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Azure OpenAI導入支援の手順|設計と運用の頼み方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- Azure OpenAIは原則として申請なしで使え、まずデプロイの種類でデータを処理する場所と払い方を決めます。
- アプリにAPIキーを置かず、Entra IDとマネージドIDで認証し、役割は必要な範囲に絞って渡します。
- 予算の通知だけでは使いすぎは止まらないため、診断設定とクォータの配分まで導入時に決めておきます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
生成AIを業務システムに組み込むならAzureで使いたい。ただ、どこで処理されるのか、誰に権限を渡すのか、費用をどう見張るのかが分からない——。導入を任された担当者に多い悩みです。Azure OpenAI導入支援は、Azure OpenAIを業務システムで使い始めるまでの設計と設定を、外部の専門家と一緒に進める支援です。
最初に設計を固めれば、後の作り直しを減らせます。ただし任せきりにすると、設定の理由を社内で説明できなくなります。本記事では情報システムや開発の責任者に向けて、Microsoft Learnの公式ドキュメントで確かめた範囲で、使い始めるまでの手順と外部に頼むときの確認点を整理します。
目次
Azure OpenAI導入支援とは
Azure OpenAIは、OpenAIのモデルをMicrosoftのクラウドであるAzureの中で使えるサービスです。公式ドキュメントでの現在の名前は「Azure OpenAI in Microsoft Foundry Models」です。*2 Azure OpenAI導入支援は、業務システムから使い始めるまでの設計と設定を外部の専門家と進める支援です。
Azureの契約があれば、原則として申請書を出さずに使えます。申請が要るのは、利用を制限した一部のモデルを使うときと、有害な内容を止める仕組み(ガードレール)や不正利用の監視を変えたいときだけです。*1 利用の条件には生成AI向けの製品条件も含むため、法務と読み合わせておきます。
| ステップ | 決めること | 社内で決める点 | 頼みやすい作業 |
|---|---|---|---|
| 1 利用条件の確認 | 申請の要否と製品条件 | 使う業務と扱うデータ | 条件の整理と申請の準備 |
| 2 リソースとネットワーク | リージョン、デプロイの種類、つないでよいネットワーク | データを処理してよい地域 | 閉じたネットワークでの接続の設計と構築 |
| 3 認証と権限 | キーを使うか、Entra IDで認証するか。誰にどの役割を渡すか | 使う人と管理する人の範囲 | マネージドIDと役割の設定 |
| 4 データの扱い | 保存される機能を使うか、ガードレールの強さ | 入れてよいデータの区分 | ガードレールの設定と社内ルールの案 |
| 5 監視と費用 | ログの送り先、予算と通知、使用量の上限 | 通知を受けて判断する人 | 診断設定と予算の通知の設定 |
リソースとネットワークの設計
まずAzureの中にリソース(サービスを使うための入れ物)を作り、モデルをデプロイ(呼び出せる状態に配置)します。作成時にはサブスクリプション、リソースグループ、リージョン、名前を決めます。アプリはデプロイの名前で呼び出すため、名前の付け方も先に決めます。*2

デプロイの種類で、データを処理する場所と払い方が決まります。
| 種類 | 処理する場所 | 払い方 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| Global(グローバル) | Azureのどのリージョンでも | 使ったトークン(文字を区切った単位)の量、または予約した処理能力 | 処理する場所に制約がなく、新しいモデルを早く使いたい |
| Data Zone(データゾーン) | 米国・EU・アジア太平洋のうち指定した範囲の中 | 同上 | 処理する場所を一定の範囲に収めたい |
| Standard・Regional Provisioned | 指定した地域の中 | 同上 | 処理を指定の地域の中に限りたい |
| Batch(一括処理) | Globalまたはデータゾーンの範囲 | 50%の割引で、24時間以内に処理 | 急がない大量の処理 |
公式ドキュメントは、明確な理由がなければGlobal Standardから始めるよう勧めています。どの種類でも保存されるデータは指定した地域に置かれ、変わるのは処理する場所だけです。*3 対応する種類はモデルごとに違うため、社内の規程で処理する地域を決めているなら、使いたいモデルが選べるかを先に確かめます。
ネットワークは作成時に、すべてのネットワーク(初期設定)、指定したネットワークだけ、公開の入口を閉じてプライベートエンドポイント(社内のネットワークに置く専用の入口)だけ、の3つから選びます。プライベートエンドポイントの通信は公開のインターネットを通りません。接続を制限するとAzureポータルや他のAzureサービスからの要求も止まるため、管理作業の経路も合わせて設計します。*4
認証と権限の決め方
アプリからAzure OpenAIを呼ぶときの認証は、APIキーかMicrosoft Entra ID(Microsoftの認証基盤)のどちらかです。Entra IDなら、アプリにAPIキーを置かず、役割を与えた身元で短時間だけ有効な許可証を受け取って呼び出せます。Azure上のアプリはマネージドIDを使えば、保管する秘密情報もなくなります。*5
| 役割 | できること | できないこと | 主に渡す相手 |
|---|---|---|---|
| Cognitive Services OpenAI User | デプロイ済みのモデルの呼び出し(Entra ID)、試用の画面 | キーの表示、デプロイの作成や変更、クォータの確認 | 業務アプリ、一般の利用者 |
| Cognitive Services OpenAI Contributor | Userの範囲に加え、デプロイの作成や変更、追加学習 | キーの表示、クォータの確認、ガードレールの作成 | 開発の担当者 |
| Cognitive Services Contributor | リソースの作成、キーの表示と再発行、ガードレールの作成 | クォータの確認、Entra IDでの呼び出し | 基盤の管理者 |
| Cognitive Services Usages Reader | サブスクリプション全体のクォータの使用状況の確認 | 単独ではほかの作業はほぼできない | 容量と費用の管理者 |
クォータは使ってよい量の上限のことです。注意したいのは、サブスクリプションに付けた所有者や共同作成者の役割が引き継がれ、リソースグループに付けた個別の役割より優先される点です。*6 開発の途中で広い役割を配ったままにすると、絞ったつもりの権限が意味を持ちません。役割の割り当てが反映されるまで5分ほどかかる場合があることも、手順書に書いておきます。*5
データの扱いと監視・費用の管理
Microsoftは、入力した指示(プロンプト)と生成結果、追加学習のデータは、他の顧客やOpenAIに提供されず、許可なく基盤モデルの学習にも使われないと明記しています。モデル自体は入力を保存しません。ただし会話の履歴を残す機能やファイルを上げる機能では、データはリソースと同じ地域に暗号化して保存され、いつでも削除できます。*7

- 不正利用の監視:問題のある使い方が疑われると、入力と出力の一部が自動の仕組みで確かめられ、必要に応じてMicrosoftの許可された社員が見ることがあります。この保存と人の確認を止める申請ができるのは、Microsoftの担当チームが付く顧客などに限られます*8
- ガードレール:憎悪・性的・暴力・自傷の4つの分類ごとに、止める強さを入力と出力で別々に決められます。止める機能を外すには承認が要ります*9
- ログ:使用量などの指標は自動で集まりますが、リソースのログは診断設定を作るまで集まりません。ログの保存先には別の費用がかかります*10
- 費用:Cost ManagementではAzure OpenAIの費用はCognitive Servicesの区分に表示されます。予算の通知だけでは使いすぎを自動で止められません*11
- 使用量の上限:クォータはサブスクリプションに、リージョン・モデル・デプロイの種類ごとに、1分あたりのトークン数で割り当てられます*12
モデルには提供終了の時期があり、提供を終えた版を呼ぶとすべてエラーになります。後継のモデルは、提供終了のおよそ90日前からGlobal Standardで試せます。*13 切り替えの前に、業務でよく使う問い合わせで動きを確かめる手順を決めておきます。
外部に頼むときに確認しておきたい点
Azure OpenAI導入支援を頼むときは、リソースを作る作業よりも、処理する場所の条件、ネットワーク、権限、費用の通知をどう組み合わせるかに手間がかかります。見積もりの前に、次の点を確かめます。
- 範囲:利用条件の整理、デプロイの種類とネットワークの設計、認証と権限の設定、監視と費用の通知のうち、どこまで任せるか
- 期間:試験の利用にどれだけの期間をとり、本番の業務に広げるかをいつ判断するか
- 体制:社内で処理する地域やデータの区分を決める人と、外部の担当者が一緒に決める事項
- 費用の決まり方:作業の範囲で決まる一括の見積もりか、期間で決まる支援か。Azureの利用料とは分けて見るか
- 引き継ぎ:役割の割り当て、ネットワークの設定、予算の通知先とその理由を文書に残し、社内で更新できる状態にするか
Azure全体の土台がまだ整っていないなら、Azure導入支援で頼める範囲で扱った設計から始めます。業務アプリへの組み込みの開発は、LLM API連携開発を外注する手引きにまとめています。
まとめ:Azure OpenAI導入支援の要点
Azure OpenAI導入支援を頼むうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、デプロイの種類で処理する場所と払い方が決まるため、社内の規程に合うかを先に確かめること。第二に、アプリにAPIキーを置かずEntra IDで認証し、役割を必要な範囲に絞ること。第三に、診断設定、予算の通知、クォータの配分を導入時に決め、その理由を文書で引き継ぐことです。設計や設定に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
Azure OpenAIを使うのに申請は必要ですか
多くの場合は不要です。Azureの契約があれば、原則として申請書を出さずに使えます。申請が要るのは、利用を制限した一部のモデルを使うときと、ガードレールや不正利用の監視を変えたいときです。
入力した社内の情報はモデルの学習に使われますか
Microsoftは、入力と生成結果を許可なく基盤モデルの学習に使わず、OpenAIにも提供しないと明記しています。ただし不正利用の監視のため、疑わしい入力と出力は確認されることがあります。
使いすぎたときに自動で止める設定はありますか
予算の通知だけでは利用は止まりません。通知から自動の処理を動かすことはできますが、別に作り込みが要ります。デプロイごとに1分あたりのトークン数の上限を割り当てて、使える量を抑える方法もあります。
Azure OpenAIの導入と運用のご相談
Azure OpenAIのデプロイの種類とネットワークの設計から、Entra IDによる認証と権限、監視と費用の管理まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:Microsoft Learn「Limited access for Models sold by Azure」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry/responsible-ai/openai/limited-access)。出典:申請が要る場合、製品条件、ガードレールと不正利用の監視を変える申請の対象を参照(2026-10-22確認)(2026年10月確認)
- *2 参考:Microsoft Learn「Create and deploy an Azure OpenAI in Microsoft Foundry Models resource (classic)」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry-classic/openai/how-to/create-resource)。出典:現在のサービス名、リソースの作成で決める項目、ネットワークの3つの選択肢、デプロイの名前で呼び出すことを参照(2026-10-22確認)(2026年10月確認)
- *3 参考:Microsoft Learn「Deployment types for Microsoft Foundry Models」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry/foundry-models/concepts/deployment-types)。出典:デプロイの種類ごとの処理する場所と払い方、Global Standardから始める推奨、保存データの所在、一括処理の割引を参照(2026-10-22確認)(2026年10月確認)
- *4 参考:Microsoft Learn「Configure Virtual Networks for Foundry Tools」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/ai-services/cognitive-services-virtual-networks)。出典:認証の方式、接続を制限したときに止まる要求、プライベートエンドポイントの通信経路を参照(2026-10-22確認)(2026年10月確認)
- *5 参考:Microsoft Learn「How to configure Azure OpenAI in Microsoft Foundry Models with Microsoft Entra ID authentication (classic)」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry-classic/openai/how-to/managed-identity)。出典:キーを置かない認証、マネージドID、役割が反映されるまでの時間を参照(2026-10-22確認)(2026年10月確認)
- *6 参考:Microsoft Learn「Role-based access control for Azure OpenAI in Microsoft Foundry Models (classic)」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry-classic/openai/how-to/role-based-access-control)。出典:4つの役割でできることとできないこと、上位の役割が優先されることを参照(2026-10-22確認)(2026年10月確認)
- *7 参考:Microsoft Learn「Data, privacy, and security for Models sold by Azure in Microsoft Foundry」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry/responsible-ai/openai/data-privacy)。出典:入力と生成結果を学習や他社に使わないこと、Azureの環境で運用されること、保存される機能のデータの扱いを参照(2026-10-22確認)(2026年10月確認)
- *8 参考:Microsoft Learn「Foundry Models sold by Azure abuse monitoring」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry/openai/concepts/abuse-monitoring)。出典:不正利用の監視での自動の確認と人による確認を参照(2026-10-22確認)(2026年10月確認)
- *9 参考:Microsoft Learn「Content filtering for Microsoft Foundry Models (classic)」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry-classic/foundry-models/concepts/content-filter)。出典:4つの分類、入力と出力ごとの強さの設定、外すときの承認を参照(2026-10-22確認)(2026年10月確認)
- *10 参考:Microsoft Learn「Monitor Azure OpenAI in Microsoft Foundry Models (classic)」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry-classic/openai/how-to/monitor-openai)。出典:指標の自動収集、リソースのログと診断設定、ログの保存の費用を参照(2026-10-22確認)(2026年10月確認)
- *11 参考:Microsoft Learn「Plan and manage costs for Microsoft Foundry」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry/concepts/manage-costs)。出典:Cost Managementでの表示区分、予算で利用を止められないこと、通知からの自動処理を参照(2026-10-22確認)(2026年10月確認)
- *12 参考:Microsoft Learn「Manage Azure OpenAI in Microsoft Foundry Models quota (classic)」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry-classic/openai/how-to/quota)。出典:クォータの割り当ての単位を参照(2026-10-22確認)(2026年10月確認)
- *13 参考:Microsoft Learn「Foundry Models lifecycle and support policy」(https://learn.microsoft.com/en-us/azure/foundry/openai/concepts/model-retirements)。出典:提供終了後の呼び出し、後継のモデルを試せる時期を参照(2026-10-22確認)(2026年10月確認)