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外部人材活用と上場準備の税制|社外エンジニアへの報い方
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 社外高度人材は、社内の役員や従業者ではなく、省令の要件に当たる高度な知識や技能を持つ人です。
- 要件は9つの号に分かれ、資格や学位で当たる号と、開発などの実務の年数で当たる号があります。
- 開発の経歴で当たる第7号は、前の勤め先が上場していたかどうかで、売上高などの条件が変わります。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
上場の準備を進めるなかで、開発を手伝ってくれている社外のエンジニアにも、新株予約権(ストックオプション)で報いたい。けれど、社員ではない人に渡しても税制の優遇を受けられるのか——。上場準備の段階にある会社では、こうした相談が出ることがあります。租税特別措置法の第29条の2は、新株予約権を行使して株式を得たときの利益を非課税などとする条文で、その対象に、国の認定を受けた計画に従って新株予約権を与えられる社外高度人材を挙げています。*3 社外高度人材とは、中小企業等経営強化法が定める、社内の役員や従業者ではなく、新しい事業に役立つ高度な知識や技能を持つ人として省令の要件に当たる人のことです。
この枠組みは、社外の人の力を借りる外部人材活用の選択肢の一つになります。ただし万能ではなく、社外の人なら誰でも当たるわけではありませんし、会社の側にも設立からの年数などの条件があります。本記事では、上場準備を進める会社の経営者や管理部門の担当者に向けて、法律の定め方、会社の側の条件、要件を定める9つの号(条文の中で番号を振った項目)、開発の経歴で当たる号の中身、そして社外の人に声をかける前に確認したい点を整理します。
目次
社外高度人材とは
社外高度人材という語は、中小企業等経営強化法の第2条第8項で定義されています。条文の文言は「当該新規中小企業者等の役員及び使用人その他の従業者以外の者であつて、新事業活動に有用な高度な知識又は技能を有する者として経済産業省令で定める要件に該当する者」です。*1
人の側の条件は2つに分けられます。一つは、その会社の役員や使用人といった社内の人ではないことです。もう一つは、高度な知識や技能を持つ人として、経済産業省令が定める要件に当たることです。そのため、すでに雇っているエンジニアは対象外です。
法律が決めているのは社外高度人材のおおまかな形までで、どんな経歴や資格があれば当たるのかという細かい要件は、経済産業省令に任されています。この省令が中小企業等経営強化法施行規則です。上場準備の実務で確かめる順番は、まず法律で会社の側の条件、次に施行規則で、声をかけたい人がどの要件に当たりそうかです。
どんな会社が使えるのか
この枠組みは、会社が計画を作って国の認定を受ける形で使います。認定を受けられるのは、法律が新規中小企業者等と呼ぶ者で、事業の開始または設立から五年未満の個人や会社がこれに当たります。五年以上十年未満の会社も入りますが、その場合は、情報処理に関する高度な知識や技能を使う業務に就く従業員の割合が、省令で定める割合を超えていることが条件です。*1
会社の側には、もう一つ条件があります。投資と指導を受けていることです。相手は、投資と指導を仕事にする者として省令の要件に当たる者に限られます。*1 法律はこの条件を、社外高度人材の定義と同じ第2条第8項に置いています。社外の人に声をかけただけでは、この制度は使えません。会社が若いことと、投資と指導を受ける相手がいることが前提になります。
上場準備に入った会社は、設立から年数がたっていることも少なくありません。設立から五年を過ぎている場合は、情報処理の業務に就く従業員の割合の条件を満たしているかを、社外の人に話を持ちかける前に確かめておくと進めやすくなります。
要件を定める9つの号
社外高度人材の要件は、中小企業等経営強化法施行規則の第4条にあります。要件は第1号から第9号までの9つの号に分かれており、そのいずれかに当たれば足ります。*2 号ごとの中身を短くまとめると、次の表のようになります。
| 号 | 何によって当たるか |
|---|---|
| 1 | 我が国の国家資格を有すること |
| 2 | 博士の学位を有すること |
| 3 | 高度専門職の在留資格をもって在留していること |
| 4 | 大学において教授又は准教授の職にあること |
| 5 | 上場会社等又は投資及び指導を受ける会社の役員又は重要な使用人(会社法にいう支配人その他の重要な使用人)として一年以上の実務経験があること |
| 6 | 国又は国から委託を受けた機関の先端的な人材育成事業に選定され従事していたこと |
| 7 | 製品又は役務の開発に二年以上従事し、勤め先が十年間継続して上場会社等かどうかで分かれる、売上高などの条件を満たすこと |
| 8 | 製品又は役務の販売又は提供に二年以上従事し、勤め先が十年間継続して上場会社等でない場合は、売上高の条件を満たすこと |
| 9 | 資金調達に二年以上従事し、勤め先が十年間継続して上場会社等でない場合は資本金等の額が百分の百以上増えて一千万円以上であること |
9つの号は、3つのまとまりに分けられます。第1号から第4号は、国家資格、博士の学位、高度専門職の在留資格、大学の教授や准教授の職という、本人がいま持っているもので当たります。第5号と第6号は、役員などとしての一年以上の経験や、国の人材育成事業に選ばれて従事していたことという、過去の立場で当たります。
第7号から第9号は、開発、販売、資金調達という実務に二年以上従事したことで当たります。この3つの号だけは、年数に加えて、その人が働いていた勤め先の数字を見る条件が置かれています。見る数字は、第7号が売上高と試験研究費等の額、第8号が売上高、第9号が法人税法の定める資本金等の額です。*2 第5号にも一年以上という年数はありますが、勤め先の数字を調べる条件は付いていません。
同じ社外高度人材でも、第1号から第6号は本人の資格や経歴を見れば確かめられるのに対し、第7号から第9号は前の勤め先の売上高などまで調べることになります。エンジニアに声をかける場合は、開発の経歴で当たる第7号を見ることが多くなります。
勤め先の数字を見る3つの号
第7号から第9号を読むときは、条文の語を2つ押さえておきます。一つは上場会社等で、金融商品取引所に上場されている株式などの発行者である会社を指します。もう一つは前の勤め先で、条文は当該機関と呼び、その人が契約に基づいて働いていた国内の公私の機関を指します。*2
3つの号には、計画を開始しようとする日から遡って数える十年間という期間が共通して置かれています。この十年間には2つの役割があります。一つは、二年以上の従事がこの十年間の中に入っていることです。もう一つは、前の勤め先が上場会社等だったかどうかを、この十年間で見ることです。
第8号の販売と第9号の資金調達は、数字の条件の前に、勤め先が十年間継続して上場会社等でない場合、という限定を置いています。*2 勤め先が上場会社等だった場合に何が求められるのかは、条文には書かれていません。二年以上の従事だけで足りるのかどうかは、認定を申請する前に確かめておく必要があります。
第8号の条件は2つあり、どちらかに当たれば足ります。全事業の売上高が百分の百以上増えて二十億円以上になっていること、または製品又は役務の売上高が百分の百以上増えて二億円以上になっていることです。第9号は、資本金等の額が百分の百以上増えて一千万円以上になっていることです。*2 百分の百以上増えるとは、二倍以上になることを指します。
開発の経歴で当たる号とは
第7号の開発は、ほかの2つの号と書き方が違います。勤め先が十年間継続して上場会社等だった場合はイ、そうでない場合はロと、上場していた場合の条件まで書いています。イとロは本人が選ぶものではなく、前の勤め先が上場していたかどうかで決まります。3つの号のうち、上場会社等である場合の条件まで書いているのは第7号だけです。
イは3つの条件を「かつ」でつないでおり、3つとも満たす必要があります。開発に従事していた期間の開始時点に比べて、終了時点でその製品又は役務の売上高が増えていること。開始時点ではその売上高が、勤め先の全事業の売上高の百分の一未満であること。終了時点では百分の一以上になっていることです。*2 大きな会社の中で、売上が小さかった製品を育てた経験を求める条件と言えます。
ロは上場会社等でない場合で、4つのどれかに当たれば足ります。全事業の売上高が百分の百以上増えて二十億円以上、製品又は役務の売上高が百分の百以上増えて二億円以上、全事業の試験研究費等合計額が百分の四十以上増えて二千五百万円以上、その製品又は役務の試験研究費等合計額が百分の四十以上増えて二百五十万円以上です。いずれも終了時点の額で、百分の四十以上増えるとは1.4倍以上になることを指します。*2
ロの前半の2つは第8号と同じ形です。後半の2つは売上高ではなく試験研究費等の額を見るため、売上が立つ前の製品の開発に携わっていた人でも、この条件で当たる場合があります。試験研究費等合計額に何が含まれるかは、施行令(政令)で定められています。前の勤め先の数字を本人が把握していないことも多いので、どの条件で当たりそうかを早めに本人と話しておくとよいでしょう。
つまずきやすい点
一つ目は、条文の上場会社等を自社のことだと取り違えることです。第7号から第9号でいう上場会社等は、来てもらう人の前の勤め先を指しています。上場準備という言葉と並べて読むと、自社が上場しているかどうかの話に見えがちですが、見るのは前の勤め先が十年間継続して上場していたかどうかです。
二つ目は、会社の側の条件を後回しにすることです。設立からの年数と、投資と指導を受ける相手がいるかどうかは、どの号で当たるかより先に決まる条件です。声をかけたい人の経歴を細かく調べたあとで、自社が新規中小企業者等に入らないと分かれば、それまでの確認がむだになります。
三つ目は、どの号で当たるつもりかを決めないまま話を進めることです。資格や学位で当たる号なら本人の手元で確かめられますが、第7号から第9号では前の勤め先の売上高や試験研究費等の額まで調べることになり、用意するものが大きく変わります。声をかける前に、当たりそうな号を1つか2つに絞っておくと、本人に尋ねる内容もはっきりします。
なお、自社で高める機能と社外に任せる機能をどう切り分けるかという別の論点は、記事「外部人材活用と内製化の進め方|自社で高めたい機能は3つ」で扱っています。
まとめ:社外高度人材で確かめておきたい3つの点
上場準備の段階で、社外のエンジニアを税制の優遇を受けられる新株予約権の対象にするうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、自社が設立からの年数の条件を満たし、投資と指導を受ける相手がいるかを確かめること。第二に、声をかけたい人が社内の従業者ではなく、9つの号のどれかに当たりそうかを見ること。第三に、開発などの実務の号で当たる場合は、前の勤め先が上場していたかどうかと、その勤め先の売上高などの数字を確かめることです。この3点を踏まえておけば、「話を進めたのに、あとから対象に当たらないと分かった」という事態を避けやすくなります。外部人材活用の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
第1号の国家資格とは、どんな資格ですか
施行規則の中に定義があり、法令において当該資格を有しない者は、その資格に係る業務若しくは行為を行い、又はその資格に係る名称を使用することができないこととされている資格を指します。*2 資格が無ければその仕事をしてはいけない、または肩書きを名乗ってはいけないと法令が定めている資格です。条文は個別の資格名を並べていません。
投資と指導を受ける相手には、どんな者が当たりますか
施行規則は、組合、匿名組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合、これらに類似する外国の団体、株式会社または合同会社を挙げています。*2 そのうえで、投資と指導を仕事にする者としての要件を定めています。
設立から十年を過ぎた会社でも使えますか
法律が新規中小企業者等として挙げているのは、事業の開始または設立から五年未満の者と、五年以上十年未満で情報処理の業務に就く従業員の割合の条件を満たす会社の2つです。*1 設立から十年を過ぎた会社は、この中に挙げられていません。
どの号で当たるかから相談したいときは
経歴書を前に、当たりそうな号が決まっていない段階でもご相談ください。
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出典
- *1 参考:中小企業等経営強化法(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/411AC0000000018)。出典:中小企業等経営強化法(平成十一年法律第十八号)第二条第三項、第四項および第八項。社外高度人材活用新事業分野開拓の定義、社外高度人材が当該新規中小企業者等の役員及び使用人その他の従業者以外の者であること、投資及び指導を業とする者から投資及び指導を受けること、新規中小企業者等が事業の開始または設立から五年未満の者などであること、五年以上十年未満の会社については情報処理に関する業務に従事する従業員の割合が省令の割合を超えることの一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:中小企業等経営強化法施行規則(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000400074)。出典:中小企業等経営強化法施行規則(平成十一年通商産業省令第七十四号)第三条および第四条。投資及び指導を行うことを業とする者の要件、社外高度人材の要件が第一号から第九号までの九号であること、第七号がイとロで上場会社等である場合とそうでない場合の両方に条件を置いていること、第八号と第九号が上場会社等でない場合についてだけ条件を置いていること、第七号イの三つの条件と第七号ロの四つの基準、第八号のイとロ、第九号の資本金等の額が百分の百以上増加し一千万円以上であること、第五号が会社法第三百六十二条第四項第三号の重要な使用人を引くこと、第九号が法人税法第二条第十六項の資本金等の額を引くことの一次情報として(2026年9月確認)
- *3 参考:租税特別措置法(e-Gov法令検索)(https://laws.e-gov.go.jp/law/332AC0000000026)。出典:租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)第二十九条の二。条見出しが特定の取締役等が受ける新株予約権の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等であること、その対象となる個人の中に、認定社外高度人材活用新事業分野開拓計画に従って新株予約権を与えられる社外高度人材が挙げられていることの一次情報として(2026年9月確認)