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2026.07.23 らしくコラム

VPP(仮想発電所)構築を外注|DR基盤で需給最適化

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

再生可能エネルギー・電力網のイメージ

この記事のポイント

  • VPP(仮想発電所)は、太陽光発電・蓄電池・需要家設備などの分散型エネルギーリソース(DER)をIoTで束ね、あたかも一つの発電所のように機能させる仕組みです。
  • DR(デマンドレスポンス)はネガワット取引や需給調整市場といった形で取引され、リソースアグリゲーターとアグリゲーションコーディネーターが役割を分担して市場へつなぎます。
  • リソースの遠隔監視・制御・計測や通信規格対応、市場向けシステム連携には専門知識が求められるため、内製と外注のどちらで構築するかを体制とリスクの両面から判断する必要があります。

VPP・DRとは?再エネ拡大と需給調整の必要性から求められる仕組み

電力マネジメントのイメージ

これまでの電力システムは、需要を所与のものとして、それに合わせて供給を行う形態が基本でした。しかし東日本大震災に伴う電力需給のひっ迫を契機に、需給バランスを意識したエネルギー管理の重要性が強く認識されるようになりました*1。震災後は太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの導入も大きく進みましたが、これらは天候などの自然状況に応じて発電量が左右され、供給量を制御できないという特性を持ちます*1

こうした動きと並行して、太陽光発電や家庭用燃料電池などのコージェネレーション、蓄電池、電気自動車、ネガワット(節電した電力)といった、需要家側に導入される分散型エネルギーリソース(DER)の普及が進みました*1。工場や家庭が持つDERは一つひとつが小規模なものですが、IoTを活用した高度なエネルギーマネジメント技術によりこれらを束ね(アグリゲーション)、遠隔・統合制御することで、電力の需給バランス調整に活用できます*1。この仕組みが、あたかも一つの発電所のように機能することから「仮想発電所:バーチャルパワープラント(VPP)」と呼ばれています*1

なお本稿は、電力・エネルギー事業者やアグリゲーター、大口需要家のシステム部門を対象に、VPP・DRに特化したリソース制御・アグリゲーション基盤の仕組みと外注の判断軸を整理するものです。電力分野のAI活用全般や、検針データを収集するスマートメーター関連の仕組みそのものは対象外とし、必要な範囲での言及にとどめます。

VPPの仕組み:分散型エネルギーリソース(DER)をアグリゲーターが束ねる

資源エネルギー庁は、バーチャルパワープラント(VPP)を「需要家側エネルギーリソース、電力系統に直接接続されている発電設備、蓄電設備の保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御(需要家側エネルギーリソースからの逆潮流も含む)することで、発電所と同等の機能を提供すること」と定義しています*1。逆潮流とは、自家発電事業者等が消費電力よりも発電電力が多くなった場合に、余った電力を電力会社線側へ戻すように流すことを指します*1

図
図:VPPにおけるリソース制御からアグリゲーションまでの流れ(分散型リソース→リソースアグリゲーター→アグリゲーションコーディネーター→市場)

VPPは、負荷平準化や再生可能エネルギーの供給過剰の吸収、電力不足時の供給といった機能として、電力システムでの活躍が期待されている仕組みです*1。電気は貯蔵できない性質を持つため需要と供給を常に一致させる必要があり、この役割はこれまで主に大型発電機の稼働が担ってきましたが、分散型エネルギーリソースを用いたVPP・DRの活用も期待されています*1

リソースアグリゲーターとアグリゲーションコーディネーターの役割分担

需要家側エネルギーリソースを統合制御し、VPP・DRのサービスを提供する事業者を「アグリゲーター等」と呼ぶ

資源エネルギー庁は、需要家側エネルギーリソースや分散型エネルギーリソースを統合制御し、VPPやDRからエネルギーサービスを提供する事業者を「リソースアグリゲーター」「アグリゲーションコーディネーター」と呼び、あわせて「アグリゲーター等」としています*1。両者の役割は次のとおりです*1

リソースアグリゲーターは、需要家とVPPサービス契約を直接締結してリソース制御を行う事業者です*1。アグリゲーションコーディネーターは、リソースアグリゲーターが制御した電力量を束ね、一般送配電事業者や小売電気事業者と直接電力取引を行う事業者を指します*1。両方の役割を兼ねる事業者も存在するとされています*1

アグリゲーターが担う「束ねる」と「依頼する」という2つの機能

資源エネルギー庁の整理では、アグリゲーター等は取引の流れをコントロールする司令塔の役割を果たし、多くの需要家を束ね、各需要家の状況に応じて指令を出しています*2。「束ねる」機能では、様々な需要家のエネルギーリソースを束ねて電力需要をコントロールし、需要家1件1件の規模が小さくてもリソースとして扱えるようにします*2。需要家はアグリゲーター等を通じて電気の取引市場に参加できる仕組みです*2

「依頼する」機能では、需要家ごとの状況に応じて下げDRを依頼し、需要家の設備や使用状況に合わせた最適なDR手法を提案します*2。VPPやDRを用いて、一般送配電事業者・小売電気事業者・需要家・再生可能エネルギー発電事業者といった取引先に対し、調整力・インバランス回避・電力料金削減・出力抑制回避等の各種サービスを提供する事業は「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス(ERAB)」と呼ばれています*1。2022年4月からは、特定卸供給事業者(アグリゲーター)制度が開始され、資源エネルギー庁のサイトで該当事業者の一覧が公表されています*2

DR(デマンドレスポンス)とネガワット取引・需給調整市場の仕組み

上げDR・下げDRと電気料金型・インセンティブ型の区分

資源エネルギー庁は、ディマンドリスポンス(DR)を「需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させること」と定義しています*1。DRは需要制御のパターンによって、需要を減らす「下げDR」と、需要を増やす「上げDR」の2つに区分されます*1。上げDRの例としては再生可能エネルギーの過剰出力分を需要機器の稼働で消費したり蓄電池の充電で吸収したりする方法があり、下げDRの例としては電気のピーク需要のタイミングで需要機器の出力を落として需給バランスを取る方法が挙げられます*1

需要制御の方法による区分もあり、電気料金設定により電力需要を制御する「電気料金型」と、電力会社やアグリゲーター等と需要家が契約を結び需要家が要請に応じて需要抑制等を行う「インセンティブ型」の2つに分かれます*1。インセンティブ型の下げDRは、特に「ネガワット取引」と呼ばれています*1。ネガワット取引に参加した需要家は、電力料金の低減に加えて、契約に基づく報酬(発動の有無に関わらず容量に応じて支払われるkW報酬、実際の削減量に応じて支払われるkWh報酬)を得られる場合があります*2

ネガワット取引の2つの類型と需給調整市場・容量市場

ネガワット取引は、目的・用途によって2つの類型に区分されています*2。類型1は小売電気事業者の「計画値同時同量」達成を目的とするもので、自社の需要家による需要抑制量を調達する類型1①と、他の小売電気事業者の需要家による需要抑制量を調達する類型1②に分かれます*2。類型2は、一般送配電事業者の「調整力」としての活用です*2。契約によってはアグリゲーター等と小売電気事業者が兼務する場合や、複数のアグリゲーター等が連携し複数の類型が併存する場合もあるとされています*2

2017年4月には「ネガワット取引市場」が創設され、類型1②によるネガワットは日本卸電力取引所(JEPX)での取引が可能になりました*2。一般送配電事業者が公募により行う調整力の調達にも、2017年度分(電源Ⅰ’厳気象対応調整力)からDRを活用した応札(類型2)が行われています*2。より効率的な需給運用を目指し、2021年4月からはエリアを越えた広域的な調整力の調達を行う「需給調整市場」が開設されました*2*3。DR実施事業者が参入できる市場としては、日本全体で十分な供給力を確保するための「容量市場」もあります*3

資源エネルギー庁の特集記事によれば、猛暑・厳寒時の調整力である「電源Ⅰ’」の落札容量に占めるDRの割合は、2020年度が約3割、2021年度が約4割、2022年度は約6割(落札容量約363.7万kWのうちDRが229.7万kW)と年々増加する傾向にあります*3。需給調整市場でもDR実施事業者の参入が徐々に進んでおり、今後は一部商品の参入要件緩和によるさらなる拡大が見込まれています*3。市場の詳細な数値や参入要件は変わり得るため、最新情報は資源エネルギー庁やOCCTO等の公式情報で確認する必要があります。

VPP/DRシステムに求められる要件:遠隔監視・制御・計測・通信規格

リソースの遠隔監視・制御・計測と通信規格への対応

VPP・DRを運用するシステムには、分散したDERの状態を遠隔で監視し、DR発動時には制御指令を送信し、実際に生じた需要抑制・創出量を計測するという一連の機能が求められます。資源エネルギー庁は、再生可能エネルギー・省エネルギー・電力システム・情報通信など部局横断的な課題を議論する「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会(ERAB検討会)」を設置しており、その傘下にはEchonet Lite WG・OpenADR WG・制御量評価WG・サイバーセキュリティWGという4つのワーキンググループが置かれています*4。ECHONET LiteやOpenADRといった通信規格は、いずれもDERの遠隔制御やDR発動指令の伝達に関わる技術領域として、こうした場で検討が重ねられてきました*4。規格の詳細な仕様や最新動向は、各規格の管理団体や資源エネルギー庁の公式情報で確認する必要があります。

需給調整市場向けのデータ連携とサイバーセキュリティ

需給調整市場に参入する場合は、市場システムを介したデータ連携にも対応が必要です。電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、需給調整市場システムで取引会員から「基準値計画」や「各リスト・パターン」等をXMLファイルで受領し、一般送配電事業者各社の精算システム等に取り込むための情報交換方式を、ビジネスプロトコル標準規格として制定しています*5。この規格は改定が重ねられており、2026年度以降は週間市場商品の前日取引化や取引時間単位の30分化、機器個別計測に対応する「機器点計画」の導入等が予定されています*5。また、低圧小規模リソースの群管理に関連して、登録可能なリソース数の上限拡大も整理されています*5

こうした規格改定は市場側の制度検討にあわせて随時行われるため、自社システムを規格変更のたびに追随させる体制が必要です。あわせて、ERAB検討会のサイバーセキュリティWGが議論しているように、遠隔で電力設備を制御する基盤である以上、不正アクセスや誤作動を防ぐセキュリティ対策も欠かせない要件になります*4。需給予測についても、DERの出力変動や需要変動を見込んだ計画値を作成する技術が求められますが、予測精度に関する具体的な数値は事業者や条件によって異なるため、自社での検証が必要です。

内製構築と外注委託のコスト構造比較

VPP・DRのシステム基盤を自社で構築する内製と、専門パートナーへ委託する外注では、費用構造・必要スキル・制度対応の重心が異なります。以下の表に主な違いを整理しました。

比較項目 内製構築 外注委託
システム開発 DER遠隔制御・通信規格対応・市場向けデータ連携をゼロから開発するための投資とエンジニア確保が必要です 初期の構築費用は発生しますが、複数事業者への導入実績を持つ専門ベンダーの知見を活用できます
必要な専門知識 電力系統の知識に加え、ECHONET Lite・OpenADR等の通信規格やOCCTOのビジネスプロトコル標準規格への理解が求められます*4*5 専門パートナーが規格対応を担うため、社内での知識習得は最小限で済みます
規格・制度改定への追随 需給調整市場向けBP規格の改定(前日取引化・機器点計画導入等)に自社で都度対応します*5 規格改定の追随や動作検証を含めて委託先が対応します
セキュリティ対応 遠隔制御基盤として必要なセキュリティ対策を自社で設計・運用します*4 セキュリティ設計・監視体制の構築までを含めて依頼できます

導入を進める3つのステップ

VPP・DRのシステム基盤を導入する際は、次の3ステップで検討を進めると論点を整理しやすくなります。

第一に、自社が保有・管理する分散型エネルギーリソースを棚卸しし、参加を検討する取引の類型(ネガワット取引の類型1・類型2、需給調整市場、容量市場等)を整理します*2*3。第二に、リソースの遠隔監視・制御・計測を担うシステムの要件を定義します。対応が必要な通信規格、計測の粒度、DR発動時の指令伝達フローが主な検討項目です*4。第三に、内製と外注のどちらで構築するかを判断し、外注する場合はパートナー選定と、規格改定に追随できる保守体制の確保まで見据えて進めます*5

内製に必要なスキルと外注委託との違い

電力系統・通信規格・市場BP対応にまたがる専門知識

VPP・DRのシステム基盤を内製で構築・運用する場合、求められる専門知識は複数分野にまたがります。電力系統やDERの制御に関する知識、ECHONET Lite・OpenADRといった通信規格への対応、需給調整市場のビジネスプロトコル標準規格に沿ったデータ連携、遠隔制御基盤としてのセキュリティ設計がその内容です*4*5。自社の情報システム部門だけでこれらを完結させるには、複数の担当者が連携する体制を整える必要があるでしょう。

判断を先延ばしにしたまま自己流で構築を進めると、規格改定への追随漏れやセキュリティ対策の不足に後から気づくケースが生じます。特にOCCTOのBP規格は前日取引化や機器点計画の導入など継続的に改定が行われるため*5、追随体制を整えないまま運用を続けると、市場参入要件を満たせなくなる恐れがあります。

専門パートナーに委託した場合の違い

専門パートナーに依頼すると、DER遠隔監視・制御システムの構築から通信規格対応、需給調整市場向けデータ連携の実装、規格改定時の動作検証まで一連の工程を任せられます。自社では要件整理や検証だけで時間がかかる場面でも、複数のエネルギー関連システムを扱ってきた知見を活用すれば、稼働までの期間を圧縮しやすくなります。内製と外注のどちらを選ぶ場合でも、まずは自社の保有リソースと参加を目指す市場・類型の整理が出発点になるでしょう。

まとめ:VPP/DR基盤導入の3つの判断軸

本稿ではVPP(仮想発電所)とDR(デマンドレスポンス)の仕組み、システムに求められる要件を、資源エネルギー庁・電力広域的運営推進機関(OCCTO)の公式情報に基づいて整理しました。要点は次の3つに集約されるでしょう。第一に、VPPは分散型エネルギーリソース(DER)をIoTで束ね、リソースアグリゲーターとアグリゲーションコーディネーターが役割を分担して市場につなぐ仕組みです*1。第二に、DRはネガワット取引や需給調整市場を通じて価値化されつつあり、市場参入の割合も年々拡大しています*3。第三に、遠隔監視・制御・通信規格対応・市場向けデータ連携には専門知識が必要であり、規格改定への継続的な追随が求められるため、構築・運用の判断と実行は外部委託によって負担を抑えやすくなります*5

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、電力・エネルギー分野のシステム構築・運用を元請(プライムベンダー)として受託しています。VPP・DRのリソース遠隔監視・制御システムの構築から、通信規格への対応、需給調整市場向けデータ連携の実装、規格改定時の追随対応まで一貫して支援する体制を整えています。自社での構築に不安がある企業様は、まずは保有リソースと参加を目指す市場の整理からご相談ください。

よくある質問

VPPとDRはどう違いますか。

VPPは分散型エネルギーリソースを束ねて発電所と同等の機能を提供する仕組み全体を指し、DRはそのうち需要家側のリソースを制御して電力需要パターンを変化させる手法を指します*1。DRはVPPを構成する要素の一つという位置づけです。

アグリゲーターになるにはどのような手続きが必要ですか。

2022年4月から特定卸供給事業者(アグリゲーター)制度が開始されており、該当する事業を行う場合は制度上の要件を確認する必要があります*2。最新の手続きや要件は資源エネルギー庁の公式情報で確認することをおすすめします。

VPP・DRシステムではどのような通信規格に対応する必要がありますか。

資源エネルギー庁のERAB検討会には、Echonet Lite WGとOpenADR WGが設置されており、DERの遠隔制御やDR発動指令に関わる通信規格として検討が行われています*4。対応範囲は接続するリソースや参加する市場によって異なるため、個別の要件定義が必要です。

需給調整市場に参入するにはどのようなシステム対応が必要ですか。

OCCTOは、需給調整市場システムを介した「基準値計画」「各リスト・パターン」等の情報交換をXMLファイル形式のビジネスプロトコル標準規格として定めています*5。この規格は改定が重ねられているため、システム側も継続的な追随対応が必要です*5

内製と外注はどちらで進めるべきですか。

保有するリソースの規模や社内の電力系統・通信規格に関する知見、規格改定への追随体制を整えられるかどうかによって適切な選択は変わります。専門知識の確保が難しい場合は、構築から規格改定対応までを含めて外部委託する方法も選択肢になります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:資源エネルギー庁「VPP・DRとは」(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/about.html
  2. *2 出典:資源エネルギー庁「VPP・DRの活用」(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/negawatt.html
  3. *3 出典:資源エネルギー庁「エネこれ:節電される電気を価値化!?ディマンド・リスポンスの取引」(https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/dr_market.html
  4. *4 出典:資源エネルギー庁「VPP・DR普及に関する施策」(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/measure.html
  5. *5 出典:電力広域的運営推進機関(OCCTO)「需給調整市場ビジネスプロトコル標準規格の制定について」(https://www.occto.or.jp/news/oshirase_sonotaoshirase_2019_200205_jyukyubp.html


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