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内製化支援の選定、支援範囲を5つの段階で決める
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 内製化支援の選定では、支援範囲を先に決めてから、提案と見積もりを同じ条件で比べます。
- 経済産業省のDX支援ガイダンスは、支援の中身を、方針を決める段階から取組を見直す段階までの5つに分けています。
- 段階ごとに頼む作業と社内に残す判断を分け、支援を終える条件も契約の前に決めておきます。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
内製化支援を頼もうと数社に声をかけたら、研修だけを勧める会社もあれば、開発を一緒に進める会社もあった。提案書を並べても、どれが自社に合うのか決められない——。外部の支援を初めて使う開発の現場では、こうした迷いが起こりがちです。内製化支援とは、社外の専門家が一定の期間、社内のチームに加わり、システムの企画や開発、運用を社員が自分たちで進められるようにする支援を指します。
選定を進めやすくするのが、何を頼むのか、つまり支援範囲を先に決めておくことです。どの段階のどの作業を頼み、どの判断を社内に残すかが決まっていれば、提案と見積もりを同じ条件で比べられます。ただし万能ではなく、支援範囲を決めても、支援する人の力量は別に確かめる必要があります。本記事では、開発の現場を預かるマネージャーに向けて、支援範囲を段階で切り分ける方法、段階ごとに社内に残す仕事、支援する人のスキルの確かめ方、そして外部に頼むときにつまずきやすい点を整理します。
目次
内製化支援とは
内製化支援の中身は、3つの形に分けると整理しやすくなります。1つ目は助言で、計画や設計の案に社外の立場から意見を述べる形です。2つ目は伴走で、支援する人が社員と同じチームに入り、要件の整理やプログラムの作成、テストを一緒に進めます。3つ目は教育で、研修や勉強会を開き、社員が使う技術や道具の使い方を教えます。提案書では、どの作業をどの形で支援するのかを見ると、違いが分かりやすくなります。
支援の進め方を考えるうえで参考になるのが、経済産業省が2024年3月にまとめた「DX支援ガイダンス」です。DX(デジタル技術を使った事業の変革)を外部から支援する組織や個人に向けて、支援の進め方を整理した文書です。*2 ガイダンスは支援する側を「支援機関」と呼び、「企業の DX の取組を支援する組織・個人」と広く定義しています。例として、地域のITベンダー、大手ITベンダー、SaaS(インターネット経由で使うソフトウェア)の事業者、経営やITの活用を助言するコンサルタントなどが挙がっています。*1 内製化支援の依頼先を探すときも、ITベンダーに限らず、こうした相手まで候補に入れられます。
ガイダンスが繰り返し述べているのは、支援される企業が主体だという点です。「あくまでも DX 推進の主役は企業であり」、支援機関には第三者として助言する役割もあると書かれています。さらに、「最終的には、企業が自走できるような DX 支援を心掛けることが重要である」としています。*1 自走、つまり社員が自分たちで進められる状態を目指す点で、内製化支援の考え方とそのまま重なります。
なぜ支援範囲を先に決めるのか
支援範囲を先に決める理由の一つは、段階ごとに別の相手を選ぶこともできるからです。ガイダンスは、DX支援の手順について「全てのプロセスを一つの支援機関が単独で実施する必要はなく」と書いています。支援機関どうしが強みと弱みを補い合えば、「より効果的な支援範囲の分担」ができるとも述べています。*1
支援を受ける側の事情も見ておきます。ガイダンスは、東京商工リサーチが2023年に行ったアンケートの結果を載せています。資本金1億円未満の企業1,493社のうち、支援機関を「活用した」のは14.4%、「活用を検討している」のは33.6%、「活用していない」のは52.0%でした。*1 活用を検討している企業(33.6%)は、活用した企業(14.4%)の2倍を超えています。
初めて選ぶときほど、提案書の比べ方で迷います。研修が中心の提案と、開発を一緒に進める提案とでは、関わる人数も期間も違うため、見積もりの金額だけを並べても比べようがありません。先に支援範囲を決め、同じ条件で提案を出してもらうと、各社の違いが支援の中身と金額の両方で見えるようになります。
段階ごとの支援の中身
ガイダンスは、企業のDXが進む過程を5つの段階に分け、段階ごとに支援機関が担う作業を示しています。内製化支援の支援範囲を決めるときは、次の表の右の列から、頼みたい作業を選ぶところから始めると進めやすくなります。
| 段階 | 企業が進めること | 支援機関が担う作業 |
|---|---|---|
| ①意思決定 | 経営層による方針の決定、存在意義に基づく経営の目標と戦略の策定、推進する体制づくり | 経営層との対話による課題の洗い出しと整理、存在意義や経営の目標を言葉にすること、経営戦略とDX戦略の策定 |
| ②全体構想・意識変革 | データを使うための取組、全社で協力して成功例を作ること | ロードマップ(進める順序の計画)と具体的な作業の洗い出し、今あるシステムの基盤の見直しと新しいツールの検討、投資に見合うかと導入するかどうかの判断、小さな業務から支援して成功例を作ること |
| ③本格推進 | データ分析の前提となる業務の進め方の見直し、データの活用とシステムの構築 | 業務の流れ・組織・権限の見直し、全社でのシステムやツールの導入と運用、集めたデータの既存事業や新規事業への活用 |
| ④DXの拡大 | 顧客への新しい価値の提供、大きな投資の判断 | 価値を届けるための実行の支援(データの解析、顧客が使う場面の設計など)、従業員への教育(システムやツールの使い方など)、取引先への展開と周知 |
| ⑤定期的な見直し | 存在意義や経営の目標に照らした取組の定期的な見直し | 経営層や従業員との対話、新しいシステムやツールの効果の測定と検証、戦略と取組の見直し |
開発の現場から内製化支援を頼むとき、中心になるのは③と④の段階です。③では、業務の流れや権限を見直したうえで、システムやツールを導入して運用します。④の従業員への教育について、ガイダンスは、新しい業務のトレーニングを従業員に行い、従来のやり方に慣れた従業員が考え方や行動を変えられるよう促すことが重要だとしています。社員が自分で作業できるようになるかどうかは、この2つの段階の支援の組み方で大きく変わります。
一方、①と②を頼むかどうかは、会社の状況で変わります。経営の方針やシステムの計画がすでに決まっているなら、②のうちロードマップの見直しだけを頼む選び方もあります。支援範囲を書くときは、「②のロードマップの策定と、③のシステムの導入・運用を、2026年度末まで」のように、段階と作業名と期間を並べておくと、提案する側も必要な人数と作業時間を見積もりやすくなります。
段階ごとに社内に残す仕事
支援範囲を決めるときに、頼む作業と同じくらい大切なのが、社内に残す仕事です。表の中央の列、つまり企業が進めることには、経営層が方針を決めることや、大きな投資を判断することが入っています。どの段階を頼んでも、何に投資し、何をやめるかを決めるのは会社の側です。①で支援機関が担うのは、経営層と対話を重ねて課題を洗い出し、方針を言葉にする手伝いまでと考えておきます。
②で頼めるのは、ロードマップの案づくりや投資採算の試算、導入するツールの候補の比較です。ガイダンスは、これらの作業を「相互に行き来しながら検討を重ね」て進めるものとしています。*1 支援する人に案を作ってもらう場合でも、検討の場には社内の担当者も加わり、なぜその案にしたのかを社内で説明できるようにしておきます。支援が終わったあとに計画を直すのは、社員だからです。
③と④は、内製化支援の中心です。ここで社内に残すのは、作業そのものです。支援する人が設定や開発を一人で済ませてしまうと、社員は作業の手順を覚えられません。最初は支援する人が作業して社員が隣で見る、次は社員が作業して支援する人が確かめる、最後は社員だけで作業する——このように作業を担う人を段階的に社員へ移していく計画を、支援範囲と一緒に書いておきます。
⑤の見直しでは、効果の測り方を社内で決めておくことが大切です。新しいシステムやツールの効果測定は、支援機関の作業に挙がっています。ただ、何をもって効果とするかは会社が決めることです。支援する人に測定の手順を作ってもらい、2回目からは社員が測ると決めておけば、支援が終わったあとも見直しを続けられます。社内に残す工程を他社の分け方から決める方法は「内製化支援の選定、自社に残す工程を先に決める」で、支援を終えて自走に移る判断の基準は「内製化支援から自走へ、自走化判断で確かめる3つの基準」で扱っています。
支援する人のスキルの確かめ方
支援範囲が決まったら、次はその作業を担う人のスキルを確かめます。ガイダンスは別紙で、DX支援人材のスキルセットを2つに分けて示しています。1つ目は、すべての支援人材が備えるべきもので、経済産業省とIPA(情報処理推進機構)が働く人すべてに向けて定めたDXの基礎知識の標準、「DXリテラシー標準」の「Why(DX の背景)」「What(DX で活用されるデータ・技術)」「How(データ・技術の利活用)」です。*1
2つ目は、より高度な支援人材が目標にするもので、DX推進スキル標準(DXを進める専門人材の技能の標準)の共通スキルリストから3つの種類を取り出しています。土台となる「パーソナルスキル」、経営や企業の変革に要る「コンサルティングスキル」、デジタルの専門知識にあたる「デジタルスキル」です。パーソナルスキルにはリーダーシップやゴール設定、コンサルティングスキルにはビジネス戦略の策定やプロジェクトマネジメント、デジタルスキルにはソフトウェア開発やクラウドインフラの活用、セキュリティの項目が並んでいます。*1
内製化支援の選定では、この3つの種類を段階に当てはめると確かめやすくなります。①と②を頼むならコンサルティングスキル、③の導入や開発を頼むならデジタルスキルのうち自社の技術に当たる項目、④の教育を頼むなら、社員と一緒に作業を進めるためのパーソナルスキルが中心です。提案を受けるときは、担当する予定の人がどの項目を持っているのかを、これまで担当した作業とあわせて示してもらいます。
ガイダンスは、これらのスキルについて「全てを習得することは必須ではなく」、支援のニーズに合わせて取捨選択できるとし、足りないスキルは支援機関どうしで補い合うことも重要だとしています。*1 1人の担当者にすべてを求めるより、段階ごとに必要な項目を持つ人がそろっているかを見るほうが現実的です。あわせて、特定の製品を売るだけの提案になっていないかも見ておきます。
つまずきやすい点
一つ目は、すべての段階を1社に任せ、社内に判断が残らないことです。計画も作業も効果測定も支援する側が担うと、支援が終わった時点で、社内には理由の分からない計画と、操作の分からないシステムが残ります。
二つ目は、教育をツールの操作研修だけで済ませてしまうことです。操作の研修は④の教育にあたりますが、③で業務の流れを見直す作業や、システムを導入して運用する作業に社員が加わっていなければ、研修で覚えた操作を使う場面がありません。教育を頼むときは、研修のあとに社員が担当する作業まで決めておくと、研修の内容も具体的になります。
三つ目は、支援を終える条件を決めないまま契約することです。ガイダンスは、DX支援を、取引先と一緒に取り組みながら中長期的に成長を見守り続けるものとしています。長く関わってもらえる点は利点ですが、終わりの条件がないと、いつまでも支援に頼る形になりかねません。「社員だけで月1回のリリースを3か月続けられたら、支援は相談の窓口だけに切り替える」のように、条件とその後の関わり方を書いておくと、社員だけで進める形への移行を計画に組み込めます。
四つ目は、段階ごとに別の相手を選んだのに、相手どうしの情報のやり取りを決めていないことです。ガイダンスは、支援機関どうしが連携するときに、支援する企業の了解を得たうえで企業の情報を共有し、支援の状況や成果も支援機関の間で共有・把握する必要があるとしています。誰と誰の間で、どの資料を共有してよいのかを、発注する側が先に決めておきます。
まとめ:内製化支援の選定で確かめておきたい3つの点
内製化支援の選定で、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、5つの段階のどこで、どの作業を、いつまで頼むのかという支援範囲を先に書くこと。第二に、投資の判断や効果の測り方など段階ごとに社内に残す仕事と、作業を社員へ移していく計画を決めること。第三に、担当する人のスキルを段階に当てはめて確かめ、支援を終える条件を契約の前に決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「支援が終わったら、社内には誰も触れないシステムだけが残った」という事態を避けやすくなります。支援範囲の決め方や、作業を一緒に進める人の探し方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
支援範囲は、契約の途中で広げたり狭めたりできますか
見直す時期を契約に書いておくのがおすすめです。ガイダンスは⑤の段階として、取組を定期的に見直すことを挙げています。見直しの結果に合わせて次の期間に頼む作業を増減できるようにしておけば、社員が作業に慣れるのに合わせて支援を減らしていけます。
内製化支援の見積もりは、どう比べればよいですか
同じ支援範囲と期間を示して、各社に見積もりを出してもらいます。段階と作業名、期間に加えて、支援する人が週に何日関わるかまで書いておくと、金額の差が支援の中身の差なのかどうかを見分けられます。
中小企業向けのガイダンスを、規模の大きい会社でも使えますか
段階の分け方と支援の中身は、会社の規模によらず支援範囲を決める手がかりになります。ただし、ガイダンスに載っている支援機関の活用状況の数値は、資本金1億円未満の企業の回答です。*1 規模の大きい会社の状況を表す数値としては使えません。
支援する側とのやり取りは、社内の誰が担うとよいですか
③と④の作業を引き継ぐチームの責任者が担うのがおすすめです。作業を引き継ぐ人が窓口を兼ねていれば、引き継ぎの進み具合を支援範囲の見直しに生かせます。
内製化に加わる人材を探したいとき
社内に残す作業と、それを担う人の探し方からご相談いただけます。
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出典
- *1 参考:経済産業省「DX支援ガイダンス -デジタル化から始める中堅・中小企業等の伴走支援アプローチ-」(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/dx/dxshienguidance.pdf)。出典:経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課(令和6年3月27日)。3.4(DX支援において想定される主な支援機関、図8 中小企業における支援機関の活用状況)、3.7(DX支援の具体的な方法論、図13 DX支援の具体的なプロセス)、4.1・4.2(支援機関同士の連携)、5.2(DX支援人材のマインドセット)、別紙1(DX支援人材のスキルセットの全体像)を参照(2026年9月確認)
- *2 参考:経済産業省「DX支援ガイダンス」(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-shien/dx-shien.html)。出典:同ガイダンスの公開ページ。策定の経緯と、本編が最新版であること(2025年3月に別冊の事例集を拡充)を参照(2026年9月確認)