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顧客ポータルの作り方|取引先向けの構築手順と外注時の確認点
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 顧客ポータルは、取引先がログインして問い合わせ・契約・請求書・資料を自分で確かめられるWebの窓口です。
- 作り方は製品のポータル機能・業務アプリの社外共有・個別開発の3つで、載せたい機能の重さで選びます。
- 取引先ごとに見える範囲を先に設計し、公開前に試験と診断で確かめることが大切です。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
取引先からの問い合わせがメールと電話に散らばり、誰がどこまで対応したのか追えない。請求書や契約書の控えを送ってほしいという依頼に、毎回担当者が手作業で応じている——。法人向けに製品やサービスを提供している会社では、こうした手間が積み重なりがちです。顧客ポータルは、取引先や顧客がログインして、問い合わせ・契約の内容・請求書・資料などを自分で確かめられるようにするWebの窓口です。
問い合わせと書類のやり取りを1か所にまとめられる一方、万能ではありません。権限の設計を誤ると、別の取引先の情報が見えてしまう事故にもつながります。本記事では、顧客ポータルの開発を検討している情報システムの担当者に向けて、載せる機能、作り方の選択肢の違い、構築の進め方と注意点、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
顧客ポータルとは
顧客ポータルは、会社の外にいる取引先や顧客のための入り口です。社員向けの社内ポータルと違い、使う人は自社のアカウントを持っていません。そのため、取引先ごとにアカウントを発行し、その会社に見せてよい情報だけを見せる仕組みが中心になります。法人向けの顧客ポータルによく載せる機能は、次のとおりです。

- 問い合わせの受付と、いまどの段階まで対応が進んでいるかの確認
- 契約の内容や、利用中のサービス・製品の一覧の確認
- 請求書や納品書のデータのダウンロード
- マニュアル・資料・よくある質問の閲覧
- 取引先側の担当者の追加や削除(取引先の管理者が行う)
どこまで載せるかは、いま取引先とのやり取りで手間がかかっている作業から決めます。問い合わせが多いなら受付と状況の確認から、書類の送付に追われているなら請求書と資料の閲覧から始める、という順です。最初から全部を載せると要件がまとまらず、公開が遅れがちです。
作り方の選択肢と違い
顧客ポータルの作り方は、大きく3つに分かれます。社内で使っている顧客サービスの製品のポータル機能、業務アプリの基盤にある社外共有の機能、そしてポータルの個別開発です。
| 選択肢 | 例と公式の説明 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 顧客サービス製品のポータル機能 | Salesforceは、セルフサービスポータルを含むカスタマーサービスの仕組みを案内しています*1。ServiceNowのCustomer Service Managementは、社外の顧客にWeb・メール・チャットなどで支援を届ける仕組みと説明されています*2 | 問い合わせの受付と対応の管理が中心のとき。その製品をすでに社内で使っているとき |
| 業務アプリ基盤の社外共有機能 | kintoneのゲストスペースには利用ユーザー以外の人がゲストとして参加でき、ゲストは招待されたスペースとそのアプリだけにアクセスできます*3 | 相手の会社の数が限られ、案件ごとに情報をやり取りしたいとき |
| 個別に開発する | 画面・権限・基幹システムとの連携を、自社の業務に合わせて作る | 製品の画面や権限の形が合わないとき。契約や請求のデータを基幹システムから直接見せたいとき |
どれが優れているかではなく、いま使っている仕組みと、ポータルに載せたい機能の重さで選びます。製品の機能を使う場合も、取引先ごとの見せ方や基幹システムとのつなぎ込みは、別に作り込みが必要になることが多い点に注意します。業務アプリの基盤を広げる場合の開発の頼み方はkintoneカスタマイズ開発を外注する費用と進め方で扱っています。
構築の進め方
顧客ポータルの構築は、画面を作る前に「誰に、何を、どこまで見せるか」を決める作業が大半を占めます。次の4つの段階で進めると、公開の直前に権限を作り直す手戻りを減らせます。
- ステップ1:載せる機能と、最初に使ってもらう取引先を決める
- ステップ2:基盤を選ぶ(いまの製品を広げるか、個別に開発するか)
- ステップ3:アカウントと権限を設計する(取引先ごとに見える範囲と、取引先の管理者ができること)
- ステップ4:一部の取引先で試してから広げる(問い合わせの導線や書類の見つけやすさを確かめる)
つまずきやすいのはステップ3です。社内ポータルなら部署ごとに見える範囲を分ければ済みますが、顧客ポータルでは「A社の担当者にはA社の契約と請求書だけ」という区切りが欠かせません。取引先の担当者の異動や退職も起きるため、担当者の追加と削除を取引先の管理者に任せるか、自社の窓口で受け付けるかも、この段階で決めておきます。
請求書と権限で注意する点
顧客ポータルで請求書を渡す場合は、受け取る取引先の側の税法上の扱いも関わります。国税庁の電子帳簿保存法一問一答は、ホームページからダウンロードした請求書や領収書などのデータを「電子取引」に該当すると考えられる例に挙げ、所定の方法でデータを保存しなければならないとしています。*5 また、領収書などのデータをインターネット上で確認できることとなった時点が、受け渡しのタイミングだと考えられるとしています。*5

- 請求書を載せたら、メールなどで取引先に知らせる
- 一度載せた請求書を差し替えるときの手順と、記録の残し方を決める
- 取引先ごとの権限を、画面だけでなくデータを取り出す仕組みの側でも確かめる(URLの番号を変えると別の会社の請求書が開く、という作りにしない)
- ログイン状態の管理と、多要素認証(パスワードに加えて別の確認を求める仕組み)を使うかどうかを決める
IPAの「安全なウェブサイトの作り方」は、Webアプリケーションで取り上げる11種類の脆弱性の中に「セッション管理の不備」や「アクセス制御や認可制御の欠落」を含めています。*4 顧客ポータルは社外の人がログインして使う仕組みなので、こうした点を公開前に確かめる試験や診断の段取りを決めておきます。なお、取引先側での保存の方法は相手の会社の判断になるため、詳しくは税理士などの専門家に確かめてもらう形で案内します。
外部に頼むときに確認しておきたい点
顧客ポータルの開発を外部に頼むときは、画面の見た目よりも、権限・連携・運用の取り決めを見積もりの前に確かめておきます。次の5つが、後から揉めやすい点です。
- どこまで頼むか:要件の整理、基盤の選定、開発、取引先への案内資料、公開後の保守のうち、どれを任せるか
- 権限の試験:取引先ごとに見える範囲が分かれていることを、どんな手順で確かめるか
- 基幹システムとの連携:契約や請求のデータを、どのシステムからどの頻度で取り込むか
- セキュリティの確認:公開前の診断を誰が行い、見つかった問題をいつまでに直すか
- 運用後の見直し:問い合わせの件数や書類の閲覧状況を見て、載せる機能を見直す場を設けるか
特に権限の試験は、開発する側の試験だけで終わらせず、自社の担当者が取引先の立場でログインして確かめる工程を入れておきます。取引先から届いた問い合わせを社内でどう受け付けて管理するかは、問い合わせ管理システムの開発を外注で扱っています。
まとめ:顧客ポータルで確かめておきたい3つの点
顧客ポータルを作るうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、問い合わせ・契約・請求書・資料のうち、いま手間がかかっているものから載せる機能を絞ること。第二に、取引先ごとに見える範囲をアカウントと権限の設計で先に決め、公開前に試験で確かめること。第三に、請求書を載せるなら、掲載の知らせ方と差し替えの手順を決めておくことです。この3点を踏まえておけば、「ポータルを公開したのに、結局メールで書類を送り続けている」という事態を避けやすくなります。基盤選びや権限の設計に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
顧客ポータルの構築にはどのくらいの期間がかかりますか
載せる機能と基盤によって大きく変わります。製品の機能で問い合わせの受付だけを始める場合と、基幹システムの契約・請求のデータをつないで個別に開発する場合では、必要な作業がまったく違います。最初に載せる機能を1つか2つに絞り、試験運用の期間も含めて計画すると見通しを立てやすくなります。
取引先がポータルを使ってくれない場合はどうすればよいですか
取引先にとっての利点を具体的に伝えることが大切です。請求書や資料をすぐに確かめられる、問い合わせの対応状況が見える、といった点です。しばらくはメールなど従来の窓口も残し、移行の期間を設けると混乱を避けやすくなります。
取引先の社内のアカウントでログインしてもらうことはできますか
取引先の会社が使っている認証の仕組みとつなげられる基盤もありますが、相手の会社ごとに設定と協力が必要になります。まずはポータル側でアカウントを発行して始め、ログインの手間についての声を見ながら連携を検討するのが現実的です。
顧客ポータル構築のご相談
顧客ポータルの基盤選びから、権限と認証の設計、基幹システムとの連携、公開後の運用まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:株式会社セールスフォース・ジャパン「カスタマーサービスソフトウェア」製品ページ(https://www.salesforce.com/jp/service/)。出典:カスタマーサービスおよびサポートソフトウェアの説明(セルフサービスポータルから通話・メッセージ・メールまでのやり取りを管理する)を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:ServiceNow Product Documentation「Customer Service Management」(https://www.servicenow.com/docs/r/zurich/customer-service-management/c_CustomerServiceManagement.html)。出典:社外の顧客に必要なサービスと支援を提供し、Web・メール・チャット・電話・ソーシャルメディアでやり取りできるという製品説明を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:サイボウズ株式会社「ゲストスペース」kintone ヘルプ(https://jp.kintone.help/k/ja/guest)。出典:利用ユーザー以外の人がゲストとして参加できること、ゲストユーザーは招待されたスペースとそのアプリだけにアクセスできることの記述を参照(2026年10月確認)
- *4 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「安全なウェブサイトの作り方」(https://www.ipa.go.jp/security/vuln/websecurity/about.html)。出典:改訂第7版の内容(第1章で11種類の脆弱性を取り上げること)と、1.4 セッション管理の不備・1.11 アクセス制御や認可制御の欠落の項目を参照(2026年10月確認)
- *5 参考:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和8年7月)(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0026007-006_05.pdf)。出典:問5(ホームページからダウンロードした請求書等のデータは電子取引に該当し、データを保存しなければならない)と問44(インターネット上で確認できることとなった時点が授受のタイミング)を参照(2026年10月確認)