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説明可能AI(XAI)とは|判断根拠を示す仕組み
AIが「この申込は承認できません」と判断した。けれど、なぜそうなったのかを問われても、うまく答えられない——。AIを業務の判断に使い始めると、こうした場面に出会います。結果は返ってくるのに、その理由が見えない。これは「ブラックボックス問題」と呼ばれ、とくに人の不利益に関わる判断では、見過ごせない課題です。この課題に応えようとする考え方が、「説明可能AI(XAI)」です。
名前は難しそうですが、めざすところは「なぜその判断に至ったのかを、人が納得できる形で示す」という、シンプルなものです。本記事では、AIの業務活用を検討する情報システム部門や事業部門の担当者に向けて、説明可能AIとは何か、どんなやり方があるのか、なぜ求められるのか、そして外注の勘所を整理します。
目次
説明可能AI(XAI)とは——ブラックボックスを開く
説明可能AI(XAI、Explainable AI)とは、AIが出した結果について「なぜそうなったのか」を、人が理解できる形で示せるようにする取り組みを指します。高い精度をもつAIほど、内部の仕組みは複雑になりがちで、結果だけがぽんと出てくる「ブラックボックス」になりやすい傾向があります。入力を与えれば答えは返る。けれど、その答えに至った道筋は見えない——この状態に、説明という光を当てようとするのがXAIです。
たとえば、融資の可否をAIが判断したとしましょう。ブラックボックスのままなら、「承認できません」という結果しか分かりません。一方、説明可能な形にしておけば、「過去の延滞の履歴が結果に大きく影響した」といった、判断を左右した要素を添えて示せるのです。理由が見えれば、担当者は結果を確かめられますし、利用者にも説明できます。おかしな判断に気づいて直す手がかりにもなるでしょう。XAIは、AIを「納得して任せられる相手」にするための、土台の一つといえます。
この記事のポイント
- 説明可能AI(XAI)は、AIの結果について「なぜそうなったか」を人に理解できる形で示す取り組みです。
- 要素の寄与度を示す、効いた箇所を可視化する、似た例で説明する、といったやり方があります。
- 与信・医療・人事など、判断の理由が問われる場面ほど、説明可能性の重みは増します。
説明の主なやり方
「なぜその判断か」を示すといっても、やり方は一つではありません。代表的な考え方を整理しました。全体像は次の図をご覧ください。
一つ目は、判断に効いた要素の「寄与度」を示すやり方です。たとえば融資の判断なら、「延滞の履歴が結果を大きく押し下げ、勤続年数はやや押し上げた」というように、どの項目がどの向きに効いたかを見せます。数ある入力のうち、何が結果を左右したのかが分かる形です。二つ目は、AIが「どこを見て」判断したかを可視化するやり方です。画像であれば注目した部位を、文章であれば手がかりにした箇所を浮かび上がらせます。三つ目は、似た事例を引き合いに説明するやり方です。「この申込に近い過去の例では、こういう結果だった」と、身近な比較で理由を伝えます。どれも万能ではなく、扱うAIやデータ、伝える相手に合わせて選ぶことになります。
| やり方 | 示すもの | 向く場面 |
|---|---|---|
| 寄与度を示す | どの項目が結果を押したか | 数値・項目で判断する処理 |
| 効いた箇所の可視化 | 画像・文章のどこを見たか | 画像診断や文章の判定 |
| 似た例で説明 | 近い事例との比較 | 直感的に伝えたいとき |
なぜ説明可能性が求められるのか
そもそも、なぜAIの判断に説明が要るのでしょうか。理由は一つではなく、いくつかの事情が重なっています。まず、説明責任を果たすためです。人の採否や与信のように、判断が誰かの不利益につながりうる場面では、「なぜその結論なのか」を示せることが欠かせません。理由を示せないまま重い判断を下すのは、業務として通りにくいものです。
次に、規制やルールに応えるためです。分野によっては、AIの判断について説明できることが、法令やガイドラインで求められつつあります。とくに与信のスコアリングのように、公平性や説明責任が強く問われる領域では、この観点が欠かせません。三つ目は、利用者の信頼を得るためです。理由の見えない判断は、受け手に不信を抱かせがちです。根拠が添えられていれば、納得して受け入れてもらいやすくなります。そして四つ目が、改善の手がかりとしての役割です。判断の理由が見えれば、AIがおかしな見方をしていないかを点検でき、精度を高める糸口になります。医療画像の診断支援のように、人が最終判断を担う現場でも、根拠が示されるほど確認はしやすくなるでしょう。
ハルシネーションとの違い
説明可能AIは、生成AIの「ハルシネーション」と混同されることがあります。どちらもAIの信頼性に関わる話ですが、指すものは違うのです。整理しておきましょう。
説明可能性は、「なぜその答えに至ったのか」という判断の道筋を示せるかどうかの話です。一方、ハルシネーションは、もっともらしく見えて事実として誤っている出力が生じる現象を指します。前者は「理由が見えるか」、後者は「内容が正しいか」——着目している点がそもそも異なるのです。ここで注意したいのは、説明可能性を高めても、事実の誤りが消えるわけではないという点です。判断の根拠がきれいに示されても、その判断自体が誤っていることはあり得ます。逆に、正しい答えでも理由が見えないこともあります。両者は補い合うものであり、どちらか一方だけでAIの信頼性が担保されるわけではない、と捉えておくのが現実的です。
つまずきやすい難所
説明可能AIには、あらかじめ想定しておきたい難所があります。踏まえておくと、過度な期待や誤解を避けやすくなります。
一つ目は、「説明」と「正しさ」を取り違えることです。前述のとおり、根拠が示されても判断が正しいとはかぎりません。説明はあくまで理由を見せるものであり、結果の妥当性は別に確かめる必要があります。二つ目は、精度と説明のしやすさが、ときに釣り合わない点です。複雑で高精度なAIほど中身は見えにくく、分かりやすく説明しようとすると、どこかを簡略化することになります。示された説明は「おおよその理由」であって、内部のすべてを写したものではない、と踏まえておきましょう。三つ目は、説明を出せば十分だと考えてしまうことです。大切なのは、その説明を人が読み解き、判断に生かせることです。専門的すぎる説明は、かえって伝わりません。誰に、何のために示すのかを見据える必要があります。四つ目は、説明そのものを過信することです。説明もまたAIが生み出すもので、完璧ではありません。うのみにせず、他の情報とあわせて確かめる姿勢が求められます。
外注時に確認しておきたい点
AIの業務活用を外部に委託する場合は、説明可能性について次の点をすり合わせておくと、認識のずれを防ぎやすくなります。まず、そもそも説明可能性がどの程度要る用途なのか、という見極めです。人の不利益に関わる判断や、規制のある領域では重みが増しますが、社内の下書き作成のような場面では、そこまで厳密でなくてよいこともあります。用途に照らして、必要な水準を一緒に定めておきたいところです。
次に、どんな形で、誰に向けて説明を示すのかです。現場の担当者向けなのか、利用者向けなのか、監査に備えるためなのかで、ふさわしい見せ方は変わります。示し方まで含めて設計してもらえると、実務で生きる説明になるはずです。あわせて、説明可能性だけでは解決しない点も押さえておきましょう。根拠が示されても、判断の正しさや、事実の誤りは別に確かめる必要があります。人による確認をどこに挟むかまで含めて相談できると、任せたあとのつまずきを抑えやすくなるでしょう。
まとめ:説明可能AIで押さえる3つの視点
説明可能AIは、AIを業務の判断に納得して使ううえで欠かせない考え方です。押さえておきたい視点は3つに整理できます。第一に、説明可能AIは「なぜその判断に至ったか」を人が理解できる形で示す取り組みであり、要素の寄与度、効いた箇所の可視化、似た例での説明といったやり方があること。第二に、与信・医療・人事など判断の理由が問われる場面ほど、説明責任や規制、信頼の観点から重みが増すこと。第三に、説明可能性は「理由が見えるか」の話で、事実の誤りを防ぐハルシネーション対策とは別ものであり、両者を補い合わせる必要があることです。この3点を踏まえておけば、AIの判断を「使ってよいのか」という不安に向き合いやすくなります。設計や水準の見極めに迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
説明可能AIにすれば、AIの判断は正しくなりますか。
正しくなるわけではありません。説明可能性は「なぜその判断に至ったか」の理由を見せる取り組みであって、判断の正しさを保証するものではないのです。根拠がきれいに示されても、その判断自体が誤っていることはあり得ます。結果の妥当性は、説明とは別に確かめる姿勢が欠かせません。
説明可能AIと、ハルシネーション対策は同じですか。
別ものです。説明可能性は「理由が見えるか」、ハルシネーション対策は「内容が正しいか」に着目しており、そもそも見ている点が異なるのです。理由が示されても事実の誤りは残り得ますし、正しい答えでも理由が見えないこともあります。両者は補い合うもので、片方だけでは信頼性を担保しきれません。
どんな業務で説明可能性が重視されますか。
人の不利益に関わる判断や、規制のある領域で重みが増します。与信、採用、医療といった、判断の理由が問われやすい場面が代表的です。一方、社内の下書き作成のように、結果を人が見直す前提の用途では、そこまで厳密でなくてよいこともあります。用途に照らして必要な水準を見極めることが大切です。
説明の内容は、そのまま信じてよいですか。
うのみにするのは避けたほうがよいでしょう。説明もまたAIが生み出すもので、内部のすべてを写しとったものではなく、おおよその理由にとどまります。分かりやすくするために簡略化されている面もあるのです。あくまで判断の手がかりの一つと捉え、他の情報とあわせて確かめる姿勢が求められます。
高精度なAIほど、説明はしやすくなりますか。
むしろ逆のことが多いといえます。高い精度をもつAIほど内部は複雑になりがちで、そのぶん中身は見えにくくなるのです。分かりやすく説明しようとすると、どこかを簡略化することになります。精度と説明のしやすさは、ときに釣り合わない関係にある、と踏まえておくとよいでしょう。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
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- *1 参考:IBM「What is explainable AI (XAI)?」(https://www.ibm.com/think/topics/explainable-ai)。説明可能AIの一般的な解説の参考として。