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業務委託で試用期間を設ける方法|短期契約から延長する決め方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 業務委託には雇用のような試用期間の仕組みはなく、短い契約で始めて更新するかを決める形で試します。
- 最初の期間は見る点が出る仕事の区切りで決め、延ばすかの基準と話し合う日を契約前に共有します。
- 更新で通算1か月や6か月に届くと守る決まりが増えるため、延長の判断と予告の時期を先に決めます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
業務委託で来てもらうエンジニアが自社の開発に合うかを、最初は短い期間で確かめたい。そう考えて、業務委託にも試用期間を設けられるのかを調べる担当者は少なくありません。ただ、雇用の試用期間と同じ仕組みは業務委託にはありません。実際には、最初の契約を短く区切り、満了の前に延ばすかを決める形で試すことになります。
本記事では、エンジニアを外部から迎える企業の担当者に向けて、業務委託で試用期間にあたる期間を設ける方法として、始め方の形の違い、延長までの流れ、延ばすかを決める見る点を整理します。
目次
業務委託の試用期間とは
雇用の試用期間は、労働契約を結んだうえで、本採用までに働きぶりを見極めるための期間です。労働基準法は、試の使用期間中の者には解雇予告の規定を当てはめない一方で、14日を超えて引き続き使用された場合はこの限りでないと定めています。*1 業務委託は労働契約ではなく、会社と事業者が仕事の内容と報酬を約束する取引なので、この仕組みはそのまま使えません。業務委託でいう試用期間は、最初の契約期間を短く区切り、その間に更新するかを決める、という意味で使われる言葉です。
業務委託で試すときに、始める前に決めておくのは次の点です。
- 最初の契約の期間(始まりの日と終わりの日)
- その期間で任せる仕事と、出来上がりの形
- 延ばすかを決めるときに見る点と、話し合う日
- 延ばす場合と終える場合の、連絡の時期と方法
呼び方にも気をつけます。契約書に試用期間と書いても、雇用の試用期間になるわけではありません。国のガイドラインは、業務委託の契約で働く場合でも「契約の形式や名称にかかわらず、個々の働き方の実態に基づいて」労働者かどうかが判断されるとしています。*2 試すつもりで社員と同じ指示を出すと、名前と働き方がずれます。
始め方の3つの形の違い
外部のエンジニアに開発へ加わってもらうとき、始め方は大きく3つあります。どれが合うかは、任せる仕事の長さと、社内に残したい役割で変わります。

| 形 | 費用の払い方 | 期間 | 仕事の指示 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|---|
| 業務委託を短い契約で始めて延ばす | 契約で決めた報酬。最初は短い期間の分だけ約束する | 最初は短く区切り、満了の前に更新を決める | 仕事の内容と出来上がりを契約で決め、進め方は相手に任せる | 合うかを確かめてから長く頼みたいとき。仕事の量の見通しが立たないとき |
| 業務委託を最初から長い契約で頼む | 契約で決めた報酬。長い期間の分を約束する | 最初から半年や1年など長めに決める | 短い契約と同じく、内容と出来上がりを契約で決める | 仕事の範囲と期間がはっきりしていて、相手の実績も分かっているとき |
| 社員として採用し、試用期間を置く | 給与。社会保険などの会社の負担も加わる | 労働契約を結び、試用期間の長さは就業規則などで決める | 上司が仕事を指示し、働く時間を管理する | 長く社内に残る役割や、育成やまとめ役を任せたいとき |
短い契約で始める形は、合わなければ更新しないことで区切れます。相手には先の見通しが立ちにくいため、延長を見込んでいることと判断の日を最初に伝えておきます。
社員と業務委託のどちらで迎えるかの比べ方は業務委託と正社員の違いで、社員として迎えるときの試用期間の決め方は試用期間の設計と就業規則で扱っています。
短期契約から延長までの流れ
業務委託を短い契約で始めて延ばすときの流れは、次の図のとおりです。社員への切り替えは、延長を重ねたあとに選ぶ場合だけの段階です。
- 最初の短期契約:任せる仕事、期間、見る点を書面で決めて始める
- 見直し:満了日より前に、見る点に沿って双方で振り返る
- 延長:同じ条件で更新するか、仕事の範囲や期間を見直して更新する
- 社員化の打診:長く任せたい役割があり、本人も望むときに選ぶ
延ばすほど、発注する側が守る決まりも増えます。従業員を使う会社が、従業員のいない個人に仕事を頼む場合は、フリーランス・事業者間取引適正化等法(以下、フリーランス法)が当てはまります。*3 政令は、受け取りの拒否や報酬の減額などを禁じる対象を1か月以上の業務委託とし、更新しないときの予告などが要る継続的業務委託を6か月以上としています。*4 どちらも、契約の更新で続けた期間を通算して数えます。*3
国の解釈では、前の契約の終了から次の契約までの空きが1か月未満で、相手と仕事の中身に一定程度の同じさがあれば、更新で続けているものとして扱います。*5 延長を重ねて6か月に届く見込みなら、更新しない場合は少なくとも30日前までに予告することも、予定に入れておきます。*3
延ばすかを決める見る点
見る点は、契約を結ぶ前に決めて相手と共有します。終わってから基準を作ると、延ばさない理由を説明しにくくなります。エンジニアの仕事なら次の点が確かめやすい項目です。

- 出来上がり:任せた機能や修正が、決めた条件を満たして期日までに届いたか
- 見込みと実際:作業の見込みとかかった日数のずれを、早めに知らせてくれたか
- やり取り:仕様の分からない点を確かめる時期と、報告の分かりやすさ
- 引き継ぎ:残した設計のメモや手順を、社内の人が読んで分かるか
- レビュー:社内からの指摘を受けて、直すまでの流れが回ったか
最初の期間は、こうした点が一通り出る長さにします。たとえば1つの機能を作って社内で確かめるところまで、という仕事の区切りで決めると、長さに理由が持てます。
見極めのために、働く時間や作業の手順を社員と同じように細かく指示するのは避けます。ガイドラインは、勤務場所と勤務時間が指定され管理されていることを、指揮監督の関係を示す基本的な要素に挙げています。*2 報酬にも気をつけます。1か月以上の業務委託では、相手の落ち度がないのに報酬の額を減らすことが禁じられています。*3 試しの期間だったからと後から減らすのではなく、最初の契約の報酬は始める前に決めておきます。
外部に頼むときに確認しておきたい点
仲介のサービスを使う場合も、自社で直接契約する場合も、相談の前に次の点を書き出しておくと、候補を絞る話が早く進みます。
- 範囲:最初の期間で任せる仕事と、出来上がりの形
- 期間:最初の契約の長さ、見直しの日、延ばす場合の単位
- 体制:社内で仕様を決める人とレビューする人、相手の相談先
- 費用の決まり方:報酬を時間、月、成果物のどれで決めるか。延長で条件を見直すか
- 引き継ぎ:延ばさない場合に残してもらう資料と、終えるときの連絡の時期
仲介会社を通すなら、延長や終了の連絡を誰にいつまでに伝えるかも確かめます。社員として迎えたくなったときの打診と条件の示し方は、業務委託から正社員への切り替えの進め方で扱っています。会社どうしの契約の期間はSESの契約期間の決め方が参考になります。
まとめ:業務委託の試用期間で確かめたい3つの点
業務委託で試用期間にあたる期間を設けるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、雇用の試用期間とは別物で、短い契約で始めて更新するかを決める形になること。第二に、最初の期間は見る点が出る仕事の区切りで決め、延ばすかの基準と話し合う日を契約の前に相手と共有すること。第三に、更新で通算1か月や6か月に届くと発注する側の決まりが増えるため、報酬は始める前に決め、延長と予告の時期を先に考えておくことです。この3点を押さえておけば、試したものの延ばすかを決められないまま契約が続く事態を避けやすくなります。最初の期間で任せる人を探すところから迷っていれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
業務委託の契約書に試用期間と書いてもよいですか
書いたからといって雇用の試用期間になるわけではなく、意味がずれやすい言葉です。最初の契約期間、更新を決める日、見る点のように、期間と判断のしかたを具体的に書くほうが誤解が起きにくくなります。個別の契約の書き方は専門家に確かめてください。
試しの期間だけ報酬を低くしてもよいですか
報酬は始める前に双方で決めます。最初の期間だけ条件を変えるなら、その理由と延長後の条件も契約の前に示しておきます。フリーランス法の対象になる取引では、同じような仕事に通常支払われる対価に比べて著しく低い報酬を不当に定めることや、1か月以上の業務委託で決めた報酬を後から減らすことが禁じられています。
1か月だけの業務委託でも延長できますか
延長できます。ただし更新して通算1か月以上になると、フリーランス法の対象になる取引では受け取りの拒否や報酬の減額などの禁止が当てはまります。延長の見込みがあるなら、最初からその前提で期間と条件を決めておきます。
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最初の期間で任せたい仕事と見る点が決まっていれば、そのままご相談いただけます。期間の長さを迷っている段階でも構いません。
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出典
- *1 参考:e-Gov法令検索「労働基準法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)。出典:デジタル庁 e-Gov。第20条(解雇の予告)、第21条(試の使用期間中の者の扱い)を参照(確認日2026年10月20日)(2026年10月確認)
- *2 参考:公正取引委員会・中小企業庁・厚生労働省のフリーランス向けガイドライン(令和3年3月策定、令和8年1月1日改定・PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001318001.pdf)。出典:厚生労働省。第6「現行法上「雇用」に該当する場合の判断基準」(契約の形式や名称にかかわらず実態で判断すること、拘束性の有無)を参照(確認日2026年10月20日)(2026年10月確認)
- *3 参考:e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000025)。出典:デジタル庁 e-Gov。第2条(定義)、第5条(遵守事項)、第13条(継続的業務委託)、第16条(解除等の予告)を参照(確認日2026年10月20日)(2026年10月確認)
- *4 参考:e-Gov法令検索「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令」(https://laws.e-gov.go.jp/law/506CO0000000200)。出典:デジタル庁 e-Gov。第1条(法第5条の期間は1月)、第3条(法第13条の期間は6月)を参照(確認日2026年10月20日)(2026年10月確認)
- *5 参考:公正取引委員会・厚生労働省「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の考え方」(PDF)(https://www.mhlw.go.jp/content/001572556.pdf)。出典:厚生労働省。第2部第2の2(期間の始期と終期、契約の更新により継続して行うこととなる場合)、第3部2(継続的業務委託)を参照(確認日2026年10月20日)(2026年10月確認)