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2026.09.29 採用支援コラム

保険業のエンジニア採用、業界経験を要件にするか決める3つの点




監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論

  • 保険業の業界経験は、任せるシステムを使う人の業務の知識として、募集する職ごとに書き出します。
  • 損害保険事務や保険営業などの保険の仕事では、入る前の実務経験は特に必要ないと答えた人が半数を超えています。
  • 保険料や準備金の計算に触れる仕事は経験を重く見て、それ以外は入社後に教える人と期間を決めます。

※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

保険会社のシステム部門でエンジニアを募集するとき、保険業の経験を必須にしたら応募がほとんど来なかった。反対に経験を問わずに採ったら、保険金の支払いの流れを一から説明することになり、配属先の負担が重くなった——。保険会社や保険代理店のエンジニア採用では、こうした迷いが起こりがちです。ここでいう業界経験とは、保険会社や保険代理店で、保険の業務やそれを支えるシステムに携わった経験のことです。

業界経験のある人を採れば、業務の説明にかかる時間は短くなります。ただし万能ではなく、経験を求めるほど候補者は限られますし、保険のどの業務の経験かによって役に立つ場面も変わります。本記事では、保険会社と保険代理店でエンジニアを採用する担当者に向けて、保険の仕事に就く人が知識を身につける流れ、一人前になるまでの期間、業界経験を求める仕事と入社後に覚えられる仕事の分け方、そして求人票での書き方を整理します。

会議室の木の机に置かれた、灰色の屋根と赤い壁の小さな家の模型。手前にキーリングが写り、奥の椅子はぼけている。人も文字も写っていない

保険業の業界経験とは

保険業の業界経験は、エンジニアが作るシステムを誰が使うかで中身が変わります。保険会社の中には、保険金を払う人、代理店を支える人、保険料を計算する人がいて、それぞれ知っている業務が違うためです。

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)は、損害保険事務の仕事を、保険の契約者からの保険金請求の受付から支払いまでの一連の業務と説明しています。事故の状況を確かめ、必要に応じて損保アジャスターや鑑定人に損害の調査を頼み、弁護士や医師とも連携します。事故の受付や保険金の支払いを扱うシステムは、この人たちが毎日使うものです。

代理店営業は、保険会社の社員として代理店に商品の情報や関連する制度を伝え、販売や経営の相談に乗る仕事です。通称は「ソリシター」で、通常は1人で数十社の代理店を担当するとされています。*3 代理店とのやりとりを支えるシステムでは、この人たちが業務部門の窓口になります。

アクチュアリーは、確率論や統計学を使って保険料を決めたり、支払いに備える準備金を評価したりする数理の専門職です。保険料や準備金を計算するシステムの仕様は、この人たちが決めます。

このように、「保険業の経験あり」と書くだけでは、どの利用者の業務を知っているのかが伝わりません。業界経験を要件にするかどうかを考えるときは、まず任せるシステムを使う人の仕事から考えると整理しやすくなります。

保険の仕事は入社後に覚える人が多い

保険の仕事に就く人は、どれくらい経験を持って入ってくるのでしょうか。job tagの数値データは、その職業で働く人に、就く前にどれだけの実務経験が要るかを尋ねた結果を職業ごとに載せています(2026年2月更新のver.7.00)。入職前の実務経験は「特に必要ない」と答えた人は、代理店営業で60.7%、保険営業で52.9%、損害保険事務で52.2%でした。*1

保険に関わる4つの職業とシステムエンジニア(受託開発)について、入職前の実務経験は特に必要ないと答えた人の割合と、入職後の訓練期間が1年を超えると答えた人の割合を並べた横棒グラフ。アクチュアリーは71.7%と86.9%、代理店営業(保険会社)は60.7%と35.8%、保険営業(生命保険、損害保険)は52.9%と41.3%、損害保険事務は52.2%と32.6%、システムエンジニア(受託開発)は33.3%と61.5%。出典は厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)数値系ダウンロードデータ ver.7.00。

職業の解説も同じ傾向です。損害保険事務では、入職に特に学歴や資格は必要とされず、「保険に関する専門知識は、入社後に身に付ける」と書かれています。*2 代理店営業も、入社後に社内研修やOJT(仕事をしながらの指導)で知識を身につけられるとされています。保険会社では、保険の業務を知らない人が入ってきて、社内で覚えていくのがふつうの入り方だということです。

一方、システムエンジニア(受託開発)で「特に必要ない」と答えた人は33.3%で、保険の4つの職業より低い値です。*1 エンジニアの仕事では、入る前に技術の経験を積んでいることを求める声が比較的多いことが分かります。

この2つを並べると、採用の考え方が見えてきます。技術の経験は入社の前に確かめ、保険の業務の知識は、利用者の職業と同じように入社後に覚えてもらう、という分け方です。損害保険事務の解説には、中途入社では必要な知識や経験があれば有利とも書かれています。*2 業界経験は、あれば選考で有利に見る歓迎の条件として扱う方法も考えられます。

一人前になるまでの期間

入ってから一人前になるまでの期間は、職業によって大きく違います。job tagの「入職後の訓練期間」は、周囲から特別な支えが無くても、ほかの一般的な就業者と同じように働けるようになるまでの期間を尋ねたものです。1年を超えると答えた人は、損害保険事務で32.6%、代理店営業で35.8%、保険営業で41.3%でした。*1 これらの仕事では、1年以内に独り立ちできると答えた人のほうが多いということです。

アクチュアリーは違います。入職前の実務経験は「特に必要ない」が71.7%と4つの中でいちばん高い一方で、入職後の訓練期間が1年を超えると答えた人は86.9%でした。*1 職業の解説には、日本アクチュアリー会の資格試験(第1次試験の基礎5科目と第2次試験の専門2科目)に合格し、研修を終えて正会員になるまでに7年程度かかるといわれると書かれています。*5

この長さには法律の裏づけもあります。保険業法の第120条は、生命保険会社と一定の要件に当たる損害保険会社に、取締役会で保険計理人を選任し、保険料の算出方法など保険数理に関する事項に関与させるよう定めています。保険計理人は「保険数理に関して必要な知識及び経験を有する者」でなければなりません。*6

保険料や準備金を計算するシステムでは、計算の中身を決めて最後に確かめるのはアクチュアリーの側です。エンジニアに求めたいのは、アクチュアリーが書いた計算の仕様を読み、プログラムとテストに置き換えられることです。利用者の側でも一人前まで長くかかる業務なので、この仕事に限っては、同じような計算を扱った経験を重く見る理由があります。

経験を求める仕事と入社後に覚える仕事

保険業のエンジニア採用で業界経験をどう扱うかは、一律には決まりません。募集する職ごとに、任せるシステムを使う人と、その人たちの業務がどれだけ覚えにくいかを見て決めます。次の表は、この考え方で作った例です。

システムを使う人から決める業界経験の扱いの例
システムを使う人 任せる仕事の例 入社の時点で確かめたい経験 業界経験の扱いの例
損害保険事務の担当者 事故受付や保険金支払いの画面・帳票の改修 業務システムの改修、業務部門の説明から画面の項目を決めた経験 歓迎。支払いの流れは入社後に覚える
代理店営業の担当者と代理店 代理店が使う見積もりや契約手続きの仕組み 社外の利用者が使う仕組みを作り、問い合わせに対応した経験 歓迎。扱う保険商品の範囲は入社後に覚える
アクチュアリー 保険料や準備金の計算の改修 計算の仕様書からプログラムとテストを作った経験 必須、または重く見る歓迎
社内の全部門 ネットワークやサーバーの基盤、監視の設定 基盤の設計と運用の経験 問わない

表の区分は、同じ利用者でも仕事によって変わります。アクチュアリーが使うシステムでも、画面の見た目を直すだけなら計算の経験は要りません。反対に、損害保険事務のシステムでも、支払額を計算する部分を作り直すなら、計算の仕様を読んだ経験を重く見てよいでしょう。

業界経験を問わない職では、入社後にどの業務を、誰が、いつまでに教えるかを先に決めておきます。損害保険事務の解説には、入社後に一定の研修を経て損害調査の部門に配属されると書かれています。こうした業務部門の研修の一部に、エンジニアも加われるかを人事の担当者と確かめておくと、教える側の負担を分けやすくなります。

代理店がエンジニアを採るとき

保険代理店がエンジニアを採る場合は、保険会社とは別の手がかりがあります。代理店で保険を売る募集人が学ぶ範囲が、業界の試験として決まっているからです。

日本損害保険協会の損保一般試験には、基礎単位と、自動車保険・火災保険・傷害疾病保険の3つの商品単位があります。基礎単位に合格しなければ代理店登録や募集人の届出ができず、原則として、扱う保険商品に応じた商品単位に合格しなければその商品を扱えません。試験はCBT(コンピュータを使う試験)で行われ、単位ごとに5年の更新制です。*7 生命保険も、生命保険協会の生命保険一般課程試験に合格し、募集人として登録することが義務づけられています。*4

代理店のシステムを作るエンジニアにとっては、この範囲が覚える保険の知識の目安になります。自社がどの商品単位の商品を扱っているかを入社前に伝えておけば、入社後に覚える範囲を絞れます。自動車保険だけを扱う代理店なら、火災保険の知識から覚えてもらう必要はありません。

もう一つは、保険の決まりを聞く相手です。代理店にエンジニアが1人しかいない場合、保険の業務について社内で聞ける人は限られます。所属する保険会社の代理店営業は、代理店に商品の情報や関連する制度を伝える役割を担っています。*3 入社したエンジニアが保険の知識で迷ったときに、誰を通じて代理店営業の担当者に聞くのかを決めておくと、業界経験がなくても仕事を進めやすくなります。

求人票での書き方

求人票では、業界経験を「保険業界の経験3年以上」のように年数だけで書かないようにします。どの利用者の、どの業務のシステムに、どんな作業で関わった経験かまで書くと、応募する側が自分の経験と比べられます。必須、歓迎、問わないの3つで書き分けると、次のようになります。

  • 必須の例:生命保険の保険料計算を扱うシステムで、計算の仕様書をもとにプログラムとテストを作った経験
  • 歓迎の例:損害保険の事故受付や保険金支払いのシステムの改修に携わった経験
  • 問わない場合の例:保険業の経験は問いません。配属後の3か月は、損害サービス部門の担当者が業務の流れを説明します

問わない場合は、経験を問わないと書くだけで終わらせず、入社後に誰が何を教えるかまで添えます。応募する側は、保険を知らない自分が入社後に困らないかを気にするからです。業界の試験や社内の研修を使う予定があれば、それも書いておきます。

面接では、業界経験がある人にも、どの利用者のためのシステムだったかを尋ねます。同じ保険業の経験でも、保険金の支払いの画面を作った人と、保険料の計算を作った人とでは、入社後にすぐ任せられる仕事が違います。技術の経験は、業界経験とは別に質問を用意して確かめます。金融業全体で業界経験を要件にするかどうかの考え方は「金融業のエンジニア採用と業界経験」で、外部のエンジニアに保険の業界知識をどこまで求めるかは「外部エンジニアに要る保険業の業界知識」で扱っています。

まとめ:業界経験で確かめておきたい3つの点

保険業のエンジニア採用で業界経験を要件にするかどうかを決めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、任せるシステムを誰が使うのかを決め、業界経験をその利用者の業務の知識として書き出すこと。第二に、保険料や準備金の計算のように、利用者の側でも一人前まで長くかかる業務に触れる仕事に限って、業界経験を重く見ること。第三に、経験を問わない職では、入社後に誰が何を教えるかを求人票と面接で示すことです。この3点を踏まえておけば、「経験者にこだわって募集が長引いた」「経験を問わずに採ったものの、配属先が教えきれなかった」という事態を避けやすくなります。求める経験の書き分けに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

業界経験を要件から外すと決めても、採用が決まるまでには時間がかかります。計算の仕様書からプログラムとテストを作る作業のように、技術の経験があれば始められる作業は、業務委託で開発に加わる専門人材に任せる方法もあります。

Remoguは、株式会社LASSICが運営するフリーランス・業務委託のITプロ人材サービスです。リモート前提で全国から登録が集まっており、登録は約20,000名規模、その約8割が開発系です。人材が必要になった時点から4時間以内に候補者を提案し、最短1週間で実際の業務開始まで進みます(条件によっては実現できない場合があります)。

よくある質問

保険会社のシステム子会社や、保険会社向けの開発会社での経験も業界経験に入りますか

入れて考えてよいでしょう。保険会社の社員でなくても、保険の業務を支えるシステムに携わっていれば、利用者の業務を知る機会はあります。求人票では勤め先の種類ではなく、どの利用者の、どの業務のシステムに関わったかで書くと、こうした経験の人も応募しやすくなります。

アクチュアリーの資格を持つエンジニアを探すべきですか

多くの場合、資格そのものより、計算の仕様を読んでプログラムにできる力を確かめるほうが現実的です。job tagによると、日本アクチュアリー会の会員数は5,721人で、会員の勤め先は生命保険が40.6%、損害保険が15.4%です。*5 資格を持つ人は多くないため、資格は歓迎の条件にとどめておくと候補者を狭めずに済みます。

ファイナンシャル・プランニング技能士の資格は、歓迎の条件にしてよいですか

歓迎の条件にするのは差し支えありません。job tagでは、保険営業の関連資格として、厚生労働省が定める技能検定のファイナンシャル・プランニング技能士が挙がっています。*4 ただし、保険の商品や税の知識を測る資格なので、システムの仕事に要る技術の経験は別に確かめます。

業界経験のない人を採ったとき、保険の知識はどの順番で教えればよいですか

任せるシステムを使う人の業務から教えます。損害保険事務のシステムなら、事故の受付から保険金の支払いまでの流れを、代理店のシステムなら、自社が扱う保険商品の基本を先にします。そのうえで、担当する画面や帳票が業務のどの場面で使われるかを、実際の利用者から聞く機会をつくると覚えやすくなります。

保険業のエンジニア採用を相談したいとき

任せるシステムの整理と、業界経験を求めるかどうかの判断からご相談いただけます。

Remoguとリラシクなら、リモートワークで働く社員の候補者も、業務委託で開発に加わる専門人材も探せます。

Remoguは、リモート前提で全国から即戦力のITプロ人材を調達するサービスです。リラシクは、扱う求人がすべてリモートワークのITエンジニア専門転職エージェントです。どちらもLASSICが運営しています。

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出典

  1. *1 参考:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「数値系ダウンロードデータ ver.7.00」(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/download)。出典:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)の簡易版数値系ダウンロードデータ ver.7.00(2026年2月10日更新、制作・著作は独立行政法人 労働政策研究・研修機構)。「入職前の実務経験」(IPD_04_08)と「入職後の訓練期間」(IPD_04_09)の選択率を、アクチュアリー、代理店営業(保険会社)、保険営業(生命保険、損害保険)、損害保険事務、システムエンジニア(受託開発)について参照。1年を超えるは「1年超〜2年以下」から「10年超」までの5区分の合計(2026年9月確認)
  2. *2 参考:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「損害保険事務」(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/440)。出典:同サイトの職業解説「損害保険事務」。どんな職業か・就くには(解説系ダウンロードデータ ver.7.01 と同文)を参照(2026年9月確認)
  3. *3 参考:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「代理店営業(保険会社)」(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/472)。出典:同サイトの職業解説「代理店営業(保険会社)」。どんな職業か・就くにはを参照(2026年9月確認)
  4. *4 参考:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「保険営業(生命保険、損害保険)」(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/453)。出典:同サイトの職業解説「保険営業(生命保険、損害保険)」。就くには・関連資格を参照(2026年9月確認)
  5. *5 参考:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「アクチュアリー」(https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/468)。出典:同サイトの職業解説「アクチュアリー」。どんな職業か・就くには・労働条件の特徴(会員数と業態分布は2025年3月末現在)を参照(2026年9月確認)
  6. *6 参考:e-Gov法令検索「保険業法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/407AC0000000105)。出典:保険業法(平成7年法律第105号)第120条第1項・第2項(保険計理人の選任等)を参照(2026年9月確認)
  7. *7 参考:日本損害保険協会 損保代理店試験公式ホームページ「損保一般試験」(https://www.sonpo-dairiten.jp/ippan/index.html)。出典:同ページの損保一般試験の概要(基礎単位と商品単位、CBTでの実施、単位ごとの5年の更新制)を参照(2026年9月確認)(2026年9月確認)




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