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2026.07.10 らしくコラム

脱Excelで業務システム化を外注する方法

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

表計算業務のイメージ

この記事のポイント

  • Excelの共同編集機能はOneDrive・SharePoint Online上での保存とAutoSaveの有効化が前提で、ローカルやファイルサーバー上の共有フォルダでは機能しません*2
  • キーマンズネットの2025年調査(有効回答330件)では、マクロ知識について「特定の人でないと操作できない」との回答が65.8%にのぼりました*8
  • システム化の移行先は(A)スクラッチのWeb業務アプリ、(B)ローコード/ノーコード基盤、(C)パッケージ/SaaSの3方向に分けられ、業務の独自性で選び方が変わります。

脱Excel、業務のシステム化とは何か——限界のサインを見極める

業務ダッシュボードのイメージ

脱Excelとは、台帳・集計・進捗管理などをExcelファイルで運用してきた業務を、Webやクラウド上の業務システムに置き換えていく取り組みを指します。多くの企業では、情報システム部門や現場の担当者が業務に合わせてExcelシートを作り込み、長年にわたって運用を続けてきました。

図
図:Excel業務システム化の進め方(棚卸し→要件の可視化→優先度付け→段階移行)

Excelはファイルさえあれば誰でも編集できる手軽さから、部門を横断して広く使われてきました。株式会社帝国データバンクが2020年7月に実施した「顧客管理実態に関するアンケート」では、利用している顧客管理システムとして「ExcelやAccess」を挙げた回答が45.0%にのぼっています*7。台帳や集計業務の土台として、Excelがいまも中心的な位置を占めている実態がうかがえます。

一方で、利用範囲や利用年数が広がるにつれて、Excel単体の仕組みでは対応しきれない場面が増えていきます。次章以降では、システム化を検討する目安になる兆候を具体的に見ていきます。

Excelが限界になる兆候(1)——同時編集ができない・ファイルの版数が錯綜する

Excelのファイルそのものは、複数人での同時編集を前提に設計された仕組みではありません。Microsoft公式のサポート情報によると、リアルタイムの共同編集(co-authoring)機能を使うには、ファイルをOneDriveやOneDrive for Business、SharePoint Onlineのライブラリに保存し、AutoSaveを有効にしておく必要があります*2。ローカルのCドライブや従来型のファイルサーバー上の共有フォルダに置いたファイルでは、この共同編集機能は動作しません*2

共有フォルダ運用で長年使われてきた「共有ブック」という古い機能もありますが、Microsoftはこの機能について「多くの制限があり、共同編集機能に置き換えられた」と説明しています*3。共有ブックを有効にすると、テーブルやピボットテーブル、グラフの作成・変更、セルの挿入・削除の一部、マクロの実行など、多数の操作が使えなくなります*3

実務では、共有フォルダに置いた台帳を複数人が同時に開き、一方が「読み取り専用」になってしまう、あるいは片方の変更が上書きされて消えてしまうといった事態が起こります。ファイル名に日付や担当者名を付けて版数を管理する運用も見られますが、「_final」「_final2」「_最新」といったファイルが並び、どれが正しい最新版なのか判断できなくなるケースも少なくありません。

Excelが限界になる兆候(2)——VBA(マクロ)の属人化と内部統制上の限界

Excel運用の負荷を大きく左右するのが、VBA(Visual Basic for Applications。Excel上で動作するプログラミング言語)で組んだマクロの存在です。キーマンズネットが2025年6月13日から25日にかけて実施した調査(有効回答330件)では、マクロを現在使用していると回答した割合が50.9%にのぼりました*8

同調査では、マクロの知識が特定の担当者に集中しているかを尋ねた項目で、「特定の人でないと操作できない」と回答した割合が65.8%に達しています*8。マクロは現場で重宝される一方、作成した担当者以外には手を入れづらい状態に陥りやすいことが、この結果からもうかがえます。

セキュリティ設定の面でも、マクロの取り扱いには注意が必要です。Excelの既定の設定は「通知を行い、すべてのマクロを無効にする」であり、マクロ入りのファイルを開くたびに有効化の判断を求められます*5。信頼できる発行元のみを許可する設定や、すべてのマクロを許可する設定も選べますが*5、運用ルールが担当者ごとに異なっていると、誰がどの設定でファイルを開いているのか把握しにくくなります。

さらに、マクロを含むファイルは共同編集機能とも相性がよくありません。Microsoftは、共同編集中にマクロやVBAコードを変更すると、他の編集者の作業が中断される場合があると案内しています*4。マクロの編集は一人で作業するときに限る一方、実行自体は共同編集中でも問題ないとされています*4。誰が何を承認し、いつ変更が加わったのかという記録が残らない点も、内部統制の観点では見過ごせません。

システム化の選択肢——スクラッチ開発・ローコード/ノーコード・パッケージ/SaaS

Excel業務をシステム化する際の移行先は、大きく3つの方向性に分けられます。どの選択肢が向いているかは、業務ロジックの独自性や利用人数、既存Excelシートの複雑さによって変わります。

(A) スクラッチのWeb業務アプリ

既存の業務フローや帳票の形式を維持したい場合、Web技術やクラウド基盤を使ってゼロから業務アプリを構築する選択肢です。Excelの数式やマクロに独自の業務ロジックが積み重なっていて、他の仕組みに寄せにくい場合に選ばれやすい方向性です。開発の自由度は高い一方、要件定義から設計、実装までの工程を一通り踏む必要があります。

(B) ローコード/ノーコード基盤への置き換え

kintoneやPower Appsのように、画面や項目をノーコード・ローコードで組み立てられる基盤に置き換える選択肢です。MicrosoftはPower AppsでExcelデータを扱う方法として、ExcelファイルをアップロードしてDataverseのテーブルに変換する方法、クラウド上に保存したExcelファイルへ接続する方法、白紙のアプリにExcelデータを追加する方法の3つを公式に案内しています*6。入力・照会が中心で、ロジックが比較的単純な台帳や進捗管理であれば、ローコード基盤への置き換えで対応できる範囲が広がります。

(C) パッケージ/SaaS導入

在庫管理や勤怠管理のように、業界標準に近い業務であれば、独自開発ではなく既存のパッケージソフトやSaaSに置き換える方法も検討に値します。自社の運用をパッケージ側の標準機能に合わせる調整が必要になりますが、開発工数そのものを抑えられる可能性があります。

選択肢 向いているケース 検討すべき点
(A) スクラッチのWeb業務アプリ 業務ロジックが独自で複雑、他システムに寄せにくい 要件定義からの工程が必要、開発規模の見積り
(B) ローコード/ノーコード 入力・照会が中心で、ロジックが比較的単純 データ型の互換性、Excel特有の数式の再現範囲*6
(C) パッケージ/SaaS 業界標準に近い業務(在庫・勤怠など) 自社フローとパッケージ標準機能の差分調整

システム化を進める4つのステップ——棚卸しから段階移行まで

共同作業のイメージ

Excel業務のシステム化は、いきなり作り直しに着手するのではなく、実態把握から始める段取りが実務的です。ここでは4つのステップに分けて整理します。

ステップ1:棚卸し。社内に存在するExcelファイルを部門横断で洗い出し、利用頻度・利用人数・保存場所を確認します。台帳やマクロが埋め込まれたファイルが、想定より多く見つかることも珍しくありません。

ステップ2:要件の可視化。Excelシートの列構成、数式、VBAマクロの処理内容を解析し、業務担当者へのヒアリングを重ねて要件を書き出します。仕様書が存在しない前提での作業になるため、シートの構造を読み解く作業と現場ヒアリングを組み合わせる進め方が求められます。

ステップ3:優先度付け。利用頻度が高く業務への影響が大きいExcelファイル、あるいは行数や容量の上限に近づいているファイルを優先的に扱います。Excelの1シートあたりの上限は1,048,576行×16,384列、1セルあたりの文字数は32,767文字と公式に定められており*1、この上限に近づいている運用は優先度を上げて検討する対象になります。

ステップ4:段階的移行。優先度の高い業務から小さい範囲で移行を試し、既存のExcel運用と並行させながら検証を進めます。一括での切り替えは、現場の混乱や業務停止のリスクを伴うため、範囲を絞った段階移行が現実的です。

外注時に確認すべきポイント——仕様書がないExcelから要件を起こす

Excel業務のシステム化を外部に委託する場合、通常のシステム開発とは異なる難しさがあります。まず、要件定義の出発点になる仕様書が存在しないケースが大半です。委託先がExcelシートやVBAマクロを解析しながら要件を再構築できるか、現場担当者へのヒアリングを丁寧に重ねられるかが、選定の分かれ目になります。

次に重要なのが、移行期間中の運用継続です。台帳や進捗管理は日々の業務で使われているため、開発期間中もExcel側の運用を止めずに並行させる必要があります。新旧のデータをどう同期させるか、切り替えのタイミングをどう決めるかを、委託先とあらかじめすり合わせておくことが欠かせません。

また、移行先が(A)スクラッチのWeb業務アプリ、(B)ローコード/ノーコード基盤、(C)パッケージ/SaaSのいずれになるかによって、必要な体制や工数の見積り方も変わってきます。複数の選択肢を比較検討できる委託先であれば、自社の業務規模や予算に合わせた提案を受けやすくなります。

。移行対象のExcelファイル数やVBAマクロの複雑さによって、必要な工数は変わってきます。現状のExcel運用を診断したうえで、移行先の選定と進め方を検討することが実務的です。

まとめ:脱Excelのシステム化で押さえる3つの視点

本稿では脱Excel、業務のシステム化について、公式情報と調査データをもとに整理しました。第一に、Excelの共同編集機能はOneDriveやSharePoint Online上での運用とAutoSaveの有効化を前提としており、従来型の共有フォルダ運用や共有ブック機能には数多くの制限が残ります*2*3。第二に、VBAマクロは現場で広く使われている一方、知識が特定の担当者に集中しやすく、内部統制上の課題にもつながります*8。第三に、移行先はスクラッチのWeb業務アプリ・ローコード/ノーコード基盤・パッケージ/SaaSの3方向があり、棚卸しと要件の可視化を経て段階的に移行を進める進め方が実務に合っています。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)としてシステムの保守・運用を受託しています。Excel台帳の棚卸しや要件の可視化から、移行先の選定、段階的な移行まで一貫して対応する体制を整えています。仕様書がない状態からでも現状のExcel運用を診断し、移行の進め方をご相談いただけます。

よくある質問

Excelでの管理を続けていても大きな支障は出ていません。それでもシステム化を検討する必要がありますか。

目立った不具合が出ていない状態でも、ファイルの版数が増え続けている、マクロを扱える担当者が限られている、といった状態は将来の負荷につながります。共有ブック機能には数多くの制限があり*3、マクロの知識は特定の担当者に集中しやすいという調査結果もあります*8。担当者の異動や退職が発生する前に、現状のExcel運用を棚卸ししておくことをおすすめします。

Excelファイルの共同編集がうまく機能しません。原因は何が考えられますか。

リアルタイムの共同編集機能は、ファイルをOneDriveやSharePoint Onlineに保存し、AutoSaveを有効にしていることが前提です*2。ローカルのドライブや従来型のファイルサーバー上の共有フォルダでは、この機能は動作しません*2。共有ブックという古い機能を使っている場合は、テーブルやマクロなど多数の操作が制限されている点も原因になります*3

VBAマクロを作った担当者が退職・異動してしまいました。何から始めればよいですか。

まずは対象ファイルの棚卸しから始め、マクロのコードとシートの数式を解析しながら、業務担当者へのヒアリングを重ねて要件を再構築します。マクロ知識が特定の担当者に集中している状態は珍しくないため*8、コード解析と現場ヒアリングを組み合わせた進め方が実務的です。

システム化の移行先はどう選べばよいですか。

業務ロジックが独自で複雑な場合はスクラッチのWeb業務アプリ、入力・照会が中心の単純な業務であればローコード/ノーコード基盤、在庫管理や勤怠管理のように業界標準に近い業務であればパッケージ/SaaSが選択肢になります。Power AppsのようにExcelデータを直接取り込める基盤も公式に提供されています*6。自社の業務内容と利用人数を踏まえて、複数の選択肢を比較することをおすすめします。

Excel業務のシステム化を外注する場合、何を確認すればよいですか。

仕様書がない状態からシート解析と業務ヒアリングで要件を再構築できるか、対象ファイルの棚卸しから対応できるか、移行期間中もExcel側の運用を止めずに並行できるスケジュールを組めるかを確認します。移行先がWeb業務アプリ・ローコード・パッケージ/SaaSのいずれになるかによっても、必要な体制は変わってきます。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:Microsoft「Excel specifications and limits」(Microsoft Support)(https://support.microsoft.com/en-us/office/excel-specifications-and-limits-1672b34d-7043-467e-8e27-269d656771c3
  2. *2 出典:Microsoft「Collaborate on Excel workbooks at the same time with co-authoring」(Microsoft Support)(https://support.microsoft.com/en-us/office/collaborate-on-excel-workbooks-at-the-same-time-with-co-authoring-7152aa8b-b791-414c-a3bb-3024e46fb104
  3. *3 出典:Microsoft「About the shared workbook feature」(Microsoft Support)(https://support.microsoft.com/en-us/office/about-the-shared-workbook-feature-49b833c0-873b-48d8-8bf2-c1c59a628534
  4. *4 出典:Microsoft「Best practices for coauthoring in Excel」(Microsoft Support)(https://support.microsoft.com/en-us/office/best-practices-for-coauthoring-in-excel-7564b417-977b-48f1-aa31-98a95bad4dc7
  5. *5 出典:Microsoft「Change macro security settings in Excel」(Microsoft Support)(https://support.microsoft.com/en-us/excel/change-macro-security-settings-in-excel
  6. *6 出典:Microsoft「Excel データに基づいてキャンバス アプリを作成する」(Power Apps、Microsoft Learn)(https://learn.microsoft.com/ja-jp/power-apps/maker/canvas-apps/get-started-create-from-blank
  7. *7 出典:株式会社帝国データバンク「顧客管理実態に関するアンケート」(2020年7月)(https://www.tdb.co.jp/report/biz-knowledge/8f928tr_hqhg/
  8. *8 出典:キーマンズネット「マクロ地獄、属人化を覚悟しても『使うしかない』Excel利用現場の課題【2025年調査】」(調査期間2025年6月13日〜25日、有効回答330件)(https://kn.itmedia.co.jp/kn/articles/2507/03/news048.html


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