があり、目的に応じた使い分けが欠かせません。
目次
エンジニアが地元で採れない——リモート開発チームという選択肢
リモート開発チーム構築とは、遠隔のエンジニアを戦力化する取り組みです。勤務場所に依存せずに開発を進められるよう、体制・コミュニケーション・開発プロセス・セキュリティを一体で設計します。総務省の調査では企業のテレワーク導入率が47.3%となっており*1、遠隔人材を前提とした体制づくりの土台はすでに広がっています。
地元の採用市場だけでエンジニアを確保しようとすると、必要なスキルを持つ人材に出会えない企業があります。特定の技術領域や即戦力レベルの人材ほど、募集をかけても応募が集まりにくい傾向です。
採用できない状態を放置すると、既存メンバーの負荷が増し、リリース遅延や品質低下につながるおそれがあります。特定の言語やクラウド基盤の担当者が1人しかいない体制では、その人材が離脱した際に開発が止まるリスクも生じます。
こうした状況を変える動きが、地元に限定しない人材確保、つまりリモート開発チームの構築です。テレワークを前提とした体制を整えれば、居住地に関わらずスキルを持つ人材を戦力にできます。ただし体制を設計しないままリモート化すると、進捗が見えにくくなる別の課題が生まれます。
地元だけで探していたときには候補にならなかった人材も、稼働場所の制約を外すことで選考の対象に加えられます。特定のクラウド基盤や言語に強い人材ほど、全国規模で募集を広げる効果は大きいといえるでしょう。
リモート開発チーム構築とは——場所に依存しない開発体制を設計すること
テレワーク導入47.3%が示す定着の現在地
総務省が公表した令和7年版情報通信白書によると、企業のテレワーク導入率は47.3%です*1。この数値は令和6年通信利用動向調査(企業を対象とした調査)に基づくものです。地方や遠隔地にいるエンジニアを開発チームに組み込む前提が、企業活動の一部として広がっていることを示しています。
テレワークが定着した状況は、採用の選択肢を「通勤圏内」から全国に広げる意味を持ちます。もっとも、導入率の数値は制度の有無を示すものであり、実際の開発チーム運営がうまく機能するかは体制設計次第で変わってきます。
リモート開発が向くケースと向かないケースの見分け方
リモート開発が機能しやすいのは、要件や仕様がドキュメント化されており、成果物の単位で進捗を確認できる業務です。反対に、現場のシステムに直接触れる作業や、頻繁な即時の対面調整が欠かせない業務は、リモート単独では完結しにくい領域といえます。
自社の業務をこの観点で切り分けると、どこまでリモート開発チームに任せられるかが見えてきます。切り分けが曖昧なまま導入すると、後から役割の齟齬が生じやすくなるため、着手前の整理が欠かせません。
体制・コミュニケーション・プロセス・セキュリティ・オンボーディング——チーム構築の5つの設計要素
リモート開発チームを機能させるには、5つの要素を一体で設計する必要があります。要素は体制・コミュニケーション・開発プロセス・セキュリティ・オンボーディングです。以下では、それぞれの要素で押さえるべき具体的な内容を見ていきます。
体制と役割——PM・テックリード・レビュアーで指揮系統を作る
リモート開発チームでは、誰が意思決定し、誰が品質を最終確認するのかを明文化しておくことが土台になります。PM(プロジェクトマネージャー、進捗と予算を管理する責任者)が全体の進行を統括し、テックリード(技術面の方針を決める担当者)が設計判断を担う体制が一般的です。
レビュアーを固定しておくと、コードの品質基準がぶれにくくなります。役割が曖昧なまま人数だけ増やすと、誰も最終判断をしない状態に陥りやすいため、体制図と権限の範囲を先に決めておく必要があります。小規模な体制でCTOのような技術統括ポジションを置けない場合の運用については、CTO不在でも回る開発体制の作り方が参考になるでしょう。
意思決定の経路を明確にしておくと、判断に迷った際にどこへ確認すればよいかが一目で分かるようになるでしょう。対面のオフィスであれば近くの席に声をかけられます。リモートでは誰に確認すべきかが分かりにくいため、役割図を目に見える形で共有しておくことが実務上の助けになります。
コミュニケーション設計——同期/非同期の使い分けとドキュメント文化
リモート環境では雑談レベルの情報共有が自然に発生しません。そのため、同期(リアルタイムで会話する形式)と非同期(時間差で確認できる形式)のコミュニケーションを意図的に使い分けることが必要です。仕様の決定事項や議事録は文書に残し、後から参加したメンバーでも経緯を追える状態にしておきます。
チャットでの即時確認と、ドキュメントへの記録を両立させる運用ルールがないと、同じ質問が繰り返され、確認だけで工数が消費される事態になりかねません。
開発プロセス——コードレビューとCI/CDで進捗を可視化する
進捗が目視で確認できないリモート環境では、可視化の仕組みが欠かせません。軸になるのは、コードレビュー(他のメンバーがコードを確認する工程)です。加えてCI/CD(継続的インテグレーション・継続的デリバリー、コードの変更を自動でテスト・反映する仕組み)を組み合わせます。
プルリクエスト単位で進捗を追える仕組みを整えると、稼働状況を細かく監視しなくても品質と進み具合を把握できます。
セキュリティと環境——アクセス管理と貸与端末・就業ルールの整備
リモート開発では、社内システムへのアクセス経路をどう管理するかがセキュリティ水準を左右します。VPN(社外から社内ネットワークへセキュアに接続する仕組み)や多要素認証の導入が基本です。加えて、貸与端末の管理・私用端末の利用範囲・就業時間の記録方法を就業ルールとして明文化しておくことが欠かせません。
アクセス権限の設計を誤ると、契約終了後もIDが残存し、社外から社内システムへ入り込める経路が残ってしまいます。定期的な棚卸しの手順をあらかじめ決めておくことが欠かせません。
オンボーディングと定着——立ち上がり期間をどう設計するか
リモートで新しいメンバーを迎える場合、対面のオフィスと比べて自然な声かけの機会が少なくなります。初期の数週間はメンター(新規メンバーを指導する担当者)を固定し、定例の1on1(1対1の面談)で状況を確認する設計が、立ち上がりの遅れを防ぐ手立てになります。
体制・コミュニケーション・プロセス・セキュリティ・オンボーディングを内製で設計するには、複数分野の知識が必要になります。具体的にはプロジェクトマネジメント・情報セキュリティ・評価制度設計といった領域です。人事・情報システム・現場マネージャーを合わせた数名が、立ち上げ期に相応の稼働を割く体制が実務上想定されます。
体制設計に必要な人員をどう確保するかは、コストの観点も含めて整理する必要があります。外部からチームを調達する場合のコスト構造はエンジニアチーム外部調達の費用相場|ラボ型開発のコスト構造で詳しく解説しています。
人材確保の3方式を比較する——自社雇用・リモート人材サービス・開発委託
リモート開発チームを組成する際の人材確保には、自社雇用・リモート人材サービスの活用・開発委託という3つの方式があります。それぞれ契約関係や体制構築の負荷が異なるため、目的に応じた選択が欠かせません。
| 比較項目 | 自社雇用 | リモート人材サービス | 開発委託 |
|---|---|---|---|
| 契約関係・指揮命令 | 自社が直接雇用し、指揮命令も自社が担います。 就業規則・評価制度も自社で運用します。 |
サービス提供元と契約し、要員の紹介・マッチングを受けます。 指揮命令の範囲は契約形態によって異なります。 |
委託先企業が指揮命令を担います。 成果物または稼働に対して対価を支払う契約です。 |
| 人材確保のスピード | 求人・選考・入社手続きを経るため、確保までに相応の期間を要します。 | 登録済みの人材から選定するため、自社採用より短期間で稼働を始められる場合があります。 | 委託先が既存チームを組成済みであれば、比較的早く着手できます。 |
| コスト構造 | 給与に加え、社会保険料・福利厚生・オフィス関連コストが発生します。 長期雇用を前提とした固定費です。 |
サービス利用料に人材費用が含まれる料金体系が一般的です。 契約期間・稼働量に応じて費用が変動します。 |
成果物や稼働工数に応じた委託費用が発生します。 社会保険料などは委託先が負担します。 |
| 体制構築の負荷 | 評価制度・オンボーディング・労務管理を自社で構築する必要があります。 | サービス提供元が要員管理の一部を担うため、自社の負荷は軽減されます。 体制設計自体は自社で行う場合があります。 |
委託先が体制構築を含めて担うため、自社の負荷が最も小さくなります。 |
| 向いているケース | 長期的にコア人材として育成・定着させたい場合に向きます。 | 特定期間・特定スキルを迅速に補いたい場合に向きます。 | 体制設計から実行までを一括で任せたい場合に向きます。 |
人材派遣と業務委託(外注)の違いをより詳しく知りたい場合は、IT人材の派遣と外注の違いも参考にしてください。
立ち上げの進め方——要件整理から本格運用までの4ステップ
リモート開発チームの立ち上げは、要件整理→体制設計→試行→本格運用という4段階で進めると、いきなり大規模に展開するリスクを抑えられます。
- 要件整理:現在の業務のうち、どこをリモート開発チームに任せるかを切り分けます。ドキュメント化の状況や、対面調整が必要な作業の有無を確認します。
- 体制設計:PM・テックリード・レビュアーの役割と、コミュニケーション・セキュリティのルールを決めます。前章で整理した5つの設計要素をここで具体化します。
- 試行:小規模なチームやテーマで実際に稼働させ、進捗の可視化やレビュー運用が機能するかを検証します。問題が見つかれば、本格運用の前に体制を調整します。
- 本格運用:試行で確認した運用ルールを本番のチーム規模に広げます。稼働開始後も、評価・定着の状況を定期的に確認する運用に移ります。
試行フェーズでは、進捗の可視化やレビュー運用が機能したかどうかを、あらかじめ決めた基準で振り返ることが大切です。振り返りの基準を決めずに本格運用へ進めると、後から体制の不備に気づいても修正が難しくなります。
この4段階を自社だけで設計・実行しようとすると、プロジェクト管理・技術方針・セキュリティ設計の知識を同時に必要とします。体制設計から試行までを元請(プライムベンダー)として一括で担う専門パートナーに委ねる方法もあり、自社で抱える負荷を抑えながら進められるでしょう。
まとめ:リモート開発チーム構築で押さえる3つの判断軸
本稿では、地元でのエンジニア確保が難しい企業に向けて、リモート開発チーム構築の考え方と実務を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。第一に、テレワーク導入率47.3%という総務省の統計が示す通り*1、遠隔人材を前提とした体制づくりの土台はすでに整っています。第二に、体制・コミュニケーション・プロセス・セキュリティ・オンボーディングという5つの設計要素を一体で整えることが、リモート開発チームを機能させる条件です。第三に、人材確保は自社雇用・リモート人材サービス・開発委託の3方式から、目的に応じて選ぶ必要があります。自社の状況を踏まえ、無理のない規模から着手することが大切です。
よくある質問
リモート開発チームは何人から成立しますか?
厳密な下限人数は業務内容によって異なりますが、PM・テックリード・実装担当を最低限兼務できる体制であれば、数名規模からでも立ち上げは可能です。まずは小規模な試行チームで運用ルールを検証し、機能を確認したうえで人数を増やす進め方が現実的です。
品質はどのように担保しますか?
コードレビューを必須の工程にし、レビュアーを固定することで品質基準のばらつきを抑えられます。CI/CD(継続的インテグレーション・継続的デリバリー)による自動テストを組み合わせると、リモートであっても変更内容を継続的に検証できます。
セキュリティ対策として最低限必要なことは何ですか?
社内システムへのアクセス経路を限定するVPNや多要素認証の導入が基本になります。加えて、貸与端末の管理ルールと、契約終了時にアクセス権限を速やかに削除する棚卸し手順を、あらかじめ決めておく必要があります。
オフショア開発とはどう違いますか?
オフショア開発は主に海外拠点のエンジニアに委託する形態で、言語・時差・文化の違いを前提に体制を組む点が特徴です。国内のリモート人材で構成するチームは、言語や稼働時間帯の調整コストを抑えやすい一方、確保できる人材の範囲は国内に限られます。どちらが適するかはコスト条件やコミュニケーション頻度によって異なり、一概に優劣を判断できるものではありません。
一部の業務だけリモート化することはできますか?
可能です。ドキュメント化された業務や成果物単位で確認できる工程から段階的にリモート化し、対面調整が欠かせない業務は当面自社に残すという切り分け方が現実的といえます。全面リモート化を前提にせず、業務ごとの向き・不向きを見極めることが大切です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
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- *1 出典:総務省「令和7年版情報通信白書(企業のテレワーク導入状況)」(令和6年通信利用動向調査に基づく、2025年公表)