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施工管理システム|工程・出来高・現場写真をまとめて管理
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として業務システムの開発・保守を受託
この記事のポイント
- 施工管理システムは、建設現場の工程・進捗、出来高、現場写真・検査記録、図面や施工体制関係書類をまとめて扱い、紙や表計算ソフトに散らばりがちな現場情報を集約する仕組みです。
- 発注者から直接工事を請け負った特定建設業者には、下請代金の総額が一定額以上になると施工体制台帳・施工体系図の作成が建設業法で求められ、書類管理は施工管理の重要な一部を占めます。
- 会計寄りの原価管理システムや、AI活用を主眼とする建設業のAI開発とは対象が異なり、施工管理システムは「建設現場の工程・出来高・写真・書類」に軸足を置く点が核になります。
目次
工程・出来高・写真・書類が分散——手作業の施工管理が抱える課題
建設業では、担い手の確保が長く課題とされてきました。加えて、2024年4月1日からは時間外労働の上限規制が建設業にも適用され、原則として月45時間・年360時間という限度が設けられています*5。限られた人数と時間で現場を回すには、施工管理の情報をいかに効率よく扱えるかが問われるようになりました。ところが実際の現場では、工程表や出来高、現場写真、図面や提出書類が、それぞれ別の場所に散らばりがちです。
手作業の施工管理で起こりやすい課題は、大きく4つに整理できます。1つ目は、工程表の予定と現場の実績がずれても、更新が追いつかず全体の進捗を把握しづらくなることです。2つ目に、出来高の集計や実行予算との突合を表計算ソフトで手作業に行うと、転記の手間と誤りが生まれやすくなります。3つ目として、現場写真や電子黒板の画像、検査記録が担当者ごとの端末やフォルダーに散らばり、後から探し出しにくいという問題があります。
4つ目は、図面や提出書類の管理です。図面は改訂のたびに版が増え、どれが最新版かを取り違えると手戻りにつながります。さらに、後述する施工体制台帳や施工体系図のように、建設業法で作成が求められる書類もあり、これらの整備が遅れると法令対応の面でも支障が出かねません*1。こうした情報が別々に管理されている限り、現場の状況を一目で把握するのは難しいでしょう。規模が小さいうちは属人的な運用でしのげても、現場数や関係業者が増えるほど、一元的に扱う必要性が高まっていきます。
施工管理システムとは——建設現場の管理情報を一元化する仕組み
施工管理システムとは、建設現場の管理に必要な情報を一つの基盤にまとめて扱うソフトウェアを指します。具体的には、(1)工程表・進捗の管理、(2)出来高と実行予算の把握、(3)現場写真・電子黒板・検査記録の蓄積、(4)図面や施工体制関係書類の共有、といった機能を束ねる考え方です。紙や表計算ソフト、個別のフォルダーに分散していた情報を集約し、現場と事務所の双方から同じデータを参照できるようにします。これにより、進捗の遅れや記録の抜けに早く気づける運用を後押しするわけです。
施工管理には、書類面での法令対応も含まれます。発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者は、下請代金の総額が一定額以上になると、施工体制台帳と施工体系図を作成する義務を負います(建設業法第24条の8)*1*2。施工体系図は、工事現場の見やすい場所に掲げることも求められています*1。こうした書類を現場ごとに整え、更新し続ける作業は、施工管理システムが支える対象の一つといえるでしょう。
国の施策の後押しもあります。国土交通省は2024年4月に「i-Construction 2.0」を公表し、2040年度までに建設現場の生産性を1.5倍に高め、省人化を3割進める目標を掲げました*3。その柱の一つが「施工管理のオートメーション化」であり、現場データをデジタルで扱う流れは今後さらに強まると見込まれます*3。施工管理システムへの関心が高まっている背景には、こうした人手不足対策と生産性向上の要請があるのです。
原価管理システムや建設業のAI開発との違い——「現場の施工管理」への特化
建設業向けのシステムには、原価管理システムや、AI活用を主眼とする建設業のAI開発など、似た文脈で語られる仕組みがあります。名前が近いため混同されがちですが、施工管理システムはこれらと軸足が異なるものです。導入の狙いを取り違えると、期待した現場改善につながりにくいため、役割の違いを整理しておきましょう。
原価管理システムは、工事ごとの実行予算に対して、材料費・労務費・外注費などの原価がどう推移しているかを追う仕組みで、会計や予実管理に重心があります。建設業のAI開発は、画像解析による検査の補助や、需要予測・見積もりの自動化など、AIによる高度化そのものが主眼です。これに対して施工管理システムは、現場の工程がどこまで進み、出来高がどれだけ上がり、写真や検査記録がどう残され、図面や書類がどう共有されているか、という現場運営の側面に特化します。原価管理とはデータ連携で結びつきますが、担う役割は別だと捉えるとよいはずです。
| 項目 | 原価管理システム | 建設業のAI開発 | 施工管理システム |
|---|---|---|---|
| 中心となる対象 | 工事原価と実行予算 | AIによる解析・予測 | 現場の工程・出来高・写真・書類 |
| 主な目的 | 予実の把握と収支の管理 | 検査補助や見積もりの高度化 | 現場運営と記録・書類の一元化 |
| キーとなる情報 | 材料費・労務費・外注費 | 画像・過去データ・学習モデル | 工程表・出来高・現場写真・施工体制関係書類 |
| 主な利用者 | 経理・工事管理部門 | 技術・DX推進部門 | 現場代理人・監督・関係業者 |
3つは排他的ではなく、組み合わせて使う場面も多くあります。たとえば施工管理システムで集めた出来高のデータを原価管理システムへ渡し、実行予算との差異を分析する、といった連携が考えられるでしょう。AIによる画像解析を検査記録の点検に活かす構成も広がりつつあります。自社が現場運営のどこを改善したいのかを起点に、どの仕組みを軸に据えるかを見極めることが出発点になります。
施工管理システムの機能要素——工程・出来高・現場写真・書類
施工管理システムを検討する際は、次の機能要素をどの程度満たすかを見比べると判断しやすくなります。自社が扱う工事の種類や現場数、関係業者の多さに照らして、必要な要素に優先順位を付けていきましょう。
工程表・進捗管理——予定と実績のずれを可視化する
基礎になるのは、工程表を軸に予定と実績を管理できることです。各作業や各職種の着手・完了の予定を登録し、現場からの実績入力と突き合わせて進捗を可視化します。ガントチャート形式で全体の流れを俯瞰できれば、遅れの兆しに早く気づけるでしょう。工程が変われば関係業者への周知も要るため、変更をその場で共有できる仕組みが現場の実務に沿います。紙の工程表を貼り替える運用に比べ、更新の手間と伝達の遅れを抑えやすくなります。
出来高管理・実行予算との連携——進捗を数量と金額で押さえる
2つ目は、出来高の管理です。工種ごとの進捗を数量や金額で把握し、実行予算に対してどこまで進んだかを追います。出来高は請負代金の請求や原価の管理にも関わるため、工程の進捗とひもづけて記録できると実務で扱いやすくなります。前述のとおり、収支の細かな管理は原価管理システムが担う領域ですが、施工管理システム側で出来高を押さえ、そのデータを連携させる設計が現実的でしょう。二重入力を避けられれば、集計の手間と誤りを減らせます。
現場写真・電子黒板・検査記録——現場の状態を証跡として残す
3つ目は、現場写真や電子黒板、検査記録の蓄積です。工事の各段階を写真で記録し、電子黒板で工種や日付といった情報を写し込めば、後から状況を確認しやすくなります。撮影した写真を工程や検査項目にひもづけて保存できれば、担当者の端末に散らばる事態を防げるでしょう。公共工事などでは工事写真の電子的な納品が求められる場面もあり、決められた形式で整理・出力できると提出の負担が軽くなります。検査記録を残す機能は、品質の確認を後から追える証跡としても役立ちます。
図面・書類共有と施工体制関係書類——版管理と法定書類を扱う
4つ目が、図面や各種書類の共有です。図面は改訂のたびに版が増えるため、最新版を関係者が取り違えなく参照できる版管理の仕組みが要になります。あわせて、建設業法で作成が求められる施工体制台帳や施工体系図といった法定提出書類、いわゆるグリーンファイル(施工体制台帳等の現場備付け書類)を扱えると、書類整備の負担を抑えられます*1*2。さらに、建設キャリアアップシステム(CCUS。技能者の資格や現場での就業履歴を業界横断で登録・蓄積する国の取組)と連携し、就業履歴の記録に役立てる動きも広がっています*4。書類と現場データを一つの基盤で扱えれば、探し物や転記に費やす時間を減らせるはずです。
開発を外注する前に確認したい点——データ移行・法改正追従・システム連携
施工管理システムを自社向けに開発して外部委託する場合、既製のサービスをそのまま使うのとは違い、自社の現場運用や既存システムに合わせられる利点があります。一方で、要件のすり合わせが甘いと現場に定着しないものです。委託前に確認しておきたい点を挙げます。
第一に、既存の工程表や写真、書類からのデータ移行です。多くの現場では、これらが表計算ソフトや個別のフォルダー、紙に散在しています。新システムへ取り込む際、工事情報の名寄せや、既存写真の分類、書類様式の再現をどこまで担ってもらえるかを確認しましょう。移行の設計は、導入初期の使い勝手を大きく左右する部分です。
第二に、法改正への追従です。建設業法にもとづく施工体制台帳の記載事項や、施工体系図の様式は、制度の見直しで変わり得ます*2。時間外労働の上限規制のように、現場運営に関わる制度改正が続く点も見落とせません*5。記載項目や帳票を設定変更で調整できる設計になっているかを、要件定義の段階で確認しておくことが望ましいでしょう。制度の解釈そのものは自社や専門家の判断によりますが、様式を柔軟に変えられる作りかどうかは、開発段階で決まってきます。
第三に、既存システムや外部サービスとの連携です。原価管理システムや会計システムとの出来高・原価の連携、CCUSとの就業履歴の連携、電子契約サービスとの書類のやり取りなどができれば、二重入力を避けられます*4。連携の範囲と方式は、開発の工数にも影響する部分です。加えて、協力会社ごとに閲覧・編集できる範囲を分ける権限管理や、記録の改ざんを防ぐログの残し方も、あわせて詰めておきたい観点になります。委託範囲を要件定義から設計・構築、運用・保守までのどこまでとするかを明確にし、元請(プライムベンダー)として一貫して担える体制かどうかを見極めることが、選び方の実質的な分かれ目になるでしょう。
まとめ:施工管理システムを検討するときの3つの視点
本稿では、施工管理システムの役割と機能要素を、建設現場の工程・出来高・写真・書類という観点から整理しました。要点は次の3つです。第一に、施工管理システムは工程・進捗、出来高、現場写真・検査記録、図面や施工体制関係書類をまとめて扱い、手作業の分散管理で起きがちな進捗の把握遅れや記録の抜けを抑える仕組みです。第二に、発注者から直接工事を請け負った特定建設業者には、下請代金の総額が一定額以上になると施工体制台帳・施工体系図の作成が建設業法で求められ、書類管理は施工管理の重要な一部を占めます*1*2。第三に、会計寄りの原価管理システムやAI活用を主眼とする建設業のAI開発とは対象が異なり、施工管理は現場運営に軸足を置く点が核になります。自社の現場運用と扱う情報を棚卸ししたうえで、必要な機能に優先順位を付けて検討することをおすすめします。
よくある質問
施工管理システムと原価管理システムは何が違いますか。
原価管理システムは工事原価と実行予算の予実を追う会計寄りの仕組みで、施工管理システムは工程・進捗、出来高、現場写真・検査記録、図面や書類といった現場運営の情報を一元化する仕組みです。両者はデータ連携で結びつきますが、担う役割は別だと捉えるとよいでしょう。施工管理側で押さえた出来高を原価管理側へ渡す、といった使い分けが考えられます。
施工体制台帳や施工体系図は、どの現場でも作成が必要ですか。
発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者が、下請代金の総額が一定額以上になる場合に、施工体制台帳と施工体系図の作成が建設業法第24条の8で求められます*1*2。施工体系図は工事現場の見やすい場所への掲示も必要です*1。金額基準や運用の詳細は許可行政庁の案内でご確認ください。
現場写真や電子黒板の記録もシステムで扱えますか。
多くの施工管理システムは、現場写真や電子黒板の画像、検査記録を工程や検査項目にひもづけて保存する機能を備えています。公共工事などで工事写真の電子的な納品が求められる場面でも、決められた形式で整理・出力できると提出の負担を抑えやすくなります。担当者の端末に散らばりがちな記録を、現場と事務所で共有できる点が利点です。
建設キャリアアップシステム(CCUS)とも連携できますか。
CCUSは、技能者の資格や現場での就業履歴を業界横断で登録・蓄積する国の取組です*4。施工管理システムのなかには、現場の入退場記録などをCCUSの就業履歴の記録に役立てる連携を持つものもあります。連携の可否や範囲は製品や開発方針によって異なるため、要件定義の段階で確認しておくとよいでしょう。
施工管理システムの開発を外部に委託する場合、何を確認すればよいですか。
既存の工程表・写真・書類からのデータ移行の範囲、施工体制関係書類など法改正への追従のしやすさ、原価管理・会計やCCUSとの連携範囲をまず確認します。加えて協力会社ごとの権限管理や記録のログ、委託範囲を要件定義から運用・保守までどこまでとするかを明確にすると、導入後の定着につながるはずです。元請として一貫して担える体制かどうかも見極めましょう。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:国土交通省「施工体制台帳、施工体系図等」(作成義務・掲示・様式)( https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/1_6_bt_000191.html )
- *2 出典:e-Gov法令検索「建設業法(昭和二十四年法律第百号)」第24条の8(施工体制台帳及び施工体系図の作成等)( https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000100 )
- *3 出典:国土交通省「i-Construction 2.0 ~建設現場のオートメーション化~」(令和6年4月)( https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001738240.pdf )
- *4 出典:国土交通省「【CCUSポータル】建設キャリアアップシステムの概要」( https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/ccus_about.html )
- *5 出典:厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」(2024年4月1日適用・月45時間/年360時間)( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyosyu/topics/01.html )