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2026.07.23 らしくコラム

制裁リスト・フィルタリング|経済制裁スクリーニング入門

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として業務・コンプライアンス系システムの開発・運用を受託

国際金融・制裁対応のイメージ

この記事のポイント

  • 制裁リスト・フィルタリング(経済制裁スクリーニング)は、顧客・取引先・送金の関係者を、外為法に基づく資産凍結等の措置の対象者リストや国連安保理制裁リストと名寄せ照合し、ヒットを検知・調査する仕組みです。取引の行動パターンを継続監視するAML取引モニタリングや、日本の反社会的勢力を確認する反社チェックとは、対象・目的が異なるコントロールです。
  • 金融庁のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインは、制裁対象取引を検知するための体制整備を「取引フィルタリング」として位置づけ、照合対象リストの最新性検証や、経済制裁対象者が指定された際の遅滞ない照合を対応が求められる事項に定めています。
  • 表記ゆれ・別名表記に対応するあいまい一致、ヒット時の調査・誤検知対策、リスト更新の反映や監査証跡の確保には専門知識が求められます。内製と外注のどちらで進めるかは、規制知識・多言語名寄せ・保守体制の3つの観点から判断する必要があるでしょう。

制裁リスト・フィルタリングとは——AML取引モニタリング・反社チェックとの違い

スクリーニング業務のイメージ

制裁リスト・フィルタリング(経済制裁スクリーニング)とは、顧客・取引先・送金の関係者を、外為法に基づく資産凍結等の措置の対象者リストや国連安保理決議に基づく制裁リストと名寄せ照合し、一致または類似する対象を検知して調査につなげる仕組みです。金融庁のマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインは、この体制整備を「取引フィルタリング」と呼び、制裁対象取引をリスクに応じて検知するための対応が求められる事項として定めています*4

図
図:制裁リスト・フィルタリングの流れ(対象の特定→リスト照合→スコアリング→ヒット判定→調査・エスカレーション)

本稿で扱う制裁リスト・フィルタリングは、同じ「事前照合」型の仕組みである反社チェックとは対象が異なります。反社チェックは、取引先やその役員等が日本の反社会的勢力に該当しないかを、属性要件と行為要件から確認する仕組みです。これに対し制裁リスト・フィルタリングは、外為法や国連安保理決議に基づく国際的な経済制裁対象者との照合を目的としており、確認すべき相手が国内の反社会的勢力ではなく海外を含む制裁対象者である点が異なります。

また、口座開設後の送金・入出金の挙動を継続的に監視し疑わしい取引を検知する「AML取引モニタリング」とも別のコントロールです。金融庁ガイドラインも、自らのリスク評価を反映したシナリオ・敷居値等に基づき疑わしい取引を検知する取引モニタリングと、制裁リストとの照合を通じて制裁対象取引を検知する取引フィルタリングを、それぞれ別項目の対応事項として整理しています*4。フィルタリングは取引そのものの内容をリストと突き合わせる仕組みであり、取引の行動パターンを分析するモニタリングとは着眼点が異なるため、どちらか一方で代替できるものではありません。

なぜ照合が必要なのか——外為法の資産凍結措置と国連安保理・FATFの要請

外為法(外国為替及び外国貿易法)は、主務大臣が国際約束を誠実に履行するため必要があると認めるときなどの要件に該当する場合、経済制裁措置を発動できると定めています。資産凍結等の措置は、指定された個人・団体向けの支払や資本取引(預金契約・信託契約・金銭の貸付契約等)を許可制とし、不許可処分とすることで実施される仕組みです*1。財務省が公表する対象者リストは、国連安保理決議に基づくもの(北朝鮮関連やイラン核関連活動等)と、国際協調に基づく独自制裁(ウクライナ情勢関連等)で構成されており、Excel・CSV形式で公開されています*2

国際的な枠組みにおいても、対象を特定した金融制裁は重要な柱です。FATF(金融活動作業部会)の勧告は、国連安保理決議の要請に沿って、大量破壊兵器の拡散に関与する者への金融制裁を勧告化しており*6、各国の金融機関に制裁対象者への資産凍結等の対応を求める根拠となっています。日本は2021年8月にFATFの第4次対日相互審査の対象となり、マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策の一層の強化が課題でした。金融庁は金融機関等に対し、2024年3月末までにガイドラインへの対応態勢を整備するよう求めています*5。制裁リスト・フィルタリングは、こうした外為法・国連安保理決議・FATF勧告を背景に、体制整備が求められている取り組みと言えるでしょう。

名寄せ照合(スクリーニング)のしくみ——顧客・取引先・送金の関係者が対象

金融庁ガイドラインは、取引フィルタリングに関する体制整備として、次の2点を対応が求められる事項に挙げています。1つは、取引の内容(送金先、取引関係者(その実質的支配者を含む)、輸出入品目等)について、照合対象となる制裁リストが最新のものとなっているか、及び制裁対象の検知基準がリスクに応じた適切な設定となっているかを検証するなど、的確な運用を図ることです。もう1つは、国際連合安全保障理事会決議等で経済制裁対象者等が指定された際には、遅滞なく照合するなど、国内外の制裁に係る法規制等の遵守その他リスクに応じた必要な措置を講ずることです*4

照合の対象は、新規に取引を開始する顧客だけにとどまりません。既存の取引先、送金の依頼人・受取人、輸出入品目や仲介する金融機関といった取引関係者全般が名寄せ照合の対象です。制裁対象者リストが更新されるたびに、既存顧客・取引先とのリストを改めて突き合わせる運用も欠かせません。

あいまい一致とスコアリングによる検知の考え方

制裁対象者リストに記載される氏名・団体名は、漢字表記とローマ字表記が混在し、別名(エイリアス)や旧姓、表記ゆれを伴う場合があります。完全一致だけの照合では、こうした表記の違いを見逃すおそれがあるため、実務では文字列の類似度に基づくあいまい一致(ファジーマッチング)を組み合わせるのが一般的です。

あいまい一致では、氏名や団体名の一致度を数値化してスコアとして算出し、あらかじめ設定した閾値に応じて「要確認」として抽出するかどうかを振り分ける考え方が用いられます。閾値を緩めると見逃しのリスクが下がる一方で、無関係な同姓同名等まで抽出される誤検知(過検知)が増える傾向があり、逆に閾値を厳しくすると誤検知は減っても本来検知すべき対象を見逃す危険が高まります。自社の取引特性やリスク評価を踏まえ、このバランスをどこに置くかが照合ロジック設計の要点になるでしょう。

ヒット判定・調査のプロセスと誤検知(過検知)への対応

照合の結果ヒットが生じた場合、担当者は生年月日・国籍・住所・取引の経緯といった付随情報を確認し、真に制裁対象者と一致するのか、それとも同姓同名等による誤検知なのかを判断します。真陽性と判断される場合には、上位者や専門部署へのエスカレーション、取引の保留、当局への報告要否の検討といった対応に進む流れです。

あいまい一致を用いる以上、一定の誤検知は避けられません。しかし誤検知が過度に多いと、担当者の確認作業が膨らみ、本来注意すべき真のヒットへの対応が遅れる懸念があるでしょう。誤検知対策としては、判定結果の記録を蓄積して検知基準の妥当性を定期的に検証すること、確認済みの無関係先を管理する仕組みを整えること、判定の判断根拠を記録として残すことなどが実務上のポイントになります。

システムに求められる要件——リスト更新の反映・照合ロジック・監査証跡

制裁リスト・フィルタリングシステムには、主に3つの要件が求められます。第一に、制裁対象者リストの更新反映です。財務省の公表履歴を見ると、対象によっては年に複数回の追加・削除が行われており*3、国連安保理決議等で新たに経済制裁対象者等が指定された際には遅滞なく照合する体制が必要になります*4。リストの取り込みから既存顧客との差分照合までを、手作業に頼らず自動化できるかどうかが運用負荷を左右します。

第二に、照合ロジックです。完全一致とあいまい一致を組み合わせ、検知基準がリスクに応じた設定になっているかを定期的に検証する仕組みが欠かせません*4。第三に、監査証跡です。金融庁ガイドラインは、確認記録・取引記録等について正確に記録し、データを把握・蓄積して分析可能な形で整理し、必要に応じて当局等に提出できる態勢を求めています*4。ヒット判定の経緯や判断根拠を後から追跡できる形で保存する設計が求められるでしょう。

既存の口座・送金・取引システムとの連携

制裁リスト・フィルタリングは、単独で機能するシステムではなく、既存の口座管理・送金・基幹取引システムと連携して初めて実効性を持ちます。金融庁ガイドラインは、海外送金等を行う場合、外為法をはじめとする国内外の法規制等に則り、関係国等の制裁リストとの照合等の必要な措置を講ずることは当然であるとし、コルレス契約先や業務委託先のマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢についても適切に監視することを求めています*4

新規口座開設時や送金の都度に照合が走るだけでなく、リストが更新されたタイミングで既存顧客・既存取引先を一斉に再照合するバッチ処理も必要になります。ITシステムの活用にあたっては、外部委託する場合や共同システムを利用する場合であっても、自らの取引の特徴やそれに伴うリスクを分析し、必要に応じて独自の追加的対応を検討することが対応事項として位置づけられています*4。既存システムとの連携方式を含め、委託先任せにせず自社としてリスクを把握しておく姿勢が求められます。

内製と外注の判断軸——規制知識・多言語名寄せ・保守

制裁リスト・フィルタリングシステムを内製で構築するか、外部に委託するかは、費用だけでなく専門性の観点から判断する必要があります。以下の表に主な違いを整理しました。

判断軸 内製 外注
規制知識の継続的な把握 外為法・金融庁ガイドライン・FATF勧告等の改正動向を自社で継続的に追う体制が必要です*4*5 規制動向の把握を含めて専門パートナーに依頼できます
多言語名寄せロジックの設計 漢字・カタカナ・ローマ字表記や別名表記のゆれに対応するあいまい一致ロジックを自社で設計・検証します 照合実績を踏まえたロジック設計を委託先の知見で補えます
リスト更新への追従・保守 追加・削除が頻繁な対象もあるため*3、更新反映と既存顧客との差分照合を継続運用する体制が必要です 更新反映から差分照合までの運用保守を任せられます
既存システムとの連携 口座・送金・基幹取引システムとの連携方式を自社で設計・実装します 既存システムの構成を踏まえた連携方式の提案・実装を依頼できます

いずれの場合も、自らの取引の特徴やリスクを分析し、必要に応じて独自の追加的対応を検討する主体は自社にあるという点は変わりません*4。外部委託を選ぶ場合でも、照合対象データの範囲、判定・記録の設計、既存システムとの連携方式については、自社としての要件整理が出発点になります。

まとめ:制裁リスト・フィルタリングシステムの3つの要点

本稿では、制裁リスト・フィルタリング(経済制裁スクリーニング)の位置づけとシステム要件を、財務省・金融庁の公式情報に基づいて整理しました。要点は次の3つに集約されます。第一に、制裁リスト・フィルタリングは、取引の行動を監視するAML取引モニタリングや、日本の反社会的勢力を確認する反社チェックとは異なる、国際的な経済制裁対象者とのリスト照合という独立したコントロールです*4。第二に、外為法の資産凍結等の措置・国連安保理決議・FATF勧告を背景に、金融庁ガイドラインは取引フィルタリングの体制整備を対応が求められる事項として明示しています*1*4*6。第三に、リスト更新への追従、あいまい一致による名寄せ、ヒット判定の監査証跡、既存システムとの連携には専門知識が求められるため、内製と外注のどちらで進めるかを規制知識・多言語名寄せ・保守体制の3つの観点から判断する必要があるでしょう。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)として業務・コンプライアンス系システムの開発・運用を受託しています。制裁リスト・フィルタリングシステムの照合ロジック設計からリスト更新の運用保守、既存の口座・送金・基幹取引システムとの連携、監査証跡の設計まで一貫して対応する体制を整えています。AML取引モニタリングや反社チェックとの役割分担を含め、自社の照合体制に不安がある企業様は、まずは現状の照合フローの棚卸しからご相談ください。

よくある質問

制裁リスト・フィルタリングとAML取引モニタリングはどう違いますか。

制裁リスト・フィルタリングは、顧客・取引先・送金の関係者を制裁対象者リストと名寄せ照合し、一致するかどうかを検知する仕組みです。これに対しAML取引モニタリングは、口座開設後の送金・入出金の挙動をシナリオや閾値に基づいて継続的に監視し、疑わしい取引を検知する仕組みであり、着眼点が異なります。金融庁ガイドラインもこの2つを別の対応事項として整理しています。

制裁リスト・フィルタリングと反社チェックはどう違いますか。

反社チェックは、取引先やその役員等が日本の反社会的勢力に該当しないかを確認する仕組みです。これに対し制裁リスト・フィルタリングは、外為法や国連安保理決議に基づく国際的な経済制裁対象者との照合を目的としており、確認すべき対象が異なります。

制裁対象者リストはどのように更新されますか。

財務省は、国連安保理決議に基づくものと独自制裁で構成される対象者リストをExcel・CSV形式で公開しており、対象によっては年に複数回の追加・削除が行われています。国連安全保障理事会決議等で新たに経済制裁対象者等が指定された際には、遅滞なく照合する体制を整えることが金融庁ガイドラインで求められています。

あいまい一致(ファジーマッチング)はなぜ必要ですか。

制裁対象者リストの氏名・団体名は、漢字・ローマ字表記や別名表記のゆれを伴う場合があります。完全一致だけの照合ではこうした表記の違いを見逃すおそれがあるため、一致度をスコア化して閾値で振り分けるあいまい一致を組み合わせるのが一般的です。

制裁リスト・フィルタリングシステムの開発を外注するメリットは何ですか。

外為法や金融庁ガイドライン等の規制知識、多言語名寄せロジックの設計、リスト更新への継続的な追従といった専門性を、社内で一から蓄積せずに専門パートナーの知見で補える点がメリットです。ただし自社の取引特性を踏まえた追加的対応の検討は、委託後も自社の役割として残ります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:財務省「経済制裁措置及び許可手続きの概要」(https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/gaitame/economic_sanctions/gaiyou.html
  2. *2 出典:財務省「経済制裁措置及び対象者リスト」(https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/gaitame/economic_sanctions/list.html
  3. *3 出典:財務省「最近の経済制裁対象者の追加等」(https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/gaitame_kawase/gaitame/economic_sanctions/recent.html
  4. *4 出典:金融庁「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」令和8年3月31日改正(https://www.fsa.go.jp/news/r7/amlcft/20260331/02.pdf
  5. *5 出典:金融庁「金融機関におけるマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策について」(https://www.fsa.go.jp/policy/amlcftcpt/index.html
  6. *6 出典:金融庁「改訂FATF勧告の概要」(https://www.fsa.go.jp/inter/etc/20120217-1.html


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