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PC LCMとは?調達から廃棄までの流れと外注の範囲を解説
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- PC LCMは、PCの調達から廃棄までの7つの工程を台帳と手順でつないで管理する考え方です。
- 外注は工程ごとに切り出せますが、消去の方法や処分の経路といった判断は社内に残すと責任が明確になります。
- 回収・データ消去・廃棄では、SSDに合った消去方法と1台ごとの証明書、法律に沿った処分の記録を確かめます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
退職した人から返ってきたPCが、倉庫に積まれたままになっている。廃棄を業者に頼んだものの、データが本当に消えたのか確かめていない——。数十台、数百台のPCを社員に貸し出している会社では、こうした食い違いが起こりがちです。PC LCMは、PCを調達してから廃棄するまでの一連の工程を、台帳と手順でつないで管理する考え方です。
入れ替えの時期や退職者が多い時期に、工程の抜けを防ぐ手がかりになります。ただし万能ではなく、仕組みを決めても、消去や処分の記録を誰が確かめるかが決まっていなければ形だけになります。本記事では、情報システムの担当者に向けて、PC LCMの7つの工程、工程ごとの外注の範囲、回収とデータ消去の進め方、廃棄の決まり、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
PC LCMとは
PC LCMの「LCM」は、Life Cycle Management(ライフサイクル管理)の略です。PCが会社に届いてから手元を離れるまでを、本記事では次の7つの工程に分けて考えます。
- 調達:台数と機種を決め、購入やリースで用意する
- キッティング:OSの設定やアプリの導入をして、すぐ使える状態にする
- 運用:利用者に貸し出し、更新プログラムの適用と台帳の更新を続ける
- 保守:故障の受付、修理、代わりのPCの手配をする
- 回収:退職・異動・入れ替えのときにPCを返してもらう
- データ消去:保存されたデータを復元できない方法で消す
- 廃棄:リサイクルや処分の手続きをして、記録を残す
IPA(情報処理推進機構)の中小企業向けガイドラインは、IT資産管理の活動の一つに「購入・廃棄・更新の履歴管理」を挙げています。*1 自社だけで賄うのが難しい場合の選択肢として、IT資産管理代行サービスの利用(外部委託)も示しています。PC LCMの外注は、この代行を工程ごとに切り出して頼む形と考えると整理しやすくなります。
工程ごとの作業と外注の範囲
7つの工程は、前半と後半で性格が違います。調達からキッティングは入れ替えの時期にまとまって発生し、保守から廃棄は故障や退職のたびに1台ずつ発生します。どの工程を外部に頼むかを決めるときは、判断と作業を分けて考えます。

| 工程 | 社内に残す判断 | 外部に頼みやすい作業 |
|---|---|---|
| 調達 | 機種・台数・予算の決定 | 見積もりの取りまとめ、納品の受け取り |
| キッティング | 標準の設定内容の承認 | 設定作業、管理番号のラベル貼り、配送 |
| 運用 | 誰に何を貸すかの承認 | 台帳の更新、問い合わせの一次受付 |
| 保守 | 修理か入れ替えかの判断 | 故障の受付、修理の手配、代わりのPCの用意 |
| 回収 | 回収の対象と期限の決定 | 返送用の梱包材の送付、返却品と台帳の照合 |
| データ消去 | 消去の方法の基準の決定 | 消去作業、消去証明書の発行 |
| 廃棄 | 処分の経路の決定 | 搬出、リサイクルや処分の手配と記録 |
すべてを一度に任せる必要はありません。キッティングだけを頼む形も、回収から廃棄までをまとめて頼む形も選べます。どちらの場合も、消去の方法や処分の経路といった判断は社内に残し、作業と記録を任せると責任の線が引きやすくなります。工程をつなぐ台帳の仕組みはSnipe-ITによるIT資産管理で扱っています。
回収とデータ消去の進め方
回収とデータ消去は、日々の運用に押されて後回しになりやすい工程です。IPAのガイドラインは、退職や任期満了のときに機器やIDを回収し、復元できない方法でデータを消去したうえで、チェックリストや証跡で実行状況を見えるようにすることを勧めています。*1
消去の方法は、米国国立標準技術研究所(NIST)の指針SP 800-88が「クリア」「パージ」「破壊」の3つに分けています。*3 違いは、どの程度の技術まで復元を防げるかと、消したあとにPCを使えるかどうかです。
| 方法 | やること | 消去後の記憶装置 |
|---|---|---|
| クリア | ふだんの読み書きの機能で上書きする、または初期状態に戻す | そのまま使える |
| パージ | 記憶装置専用の消去命令などで、最先端の技術でも復元できない状態にする | 再び使える可能性を残す |
| 破壊 | 記憶装置を物理的に壊す | 使えなくなる |
注意したいのはSSD(半導体を使った記憶装置)です。NISTは、予備の領域を持つSSDでは上書きによる保護がほとんど得られないとし、使える場合はクリアよりパージを選ぶよう求めています。*3 消去のあとは、記憶装置ごとに消去証明書を作ることも勧めています。
国内では、個人情報保護委員会のガイドラインが、個人データを記録した機器を廃棄するときは復元不可能な手段で行うよう定めています。*2 あわせて、削除や廃棄の記録を保存すること、作業を委託する場合は委託先が削除や廃棄を終えたことを証明書等で確かめることも重要だとしています。
廃棄とリサイクルの決まり
データを消したPCを手放すときは、リサイクルの法律と廃棄物の法律の2つが関わります。どちらも事業者の役割を定めているため、回収の業者に任せきりにせず、どの経路で出すかを社内で決めておきます。

- 資源有効利用促進法:PC(重さ1キログラム以下のものを除く)を「指定再資源化製品」とし、製造や販売をする事業者が自主回収と再資源化を行う仕組みを定めています*4
- 廃棄物処理法:事業者は、事業で生じた廃棄物を自らの責任で適正に処理しなければならないと定めています*5
- 同じく廃棄物処理法:産業廃棄物の運搬や処分を他人に委託するときは、許可を持つ収集運搬業者や処分業者に委託し、原則として管理票(マニフェスト)を交付するよう定めています*5
メーカーの回収を使うか、処理業者に委託するか、再利用の業者に引き渡すかで、受け取る書類や手続きが変わります。経路ごとの手続きは、委託先と自治体の案内で前もって確かめておきます。
外部に頼むときに確認しておきたい点
PC LCMを外部に頼むときは、作業の速さよりも、記録がきちんと残るかどうかを先に確かめます。回収から廃棄までは、あとからデータの残ったPCが見つかっても取り戻せないためです。見積もりの前に、次の点を確認しておきます。
- 任せる範囲:7つの工程のどこからどこまでを頼み、どの判断を社内に残すか
- 台帳の受け渡し:管理番号と利用者の対応を、どの形式でいつ更新するか
- 消去の方法:HDDとSSDのそれぞれを、クリア・パージ・破壊のどれで消すか
- 証明書と記録:1台ごとの消去証明書が出るか。台帳の管理番号と照合できるか
- 処分の経路:メーカーの回収・処理業者への委託・再利用のどれを使い、どの書類が返ってくるか
運用が始まってからも、回収の漏れや証明書の欠けを台帳と定期的に照らし合わせる場を設けておくと、工程の抜けに早く気づけます。資産管理の仕組みそのものを外部に構築してもらう場合の考え方はGLPIでIT資産管理基盤を外注構築にまとめています。
まとめ:PC LCMで確かめておきたい3つの点
PC LCMを外部の手も借りながら進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、7つの工程のうち社内に残す判断と、外部に任せる作業を分けること。第二に、HDDとSSDで消去の方法を変え、1台ごとの消去証明書を台帳と照らし合わせること。第三に、廃棄の経路と返ってくる書類を、委託の前に決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「廃棄は済んだはずなのに、どのPCのデータが消えたのか説明できない」という事態を避けやすくなります。回収から廃棄までの進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
リースのPCを返すときもデータ消去は必要ですか
必要と考えておきます。返したPCは自社の手を離れるため、返す前に消去の方法と記録の残し方をリース会社と取り決めておきます。消去を委託する場合は、証明書等で確かめる形が個人情報保護委員会のガイドラインの考え方に沿います。*2
故障して起動しないPCのデータはどう消しますか
起動しない機器は上書きによる消去ができないため、記憶装置を物理的に壊す方法が候補になります。*3 修理に出す前に記憶装置を外して手元に残せるかどうかも、保守の契約で確かめておきます。
テレワークの社員のPCはどう回収しますか
返送用の梱包材と伝票を送り、宅配で返してもらう方法があります。返送の途中で紛失したときに備え、記憶装置の暗号化を有効にしておくと被害を抑えられます。IPAのガイドラインも、テレワークで使う端末のハードディスクやSSDの暗号化を対策に挙げています。*1
PCのライフサイクル管理のご相談
PCの調達から回収・データ消去・廃棄までの工程設計と台帳の仕組みづくりを、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン 第4.0版」(https://www.ipa.go.jp/security/guide/sme/about.html)。出典:本編のコラム「IT 資産管理について」(購入・廃棄・更新の履歴管理、IT資産管理代行サービスの利用)、退職・任期満了時の機器の回収とデータ消去、テレワーク端末の暗号化の記述を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/)。出典:10-5 物理的安全管理措置(4)個人データの削除及び機器、電子媒体等の廃棄の記述を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:NIST「SP 800-88 Rev. 2, Guidelines for Media Sanitization」(2025年9月)(https://csrc.nist.gov/pubs/sp/800/88/r2/final)。出典:3.1 Clear・Purge・Destroyの3つの方法、SSDへの上書きの注意、4.6 消去証明書の記述を参照(2026年10月確認)
- *4 参考:資源の有効な利用の促進に関する法律施行令(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/403CO0000000327)。出典:第7条・別表第六(指定再資源化製品としてのパーソナルコンピュータ)と、法第2条第14項(指定再資源化製品と自主回収の定義)を参照(2026年10月確認)
- *5 参考:廃棄物の処理及び清掃に関する法律(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137)。出典:第3条第1項(事業者の責務)、第12条第5項(産業廃棄物の処理の委託)、第12条の3(産業廃棄物管理票)を参照(2026年10月確認)