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2026.10.09 採用支援コラム

物流業の経験者が来ない、エンジニア採用で業界経験を求めすぎない

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

物流倉庫の中で、ローラー式のコンベヤーが曲がりながら奥へ延び、その先に段ボール箱と自動倉庫の棚が並んでいる

この記事の結論

  • 物流業の業界経験は、倉庫の入出庫、輸配送の計画、荷主側の出荷など、どの業務の仕組みに関わった経験かまで書き出します。
  • 国勢調査では、物流の3業種に勤めるIT技術者は5,060人で全体の0.4%のため、勤め先で絞ると候補者は限られます。
  • 業務の決まりを知らないと仕様を決められない仕事は経験を重く見て、それ以外は入社後に教える人と方法を先に決めます。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

物流の会社や、自社で物流センターを持つ会社でエンジニアを募集するとき、物流業での経験を求めるかどうかで迷う担当者は少なくありません。倉庫管理や配車の仕組みを作る仕事では、入出庫や輸配送の流れを知っている人のほうが話は早く進みます。一方で、物流業の業界経験を必須にすると、応募できる人は限られます。

本記事では、物流業でエンジニア採用を担当する人に向けて、令和2年国勢調査の集計から物流の会社で働くIT技術者の数を確かめます。そのうえで、業界経験より先に決めておきたい3つのこと、つまり、どの業務の経験を求めるのか、任せる仕事によってどこまで求めるのか、入社後に誰がどう教えるのかを整理します。業界経験が要るかどうかは会社と仕事によって変わるため、一律の答えではなく決め方を示します。

物流業の業界経験とは

物流業の業界経験といっても、指す範囲は人によって違います。トラックで荷物を運ぶ道路貨物運送業、荷物を預かって保管する倉庫業、港湾運送業や貨物運送取扱業、こん包業などを含む運輸に附帯するサービス業では、現場の仕事も、使うシステムも異なるためです。*3

エンジニアの側から見ると、物流の経験は大きく2つに分かれます。物流の会社の中で配車や倉庫の仕組みに関わった経験と、メーカーや小売など荷物を出す側(荷主)の会社で、出荷や在庫の仕組みに関わった経験です。統計で産業を分けるときの決まりである日本標準産業分類では、自家用の倉庫は主事業所の産業の補助的経済活動に分類されるとしています。*2 メーカーの自社倉庫の仕事は倉庫業に数えられない、ということです。

さらに、システム開発会社の社員として物流の会社の仕組みを作ってきた人もいます。勤め先は物流業でなくても、入出庫や配車の業務を学んできた人です。業界経験を要件にするときは、物流業に勤めていたかどうかではなく、どの業務の仕組みに関わったかで考えると、候補者を取りこぼしにくくなります。

物流の会社で働くIT技術者の数

物流業の業界経験を持つエンジニアは、どのくらいいるのでしょうか。それを直接示す統計はありませんが、手がかりになるのが総務省統計局の令和2年国勢調査です。抽出詳細集計の第11-1表は、2020年10月時点の15歳以上の就業者を、働いている産業と職業の組み合わせで数えています。*1

この表で、システムコンサルタント・設計者、ソフトウェア作成者、その他の情報処理・通信技術者の3つの職業を合わせた人数(以下、IT技術者)を見ると、全国で1,253,930人でした。このうち道路貨物運送業で働く人は2,470人、倉庫業は1,220人、運輸に附帯するサービス業は1,370人です。*1 3つの業種を合わせても5,060人で、IT技術者全体の0.4%にあたります。

令和2年国勢調査 抽出詳細集計 第11-1表から、就業者に占めるIT技術者(システムコンサルタント・設計者、ソフトウェア作成者、その他の情報処理・通信技術者の合計)の割合を業種別に並べた横棒グラフ。全産業は2.17%(1,253,930人/57,673,630人)、物流の3業種の計は0.22%(5,060人/2,273,720人)、道路貨物運送業は0.15%(2,470人/1,697,250人)、倉庫業は0.45%(1,220人/272,740人)、運輸に附帯するサービス業は0.45%(1,370人/303,730人)。

働く人の中に占める割合で比べても、差ははっきりしています。全産業では就業者57,673,630人のうちIT技術者が2.17%ですが、物流の3業種では就業者2,273,720人のうち0.22%でした。*1 業種別に見ると、倉庫業と運輸に附帯するサービス業がともに0.45%、道路貨物運送業が0.15%です。

反対に、IT技術者の76.4%にあたる957,840人は情報通信業で働いていました。*1 エンジニアの多くはソフトウェア業などの会社に勤めていて、物流の会社の中でシステムを担ってきた人の層は薄いといえます。

数字の読み方と注意点

この数字は、物流業の業界経験を持つエンジニアの数そのものではありません。国勢調査が数えているのは調査の時点で働いていた産業で、過去の勤め先は分かりません。システム開発会社の社員として物流の会社の仕組みを作ってきた人は、情報通信業の側に数えられています。メーカーの自社倉庫の仕組みを担当している人も、物流の3業種には入りません。

また、抽出詳細集計は調査票の一部を抜き出して集計したもので、表には抽出による標本誤差を含むと注記されています。数値は1の位を四捨五入して10単位で表しているため、総数と内訳を足した値は必ずしも一致しません。*1 本記事の合計と割合は、表の数値をそのまま足して計算したものです。

それでも、採用の考え方には生かせます。物流の会社に勤めてシステムを担ってきた人だけを探すと、全国でも数千人の層が相手になります。物流のシステムを作ってきたシステム開発会社の人や、荷主の会社で出荷や在庫の仕組みを扱ってきた人まで広げれば、候補者の層は厚くなるでしょう。業界経験を勤め先ではなく業務で定義する理由は、ここにあります。

物流の業界知識は業務の流れとデータ

業界経験で何を知っていてほしいのかを書き出すときに役立つのが、物流情報標準ガイドラインです。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)スマート物流サービスで策定され、2025年2月にver.3.00へ改訂されました。*4 国土交通省は改訂のポイントとして、標準貨物自動車運送約款の改正への対応や、運送事業者から荷主企業へのCO₂排出量報告への対応などを挙げています。

ガイドラインは、物流業務プロセス、物流情報標準メッセージレイアウト、物流情報標準共有マスタの3つの標準を定めています。業務プロセスの標準は、運送計画や集荷、入出庫、配達といった物流プロセスの流れやルールを定義するものです。ユースケースとしては、共同運送、共同保管、検品レス、バース予約の4つが取り上げられています。*5

たとえば検品レスでは、物流側は荷受け場所での荷受け検品で完了とし、商流側は梱包内の商品検品を行わず、事前納品通知情報(ASN)で完了とする想定が書かれています。*5 こうした仕組みを作るには、荷物を預ける寄託者、倉庫事業者、運送事業者、荷受人のあいだで、どの情報をいつ渡すのかを知っている必要があります。

物流の業界経験の中身は、こうした業務の流れと、取引先とやりとりするデータの知識だと整理できます。裏を返せば、ガイドラインのような公開された資料を使って、入社後に学べる部分も多くあります。業界経験を要件にする前に、自社の仕事で必要な知識が、この流れとデータのどの部分なのかを確かめておきます。

業界経験を重く見たい仕事

業界経験を要件にする意味が大きいのは、業務の決まりを知らないと仕様を決められない仕事です。倉庫管理や配車の仕組みの要件をまとめる仕事や、荷主や運送会社とのデータのやりとり(EDI)を調整する仕事がこれにあたります。ガイドラインも、業務プロセスの標準は主として物流関連の事業者との調整に使うものとしています。*5

社内に物流の業務を説明できる人がいない場合も、経験を重く見たほうが進めやすいでしょう。現場の担当者が忙しく、エンジニアの質問に答える時間を取れない会社では、業務を知っている人を採ることが、説明にかける時間の代わりになります。

ただし、この場合も「物流業の経験あり」という書き方では、求める中身が伝わりません。倉庫の入出庫か、輸配送の計画か、荷主側の出荷か、どの業務の仕組みに関わった経験を求めるのかまで書くと、求める人と応募してくる人のずれが小さくなります。

業界経験を問わない仕事と補い方

一方で、業界経験がなくても始めやすい仕事もあります。サーバーやネットワークの運用、社内の基盤の整備、データを集めて見える形にする仕組みづくりなどは、技術の経験を先に見て、物流の知識は入社後に補うという考え方が取れます。

補い方として取り入れやすいのは、現場を見る機会をつくることです。倉庫の入荷から出荷までを一度見ておくと、画面の項目が何のためにあるのかを理解しやすくなります。あわせて、物流情報標準ガイドラインのような公開資料を読む時間を入社後の予定に入れておくと、社内と取引先で使う言葉をそろえやすくなります。

大切なのは、誰が教えるかを先に決めておくことです。業務を説明する担当者がいないまま経験のない人を採ると、質問先が分からず、仕様の確認が止まりがちです。配属先の誰が業務の説明役になるのか、現場の見学をいつ入れるのかを、採用を始める前に決めておきます。

求人票と面接での書き方

求人票では、業界経験を「必須」と「歓迎」に分けて書きます。必須にするのは、業務の決まりを知らないと進められない仕事に限り、それ以外は歓迎の条件に回します。業界経験を問わない場合は、入社後に誰が何を教えるかまで書き添えると、物流を知らない人も応募を考えやすくなります。

面接では、物流業の経験がある人にも、どの業務の仕組みに関わったかを尋ねます。倉庫の入出庫の仕組みを作った人と、配車の計画の仕組みを作った人とでは、入社後すぐに任せられる仕事が違います。荷主側の経験がある人には、出荷の指示を倉庫や運送会社へどう渡していたかを聞くと、物流の会社とのやりとりをどこまで知っているかが見えてきます。

経験のない人には、利用者の業務を聞いて仕様をまとめた経験を尋ねると、入社後に物流の業務を覚えていけるかを見る手がかりになります。ほかの業種での考え方は「金融業のエンジニア採用と業界経験」「保険業のエンジニア採用、業界経験を要件にするか決める3つの点」「製造業のエンジニア採用、業界経験を問う範囲は工程で変わる」で扱っています。

まとめ:業界経験は業務で定義する

物流業のエンジニア採用で業界経験を要件にするかどうかは、一律には決まりません。令和2年国勢調査では、物流の3業種に勤めるIT技術者は5,060人で、IT技術者全体の0.4%でした。勤め先で絞ると候補者は限られるため、業界経験は倉庫の入出庫、輸配送の計画、荷主側の出荷など、どの業務の仕組みに関わったかで定義します。業務の決まりを知らないと仕様を決められない仕事や、社内に説明役がいない仕事では経験を重く見て、それ以外の仕事では、配属先の誰が教えるのか、現場の見学や公開資料をどう使うのかを決めておくと、候補者を狭めずに済みます。

LASSICに相談するメリット

業界経験を問わないと決めても、採用が決まるまでには時間がかかります。サーバーの運用や社内の基盤、データの置き場所づくりのように、技術の経験があれば始められる作業は、業務委託で開発に加わる専門人材に任せる方法もあります。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

物流の会社のシステムを作っていた開発会社での経験も、業界経験に入りますか

入れて考えてよいでしょう。国勢調査では、こうした人は情報通信業の側に数えられますが、入出庫や配車の業務を学んできた点は変わりません。求人票では勤め先の業種ではなく、どの業務の仕組みに関わったかで書くと、こうした経験の人も応募しやすくなります。

業界経験を必須にしたら応募が集まりません。どう見直せばよいですか

必須の条件を、業務の決まりを知らないと進められない仕事に限れるかを見直します。それ以外は歓迎の条件に移し、入社後に誰が業務を説明するかを書き添えると、物流を知らない人も応募を考えやすくなります。物流の会社に勤めるIT技術者は全体の0.4%なので、荷主側や開発会社での経験まで広げる方法もあります。*1

業界経験のない人には、物流の何から教えればよいですか

任せる仕組みが使われる業務から教えます。倉庫の仕組みなら入荷から出荷までの流れを、配車の仕組みなら運送計画から配達までの流れを先にします。そのうえで、担当する画面やデータが業務のどの場面で使われるかを、現場の利用者から聞く機会をつくると覚えやすくなります。

物流業のエンジニア採用を相談したいとき

任せる仕事の整理と、業界経験を求めるかどうかの判断からご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:総務省統計局「令和2年国勢調査 抽出詳細集計」(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200521&tstat=000001136464&cycle=0&tclass1=000001136468&tclass2val=0)。出典:第11-1表「男女,産業(小分類),職業(小分類)別就業者数(15歳以上)」総数(男女)の全国の値と表の注記を参照(2022年12月27日公開、確認日2026年10月8日)(2026年10月確認)
  2. *2 参考:e-Stat 統計分類「日本標準産業分類(平成25年10月改定)中分類47 倉庫業」(https://www.e-stat.go.jp/classifications/terms/10/03/47)。出典:中分類の説明(自家用の倉庫の扱い)を参照(確認日2026年10月8日)(2026年10月確認)
  3. *3 参考:e-Stat 統計分類「日本標準産業分類(平成25年10月改定)中分類48 運輸に附帯するサービス業」(https://www.e-stat.go.jp/classifications/terms/10/03/48)。出典:中分類の説明と、小分類481 港湾運送業・482 貨物運送取扱業(集配利用運送業を除く)・484 こん包業を参照(確認日2026年10月8日)(2026年10月確認)
  4. *4 参考:国土交通省 報道発表資料「『物流情報標準ガイドライン』をver3.00に改訂しました」(https://www.mlit.go.jp/report/press/tokatsu01_hh_000853.html)。出典:改訂の経緯と改訂のポイントを参照(2025年2月7日発表、確認日2026年10月8日)(2026年10月確認)
  5. *5 参考:物流情報標準化検討委員会「物流情報標準ガイドライン -ver.3.00-」(PDF)(https://lisc.g.kuroco-img.app/v=1736403248/files/topics/3120_ext_1_0.pdf)。出典:ガイドラインの目的・構成(3つの標準)、物流業務プロセスの標準化(共同運送・共同保管・検品レス・バース予約)、検品レスのユースケースを参照(2025年2月、確認日2026年10月8日)(2026年10月確認)




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