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システム引き継ぎのチェックリスト|資料・権限・環境の12項目
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- システム引き継ぎのチェックリストは、引き継ぎの前・期間中・後の3段階で、受け取る資料・権限・環境を確かめる一覧です。
- 前は受け取る資料の一覧と渡す時期を3者で合意し、期間中は自社も説明に同席して現場とライセンスまで確かめます。
- 後は次の会社が回せるかと資料と実物の一致を確かめ、前の会社の権限と通知の宛先を同じ日に切り替えます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
保守会社を替えることは決まった。けれど、前の会社から何を受け取れば引き継ぎが終わったと言えるのか、社内で答えられない——。長く1社に保守を任せてきたシステムでは、こうした迷いが起こりがちです。システム引き継ぎのチェックリストは、保守会社が替わるときに受け取る資料・権限・環境を、段階ごとに漏れなく確かめるための一覧です。
項目を決めておけば、説明会で話に出なかった資料の渡し漏れや、前の会社のアカウントの消し忘れを防げます。ただし万能ではなく、印を付けることが目的になると、資料の中身を確かめないまま終えてしまいます。本記事では、保守会社の交代を任された情報システムの担当者に向けて、引き継ぎ前・期間中・後の12項目と、外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
システム引き継ぎのチェックリストとは
保守会社が替わるときの引き継ぎは、契約を終える手続きとは別に、受け取る物を1つずつ確かめる作業です。デジタル庁の標準ガイドライン(DS-100)は、システムの作り直しを伴わずに運用や保守の事業者が交代するとき、交代前の事業者から交代後の事業者へ、作業の経緯や残った課題を引き継がせるよう求めています。*1 その解説書(DS-110)は、引き継ぎの前に資料を整理して時期と方法を合意し、引き継ぎの場には発注側も関わるとしています。*2
本記事のチェックリストは、この流れに沿って3つの段階に分けました。
- 引き継ぎ前:受け取る資料・権限・環境を一覧にし、渡す時期と方法を決める段階
- 引き継ぎ期間中:前の会社の説明を聞き、資料の中身と現場を確かめる段階
- 引き継ぎ後:次の会社が回せるか、資料と動いているシステムが合っているかを確かめる段階
契約の終わらせ方と権利の確かめ方は扱いません。倒産の場合はシステム開発会社の倒産対応、移管の全体像はベンダー移管・委託の進め方をご覧ください。
引き継ぎ前に確かめる4項目
引き継ぎ前は、何を受け取るかを先に決めきる段階です。一覧が無いまま説明会を始めると、話に出なかった資料は渡されずに終わりがちです。

| No. | チェック項目 | 確かめる中身 |
|---|---|---|
| 1 | 受け取る資料の一覧を作ったか | 引継書・システムの資料・運用と保守の資料・構成の管理情報・現物の区分ごとに、資料の名前を書き出したか*2 |
| 2 | 渡す時期と方法を合意したか | 資料ごとに、いつ・どの形で渡すかを、前の会社と次の会社と自社の3者で決めたか |
| 3 | 管理者の権限を一覧にしたか | サーバー・クラウド・ドメイン・監視の管理者アカウントを、誰の名義で誰が使っているかと合わせて書き出したか |
| 4 | 保管する場所を決めたか | 受け取った資料を置く自社の場所と、管理する担当者を決めたか |
1番目の区分は、DS-110が保守の引き継ぎ資料の例として示した表に合わせています。引継書には資料の一覧、課題とリスク、改善の提案などが入ります。開発から保守へ渡すときの例には、ソースコード一式と実行プログラム一式も挙がっています。*2 自社の一覧にもこの2つを入れておきます。
3番目の権限の一覧は、引き継ぎ後に前の会社のアカウントを止めるときの元になります。
引き継ぎ期間中に確かめる4項目
引き継ぎ期間中は、前の会社の説明を次の会社と一緒に聞き、一覧の資料が実際にそろっているかを確かめます。DS-110は、発注側が新しい事業者と一緒に説明を受けるなどして引き継ぎ作業に関わり、自らも資料の中身を把握することが重要だとしています。*2
| No. | チェック項目 | 確かめる中身 |
|---|---|---|
| 5 | 3者で説明を受けたか | 前の会社の説明に、次の会社と自社の担当者が同席し、一覧の資料を1つずつ受け取ったか |
| 6 | 作業の経緯と残った課題を受け取ったか | 過去の障害と対応、解決していない課題、気になっているリスクを、引継書に書いてもらったか*1 |
| 7 | 現場を一緒に見たか | 機器の設置状況と、監視の仕組み(運用監視環境)を、次の会社と一緒に見て説明を受けたか*2 |
| 8 | ライセンスの情報をそろえたか | ソフトウェアの提供元・製品名・保有数・数え方(端末・利用者・CPUなど)が分かる資料を受け取ったか |
見落とされやすいのが2番目です。手順書は受け取れても、「この処理はたまに止まるので手で動かし直している」といった経緯は、聞かなければ出てきません。過去の障害と、その場しのぎで済ませている作業を説明会で挙げてもらいます。
4番目のライセンスは、DS-110が引き継ぎ資料の例に、提供元・ソフトウェア名・保有数・種別などを挙げている項目です。*2
引き継ぎ後に確かめる4項目
引き継ぎ後は、受け取った資料で次の会社が実際に回せるかを確かめる段階です。DS-110は、新しい事業者の習熟度を確認するなどして、引き継ぎが済んだかを確かめるとしています。*2

| No. | チェック項目 | 確かめる中身 |
|---|---|---|
| 9 | 次の会社が回せるかを確かめたか | 定例の作業と障害の連絡を一巡させ、作業の経緯や残った課題についての質問に次の会社が答えられるかを確かめたか |
| 10 | 資料と実物を突き合わせたか | 設計書や構成の資料が、いま動いているシステムの状態と合っているか。違っていれば資料を直したか*1 |
| 11 | 前の会社の権限を止めたか | 引き継ぎ前に作った一覧をもとに、前の会社のアカウントを止め、自社と次の会社だけが入れる状態にしたか |
| 12 | 通知の宛先を切り替えたか | 監視の通知や障害の知らせが、前の会社ではなく次の会社と自社の担当者に届くかを試したか |
2番目の突き合わせについて、DS-100は、システムの資料の内容が実際の状況を反映したものになるよう、運用や保守の事業者と一緒に資料と現況を突き合わせ、違いがあれば資料を更新するよう求めています。*1 引き継ぎの直後に一度行っておくと、次の交代も楽になります。
3番目と4番目は同じ日に済ませます。権限だけを先に止めると、通知が前の会社に届いたまま誰も動けない時間ができるからです。
外部に頼むときに確認しておきたい点
12項目を当てはめると、「資料の一覧を自社では作れない」「資料と実物を突き合わせられる人がいない」といった、社内で埋まらない項目が見えてきます。頼む範囲もそこに絞って相談できます。依頼の前に、次の点を確かめておきます。
- 範囲:12項目のうち、どれを任せるか。渡す時期の合意や権限を止める判断は、自社の手元に残す
- 調べ直し:一覧の資料が足りないとき、ソースコードや動いている環境から調べ直す作業まで含むか
- 突き合わせ:資料と実物の違いを見つけたとき、資料の更新まで受け持つか
- 体制:引き継ぎ期間中の説明会と現場の確認に、保守を担当する人が出られるか
- 次の交代への備え:引き継ぎで直した資料を、自社の保管場所に置く形で納めてもらえるか
見積もりは、引き継ぎの作業とその後の保守を分けて比べます。資料がそろっている前提か、調べ直しを含むかで中身が違うためです。保守会社の比べ方はシステム保守会社の選び方にまとめています。
まとめ:システム引き継ぎで確かめたい3つの点
システムの引き継ぎをチェックリストで進めるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、引き継ぎ前に受け取る資料・権限・環境を一覧にし、渡す時期と方法を3者で合意すること。第二に、引き継ぎ期間中は自社も説明に同席し、作業の経緯と残った課題、現場、ライセンスの情報まで受け取ること。第三に、引き継ぎ後は次の会社が回せるかと資料と実物の一致を確かめ、前の会社の権限と通知の宛先を同じ日に切り替えることです。この3点を踏まえておけば、「引き継いだはずの資料が古く、前の会社のアカウントも残っていた」という事態を避けやすくなります。社内で埋まらない項目があれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
引き継ぎの期間はどのくらい取ればよいですか
決まった長さはなく、受け取る資料の量と残った課題の数、定例の作業が一巡するまでの時間で決まります。月に1回の作業や年に1回の更新作業があれば、一度は前の会社の立ち会いで行えるように期間を決めておきます。
前の会社が引継書を作ってくれない場合はどうすればよいですか
まず保守の契約に引き継ぎへの協力の定めがあるかを確かめます。定めが無い場合は、引継書の作成を別の作業として、範囲と費用を相手と決めることになります。それでも資料が足りないときは、次の会社に調べ直してもらう作業を見積もりに含めます。契約の読み方に迷う点は、弁護士などの専門家に確かめてください。
チェックリストは自社と次の会社のどちらが持つべきですか
自社が持つのがおすすめです。DS-110も、前の会社から次の会社へ直接引き継ぐ場合でも、発注側が関わり、引き継ぎの内容と、引き継ぎが済んだかを把握することが重要だとしています。*2 次の会社には担当する項目の結果を報告してもらい、一覧は自社の保管場所に置きます。
システムの引き継ぎのご相談
保守会社の交代に伴う受け取り資料の整理から、引き継ぎ期間中の確認、資料と実物の突き合わせ、引き継ぎ後の保守まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:デジタル庁「デジタル社会推進標準ガイドライン DS-100 デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン」(2026年6月12日 デジタル社会推進会議幹事会決定)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/54d8725e/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_01.pdf)。出典:第3編第9章「情報システムの現況確認」(文書と現況の突合・確認)、「運用及び保守の引継ぎ」(更改を伴わない事業者の交代に伴う引継ぎ)の記述を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:デジタル庁「デジタル社会推進実践ガイドブック DS-110 デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン解説書」(2026年6月12日)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/50952dae/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_03.pdf)。出典:第3編第9章 運用及び保守「4. 運用及び保守の引継ぎ」の趣旨・解説と表9-10「引継ぎ資料の例」、第3編第7章 設計・開発「9. 引継ぎ」の表7-7「引継ぎ資料の例」を参照(2026年10月確認)