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システム開発会社の倒産対応|保守を止めない引き継ぎの4ステップ
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- システム開発会社が倒産したら、まず契約書と管理者のアカウントの名義を確かめます。
- 次の会社に保守を頼めるかは、ソースコードが手元にあるかと、著作権の条項で決まります。
- 引き継ぎでは改修の前に現行のシステムを調べ、手元のソースコードと動いている版を照らし合わせます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
保守を頼んでいた会社から、急に連絡が取れなくなった。障害が起きたらどこに頼めばよいのか、ソースコードがどこにあるのかも分からない——。システム開発会社の倒産や廃業は、その会社に保守を任せきりにしていた企業ほど、影響が大きくなりがちです。ここでいう対応とは、システムを止めずに保守を続けられる状態を取り戻すことを指します。
やるべきことは、確かめる、集める、引き継ぐの3つに分けると整理しやすくなります。ただし、契約の解除や権利の扱いは個別の契約と事情で変わるので、ここで判断を言い切ることはできません。本記事では、システムの保守を任されている情報システムの担当者に向けて、最初に確かめること、ソースコードと権利の扱い、次の会社への引き継ぎの進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
開発会社の倒産で困ること
保守を任せていたシステム開発会社が倒産や廃業で手を引くと、困るのは「次にどこへ頼むか」だけではありません。障害が起きたときの連絡先がなくなり、サーバーやクラウドの管理画面に誰が入れるのかさえ分からなくなることがあります。まずは、相手の会社が受け持っていた役割を書き出し、止まると業務に響くものから順に手を打ちます。
- 障害対応と問い合わせの窓口(夜間や休日の連絡先を含む)
- サーバー・クラウド・ドメインの契約と管理者のアカウント(相手の会社の名義になっていないか)
- ソースコードと設計書などの資料(最新の版がどこにあるか)
- 保守契約そのもの(前払いした料金や、契約の終わらせ方)
IPA(情報処理推進機構)のモデル契約は、相手方に破産手続開始などの申立があった場合を、催告なしに契約を解除できる事由の一つに挙げています。*1 ただし、実際の契約にどう書かれているか、手続中の相手に何を求められるかは、個別の事情で変わります。契約書を手元に用意し、弁護士などの専門家に確かめながら進めます。
最初に確かめること
相手の会社と連絡が取れるうちに、確かめられることは早めに確かめます。破産などの手続が始まると連絡の窓口が変わり、資料を受け取るにも、手続を受け持つ人との調整が要るようになることがあります。

| 確かめること | 見る場所 | 確かめる理由 |
|---|---|---|
| 契約の条項 | 基本契約と個別契約の「権利の帰属」「解除」「資料の返還」 | ソースコードを受け取れるか、使い続けてよいかの根拠になる |
| 管理者のアカウント | クラウド・サーバー・ドメインの契約名義と権限 | 相手の会社しか入れないと、障害のときに手が出せない |
| ソースコードの所在 | 納入物の一覧、ソースコードの保管場所 | 動いている版と同じものが手元にあるかが分かる |
| 資料の所在 | 設計書、運用の手順書、アカウントの管理表 | 次の会社が調べ直す量が決まる |
特に急ぐのは管理者のアカウントです。システムを置いているクラウドやドメインの契約が開発会社の名義のままだと、支払いが止まった時点でシステムまで止まるおそれがあります。自社から預けた資料については、モデル契約に、業務に不要となったときは受託者が遅滞なく返還するか、委託者の指示に従って処置すると定めた条文があります。*1 自社の契約にも同じ趣旨の条項があるかを確かめておきます。
ソースコードと権利の扱い
次の会社に保守を頼めるかどうかは、ソースコードが手元にあるか、そして契約のうえでそれを使ってよいかで決まります。IPAのモデル契約は、納入物の所有権は個別契約で定める時期にユーザへ移るとしたうえで、著作権の帰属については3つの案を用意しています。*1
| 案 | 著作権の帰属 | 自社の契約で確かめたい点 |
|---|---|---|
| A案 | 開発会社にすべて帰属する(ユーザが前から持っていたものを除く) | 自社で使うための複製・改変がどこまで認められているか |
| B案 | 汎用的なプログラムは開発会社に残し、それ以外は委託料の完済時にユーザへ移る | 委託料を払い終えているか。どこが汎用的な部分か |
| C案 | 汎用的なプログラムは開発会社に残し、新たに作ったプログラムは両者の共有になる | 共有になる時期と、共有部分の使い方の決まり |
モデル契約の解説は、著作権を持たないユーザでも、保守運用をほかの会社に委託することは可能だとしています。そのうえで、倒産のときにソースコードや付帯する資料の開示・交付を受けることは「納入物にソースコードを明記するか、エスクロウ制度の活用により対応可能である」と述べています。*2 自社の契約がどの案に近いか、納入物の一覧にソースコードが入っているかを、まず契約書で確かめます。
次の会社への引き継ぎの進め方
引き継ぎ先が決まっても、すぐに改修や移行には入らず、まず今のシステムがどう動いているかを確かめます。モデル契約の解説は、長年保守を続けてきたシステムでは、資料が散逸していたり、動いているシステムと設計書やソースコードが整合していなかったりすることが少なくないと指摘しています。*2 前の会社に聞けなくなった倒産のあとでは、この確認がなおさら欠かせません。
- ステップ1:止まると困る機能と、障害のときの連絡の流れを決める(当面は社内で受ける窓口も決める)
- ステップ2:ソースコード・資料・管理者のアカウントを自社の管理する場所に集める
- ステップ3:次の会社と現行のシステムを調べ、手元のソースコードと動いている版が同じかを確かめる
- ステップ4:保守の範囲と体制を決めて、新しい契約を結ぶ
つまずきやすいのはステップ3です。手元のソースコードが動いている版より古いと、障害を直したつもりで、以前に直した不具合を戻してしまうことがあります。会社を替えるときの一般的な進め方はベンダー移管・委託の進め方で扱っています。
外部に頼むときに確認しておきたい点
倒産のあとに引き継ぐ会社を探すときは、資料がそろっていない前提で話ができるかが大切です。見積もりを頼む前に、次の点を確かめておきます。

- 調査から頼めるか:足りない資料を、ソースコードと動いている環境から調べ直す作業を見積もりに含めるか
- 権利の確認に付き合えるか:契約書の著作権と納入物の条項を読み、使えるものと使えないものを一緒に整理できるか
- 当面の障害への対応:引き継ぎが終わるまでの間、障害が起きたら誰がどこまで受け持つか
- アカウントの名義:クラウドやドメインを自社の名義に移す作業を手伝ってもらえるか
- 次への備え:納入物にソースコードを明記する、資料を自社の保管場所にも置くなど、同じことを繰り返さない契約にできるか
保守会社を比べる観点はシステム保守会社の選び方にまとめています。倒産をきっかけに探す場合は、それに加えて調査の工程を見積もりに含めてくれるかを見ます。
まとめ:開発会社の倒産で確かめておきたい3つの点
システム開発会社の倒産に対応するうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、クラウドやドメインの管理者のアカウントが誰の名義かを確かめ、自社で操作できる状態にすること。第二に、契約書の著作権と納入物の条項を読み、ソースコードと資料を手元に集めること。第三に、次の会社とは改修の前に現行のシステムを調べ、手元のソースコードと動いている版を照らし合わせることです。この3点を踏まえておけば、「引き継いだはずが、直した不具合がまた出てきた」という事態を避けやすくなります。引き継ぎの進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
開発会社が倒産する前に備えておけることはありますか
契約の段階で、納入物にソースコードを明記しておく方法と、ソフトウェア・エスクロウを使う方法があります。エスクロウは、ソースコードや技術情報を第三者に預けておき、提供者が倒産したときなどに、あらかじめ決めた条件の下で開示を受ける制度です。*3 あわせて、クラウドやドメインの管理者のアカウントを自社の名義にしておくと、いざというときに慌てずに済みます。
著作権が開発会社にある場合でも、別の会社に保守を頼めますか
IPAのモデル契約の解説は、著作権を持たないユーザでも保守運用をほかの会社に委託することは可能だとしています。*2 ただし、改変してよい範囲などは契約の書き方で変わります。自社の契約書を確かめ、判断に迷う点は弁護士などの専門家に相談してください。
倒産ではなく、開発会社がほかの会社に吸収された場合はどうなりますか
モデル契約には、相手方の事前の書面による同意なく、契約上の地位を第三者に承継させてはならないという条文があります。*1 ただ、会社の再編のしかたによって扱いが変わることがあるため、新しい会社から届く通知の内容を確かめ、保守の担当や窓口が引き続き同じかを早めに確認しておきます。
保守の引き継ぎのご相談
開発会社の倒産や廃業で止まりかけたシステムの現行調査から保守の引き継ぎまで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書〈第二版〉ソフトウェア開発委託基本モデル契約書(条文抜き出し版)」(https://www.ipa.go.jp/digital/model/ug65p90000001ljh-att/000087508.docx)。出典:第39条(資料等の提供及び返還)、第43条(納入物の所有権)、第45条(納入物の著作権のA案・B案・C案)、第51条(権利義務譲渡の禁止)、第52条(解除)を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書〈第二版〉」(2025年4月8日更新)(https://www.ipa.go.jp/digital/model/model20201222.html)。出典:著作権の帰属についての解説(著作権を持たないユーザによる保守運用の委託、倒産時のソースコード等の開示・交付)と、システム再構築時の現行システム調査についての解説を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:一般財団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)「ソフトウェア・エスクロウ」(https://www.softic.or.jp/index.php/service/escrow)。出典:ソフトウェア・エスクロウの制度の説明を参照(2026年10月確認)