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Ansible AWXとAnsible単体の違い|画面と権限
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- Ansible AWXは、Ansibleの実行をWebの画面から行い、権限と実行履歴をまとめて管理するオープンソースのソフトウェアです。
- Ansible単体との違いは、ボタンでの実行、チームごとの権限、誰が何を実行したかの記録にあります。
- 新しい版の公開が止まっているため、AWXとAnsible Automation Platformのどちらで組むかを先に決めることが大切です。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
Ansibleで作った自動化の手順が、担当者のパソコンの中にしか無い。誰がいつどのサーバーに実行したのか、あとから確かめようがない——。Ansibleをコマンドで使い始めた運用の現場では、こうした悩みが起こりがちです。Ansible AWX(エーダブリューエックス)は、Ansibleの実行をWebの画面から行い、権限と実行履歴をまとめて管理するためのオープンソースのソフトウェアです。
運用担当者に作業を任せやすくなる一方で、2024年7月から新しい版の公開が止まっているため、使い続けるかどうかの判断が要ります。本記事では、サーバー運用を担当する情報システムの担当者に向けて、Ansible単体との違い、Ansible Automation Platformとの関係、導入の進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
Ansible AWXとは
AWXの公式リポジトリは、AWXをAnsibleの上に作られたWebの画面、REST API、タスクエンジンだと説明しています。*1 Ansible自体はコマンドで動かす道具で、AWXはその実行を管理する画面と仕組みをかぶせたもの、と考えると分かりやすいでしょう。
- Ansibleの実行を、Webの画面とREST APIから行えます
- Red Hatが支援するコミュニティのプロジェクトで、ソースコードはApache License 2.0で公開されています*2
- Red Hat Ansible Automation Platformの元になるプロジェクト(アップストリーム)の一つです*1
- 最後の版は2024年7月2日の公開で、大規模な作り直しのあいだ新しい版の公開は止まっています*1
サポートは利用者どうしのコミュニティで行われ、Red Hatは有料のサポートを提供していません。*2 無料で使える一方で、障害や更新への対応は自社で受け持つことになります。
Ansible単体との違い
Ansible単体(Ansible Core)は、コマンドで動かす道具です。*2 手順を書いたファイル(Playbook)を担当者が自分の端末から実行するので、人が増えると誰が何を実行したかを追いにくくなります。AWXとの違いは、主に画面・権限・実行履歴の3つに表れます。

| 項目 | Ansible単体 | Ansible AWX |
|---|---|---|
| 実行のしかた | 担当者がコマンドを入力して実行する | 画面のボタンから登録済みの手順を実行する |
| 権限 | サーバーへのログインの権限で管理する | チームや利用者ごとに、見る・実行する・編集するを分けられる |
| 認証情報 | 担当者が鍵やパスワードを手元に持つ | 中身を見せずに、使う権限だけを渡せる |
| 実行履歴 | 実行した端末の画面やログに残る | 成功・失敗と出力を画面で一覧し、あとから見返せる |
| 定期実行 | 別の仕組みで組む | 画面からスケジュールを登録できる |
中でも大きいのは権限と認証情報の違いです。AWXでは、手順を実行する権限だけを運用担当者に渡し、編集の権限は作った人に残す、といった分け方ができます。サーバーのパスワードや鍵を見せずに使わせられるため、担当者が異動や退職をしても、すべてのサーバーの鍵を作り直す必要がありません。だれが何を変え、どの手順を実行したかの操作の記録も残ります。*3
Red Hatの製品版との関係
AWXとあわせてよく出てくるのが、Red Hat Ansible Automation Platform(以下、AAP)です。AAPはRed Hatがサブスクリプションで提供し、サポートする製品です。*2 その中で画面とAPIを受け持つ部品が、automation controller(以前の名前はAnsible Tower)です。*4 公式のFAQは、automation controllerはAWXの版の中から選んだものを、長く使えるように固めて作っていると説明しています。*2
| 項目 | Ansible AWX | AAP |
|---|---|---|
| 位置づけ | 新しい開発が行われるコミュニティのプロジェクト | AWXなどのプロジェクトを元にしたRed Hatの製品 |
| サポート | コミュニティ | Red Hat(版ごとに少なくとも18か月) |
| 費用 | 無料で入手できる | サブスクリプション |
| 画面とAPI | AWXそのもの | automation controller |
どちらを選ぶかは、機能の多さより、障害のときに誰が対応するかで考えると整理しやすくなります。自社で更新と障害対応を受け持てるならAWX、メーカーのサポートを前提にしたいならAAP、という分け方です。AWXは新しい版の公開が止まっているため、これから入れる場合はその状態を踏まえて選ぶ必要があります。
導入の進め方
AWXの導入は、ソフトを入れる作業より、誰にどの手順を任せるかを決める作業のほうが大切です。次の4つの段階で進めると、権限の設計をやり直さずに済みます。
- ステップ1:画面から実行したい定型作業を選ぶ(サービスの再起動、利用者の追加など)
- ステップ2:組織とチームを決め、見る・実行する・編集するの権限を割り当てる
- ステップ3:手順(ジョブテンプレート)と、サーバーに入るための認証情報を登録する
- ステップ4:スケジュールと、成功・失敗の通知先(メールやSlackなど)を決めて運用を始める
入れ方にも注意が要ります。公式の手順では、版18.0以降はKubernetes(コンテナを動かす基盤)の上でAWX Operatorという仕組みを使って入れる方法が推奨で、Dockerで動かす形は開発やテスト向けとされています。*5 版の更新もAWX Operatorで入れた場合に限られ、古い版から直接上書きする更新には対応していません。*2
外部に頼むときに確認しておきたい点
AWXはライセンス費用がかからない一方、Kubernetesの運用と版の管理は自社で持つことになります。構築や運用を外部に頼むときは、次の点を見積もりの前に確かめておきます。

- AWXかAAPか:新しい版の公開が止まっていることを踏まえ、どちらで組むかの提案と理由を出してもらえるか
- 権限の設計:チームと権限の分け方を、いまの運用の担当分けから一緒に決めるか
- 認証情報の扱い:サーバーの鍵やパスワードを誰が登録し、入れ替えをどう行うか
- 基盤の保守:Kubernetesとデータのバックアップを、誰がどの頻度で確かめるか
- 手順の移し替え:担当者の端末にあるPlaybookを、どの順でAWXへ移すか
手順書をジョブとして実行する仕組みには、AWXのほかにRundeckもあり、考え方はRundeckで運用自動化基盤を外注構築で扱っています。Ansibleそのものの基本はAnsible入門にまとめています。
まとめ:Ansible AWXで確かめておきたい3つの点
Ansible AWXを導入するうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、Ansible単体との違いは画面・権限・実行履歴にあるので、誰にどの手順を任せたいかをはっきりさせること。第二に、新しい版の公開が止まっていることを踏まえて、AWXとAAPのどちらで組むかを決めること。第三に、Kubernetesの基盤と認証情報の管理を誰が受け持つかを、導入の前に決めることです。この3点を踏まえておけば、「画面は入れたが、結局コマンドでの実行に戻ってしまった」という事態を避けやすくなります。構築や移行の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
Ansible AWXは本番の環境で使えますか
公式のFAQは、安定版と表示された版であっても、本番での利用に向くことや保証を意味しないと説明しています。*2 本番で使う場合は、障害対応と更新を自社で受け持てるかを先に確かめます。メーカーのサポートが必要なら、AAPと比べて選ぶとよいでしょう。
AWXの操作をほかのシステムから呼び出せますか
画面でできる操作は、すべてREST APIでも行えると説明されています。*3 監視の仕組みから手順を呼び出す使い方も考えられます。
社内のアカウントでログインできますか
AWXはLDAPやSAML(社内のアカウントでまとめてログインする仕組み)に対応しています。*3 社内のアカウントとつないでおくと、退職者のアカウントを止める作業を1か所にまとめやすくなります。
Ansible AWXによる運用自動化のご相談
Ansible AWXの構築から、権限の設計、既存のPlaybookの移し替え、更新とバックアップの運用まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:ansible/awx(GitHub)README(https://github.com/ansible/awx)。出典:AWXの説明(Webの画面・REST API・タスクエンジン)、Red Hat Ansible Automation Platformのアップストリームであること、最後の版(2024年7月2日)と版の公開の停止についての記述を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:Ansible「Frequently asked questions」(AWX Project FAQ)(https://www.ansible.com/awx-project-faq)。出典:Ansible CoreとAWXの違い、automation controller(旧Ansible Tower)との関係、サポート、ライセンス(Apache License 2.0)、版の更新、安定版の扱いの記述を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:AWX Documentation「User Guide」(版24.6.1、GitHub上のドキュメントの原稿)(https://github.com/ansible/awx/tree/24.6.1/docs/docsite/rst/userguide)。出典:Overview(権限・監査・REST API・認証連携・通知)、Role-Based Access Controls、Jobs、Credentials、Schedulesの記述を参照(2026年10月確認)
- *4 参考:Red Hat「Red Hat Ansible vs. Ansible projects and AWX: What’s the difference?」(https://www.redhat.com/en/technologies/management/ansible/compare-awx-vs-ansible-automation-platform)。出典:automation controller(画面とAPI)、版ごとのサポート期間についての記述を参照(2026年10月確認)
- *5 参考:ansible/awx(GitHub)INSTALL.md(https://github.com/ansible/awx/blob/devel/INSTALL.md)。出典:版18.0以降のAWX Operatorによる導入の推奨、Dockerでの導入は開発・テスト向けであることの記述を参照(2026年10月確認)