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2026.07.17 らしくコラム

健康経営支援システム|健康経営度調査と人的資本開示に対応

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として業務システムの開発・保守を受託

健康経営のイメージ

この記事のポイント

  • 健康経営支援システムは、健康経営度調査の回答データ収集・集計、健康データの経営指標化、施策の管理と効果の可視化、人的資本開示への連携を担う仕組みです。個人の健康管理を主眼とする健康管理・ストレスチェックとは扱う領域が異なります。
  • 経済産業省の健康経営度調査は、健康経営銘柄の選定や健康経営優良法人(大規模法人部門)認定の基礎情報を得るために実施されており、回答の準備と集計が運用の起点になります。
  • 2023年施行の内閣府令改正で、有価証券報告書にサステナビリティ情報の記載欄が新設され、人的資本の指標との連携が外注設計の論点になっています。

健康経営の推進が抱える課題——調査回答と開示データが部門に分散する

ウェルビーイングのイメージ

従業員の健康管理を経営課題として捉え、施策の成果を対外的に説明する動きが広がっています。経済産業省は「健康経営」を、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することと定義しています*1。理念としては明快ですが、実務に落とし込むと担当部門をまたぐ作業が積み上がり、運用の負荷が制度設計以上に大きくなりがちです。

図
図:健康経営の推進から開示までの流れ(調査回答→データ集計→指標化→施策管理→開示・認定)

まず起点になるのが調査への回答準備です。経済産業省の健康経営度調査は、法人の健康経営の取組状況と経年での変化を把握・分析するとともに、健康経営銘柄の選定や健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定に用いる基礎情報を得るために実施されています*2。設問は多岐にわたり、回答の根拠となる数値を各部門から集めるだけでも相応の工数がかかります。

次にのしかかるのがデータの分散という問題でしょう。健診結果は産業保健の担当が、勤怠や残業時間は人事が、施策の予算は経営企画が持つといった具合に、必要なデータが部門ごとに散らばっているのが実情です。表計算やメールで数値を集めて回ると、集計が属人化し、年度ごとの比較にも手間がかかります。

さらに近年は、集めた健康データを対外的な開示につなげる要請も強まってきました。2023年に施行された内閣府令の改正では、有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設され、人的資本に関する指標の記載が求められるようになっています*4。調査対応と開示対応が別々の作業として走ると、同じ数値を二重に整えることにもなりかねません。こうした課題を一つの流れで扱うのが、健康経営支援システムの役割です。

健康経営支援システムとは——調査と人的資本開示に対応する基盤

健康経営支援システムとは、健康経営度調査の回答データ収集・集計、健診やストレスチェックといった健康データの経営指標化、健康施策の管理と効果の可視化、そして人的資本開示への連携までを一つの基盤で扱う仕組みを指します。健康経営を「推進し、開示し、認定につなげる」という一連の流れを支える点に特徴があります。

経済産業省が定義する健康経営は、健康管理を経営的な視点で捉える考え方です*1。この考え方を実務で回すには、施策の入り口である従業員の健康データと、出口である経営・開示の指標とを、同じ土台の上でつなぐ必要があります。健康経営支援システムは、その橋渡しを担う位置づけと考えると分かりやすいでしょう。

調査対応の面では、健康経営度調査の設問に対応する数値をあらかじめ整理し、回答作成の土台を用意します。健康経営度調査は経済産業省と株式会社日本経済新聞社が連携して実施しており、毎年の設問に沿って回答をまとめる作業が発生します*2。回答の根拠データをシステム側に集約しておくと、年度ごとの回答準備が繰り返しの作業として回しやすくなります。

開示対応の面では、有価証券報告書や統合報告書で用いる人的資本の指標との連携を見据えます。内閣官房・金融庁・経済産業省がまとめた人的資本可視化指針は、ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標という4つの要素に沿った開示を示しており、独自性のある指標と比較可能性のある指標を組み合わせて示す考え方を提示しています*5。健康経営の取組で得た指標を、この開示の枠組みに橋渡しできることが、システムに期待される機能の一つです。

導入形態としては、健康経営に対応したパッケージサービスを利用する形と、既存の人事・健康データ基盤に合わせて個別に構築する形があります。提携サービスの標準機能で足りるか、自社固有の指標や既存システムとの連携を重視するかで、外注に求める役割も変わってくるでしょう。どちらを軸に据えるかを最初に決めておくと、要件の輪郭が定まりやすくなります。

健康管理・ストレスチェックシステムとの違い——「推進と開示」に特化する領域

当サイトでは、健康管理システムやストレスチェックのシステムも扱ってきました。健康経営支援システムは、これらと隣り合う領域に見えて、扱う目的が明確に別物です。混同したまま要件をまとめると、必要な機能が抜け落ちる原因になります。

健康管理システムやストレスチェックは、産業保健の実務と従業員個人の健康管理を主眼とします。健診結果の記録、受診勧奨、ストレスチェックの実施と集団分析、産業医面談の管理などが中心で、扱うデータは個人の健康情報です。対して健康経営支援システムが扱うのは、そうした健康データを集約したうえで、経営指標へと変換し、調査回答や対外開示につなげる領域です。個人の健康を管理する仕組みというより、健康経営という経営活動を推進し、その成果を見える化する仕組みと位置づけられます。

両者は対立するものではなく、役割が重なりつつ接続する関係です。健康管理・ストレスチェックのシステムが持つ健康データは、健康経営支援システムにとって重要な入力になります。逆に言えば、健康経営支援システム単体では個人の健康データを一次的に生み出すわけではなく、既存の健康管理基盤との連携が前提になる場面が多いといえるでしょう。

主な違いを整理すると、次の通りです。

システム 主な目的 中心となるデータ
健康管理システム 産業保健の実務・従業員個人の健康管理 健診結果・受診状況・面談記録
ストレスチェック ストレスチェックの実施・集団分析 チェック結果・高ストレス者・集団集計
健康経営支援システム 健康経営の推進・調査対応・対外開示 経営指標化した健康データ・施策実績・開示指標

この違いを踏まえると、健康経営支援システムに固有の要件が見えてきます。健康経営度調査の設問に沿った回答準備、健康データの指標化、施策と効果のひも付け、人的資本開示との連携です。健康管理やストレスチェックのシステムをそのまま流用しても、これらは埋まりません。推進と開示に特化した設計が必要になる点が、他システムとの決定的な違いです。

健康経営支援システムの機能要素——調査集計・指標化・施策管理・開示連携

健康データのイメージ

健康経営支援システムを検討するときは、機能を4つの要素に分けて考えると整理しやすくなります。健康経営度調査の回答データ収集・集計、健康データの経営指標化、施策の管理と効果の可視化、人的資本開示への連携です。

健康経営度調査の回答データ収集・集計

1つ目が調査対応です。健康経営度調査は、健康経営銘柄や健康経営優良法人の認定にも用いられる基礎情報を得るために毎年実施されており、設問に沿って自社の取組状況を回答する必要があります*2。回答の根拠となる数値は健診受診率や特定保健指導の実施状況、労働時間の状況など多岐にわたるため、必要な項目をシステム側に集約しておくと、年度ごとの回答準備を繰り返しの手順として扱えます。前年度の回答との差分を確認できると、経年での変化も追いやすくなるでしょう。

健康データの経営指標化

2つ目が指標化です。健診結果やストレスチェックの集団分析、勤怠データといった健康データを、そのままではなく経営が判断に使える指標へと変換する機能です。たとえば受診率や有所見率の推移、部門別の傾向などを集計し、経営会議で扱える形にまとめます。ここで大切なのは、個人の健康状態を評価することではなく、組織としての傾向を把握して施策の判断材料にすることです。健康データは機微な個人情報を含むため、集計・匿名化の設計や閲覧権限の切り分けを要件に織り込んでおく必要があります。

施策の管理と効果の可視化

3つ目が施策管理です。健康経営では、運動機会の提供や食生活の見直し支援、メンタルヘルス対策など、さまざまな取組を並行して走らせます。それぞれの施策について、対象・予算・実施状況・参加率などを記録し、指標の推移とあわせて振り返れる仕組みが有効です。施策と指標をひも付けておくと、どの取組がどの指標の変化と結びついているかを検討しやすくなります。なお、健康施策が特定の効果を生むと断定できるわけではなく、あくまで傾向を見ながら次の打ち手を整えていく使い方が現実的です。

人的資本開示(統合報告・有価証券報告書)への連携

4つ目が開示連携です。2023年施行の内閣府令改正により、有価証券報告書には「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が設けられ、「戦略」に人材育成方針や社内環境整備方針を、「指標及び目標」に測定可能な指標とその目標・進捗状況を記載することが求められています*4。あわせて「従業員の状況等」では、女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差の記載が求められます*4

人的資本可視化指針は、こうした開示をガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標の4要素に沿って整理し、独自性のある指標と比較可能性のある指標を組み合わせて示す考え方を提示しています*5。健康経営で得た指標は人的資本の一部として開示の対象になり得るため、調査や社内管理で用いた数値を、統合報告書や有価証券報告書の枠組みへ橋渡しできると、開示のたびに数値を作り直す手間を抑えられます。開示の判断そのものは経営やIR・法務の領域ですが、システムが指標を一貫して保持できることは、その判断を支える土台になります。

外注で確認したい5つのポイント——対応範囲を切り分けて依頼する

健康経営支援システムを外注する場合、依頼範囲の切り分けが選定の分かれ目になります。次の5点を確認しておくと、認識のずれを抑えられます。

第一に、既存の健康管理・人事システムとの連携範囲です。健診データやストレスチェックの結果、勤怠情報をどのシステムから取り込むか、連携方式(CSV連携やAPI連携など)と対象データを具体化します。健康経営支援システムは既存基盤からのデータ集約を前提にする場面が多いため、この切り分けが要件の土台になります。

第二に、健康経営度調査への対応度合いです。設問に対応する数値をどこまでシステムで保持し、回答準備を支援するかを確認します。設問は年度で見直されるため、項目の追加や変更に運用でどう追随するかもあわせて見ておくとよいでしょう。

第三に、個人情報・機微情報の取り扱いです。健康データは機微な個人情報を含むため、集計・匿名化の方式、閲覧権限の設計、アクセスログの保持などを要件として明確にします。誰がどこまでの粒度のデータを見られるかを、設計段階で切り分けておくことが欠かせません。

第四に、人的資本開示への連携範囲です。有価証券報告書や統合報告書で用いる指標のうち、どの数値をシステムから出力できるようにするかを決めます。開示の判断はIR・法務の領域ですが、システムが指標を一貫して保持し、必要な形で書き出せるかは設計上の要点です。

第五に、公開後の保守体制です。調査設問の改定や開示制度の見直しに追随できる運用体制があるかを見ておきます。健康経営を取り巻く制度は継続的に更新されるため、初期構築だけでなく、更新を織り込んだ保守を前提に相手を選ぶことが実務的です。

これらを一括で依頼できるか、部分的に切り出すかは、社内の体制と既存システムの構成によって変わります。自社で要件をすべて固め切るのが難しい場合は、要件整理の段階から相談できる相手を選ぶと、後工程での手戻りを抑えやすくなります。あわせて、指標の集計や開示向けの出力が想定どおりに動くかを検証環境で確認できる範囲を、契約段階で決めておくと、公開後の不安を減らせるでしょう。

まとめ:健康経営支援システムで押さえる3つの判断軸

本稿では、健康経営支援システムの位置づけと機能要素、外注時の確認点を、経済産業省・金融庁など公式情報をもとに整理しました。要点は次の3つです。第一に、健康経営支援システムは調査回答の集計、健康データの経営指標化、施策管理、人的資本開示への連携を一つの流れで扱う仕組みで、個人の健康管理を主眼とする健康管理・ストレスチェックとは扱う領域が異なります。第二に、経済産業省の健康経営度調査は認定の基礎情報を得るために実施され、回答準備と集計が運用の起点になります*2。第三に、2023年施行の内閣府令改正で有価証券報告書にサステナビリティ情報の記載欄が新設され、人的資本の指標との連携が外注設計の論点になっています*4。既存の健康データ基盤との連携範囲と、開示への橋渡しをどこまで求めるかを見極めることが、判断の軸になります。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、業務システムの開発・保守を元請(プライムベンダー)として受託しています。健康経営度調査の回答データ集計から、健康データの経営指標化、施策の管理と効果の可視化、人的資本開示への連携まで、既存の健康管理・人事システムとの接続を含めて、要件整理の段階から一貫してご相談いただけます。機微な個人情報の取り扱いや閲覧権限の設計にも配慮しながら、無理のない範囲で仕組み化を進めたい企業様は、現状の運用診断からお声がけください。

よくある質問

健康経営支援システムと健康管理システムは何が違うのですか。

健康管理システムは産業保健の実務と従業員個人の健康管理を主眼とし、健診結果や受診状況などの個人の健康情報を扱います。これに対し健康経営支援システムは、そうした健康データを集約して経営指標へ変換し、健康経営度調査への回答や人的資本開示につなげる領域を担います。既存の健康管理システムと連携させて使う場面が多い点も特徴です。

健康経営度調査への対応はシステムでどこまで支援できますか。

健康経営度調査は、健康経営銘柄や健康経営優良法人の認定に用いる基礎情報を得るために経済産業省が実施しており、設問に沿った回答が必要です*2。システムでは、回答の根拠となる健診受診率や労働時間などの数値を集約し、年度ごとの回答準備や前年度との差分確認を支援できます。設問は年度で見直されるため、項目変更への追随方法もあわせて確認するとよいでしょう。

人的資本開示との連携とは具体的に何を指しますか。

2023年施行の内閣府令改正により、有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が設けられ、人材育成方針や測定可能な指標・目標の記載が求められています*4。健康経営で得た指標を、統合報告書や有価証券報告書で用いる人的資本の指標へ橋渡しし、必要な形で出力できるようにすることが連携の中身です。開示の判断自体はIR・法務が担います。

健康データの取り扱いで気をつける点はありますか。

健診結果やストレスチェックの結果は機微な個人情報を含むため、集計・匿名化の方式や閲覧権限の設計、アクセスログの保持を要件として明確にする必要があります。経営指標として扱う際は、個人を評価するのではなく組織としての傾向を把握する使い方が前提です。誰がどの粒度のデータを見られるかを、設計段階で切り分けておくことが大切です。

外注する際に最初に確認すべきことは何ですか。

既存の健康管理・人事システムとの連携範囲、健康経営度調査への対応度合い、個人情報の取り扱い、人的資本開示への連携範囲、公開後の保守体制を、まず確認します。制度が継続的に更新される領域のため、初期構築だけでなく更新への追随を織り込んだ体制を前提に相手を選ぶと、後工程での手戻りを抑えやすくなります。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:経済産業省「健康経営」(健康経営の定義)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_keiei.html )
  2. *2 出典:経済産業省「健康経営度調査について」(調査の目的・実施主体)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeieido-chousa.html )
  3. *3 出典:経済産業省「健康経営優良法人認定制度」(大規模法人部門・中小規模法人部門)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html )
  4. *4 出典:金融庁「サステナビリティ情報の開示に関する特集ページ」(企業内容等の開示に関する内閣府令の改正)(https://www.fsa.go.jp/policy/kaiji/sustainability-kaiji.html )
  5. *5 出典:内閣官房「人的資本可視化指針」(内閣官房・金融庁・経済産業省)(https://www.cas.go.jp/jp/houdou/20260323.html )


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