LASSIC Media らしくメディア
温度管理システムの選び方|倉庫と厨房で確かめたい5つのポイント
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 温度管理システムは、センサーで測った温度を自動で記録し、範囲を外れたら担当者に知らせる仕組みです。
- 食品等事業者には衛生管理の記録が求められ、冷凍・冷蔵倉庫業もその対象に含まれます。
- 選ぶときは、測る場所と間隔・警報・記録の出力・センサーの点検・停電時の動きを確かめます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
冷蔵庫の温度の記録表に、書き込みが空いている日がある。夜のうちに冷凍庫が止まっていても、朝に出勤するまで誰も気づけない——。倉庫や厨房で冷蔵・冷凍の設備を管理している職場では、こうした悩みが起こりがちです。温度管理システムは、設備に置いたセンサーで温度を自動で測って記録し、決めた範囲を外れたら担当者に知らせる仕組みです。
記録の手間を減らせるうえ、人がいない時間の異常にも気づけます。ただし万能ではなく、センサーの置き場所や警報の条件を決めないまま入れると、鳴りやまない警報に現場が慣れてしまうこともあります。本記事では、倉庫や厨房の設備と、その記録の仕組みを任された担当者に向けて、温度管理システムの仕組み、手書きの記録との違い、記録が求められる範囲、選ぶときの5つの点、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
温度管理システムとは
温度管理システムは、製品によって呼び方や形はさまざまですが、役割で見ると4つの部品の組み合わせでできています。
- 温度センサー(測る):冷蔵庫・冷凍庫の庫内、倉庫の室内、厨房の保冷設備などに置き、決めた間隔で温度を測ります
- 中継機(集めて送る):センサーの値を受け取り、社内のネットワークや携帯電話の回線を通じて保存先へ送ります
- 記録の保存先(残す):クラウドや社内のサーバーに、測った値を時刻つきで保存し、日報や月報の形で出力します
- 警報(知らせる):決めた温度の範囲を外れたら、メールや電話、現場の警報灯で担当者に知らせます
手書きの記録と比べたときの大きな違いは、人が見ていない時間も測り続けることです。夜間や休日に冷凍庫の扉が閉まりきっていなかった場合でも、その間の値が残り、警報で気づけます。一方で、センサーをどこに置くか、何度を外れたら知らせるかを決めるのは人の仕事です。機械を入れただけで記録の中身が良くなるわけではありません。
手書きの記録やデータロガーとの違い
温度の記録には、昔ながらの手書きの記録表から、値を自動で送る仕組みまで、いくつかの段階があります。どれを選ぶかは、設備の台数と、温度が外れたときにどれだけ早く気づく必要があるかで変わります。

| 方法 | 記録のされ方 | 温度の異常に気づける時点 |
|---|---|---|
| 手書きの記録表 | 決めた時刻に人が温度計を読み、用紙に書き込む | 次に人が温度計を見たとき |
| データロガー(測った値を機器の中にためておく記録計) | 機器が決めた間隔で測り、値を機器の中に保存する | 人が機器から値を取り出して見たとき |
| 温度管理システム | センサーの値が保存先へ自動で送られ、時刻つきで残る | 範囲を外れた時点(警報が届く) |
手書きの記録表は費用がかからない反面、測るのは決めた時刻だけで、書き忘れや書き写しの誤りも起こります。データロガーは測り続けますが、値を見るのは後から取り出したときです。夜のうちに止まった冷凍庫に朝より前に気づきたいなら、値を常に送り、外れたら知らせる仕組みが要ります。
温度の記録が求められる範囲
食品を扱う事業者では、2021年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者がHACCP(ハサップ、食品の衛生管理の手法)に沿った衛生管理に取り組むことになりました。*1 食品の貯蔵や運搬だけをする営業は、HACCPに沿った衛生管理の対象から外れますが、冷凍・冷蔵倉庫業はこの例外に入らず、対象になります。*1 温度の記録にかかわる決まりは、主に次のとおりです。
- 衛生管理の実施状況を記録し、保存します。保存期間は、扱う食品が使われ、消費されるまでの期間を踏まえて合理的に決めます*2
- 温度計などの計器類は、機能を定期的に点検し、点検の結果を記録します*2
- 重要な工程では、決めた基準を外れたときの改善措置を、あらかじめ決めておきます*2
- 同じメニューを1回300食以上、または1日750食以上出す調理施設向けのマニュアルは、調理後すぐに出さない食品を10℃以下または65℃以上で管理し、保冷設備内の温度を記録するよう求めています*3
どの設備を何度で管理し、どのくらいの頻度で記録するかは、事業者が衛生管理計画の中で決めます。*1 その土台として、厚生労働省は業界団体が作った業種別の手引書を公開しており、冷凍・冷蔵の加工食品を販売する卸売業者向けの手引書もあります。*4 HACCPの記録全体の進め方はHACCPの衛生管理を3ステップでで扱っています。
選ぶときに確かめたい5つの点
温度管理システムの製品は数が多く、画面の見た目や機能の多さで比べると決めきれません。自社の衛生管理計画や社内の記録の決まりから逆算して、次の5つの点を確かめておくと比べやすくなります。

| 確かめる点 | 確かめる中身 |
|---|---|
| 測る場所と間隔 | どの設備の庫内のどこにセンサーを置くか。何分おきに測れば、扉の開け閉めによる一時的な上がり下がりと故障を見分けられるか |
| 警報の条件と届け先 | 何度を何分超えたら知らせるか。夜間や休日に誰へどの手段で届けるか。受け取った人が確認したことを残せるか |
| 記録の保存と出力 | 保存期間を自社で決めた長さにできるか。保健所の確認や社内の点検のとき、日付と設備を指定して帳票を出せるか |
| センサーの点検 | センサーの値を、校正された温度計と定期的に突き合わせられるか。点検した日と結果を記録として残せるか |
| 停電と通信の途切れ | 停電や回線の障害の間も測り続け、復旧後に値を送り直せるか。途切れたこと自体が記録に残るか |
導入後に見直しが多くなりやすいのは、2つ目の警報の条件です。厳しくしすぎると、扉を開けるたびに警報が鳴り、担当者が通知を見なくなります。緩すぎると、本当の故障に気づくのが遅れます。しばらく試験的に動かし、たまった記録を見ながら条件を詰めていく進め方が現実的です。計器類の定期的な点検と記録も、法令が定める衛生管理の基準の1つです。*2
外部に頼むときに確認しておきたい点
温度管理システムは、製品をそのまま使う方法のほかに、いまの業務システムとつなぐ形で組み上げる方法もあります。複数の拠点の記録を1つにまとめたい、在庫や出荷の記録と温度をひもづけたい、といった場合は構築を外部に頼むことになります。そのときは、次の点を見積もりの前に確かめておきます。
- どこまで頼むか:センサーの選定と設置、通信の設計、記録の保存先、帳票、警報の仕組みのうち、どれを任せるか
- 現地の確認:冷凍庫の中や倉庫の奥まで電波が届くか、設置の前に現地で確かめるか
- 既存システムとの連携:発注・在庫・出荷の記録と温度の記録を、どの単位でひもづけるか
- 警報を受けた後の流れ:夜間の通知を誰が受け、どう対応し、その対応をどこに記録するか
- 運用後の見直し:センサーの電池交換と点検、警報の条件の見直しを、誰がいつ行うか
なかでも警報を受けた後の流れは、仕組みを作る側と現場の両方が関わるため、決めないまま運用に入りやすい点です。基準を外れたときの改善措置をあらかじめ決めておく、というHACCPの考え方とも重なります。センサーなどの機器をネットワークにつなぐ基盤づくりの費用や進め方はIoTプラットフォーム構築を外注、費用と進め方にまとめています。
まとめ:温度管理システムで確かめておきたい3つの点
温度管理システムを選んで入れるうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、どの設備を何度で管理し、どのくらいの期間記録を残すかを、自社の衛生管理計画から先に決めること。第二に、警報の条件と届け先、受けた後の対応の記録までを一続きで決めること。第三に、センサーの点検と、停電や通信が途切れたときの動きを導入前に確かめることです。この3点を踏まえておけば、「入れたのに警報が鳴りっぱなしで、結局また手書きに戻った」という事態を避けやすくなります。構築や連携の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
記録はどのくらいの期間残せばよいですか
食品衛生法の施行規則は一律の年数を定めておらず、扱う食品が使われ、消費されるまでの期間を踏まえて合理的に決めるとしています。*2 大量調理施設向けのマニュアルでは、原材料の仕入れの記録などを1年間保管するよう求めています。*3 自社で決めた期間を、システムの保存期間の設定に反映しておきます。
規模の小さい店舗でも同じ記録が必要ですか
規模の小さい営業者などは、扱う食品の特性や営業の規模に応じて、手順を簡略化した衛生管理を行うことができます。*2 設備の台数や、夜間に人がいない時間の長さを見て、手書きの記録で足りるか、自動の記録と警報が要るかを判断するとよいでしょう。
いま使っている冷蔵庫や冷凍庫にも後から付けられますか
庫内に置くセンサーと中継機を足す形なら、設備そのものを入れ替えずに始められます。ただし、金属の壁で囲まれた庫内や倉庫の奥では電波が届きにくいことがあるため、設置の前に通信の状態を現地で確かめておきます。
温度管理の仕組みづくりのご相談
温度センサーと通信の設計から、記録の保存と帳票、警報の仕組み、既存の業務システムとの連携まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:厚生労働省「HACCP(ハサップ)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/haccp/index.html)。出典:令和3年6月1日からの制度化、制度の対象(冷凍・冷蔵倉庫業を除く貯蔵・運搬のみの営業は対象外)、営業者が実施すること(衛生管理計画の作成・記録と保存・検証)の記述を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:e-Gov法令検索「食品衛生法施行規則」(昭和二十三年厚生省令第二十三号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100023)。出典:第六十六条の二第三項第三号(記録の保存と保存期間)、同条第四項、別表第十七第三号ニ(計器類の定期点検と記録)、別表第十八第四号・第五号・第八号(モニタリング・改善措置・簡略化)を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」(平成29年6月16日付け生食発0616第1号 別添)(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000168026.pdf)。出典:適用範囲(同一メニューを1回300食以上又は1日750食以上)、10℃以下又は65℃以上での管理、保冷設備内温度の記録、原材料の記録の1年間保管の記述を参照(2026年10月確認)
- *4 参考:厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(表紙検索)」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000179028_00003.html)。出典:業種別手引書の一覧(冷凍・冷蔵商品販売事業者(加工食品卸業)向けの手引書を含む)を参照(2026年10月確認)