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VPCエンドポイント(PrivateLink)でデータ転送コストを削減する外注の進め方
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- Gateway型(S3/DynamoDB)は利用料・データ処理ともに無料で、導入コストなく削減効果を得られます
- Interface型(PrivateLink)は時間課金があるため、トラフィック量によっては逆に割高になるケースも存在します
- 自社でのトラフィック分析からエンドポイント設計・不要リソース削除まで、外注による一貫支援が効果的です
目次
VPCエンドポイントとPrivateLink — コスト削減の仕組み
VPCエンドポイントとは、Amazon VPC(仮想プライベートクラウド)内のリソースがインターネットやNAT Gatewayを経由せずに、AWS各サービスへプライベートに通信するための接続口を指します。通信経路をAWSのバックボーンネットワーク内に閉じることで、データ処理コストとセキュリティリスクを同時に低減できます。
VPCエンドポイントには大きく2種類があります。Gateway型はAmazon S3とAmazon DynamoDB専用で、利用料・データ処理料ともに無料です。Interface型(PrivateLink)はS3以外のAWSサービス全般に対応し、時間課金(東京リージョンで1エンドポイントあたり約$0.014/時)とデータ処理料(約$0.01/GB)が発生します*1。
通信経路をNAT Gateway経由からVPCエンドポイント経由に切り替えると、NAT Gatewayのデータ処理料が不要になります。EC2とS3の通信量が多い環境では、コスト削減効果が顕著に現れます。
NAT Gateway経由が高コストになる理由
Amazon NAT Gatewayは、プライベートサブネットのリソースがインターネットと通信するために使うゲートウェイです。処理したデータ量に応じて料金が発生し、東京リージョンでは約$0.062/GBのデータ処理料がかかります*1。
AWSサービス(S3、DynamoDB、CloudWatch等)はパブリックエンドポイントを持っています。VPCエンドポイントを設定していない環境では、EC2インスタンス等からS3バケットへアクセスする際にNAT Gatewayを経由します。大量のデータをS3との間でやり取りするワークロード(バッチ処理、機械学習パイプライン、ログアーカイブ等)では、データ処理料が月額で無視できない水準に積み上がります。
加えて、AWSリージョン間のデータ転送コスト(エグレス費用)とは異なり、NAT Gatewayのデータ処理料はVPC内部からAWSサービスへの通信にも課金される点に注意が必要です。自社リソースからAWSのマネージドサービスへの通信という「内向きの通信」でもコストが発生し続ける構造です。
Gateway型・Interface型の料金比較
NAT Gateway、Gateway型エンドポイント、Interface型エンドポイントの料金構造を整理します。東京リージョンの目安として参照してください。
| 接続方式 | 対象サービス | 時間課金(東京) | データ処理料(東京) | 留意点 |
|---|---|---|---|---|
| NAT Gateway経由 | AWS全サービス・インターネット | 約$0.062/時 | 約$0.062/GB | インターネット接続にも使えるが、AWSサービス通信には不要な費用が発生します。 用途を絞って規模を最小化することが大切です。 |
| Gateway型エンドポイント | S3・DynamoDBのみ | 無料 | 無料 | ルートテーブルへのエントリ追加のみで設定可能です。 S3・DynamoDBとの通信量が多い環境では、導入コストなく即効性があります。 |
| Interface型エンドポイント(PrivateLink) | S3以外のAWSサービス全般・SaaS | 約$0.014/時(1エンドポイント) | 約$0.01/GB | 時間課金があるため、低トラフィックでは割高になります。 使わないエンドポイントは削除することでコストを抑えられます。 |
※上記は執筆時点(2026年6月)の目安であり、米ドル建てです。実際の料金はAWS公式の料金ページ*1でご確認ください。為替変動により円換算額は変わります。
Gateway型エンドポイントはコストゼロで導入できるため、S3・DynamoDBとのデータ転送が発生するVPCであれば、設定しない理由はほとんどありません。一方、Interface型はAZ(アベイラビリティゾーン)ごとにエンドポイントを作成した場合、複数AZで時間課金が重なります。マルチAZ構成では月額の固定費が積み上がるため、実際のトラフィック量との比較検討が不可欠です。
削減できるケースと逆に割高になるケース
VPCエンドポイント導入が効果的なケースと、逆にコストが増えるケースを理解しておくことが大切です。
削減効果が出やすいケース
- S3への大量データ転送がある環境:機械学習のトレーニングデータ入出力、ログ集約、データウェアハウスへのETL処理など、月間数十GB〜数TB規模の転送がある場合
- NAT Gateway経由のAWSサービス通信が主用途:NAT Gatewayをほぼインターネット向けに使わず、S3・CloudWatch・SSM等のAWSサービス通信が大部分を占める場合
- セキュリティ要件でインターネット経路を排除したい環境:金融・医療・官公庁向けシステムでパブリックインターネットへの通信を禁止する要件がある場合
実際にEC2とS3間の通信をGateway型エンドポイントに切り替えた事例では、NAT Gatewayのデータ処理コストを約70%削減した報告があります。これはS3向けのトラフィックがNAT Gatewayを通らなくなったことによる削減であり、残存するインターネット向けトラフィックのコストは引き続き発生します。
逆に割高・効果なしになるケース
- 低トラフィック環境でInterface型を多数作成した場合:エンドポイント1つあたり約$0.014/時の時間課金は月額約$10です。3AZ×複数サービス分を作成すると、毎月数十ドルの固定費が発生します
- 不要になったエンドポイントを削除しない場合:使用頻度が下がったサービスへのエンドポイントも時間課金され続けます
- S3以外のAWSサービスで低頻度API呼び出しのみの環境:CloudWatchやSQS等へのInterface型エンドポイントを設けても、データ処理料削減額が時間課金を下回る可能性があります
導入前にVPC Flow LogsやAWS Cost Explorerでトラフィック量と現在の料金を確認し、削減額と新たに発生するコストを比較することが大切です。「とりあえず全サービスにエンドポイントを設定する」という進め方は、かえってコストを押し上げるリスクがあります。
導入の進め方 — トラフィック分析から不要リソース削除まで
VPCエンドポイント導入を効果的に進めるには、4段階のアプローチが有効です。
ステップ1:NAT Gatewayのトラフィックを可視化する
まずAWS Cost Explorerで「NAT Gateway — Data Processed」の費用を確認します。月額で目立つ金額が出ているVPCを特定してから詳細分析に進みます。VPC Flow Logsを有効化し、NAT Gateway経由で通信している宛先(特にAWSサービスのIPレンジ)を抽出します。
AWS CloudTrailやVPC Flow Logsは大量のデータを生成するため、S3への保存・分析にAthenaやCloudWatch Logs Insightsを組み合わせると効率的です。この分析工程自体にも一定の技術スキルが必要です。
ステップ2:Gateway型エンドポイントを優先して設定する
S3やDynamoDBへの通信が確認されたVPCにはGateway型エンドポイントを設定します。設定作業はVPCコンソール上でのエンドポイント作成とルートテーブルへの自動追記のみで、数分で完了します。コスト面の障壁がなく即効性があるため、最初に対応すべき項目です。
ステップ3:Interface型エンドポイントの費用対効果を個別検討する
CloudWatch、SSM(Systems Manager)、SQS、ECR等はInterface型PrivateLinkに対応しています。各サービスへの月間データ転送量を試算し、「Interface型エンドポイントの月額固定費 < NAT Gatewayデータ処理料の削減額」となるサービスのみ導入します。
1AZに絞ってエンドポイントを設定するオプションもありますが、AZ障害時の可用性に影響するため、要件と照らし合わせた判断が必要です。
ステップ4:不要なエンドポイントを定期的に見直して削除する
使われていないエンドポイントが時間課金され続けるのはよくある見落としです。インフラ構成のコードレビューやAWS Trusted Advisorのチェックと組み合わせ、利用頻度が下がったエンドポイントを削除する運用フローを定めておくと、固定費の肥大化を防げます。
外注で進める手順とベンダー選びのポイント
VPCエンドポイントの設計・導入を外部に委託する場合、以下の流れで進めるとスムーズです。
外注で進める4ステップ
- 現状の構成情報とコスト明細(AWS Cost Explorer出力)をベンダーに共有する
- ベンダーがVPC構成・ルートテーブル・セキュリティグループを確認し、導入可能なエンドポイント種別と削減試算を提示する
- Terraform・CloudFormation等のIaC(Infrastructure as Code、インフラ構成のコード管理)で設定変更をコード化してレビューを受ける
- ステージング環境で疎通テスト・コスト比較を確認してから本番適用する
変更作業そのものは比較的シンプルですが、既存のルートテーブルやセキュリティグループとの整合性確認、DNS解決設定(Interface型ではPrivate DNS有効化が必要なケースがある)、マルチVPC構成での設計など、実務上の確認事項は少なくありません。
特にInterface型エンドポイントのPrivate DNS設定を誤ると、アプリケーションが意図せずパブリックエンドポイントへ通信し続けるケースがあります。変更後の疎通確認と費用モニタリングをセットで進めることが大切です。
外注先を選ぶ際の3つの確認軸
- VPCネットワーク設計の実績:エンドポイント導入だけでなく、ルートテーブル・セキュリティグループ・トランジットゲートウェイ等を含むVPC設計経験があるか
- IaCによる変更管理の体制:TerraformやCloudFormationで変更をコード化し、レビュー・バージョン管理できるか
- 導入後のモニタリング・継続支援:AWS Cost ExplorerやCloudWatchでコスト削減効果を計測し、不要エンドポイントの定期見直しまで担当できるか
依頼前に確認すべき4つのポイント
外注依頼の前に自社側で準備・確認しておくと、スコープ定義と見積もりが精度高くなります。
- 対象VPCとAWSアカウントの整理:複数VPC・マルチアカウント構成の場合は、どの範囲を対象にするか事前に整理します
- NAT Gatewayの現在の利用目的の確認:インターネット向け通信とAWSサービス向け通信が混在しているか把握し、NAT Gatewayを完全廃止できるかどうかを確認します
- 変更凍結期間・メンテナンス窓口の確認:本番環境への変更可能な時間帯や事前申請手順を確認し、ベンダーと事前合意しておきます
- IaC管理の有無:現在の構成がTerraform・CloudFormation等で管理されているかどうかにより、作業方針と工数が大きく変わります
内製対応の場合、VPCネットワーク設計・IaC・コスト分析の3領域にまたがる知識が必要です。各領域を担当できるエンジニアを確保し、変更作業とテストに対して1〜2週間程度の工数を見込む場合が多いです。ただし既存構成の複雑さや対象サービス数によって工数は変わります。
まとめ:VPCエンドポイント導入を成功させる3つの判断軸
本稿では、VPCエンドポイント(PrivateLink)を活用したNAT Gatewayコスト削減の仕組みと、外注で進める手順を整理しました。要点を3つに集約すると次の通りです。
第一に、Gateway型(S3/DynamoDB)は無料で導入できるため、対象サービスとの通信がある環境では早期に設定することが大切です。第二に、Interface型は時間課金があるため、トラフィック量と削減額の試算を先に行い、費用対効果が出るサービスにのみ適用する判断が重要です。第三に、不要なエンドポイントの定期削除まで運用に組み込まないと、固定費が積み上がるリスクがあります。
VPCエンドポイントの設定変更は比較的シンプルですが、ルートテーブル・DNS設定・セキュリティグループとの整合性確認など、実務上の確認事項は広範にわたります。IaC管理・テスト・コストモニタリングをセットで進めるには、専門パートナーへの委託が効果的です。
よくある質問
VPCエンドポイントを設定するとNAT Gatewayを削除できますか?
S3・DynamoDB等のAWSサービス向け通信をすべてVPCエンドポイント経由にできれば、NAT Gatewayのデータ処理料は発生しなくなります。ただし、インターネットへの通信(外部APIアクセスやソフトウェアアップデート等)が残る場合は、NAT Gatewayを完全に削除することはできません。まずNAT Gateway経由の通信先を分析し、AWSサービス向けとインターネット向けに分類した上で判断することをおすすめします。
Gateway型エンドポイントを設定すると既存のアプリケーションに影響がありますか?
Gateway型エンドポイントを設定すると、対象VPCのルートテーブルにS3・DynamoDBへのルートが追加されます。通常はアプリケーションコードの変更なく透過的に適用されますが、セキュリティグループやネットワークACLでS3のAWSIPレンジを制限している環境では追加の設定変更が必要な場合があります。ステージング環境での事前確認をおすすめします。
Interface型エンドポイントのPrivate DNS設定はどのような場合に有効にすべきですか?
Private DNS有効化を設定すると、VPC内からAWSサービスへのDNS解決がプライベートIPアドレスを返すようになります。アプリケーションコードをエンドポイントURLに変更せずにPrivateLink経由で通信できるため、コードの変更コストを抑えられます。ただし、同VPCにインターネット経由でも同サービスを利用するリソースが混在する場合は、DNS解決の挙動に注意が必要です。ネットワーク構成とアプリケーションの通信要件を確認した上で設定することが大切です。
VPCエンドポイント導入の外注費用の目安はどれくらいですか?
外注費用は対象VPCの数・AWSアカウントの構成・既存インフラのIaC管理状況によって大きく異なるため、一概にお伝えするのが難しい状況です。スポット的なエンドポイント導入支援(現状分析・設計・構築・テストのセット)の場合、数十万円台から依頼できるケースと、マルチアカウント構成の大規模改修で数百万円規模になるケースがあります。まず現状のNAT Gatewayコストを確認し、削減試算を出した上でベンダーに見積もりを依頼することをおすすめします。
VPCエンドポイント(PrivateLink)とVPNやDirect Connectはどう使い分けますか?
VPCエンドポイント(PrivateLink)はAWS内部のサービスへのプライベート接続に特化しています。一方、AWS VPN(仮想プライベートネットワーク)とAWS Direct Connect(専用線接続)はオンプレミスとAWSをつなぐ手段です。オンプレミスからAWSサービスへPrivateLink経由でアクセスしたい場合は、VPN・Direct ConnectとPrivateLinkを組み合わせるアーキテクチャになります。用途と接続元の環境に応じて使い分けることが大切です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:Amazon Web Services「Amazon VPC の料金」(2024年公表・執筆時点の東京リージョン目安・米ドル建て)