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2026.10.16 らしくコラム

FreeIPAとは?社内サーバーの認証をまとめる仕組みを解説

監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

サーバー室でラックから引き出した操作用の端末を担当者が両手で打っている

この記事の結論

  • FreeIPAは、LinuxやUNIXのサーバーの利用者と認証と権限を1か所で管理するオープンソースです。
  • Active Directoryと信頼関係を結べば、Windowsはそのまま、Linuxサーバーだけをまとめて管理できます。
  • 導入はDNSとホスト名を固めてから進め、アクセスの規則は検証してから段階的に切り替えることが大切です。

※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。

Linuxのサーバーが増えるたびに、同じ人のアカウントを1台ずつ作っている。退職した人のアカウントがどのサーバーに残っているのか、確かめようがない——。PCはActive Directoryで管理していても、Linuxのサーバーは手作業のまま、という会社では、こうした食い違いが起こりがちです。FreeIPAは、LinuxやUNIXのサーバーの利用者・認証・アクセスの権限を1か所で管理するための、オープンソースのソフトウェアです。

ログインできる人や、管理者の権限で作業できる人の範囲を、一元的に決められます。ただし万能ではなく、Active Directoryがすでにある会社では、どちらに何を任せるかの整理が要ります。本記事では、社内の認証基盤を任された情報システムの担当者に向けて、FreeIPAでできること、Active Directoryとの違い、導入の進め方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。

FreeIPAとは

FreeIPAの公式のREADMEは、このソフトウェアを、LinuxやUNIXのシステムの利用者の情報、認証、アクセスの制御を一元的に管理できるようにするもの、と説明しています。*1 広く使われているオープンソースの部品を組み合わせ、インストールと設定の手間を減らすことに力を入れている点が特徴です。

  • 中身の部品:利用者の情報を入れておくLDAPサーバー(389 Directory Server)、ログインの仕組みのKerberos(ケルベロス。一度のログインで複数のサーバーを使えるようにする認証方式)、証明書を発行するDogtag、DNS(サーバーの名前とアドレスを対応させる仕組み)など*2
  • 操作の方法:Webの画面とコマンドの両方で管理でき、ほかのシステムから呼び出す口(API)もあります
  • 冗長化:複数のFreeIPAサーバーを並べ、どのサーバーでも更新できる形でデータを複製できます
  • ライセンス:GPL(GNU General Public License)バージョン3のオープンソースです*3

入手の方法として公式サイトが勧めているのは、FedoraやRed Hat Enterprise Linux(RHEL)、Debianなど、Linuxの配布版に含まれる検証済みの版を使う方法です。*4 OSの更新と一緒に版を上げられます。

Active Directoryとの違い

Active Directory(AD)は、Windows Serverで動くディレクトリサービスです。アカウントの情報を格納し、1つのユーザー名とパスワードでネットワーク上の資源を使えるようにします。*5 FreeIPAとADは、どちらも社内のアカウントを1か所で管理する仕組みですが、得意とする相手が違います。

FreeIPAとActive Directoryの違い
項目 FreeIPA Active Directory
主な対象 LinuxやUNIXのサーバー Windows ServerとWindowsのPC
ログインの仕組み Kerberos Kerberos
まとめて決められる設定 sudo(管理者権限での作業)の規則、サーバーごとのログインの可否、SSHの公開鍵 グループポリシーで、PCと利用者の設定を配る*6
提供の形 GPLバージョン3のオープンソース Windows Serverの機能
相手との連携 ADとの間に信頼関係(トラスト)を結べる ADからは、FreeIPAのドメインが別のフォレスト(ADのドメインをまとめた最上位の単位)のように見える

FreeIPAは、Kerberosの信頼関係か利用者の情報の同期によって、ADの環境に組み込めます。信頼関係を結ぶと、LinuxのサーバーはADではなく主にFreeIPAとやり取りするため、公式サイトはこの形を「ADとの間接的な連携」と呼んでいます。*7 PCはADのまま、Linuxサーバーの権限はFreeIPAで、という分担ができます。

FreeIPAでまとめて管理できるもの

公式のREADMEが利点の最初に挙げるのは、すべての利用者が同じ資格情報と同じセキュリティ設定で、すべてのサーバーにアクセスできることです。設定を1台ずつ直す必要がなくなります。

夜の自席でモニターの一覧と紙の表を指で照らし合わせている

  • 利用者とグループ:アカウントとパスワードを1か所で作り、退職のときは1か所で止める
  • ホスト:FreeIPAに参加させたサーバーを一覧で管理し、グループに分ける
  • sudoの規則:誰が、どのサーバーで、管理者の権限で作業してよいかを決める
  • HBAC(ホストごとのアクセス制御):どの利用者が、どのサーバーにログインしてよいかを決める
  • SSHの公開鍵:鍵を使ったログインの鍵を、利用者ごとに登録する
  • 証明書:内蔵の認証局(CA)で、サーバーの証明書を発行する

気をつけたいのはHBACの初期設定です。公式の手順書によると、インストールした直後は「allow_all」という規則によって、どの利用者もどのサーバーにアクセスできる状態です。*8 この規則をいきなり止めると、いまの利用者が誰もログインできなくなります。手順書では、先に既存のサーバーを許可する規則を作り、確認用の機能で試してから切り替える流れを示しています。

導入の進め方

FreeIPAの導入では、ソフトを入れる作業よりも、対象と切り替えの順番を決める作業のほうが大切です。次の4つの段階で進めると、利用者を締め出す事故を避けやすくなります。

  • ステップ1:対象を決める(対象のサーバー、利用者、ADと連携するかどうか)
  • ステップ2:検証用の環境で試す(公式は、まず仮想マシンで試すことを勧めています)
  • ステップ3:本番のサーバーを用意する(DNSとホスト名を固め、複数台で複製する)
  • ステップ4:既存のサーバーを参加させ、アクセスの規則を段階的に切り替える

FreeIPAの導入を4つの段階で左から順に並べた流れ図。STEP1 対象を決める、STEP2 検証環境で試す、STEP3 本番サーバーを用意する、STEP4 規則を段階的に切り替える。

つまずきやすいのはステップ3です。公式のクイックスタートガイドは、正しく設定されたDNSをFreeIPAの土台と位置づけ、DNSが正しくなければKerberosや暗号化の通信が期待どおりに動かないと説明しています。*9 ホスト名も、変わると認証が壊れることがあるため固定にします。ADと連携する場合は、FreeIPAの名前の範囲をADと重ならないように決めます。

外部に頼むときに確認しておきたい点

FreeIPAはオープンソースのため、構築と運用の手間は自社で持ちます。認証の基盤は、止まると誰もサーバーに入れなくなる仕組みです。外部に頼むときは、次の点を見積もりの前に確かめておきます。

西日の入る会議室で外部の技術者と担当者が構成図をペンと指で確かめている

  • どこまで頼むか:設計、サーバーの構築、既存サーバーの参加、運用の手順書のうち、どれを任せるか
  • ADとの関係:信頼関係を結ぶか、利用者の情報を同期するか、連携しないか
  • 切り替えの手順:HBACやsudoの規則を、誰の確認で、どの順番で切り替えるか
  • 冗長化と復旧:FreeIPAサーバーを何台で複製するか。障害が起きたときにどう戻すか
  • 更新の段取り:新しい版への更新を、誰が、いつ、検証環境で確かめてから行うか

特に更新の段取りは、決めないまま運用に入りやすい点です。公式の手順書によると、更新の間サーバーは保守の状態になって要求に応えず、更新した版を元に戻すことにも対応していません。*10 社内のWebアプリへのログインをまとめる仕組みも検討している場合は、KeycloakでSSO認証基盤を外注構築も参考になります。

まとめ:FreeIPAで確かめておきたい3つの点

FreeIPAで社内の認証基盤を作るうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、対象のサーバーと利用者、Active Directoryとの連携の有無を最初に決めること。第二に、DNSとホスト名を固めて本番のサーバーを複数台で用意すること。第三に、HBACやsudoの規則は検証環境で試してから、段階的に切り替えることです。この3点を踏まえておけば、「規則を切り替えた途端に、誰もサーバーに入れなくなった」という事態を避けやすくなります。設計や移行の進め方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。

LASSICに相談するメリット

LASSICは2006年の創業以来、システムの運用・保守に特化したプライム(一次請け)のシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。Rubyアソシエーション認定システムインテグレータ、日本ニアショア開発推進機構の認定ベンダーとして、全国のリモート人材による開発・運用の体制を整えています。

FreeIPAの構築では、389 Directory Server、MIT Kerberos、Dogtagの認証局、BINDのDNSの使い方を決め、各サーバーはSSSDで参加させます。設計では、ドメインの名前をActive Directoryと重ねず、信頼関係と同期のどちらでつなぐかと複製の台数を決めます。移行では、HBACの許可の規則を先に用意して試してから切り替え、運用では更新とバックアップの手順を文書にします。

よくある質問

FreeIPAでWindowsのPCも管理できますか

FreeIPAは、LinuxやUNIXのシステムを対象にした仕組みです。WindowsのPCはActive Directoryで管理し、FreeIPAとの間に信頼関係を結んで、Active Directoryの利用者がLinuxのサーバーを使えるようにする形が公式に案内されています。

どのLinuxでFreeIPAのサーバーを動かせますか

公式のクイックスタートガイドは、対応するプラットフォームとしてFedoraとRed Hat Enterprise Linuxを挙げています。*9 Debianなどにもパッケージがあるため、社内で標準にしているLinuxと、その更新の方針に合わせて選ぶとよいでしょう。

本番の前に手軽に試す方法はありますか

公式サイトには、最新の画面を触れる公開のデモ環境があり、コンテナで手早く試す方法も案内されています。社内の設定を試すなら、使い終わったら片づけられる仮想マシンが手軽です。

Linuxサーバーの認証基盤づくりのご相談

FreeIPAによる認証基盤の設計と構築から、Active Directoryとの連携、既存サーバーの移行と運用まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。

2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。

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出典

  1. *1 参考:FreeIPA(GitHub)「README.md」(https://github.com/freeipa/freeipa)。出典:LinuxやUNIXのシステムの利用者の情報・認証・アクセス制御の一元管理、利点(同じ資格情報ですべてのマシンにアクセス、パスワード・SSH公開鍵・sudoの規則・アクセス制御の規則の一元管理)、Kerberosの信頼関係または利用者の同期によるADとの連携の記述を参照(2026年10月確認)
  2. *2 参考:FreeIPA公式サイト(トップページ・About)(https://www.freeipa.org/page/About)。出典:389 Directory Server、MIT Kerberos、Dogtag、DNSなどの構成部品、Web画面とコマンドとAPIによる管理、マルチマスターの複製の記述を参照(2026年10月確認)
  3. *3 参考:FreeIPA(GitHub)「COPYING」(https://github.com/freeipa/freeipa/blob/master/COPYING)。出典:ライセンス(GNU General Public License Version 3)を参照(2026年10月確認)
  4. *4 参考:FreeIPA公式サイト「Downloads」(https://www.freeipa.org/page/Downloads)。出典:Linuxの配布版に含まれる検証済みの版を使う方法を勧める記述、Fedora・RHEL・CentOS・Debianのパッケージの案内を参照(2026年10月確認)
  5. *5 参考:Microsoft Learn「Active Directory Domain Services の概要」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-server/identity/ad-ds/get-started/virtual-dc/active-directory-domain-services-overview)。出典:アカウント情報の格納と、1つのユーザー名とパスワードによるネットワーク上の資源へのアクセスの記述を参照。ADのKerberos認証は「Windows Server での Kerberos 認証の概要」も参照(2026年10月確認)
  6. *6 参考:Microsoft Learn「Windows Serverのグループ ポリシーの概要」(https://learn.microsoft.com/ja-jp/windows-server/identity/ad-ds/manage/group-policy/group-policy-overview)。出典:グループポリシーによるユーザーとコンピューターの設定の一元管理の記述を参照(2026年10月確認)
  7. *7 参考:FreeIPA公式サイト「Trusts」(https://www.freeipa.org/page/Trusts)。出典:ADとの間接的な連携、ADからはIPAのドメインが別のフォレストに見えること、ADフォレストとDNSの範囲を重ねないことの記述を参照(2026年10月確認)
  8. *8 参考:FreeIPA公式サイト「HBAC and allow_all」(https://www.freeipa.org/page/Howto/HBAC_and_allow_all)。出典:初期設定のallow_allの規則、止める前に既存サーバー向けの規則を作る手順、規則を試す確認用の機能の記述を参照(2026年10月確認)
  9. *9 参考:FreeIPA公式サイト「Quick Start Guide」(https://www.freeipa.org/page/Quick_Start_Guide)。出典:対応するプラットフォーム(Fedora・RHEL)、まず仮想マシンで試すことの推奨、固定のホスト名とDNSの設定の重要性、公開デモとコンテナでの試用の記述を参照(2026年10月確認)
  10. *10 参考:FreeIPA公式サイト「Upgrade」(https://www.freeipa.org/page/Upgrade)。出典:更新中はサーバーが保守の状態で要求に応えないこと、更新後の版を元に戻すことに対応していないことの記述を参照(2026年10月確認)




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