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IPv6移行とは|IPv4枯渇と企業の対応
インターネットの住所にあたる「IPアドレス」。長らく主役だったIPv4は、世界の在庫がすでに底をつき、新しく確保するのが難しくなっています。そこで、けた違いに広い住所空間を持つ次世代の規格「IPv6」への移行が、少しずつ現実の課題になってきたのです。とりわけ、2024年に大手クラウドがIPv4アドレスの利用に課金を始めたことで、コストの面からもIPv6が意識されるようになっています。IPv6移行とは、この新しいアドレス体系へ、システムやネットワークを対応させていく取り組みのことなのです。
とはいえ、いきなりすべてを切り替えるわけにもいかず、当面はIPv4とIPv6を併存させながら進めるのが一般的です。本記事では、ネットワークやインフラに関わる情報システム部門・事業部門の担当者に向けて、IPv6移行とは何か、なぜ今なのか、IPv4と何が違うのか、どんな進め方があるのか、そして受託・委託開発で押さえておきたい点を整理します。なお、具体的な設計は環境によって変わるため、実際の対応は公式情報や専門家にご確認ください。
目次
IPv6移行とは——次世代アドレスへの切り替え
IPv6移行とは、インターネットの住所を割り当てる仕組みを、従来のIPv4から、次世代のIPv6へと対応させていく取り組みを指します。IPv4は32ビットの住所空間を持ち、その数はおよそ43億個です。かつては十分に思えた数でしたが、スマートフォンやクラウド、IoT機器の広がりで需要がふくらみ、世界の在庫は2011年ごろに元をたどれば底をついています。これに対しIPv6は128ビットと、けた違いに広い空間を持ち、住所が足りなくなる心配は小さいのです。
ただし、IPv4とIPv6のあいだに、そのままでは互換性がありません。だからこそ「移行」という言葉が使われるわけです。多くの現場では、当面はIPv4とIPv6を同時に持たせながら、少しずつIPv6へ寄せていく形が採られています。まずは全体像を、図で押さえておきましょう。
この記事のポイント
- IPv6移行は、在庫が枯渇したIPv4から、広大な住所空間を持つIPv6へ対応させていく取り組みです。
- 当面はIPv4とIPv6を併存させる「デュアルスタック」から、段階的に進めるのが一般的になります。
- クラウドのIPv4課金などを背景に、コスト・拡張性の面から関心が高まっています。
なぜ今IPv6なのか
IPv6という規格そのものは、けっして新しいものではありません。それでも近年あらためて関心が高まっているのには、いくつかの理由があります。ひとつは、IPv4アドレスの不足がいよいよ現実の負担になってきたことです。新しく確保しようとすると、調達に手間やコストがかかるようになりました。もうひとつが、コスト面のはっきりした変化です。ある大手クラウドは、2024年2月から、使用するIPv4アドレスに対して時間あたりの料金を課すようになりました。積み重なれば、決して小さくない金額になるのです。こうした費用は、クラウドのIPv4課金への対策という切り口でも語られるようになっています。
さらに、IoT機器の急増も後押しになっています。ネットにつながる機器が増えるほど、住所の需要は伸びる一方です。国や地域によっては、IPv6への対応を政策として推し進めているところもあります。全体として、IPv6への流れは、少しずつではあっても着実に進んでいるといえるでしょう。世界全体でIPv6を使う通信の割合は、統計によっては4割を超えたとも報告されています。
IPv4とIPv6の違い
両者はどこが違うのでしょうか。もっとも大きな差は、住所空間の広さにあります。あわせて、表記のしかたや、周辺の仕組みにも違いが表れます。通信の土台となる考え方そのものは、通信プロトコルの基礎で扱うTCPやUDPと同じ流れをくむものですが、住所の割り当て方が世代で変わる、と捉えると分かりやすいでしょう。おおまかな違いを、表に整理しました。
| 項目 | IPv4 | IPv6 |
|---|---|---|
| 住所の長さ | 32ビット | 128ビット |
| 住所の数 | 約43億個 | 事実上ほぼ無尽蔵 |
| 表記の例 | 192.0.2.1 | 2001:db8::1 |
| 在庫の状況 | 枯渇済み | 潤沢 |
数字だけ見ると住所の数の差に目が向きますが、実務では表記や設定の作法も変わってきます。慣れの部分も大きいため、少しずつ触れて感覚をつかんでいくのがよいでしょう。
主な移行の進め方——3つの方式
IPv4とIPv6には互換性がないため、移行にはいくつかのやり方があります。よく用いられるのが、次の三つです。ひとつ目が「デュアルスタック」で、IPv4とIPv6を同時に持たせ、相手に応じて使い分ける形です。両方に対応できるため無理が少なく、当面の主流とされています。ふたつ目が「トンネリング」で、片方のネットワークのなかを、もう片方の通信でくぐらせるやり方になります。
三つ目が「変換」で、IPv6とIPv4のあいだを相互に橋渡しするものです。NAT64と呼ばれる仕組みや、名前解決を補うDNS64などを組み合わせて用います。どの方式が向くかは、対象とする機器やサービス、既存の構成によって変わるのです。一度にひとつへ決め切るというより、場所ごとに使い分けながら、少しずつIPv6の比率を高めていくのが現実的な進め方だといえます。
企業での進め方と、気をつける点
企業でIPv6移行を進める場合、やみくもに手を付けるより、順を追って整理すると見通しが立ちます。出発点になるのが、対象の棚卸しです。社内のネットワーク、外に公開しているサービス、クラウド上の環境——どこがIPv6に対応していて、どこが未対応なのかを洗い出します。そのうえで、優先順位をつけ、併存させながら段階的に移していくのが基本になります。
気をつけたい点もいくつかあります。まず、名前解決の設定です。IPv6で接続できるようにするには、DNSの仕組みのなかで「AAAAレコード」と呼ばれる記述を用意する必要があります。次に、ファイアウォールや各種機器の対応です。IPv4だけを想定した設定のままだと、IPv6の通信が意図せず素通りしたり、逆にふさがれたりすることもあります。守りの設定を、IPv6にも同じ考え方で用意しておくことが欠かせません。あわせて、対応していない古い機器やソフトが残っていないかも、確かめておきたいところです。
受託・委託開発で押さえる実務ポイント
IPv6対応を外部と進める場合は、いくつかの点を早めにすり合わせておくと見通しが立ちます。まず、何をどこまでIPv6に対応させたいのか、その範囲をはっきりさせることです。公開サービスだけなのか、社内のネットワークまで含むのか。範囲が定まると、必要な作業や、採るべき方式の見当がつきます。あいまいなまま進めると、対応漏れや二度手間が生まれやすくなります。
次に、既存の構成をふまえた進め方の設計です。いまの機器やクラウドの構成を棚卸ししたうえで、デュアルスタックから始めるのか、変換の仕組みを挟むのかを見定めていきます。DNSやファイアウォールの設定、動作の確認まで含めて、ひと続きの流れとして描ける相手だと、任せたあとも落ち着いて進めやすくなるものです。棚卸しから方式の選定、設定、検証までを見通して伴走できるかどうかが、頼れる委託先を見分けるひとつの目安になるでしょう。
まとめ:IPv6移行で押さえる3つの視点
IPv6移行は、在庫の尽きたIPv4から、広大な住所空間を持つ次世代の規格へと、システムを対応させていく取り組みです。押さえておきたい視点は三つに整理できます。第一に、IPv6は128ビットの広い住所空間を持ち、IPv4の枯渇やクラウドの課金を背景に関心が高まっていること。第二に、IPv4とIPv6には互換性がないため、当面はデュアルスタックで併存させながら、段階的に移していくのが一般的であること。第三に、進めるうえでは対象の棚卸しと、DNS(AAAAレコード)やファイアウォールなど周辺の設定への目配りが欠かせないこと。まずは、自社のどこがIPv6に対応していて、どこが未対応なのかを見極めるところから始めるとよいでしょう。判断に迷う部分は、公式情報の確認とあわせて、外部の知見を頼るのも堅実な選び方といえます。
よくある質問
IPv6に移行しないと、すぐに困りますか。
すぐにすべてが立ち行かなくなるわけではありません。当面はIPv4とIPv6が併存しており、IPv4も使い続けられるのです。ただ、IPv4アドレスの調達コストや、クラウドの課金といった負担は、じわりと効いてきます。中長期の視点で、対応できるところから少しずつ進めておくと、後々の見通しが立てやすくなるでしょう。
「デュアルスタック」とは何ですか。
IPv4とIPv6を同時に持たせ、通信の相手に応じて使い分ける方式です。両方に対応できるため無理が少なく、移行の当面の主流とされています。いきなり全部をIPv6へ切り替えるのではなく、併存させながら段階的にIPv6の比率を高めていく、その土台になる考え方だと捉えるとよいでしょう。
IPv6対応で、DNSの設定は何が変わりますか。
IPv6のアドレスで接続できるようにするには、DNSのなかで「AAAAレコード」と呼ばれる記述を用意します。IPv4向けの「Aレコード」に相当するものです。これがないと、IPv6での名前解決ができません。移行の際は、こうした設定の追加や見直しが必要になるため、DNSまわりの作業も計画に含めておきたいところです。
IPv6にするとセキュリティはどうなりますか。
IPv6そのものが危ういわけでも、それだけで守りが強まるわけでもありません。大切なのは、IPv4と同じ考え方で守りの設定を用意することです。IPv4だけを想定したファイアウォールのままだと、IPv6の通信が想定外の振る舞いをすることもあります。両方の経路に、そろえて目を配る姿勢が欠かせません。
まず何から着手すればよいですか。
対象の棚卸しから始めるとよいでしょう。社内ネットワーク、公開サービス、クラウド環境のうち、どこがIPv6に対応していて、どこが未対応かを洗い出します。そのうえで優先順位をつけ、デュアルスタックで併存させながら段階的に進めます。DNSやファイアウォールの設定も忘れずに。判断に迷う部分は、公式情報の確認と専門家への相談を組み合わせるのが堅実です。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
IPv6対応・ネットワーク移行はLASSICへ
元請(プライムベンダー)として、対象の棚卸しから方式の選定・DNSやファイアウォールの設定・検証まで、貴社の環境に合わせてご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 参考:総務省「IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会」など公開資料(https://www.soumu.go.jp/)。IPv6の位置づけの一般的な参考として。
- *2 参考:Google「IPv6 Adoption 統計」(https://www.google.com/intl/en/ipv6/statistics.html)。世界のIPv6利用割合の参考として。