LASSIC Media らしくメディア

2026.08.19 らしくコラム

中国の生成AI規制とは|暫定弁法と企業対応

生成AIをめぐるルールづくりは、いまや世界の各地で進んでいます。なかでも中国は、早い段階から具体的な規定を積み重ねてきた国のひとつです。生成AIに特化した最初の規定「生成AIサービス管理暫定弁法」が2023年8月に施行され、さらに2025年9月には、AIが作った文章や画像などに表示を求める「AI生成コンテンツ標識弁法」も動き出しました。ひとつの大きな法律というより、複数の規定が層になって全体をかたちづくっているのが、中国の特徴になります。

海外の規制ではありますが、中国の市場に向けてAIサービスを出している、あるいは現地で開発を進める日本企業にとっては、押さえておきたいテーマです。本記事では、中国向けの事業に関わる情報システム部門・事業部門の担当者に向けて、中国の生成AI規制とはどんな成り立ちなのか、事業者に何が求められるのか、EUや韓国・米国の制度とどう違うのか、そして受託・委託開発で気をつけたい点を整理します。なお本記事は一般的な情報の整理であり、法的な助言ではありません。適用の有無や具体的な対応は、公式情報や専門家にご確認ください。

中国の生成AI規制と企業対応を表す上海の街並みのイメージ

中国の生成AI規制とは——層になった枠組み

中国の生成AI規制は、ひとつの独立した法律にまとまっているわけではありません。推薦アルゴリズムを対象にした規定、ディープフェイクなどの合成技術を対象にした規定、そして生成AIそのものを対象にした暫定弁法——といった具合に、複数の規定が時期をずらして積み重なり、全体の枠組みをかたちづくっているのです。中心となって監督にあたるのは、国家インターネット情報弁公室(CAC)と呼ばれる当局になります。

この「積み重ね型」という成り立ちが、中国の規制を捉えるうえでのかなめです。ひとつの弁法だけを見ても全体像はつかめず、関連する規定をあわせて眺める必要があります。まずは、その積み重ねの流れを図で押さえておきましょう。

中国の生成AI規制の全体像・アルゴリズム推薦規定から標識弁法までの積み重ね・CACと事業者の義務・対象範囲を示す図

この記事のポイント

  • 中国の生成AI規制は、複数の規定が層になった枠組みで、CAC(国家インターネット情報弁公室)が監督の中心です。
  • 生成AIサービス管理暫定弁法(2023年8月〜)とAI生成コンテンツ標識弁法(2025年9月〜)が近年の柱になります。
  • 対象は中国国内の公衆向けサービスが軸で、中国市場に関わる日本企業も影響を確かめておきたいところです。

積み重ねの流れ——4つの規定

全体像を、時期の流れで追ってみましょう。ひとつ目が、2022年に動き出した「アルゴリズム推薦管理規定」です。おすすめ表示などに使われる推薦アルゴリズムを対象に、届出などの仕組みが設けられました。ふたつ目が、2023年1月に施行された「深層合成規定」で、いわゆるディープフェイクのような合成技術に対し、それとわかる表示などを求めるものになります。

三つ目が、2023年8月に施行された「生成AIサービス管理暫定弁法」です。生成AIに特化した中国で最初の規定とされ、サービスの届出やセキュリティ評価、学習データの扱いなどを幅広く定めています。そして四つ目が、2025年9月に動き出した「AI生成コンテンツ標識弁法」になります。AIが生成・合成した文章や画像、音声、動画などに、それとわかる表示を求めるもので、国家標準(GB 45438-2025)とあわせて運用される点が特徴です。こうして並べると、対象が推薦から合成、そして生成AI全般へと広がってきた流れが見えてきます。

事業者に求められる主な義務

では、サービスを出す事業者には何が求められるのでしょうか。規定をまたいで共通する軸を、いくつか挙げてみます。まず、アルゴリズムの「届出」です。世論に関わる性質や、社会的な動員につながりうる性質を持つサービスでは、アルゴリズムを当局に届け出て、セキュリティ面の自己評価を行うことが求められるとされています。次に、生成物への「表示」です。AIが作ったコンテンツには、それとわかる表示を付けることが、標識弁法などで求められます。

あわせて、学習に使うデータや個人情報の扱い、生成されるコンテンツの管理なども論点になります。とりわけ、世論や社会的な影響が大きいと見なされる領域では、より手厚い備えが求められる組み立てです。CACは、届出が済んだアルゴリズムや生成AIの一覧を折にふれて公表しているともいわれます。どの義務が自社に及ぶのかは、提供するサービスの性質によって変わるため、まずは自社のサービスがどう位置づくのかを整理しておきたいところでしょう。

なぜ日本企業にも関係するのか

中国の規制は、主に中国国内の公衆に向けて提供されるサービスを軸に組み立てられています。裏を返せば、中国の利用者に向けてAIサービスを出していたり、中国の拠点で開発・運用を進めていたりする日本企業にとっては、無関係とは言い切れないわけです。生成AIを組み込んだサービスを中国市場に展開する場面では、届出や表示といった対応が視野に入ってきます。

また、中国での開発委託やオフショアを通じて生成AIに関わる場合にも、現地のルールを踏まえた進め方が欠かせません。もっとも、適用の範囲や必要な手続きは、サービスの性質や提供のしかたによって変わり、運用の細部も動いている段階です。だからこそ、確定した知識として身構えるより、動向を追いながら、自社に関わりそうな範囲を見極めていく構えが向いています。判断を伴う部分が多いため、公式情報や現地の専門家にあたるのが堅実な進め方になります。

EU・韓国・米国の制度との違い

中国の生成AI規制は、ほかの国・地域と並べると、その性格がくっきりします。まず、EUのAI規則(AI Act)との違いです。EUはAIをリスクの高さで四段階に分け、横断的に仕分ける組み立てを採っています。これに対し中国は、対象ごとの規定を積み重ねる形で、届出や表示といった具体的な手続きを軸に置いている点が異なるのです。次に、韓国のAI基本法との違いにも触れておきましょう。韓国は、ひとつの基本法のなかに高影響AIと生成AIの義務を束ねました。中国は、単独の基本法というより、複数の規定の集合として広がってきた点が対照的です。

さらに、米国の州ごとのAI法との違いも押さえておくとよいでしょう。米国は連邦の包括法がなく、州ごとにルールが分かれています。中国は、国の当局(CAC)が全国的に監督する点で、方向性が大きく異なるといえるでしょう。下の表に、おおまかな性格をまとめました。

国・地域 組み立て 特徴的な軸
中国 複数の規定の積み重ね 届出・セキュリティ評価・表示
EU 横断的な単一の規則 4段階のリスク分類
韓国 単一の基本法 高影響AI・生成AIの義務
米国 州ごとに分散 州法の集まり

いずれも動きの途中にある分野です。制度は見直されることもあるため、実際の対応にあたっては、その時点の公式情報を確かめる姿勢が欠かせません。

受託・委託開発で押さえる実務ポイント

中国向けの生成AIサービスを外部と一緒に作る、あるいは運用する場合は、いくつかの点を早めにすり合わせておくと見通しが立ちます。出発点になるのが、「自社のサービスが、どの規定の対象になりうるか」の整理です。中国の公衆に向けて提供しているのか、世論や社会的な影響に関わる性質を持つのか。ここがはっきりすると、届出やセキュリティ評価、表示といった対応が視野に入るのかどうかの見当がつきます。

そのうえで、生成物への表示をどう実装するか、学習データや個人情報をどう扱うかを詰めていきます。とりわけ表示は、標識弁法や国家標準に沿った見せ方が求められるため、設計の早い段階から織り込んでおくと後戻りが減ります。規定が層になっていて、しかも運用が動いている領域のため、関連する規定の全体像をつかみ、更新を追いながら一緒に進められる相手だと、中国展開を任せたあとも落ち着いて進めやすくなるものです。

まとめ:中国の生成AI規制で押さえる3つの視点

中国の生成AI規制は、複数の規定が層になって広がってきた、独特の成り立ちを持つ枠組みです。押さえておきたい視点は三つに整理できます。第一に、単独の法律ではなく、アルゴリズム推薦・深層合成・生成AI暫定弁法・標識弁法といった規定の積み重ねで、CACが監督の中心にあること。第二に、事業者にはアルゴリズムの届出やセキュリティ評価、生成物への表示などが求められ、世論に関わる領域では特に手厚い備えが要ること。第三に、対象は中国国内の公衆向けサービスが軸で、中国市場に関わる日本企業も、届出や表示といった対応が視野に入ってくること。まずは、自社のサービスが中国とどう関わり、どの規定の対象になりうるのかを見定めるところから始めるとよいでしょう。判断に迷う部分は、公式情報の確認とあわせて、現地の知見を頼るのも堅実な選び方といえます。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)として、海外向けサービスの開発・運用を、制度対応の観点まで含めて一貫して受託しています。自社のサービスがどの規定の対象になりうるかの整理から、生成物への表示の実装、学習データや個人情報の扱いの設計まで、中国の生成AI規制をふまえたご提案ができるのが強みです。どこから手を付けるべきか、現状把握の段階からご相談いただけます。

よくある質問

中国の生成AI規制は、ひとつの法律ですか。

いいえ、複数の規定が層になった枠組みです。推薦アルゴリズムを対象にした規定、ディープフェイクなどの合成技術を対象にした規定、生成AIそのものを対象にした暫定弁法、そしてAI生成コンテンツの表示を求める標識弁法などが、時期をずらして積み重なっています。監督の中心は、国家インターネット情報弁公室(CAC)とされています。

「生成AIサービス管理暫定弁法」とは何ですか。

生成AIに特化した中国で最初の規定とされ、2023年8月に施行されました。サービスの届出やセキュリティ評価、学習データの扱いなどを幅広く定めているとされています。世論に関わる性質や社会的な動員につながりうる性質を持つサービスでは、より手厚い対応が求められる組み立てです。詳細や適用の範囲は、公式情報でご確認ください。

2025年に始まった表示のルールとは何ですか。

「AI生成コンテンツ標識弁法」を指します。2025年9月に動き出したもので、AIが生成・合成した文章や画像、音声、動画などに、それとわかる表示を求める内容です。国家標準(GB 45438-2025)とあわせて運用される点が特徴とされています。中国向けに生成AIサービスを出す場合は、表示の見せ方を設計の早い段階から検討しておくとよいでしょう。

日本の企業にも関係しますか。

中国の市場に向けてAIサービスを出していたり、中国の拠点で開発・運用を進めていたりする場合には、関わってくる見込みです。規制は主に中国国内の公衆向けサービスを軸に組み立てられているため、中国の利用者に関わるサービスは、届出や表示といった対応が視野に入ります。適用の範囲は判断を伴うため、公式情報や現地の専門家にご確認ください。

まず何から着手すればよいですか。

自社のサービスが中国とどう関わり、どの規定の対象になりうるのかの整理から始めるとよいでしょう。中国の公衆に向けて提供しているか、世論や社会的な影響に関わる性質を持つかを見極めると、届出やセキュリティ評価、表示といった対応が視野に入るかの見当がつきます。規定が層になっているため、関連する規定をあわせて確かめ、公式情報や専門家の知見を組み合わせて進めるのが堅実です。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑

中国など海外向けのAIサービス開発はLASSICへ

元請(プライムベンダー)として、対象規定の整理から、生成物への表示・データの扱いの設計まで、貴社の海外展開に合わせてご提案します。まずはお気軽にご相談ください。

無料相談はこちら

ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。

  1. *1 参考:Cyberspace Administration of China ほか「生成式人工智能服务管理暂行办法(生成AIサービス管理暫定弁法)」(https://www.cac.gov.cn/2023-07/13/c_1690898327029107.htm)。生成AI規制の一般的な参考として。
  2. *2 参考:Cyberspace Administration of China「人工智能生成合成内容标识办法(AI生成コンテンツ標識弁法)」(https://www.cac.gov.cn/2025-03/14/c_1743654684782215.htm)。表示ルールと施行時期の参考として。


View