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工程管理システムの選び方|実績の記録と進捗の見える化の基本
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 工程管理システムは、工程ごとの着手・完了・数量を記録し、製造現場の進み具合を画面で見えるようにする仕組みです。
- 計画を組む生産スケジューラとは役割が違い、自社が困っているのが実績の把握かどうかで選びます。
- 実績は人の入力と設備からの自動取得を工程ごとに使い分け、1つのラインで試してから広げます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
いまどの工程まで進んでいるのか、現場に電話しないと分からない。日報は紙で集めているが、集計が終わるころには翌週になっている——。製造業の工場では、こうした進み具合の見えにくさが起こりがちです。工程管理システムは、製造現場の各工程で、いつ着手し、いつ終わり、何個できたかという実績を記録し、進み具合を画面で見えるようにする仕組みです。
実績が1か所に集まるため、遅れに早く気づけます。ただし万能ではなく、日々の生産計画そのものを組む役割は、生産スケジューラなどの別の仕組みが受け持ちます。本記事では、工場の情報システム担当者や生産管理の担当者に向けて、工程管理システムの役割、似た仕組みとの違い、実績データの集め方と選び方、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
目次
工程管理システムとは
工程管理システムが受け持つのは、計画どおりに作れているかを、現場の実績から確かめる部分です。IPA(情報処理推進機構)の中小製造業向けのガイドは、製造分野のDXを「製造装置や製造工程の監視・制御(OT)などのデジタル化を軸に」進めるものと定義しています。*1 工程ごとの実績を記録することは、このデジタル化のなかでも身近に始めやすい取り組みです。

- 着手と完了の時刻:どの製品(ロット)が、どの工程で、いつ始まりいつ終わったか
- 数量:できた数と、不良になった数
- 作業者と設備:誰が、どの設備で作業したか
- 進み具合の表示:計画より遅れている工程や、止まっている設備を画面で知らせる
- 集計:日ごと・工程ごとの実績を、日報や会議の資料にまとめる
記録した実績は、班長が当日の遅れを見つけるほか、営業担当が納期の問い合わせに答えるときにも使えます。誰が、どの画面で、何を確かめたいのかを先に決めておくと、記録する項目を絞り込めます。
生産スケジューラや生産管理との違い
名前の似た仕組みに、生産スケジューラと生産管理システムがあります。米国の国立標準技術研究所(NIST)の報告書は、企業の基幹システムと現場の制御をつなぐ参照モデルとしてISA-95を挙げ、その間の層にあたる製造オペレーション管理(MOM)を、工場の操業を管理するアプリケーションと説明しています。*3 工程管理システムは、この現場に近い層で働く仕組みです。
| 仕組み | 主な役割 | 向いている悩み |
|---|---|---|
| 工程管理システム | 工程ごとの実績を記録し、進み具合を画面で見せる | いまどこまで進んだかが分からない |
| 生産スケジューラ | 設備や人の空きを見て、作る順番と日時の計画を組む | 計画づくりに時間がかかる |
| 生産管理システム | 受注から資材の手配、在庫、出荷までをまとめて管理する | 部門ごとに情報がばらばらになっている |
| Excelと紙の日報 | すぐに始められ、項目を自由に変えられる | 工程が少なく、記録する人が限られている |
実際の製品では、生産管理システムやMES(製造実行システム)の一機能として工程管理が入っていることも多く、名前だけでは区別できません。選ぶときは「計画を組む」「実績を集める」「会社全体の受注や在庫を管理する」のどれに困っているかで考えると整理しやすくなります。生産管理システム全体を作る場合の進め方は生産管理システムの開発を外注する進め方で扱っています。
実績データの集め方
工程管理システムの使い勝手は、実績をどう集めるかで大きく変わります。IPAのガイドは、製造用の機器にはネットワークにつなぐ口が無いもの、RS232C(古くからある通信の口)でパソコンとつなぐもの、PLC(設備を制御する装置)を通してつなぐもの、直接ネットワークにつなげるものがあり、それぞれに合ったつなぎ方を考える必要があるとしています。*1
- 人が入力する:タブレットや現場のパソコンで、着手と完了のボタンを押す。バーコードを読み取れば品番の入力を省けます
- 設備から取る:PLCやネットワークにつながる設備から、動いている時間や生産数を自動で集める
- センサーを後から付ける:設備の口から取れないデータは、センサーを付けて無線(Wi-Fiなど)で集める方法がよく使われています*1
- カメラで読み取る:設備の表示灯をカメラで写し、色を判定してデータに変える例も、ガイドに挙げられています*2
どこから自動にするかは、工程の性質で決めます。IPAのガイドは、手作業の多い組立工程ではデータを自動で取るのは難しいとして、まず自動化されている工程でデータをリアルタイムに自動取得するほうが費用に見合うとしています。*2 手作業の工程は、入力の手間を減らす工夫から始めます。
工程管理システムの選び方
工程管理システムを選ぶときは、機能の一覧を比べる前に、自社の現場で記録が続くかどうかを確かめます。比べるときの基準は次の5つです。
- 現場で入力が続くか:手袋をしたまま押せるか、1回の記録にかかる手間はどれくらいか
- 設備とつながるか:自社の設備のつなぎ方(PLC経由・ネットワーク直結など)に合わせてデータを取れるか
- 見る人に合った画面か:班長・管理者・営業など、見る人ごとに必要な表示があるか
- 他の仕組みとつながるか:生産管理システムや生産スケジューラと、品目や工程の情報をやり取りできるか
- 形態と費用:クラウドか自社のサーバーか。月額の費用と、更新や保守を誰が受け持つか
導入は一度に全工程へ広げず、1つのラインから始めると失敗を小さくできます。IPAのガイドは、DXの最初のステップを「業務などの見える化のためのデータ選択とその収集」としています。*2 まず記録を続けられる形を作り、紙の日報と数を突き合わせてから対象を広げる流れが進めやすいでしょう。
外部に頼むときに確認しておきたい点
工程管理システムは、製品を入れるだけで終わらず、現場の入力画面や設備とのつなぎ込みに手を加えることが多い仕組みです。構築や連携を外部に頼むときは、見積もりの前に次の点を確かめておきます。

- どこまで頼むか:製品の選定、入力画面の作り込み、設備との接続、既存の仕組みとの連携のうち、どれを任せるか
- 現場での検証:試行のラインで、紙の日報とシステムの数がそろうかを誰がどう確かめるか
- 設備側の作業:PLCの設定変更やセンサーの取り付けを、設備の保守会社とどう分担するか
- 一覧表の持ち主:品目・工程・設備の一覧を誰が更新するか。生産管理システムとどちらを正とするか
- 運用後の見直し:入力の漏れや画面の使われ方を見て、項目や表示を直す場を設けるか
とくに設備側の作業は、情報システム部門と設備の担当、外部の会社の間で抜けが出やすい点です。製造現場のシステム全体の考え方はMES(製造実行システム)開発の外注の進め方にまとめています。
まとめ:工程管理システムで確かめておきたい3つの点
工程管理システムを選ぶうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、自社が困っているのが実績の記録と進み具合の把握なのかを見極めること。第二に、工程ごとに、人の入力と設備からの自動取得のどちらで実績を集めるかを決めること。第三に、1つのラインで試し、紙の日報と数を突き合わせてから広げることです。この3点を踏まえておけば、「入れてはみたが、現場が入力しなくなってホワイトボードに戻った」という事態を避けやすくなります。設備とのつなぎ込みや既存の仕組みとの連携に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
工程管理システムはExcelで自作できますか
工程の数が少なく、記録する人が限られていれば、Excelの表でも始められます。IPAのガイドも、集めたデータの分析は表計算で十分な場合があるとしています。*2 ただし、複数の人が同時に入力したり、設備のデータを自動で取り込んだりする段階では、専用の仕組みを考える時期です。
生産スケジューラと一緒に入れる必要がありますか
必ずしも一緒に入れる必要はありません。計画を表計算や生産管理システムで立てている会社でも、実績の記録と見える化だけを先に始められます。計画の組み直しに時間がかかっている場合は、工程管理システムで集めた実績を生産スケジューラに渡せるかを確かめておくと、あとからつなげやすくなります。
現場の作業者が入力してくれるか不安です
協力してくれる人や工程から始める進め方があります。IPAのガイドは、経験の長い職人がデジタル化に抵抗する場合の事例として、まず若手だけを対象にデジタルデータによる見える化を進める方法を挙げています。*2 あわせて、入力した結果を朝礼などで現場に返し、自分たちの作業の見直しに使える形にしておくことも大切です。
工程管理システムの導入と構築のご相談
工程管理システムの選定から、現場での実績入力の仕組みづくり、設備や生産管理システムとの連携まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「中小規模製造業者の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進のためのガイド 製造分野DXの理解」(https://www.ipa.go.jp/digital/dx/mfg-dx/ug65p90000001kqv-att/000093470.pdf)。出典:製造分野のDXの定義、製造用機器のネットワーク接続のタイプとセンサーを後付けして無線でデータを取る手段の記述を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「マンガでわかる製造分野DX FAQ編」(https://www.ipa.go.jp/digital/dx/mfg-dx/ps6vr70000009jrr-att/000093474.pdf)。出典:DXの最初の一歩としてのデータ収集(表示灯をカメラで読み取る例)、見える化のためのデータ選択と収集、表計算での分析、手作業の多い組立工程のデータ取得、デジタル化に抵抗する人へのアプローチの記述を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:National Institute of Standards and Technology(NIST)「Current Standards Landscape for Smart Manufacturing Systems」(NISTIR 8107)(https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/ir/2016/NIST.IR.8107.pdf)。出典:ISA-95の階層とIEC 62264、製造オペレーション管理(MOM)の説明の記述を参照(2026年10月確認)