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順番待ち・受付システムの選び方|整理券と呼び出しの効率化
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)として業務システムの開発・保守を受託
この記事のポイント
- 順番待ち・受付システムは、来店・来庁したその場で整理券を発行し、番号で呼び出して受付・対応する「当日その場の順番待ち」に特化した仕組みです。日時を指定する事前予約や、オフィスの来客管理とは役割が分かれます。
- 厚生労働省の令和5年受療行動調査(確定数)では、外来患者が項目別で最も「不満」と答えたのは「診察までの待ち時間」で25.5%でした。待ち時間への不満は、受付を見直す実務的な動機になります。
- 選び方の軸は、整理券の発行・番号呼び出しと表示・待ち時間や混雑状況の可視化という機能要素と、外注時の連携範囲・呼び出し方式・データの扱いをどこまで担えるかです。
目次
行列と待ち時間の不満——順番待ち・受付が抱える課題
店舗やクリニック、自治体の窓口、サービス業のカウンター。来店したその場で順番を待つ場面は、私たちの日常にあふれています。ところが、この「待つ」という体験は、利用者の満足度を大きく左右する要素にもなります。窓口の対応そのものが丁寧でも、そこにたどり着くまでの行列や待ち時間が長ければ、来店の印象は損なわれてしまうのです。
待ち時間への不満は、感覚だけの話ではありません。厚生労働省の令和5年受療行動調査(確定数)では、外来患者に病院の項目別の満足度をたずねています。その結果、「不満」と答えた人の割合が最も高かった項目は「診察までの待ち時間」で25.5%でした。この調査は、全国の一般病院を利用する外来患者を対象に令和5年10月に実施されたもので、外来の有効回答数は7万376人となっています*1。医療機関という一例ではありますが、待ち時間が満足度の弱点になりやすいことを、公的な統計が示しています。
同じ調査で診察等までの待ち時間の分布をみると、「15分未満」が27.8%、「15分〜30分未満」が24.8%、「30分〜1時間未満」が20.6%で、1時間未満がおよそ7割を占めます*1。裏を返せば、1時間以上待った人が2割を超えていた計算です*1。窓口が混み合う時間帯に来店が集中すると、待ち時間は容易に伸びていきます。
行列そのものにも課題があります。誰が先に来たのかが曖昧だと、順番をめぐる小さなトラブルが起こりかねません。紙の名簿や口頭での案内に頼っていると、呼び忘れや二重対応も生まれがちです。利用者は、あとどのくらい待つのかが分からないまま、その場に縛られてしまうのです。こうした「行列」「待ち時間の見えなさ」「順番の管理」という課題を、仕組みで解きほぐそうとするのが、順番待ち・受付システムの出発点になります。
順番待ち・受付システムとは——当日その場の順番を整理する仕組み
順番待ち・受付システムとは、来店・来庁したその場で受付を行い、整理券(番号)を発行して、順番が来たら番号で呼び出すまでの一連の流れを管理するソフトウェアを指します。対象は、飲食店や小売店の店頭、クリニックの待合、自治体の窓口、各種サービス業のカウンターなど、当日その場で順番を待つあらゆる接点に広がります。行列を番号に置き換え、待ち時間や順番を見える化することが基本的な役割です。
仕組みはおおむね共通しています。受付時に紙の整理券やモバイルの番号を発行し、待合のディスプレイや利用者のスマートフォンに現在の呼び出し番号を表示します。担当者が管理画面から次の番号を呼び出すと、番号表示用のモニターに順番が示され、音声やデジタルサイネージであわせて案内する、という流れが代表例です。利用者は自分の番号と現在の進み具合を照らし合わせられるため、あとどれくらいで呼ばれるのかの目安を持てます。
この「待ち時間や混雑を見える化する」という発想は、店舗を訪れる前の段階でも広がっています。たとえばGoogleは、地図やビジネスプロフィール上で「混雑する時間帯」や「推定待ち時間」を表示しています。これらは、ロケーション履歴を有効にしているユーザーから集計した匿名データをもとに算出され、店舗のオーナーが手動で追加することはできず、訪問データが十分にある場合にのみ表示される仕組みです*3。来店前に混雑の傾向が見えることで、利用者は空いている時間帯を選びやすくなります。
行政の窓口でも、待ち時間の短縮は明確な目標に据えられています。デジタル庁は自治体窓口DXの取組として「書かない、待たない、回らない」窓口の実現を掲げ、デジタルの力で住民の負担と職員の業務負荷を軽減することを目指しています*2。来店前の可視化と、来店後の受付・呼び出し。この両輪で「待つ」という体験を設計し直す動きが、業種を越えて進んでいるのです。
事前予約・来客管理との違い——「当日その場の順番待ち」に特化する領域
予約や受付に関わるシステムには、順番待ち・受付システムのほかにも、日時を指定する事前予約システムや、オフィスの来客管理・受付システム、社内の会議室予約システムなどがあります。言葉が近く混同されやすいのですが、対象とする場面と目的は異なります。導入前に役割の違いを押さえておくと、必要な機能を見極めやすくなるでしょう。
事前予約システムは、来店・来院の日時をあらかじめ指定して枠を押さえる仕組みで、時間を「先に」決める点が特徴です。これに対して順番待ち・受付システムは、来店したその場で受付を行い、当日の順番を「その場で」整理します。予約なしの飛び込み来店や、予約と当日受付が混在する現場では、この当日その場の順番管理が中心です。両者は排他的ではなく、事前予約で枠を確保したうえで、当日の呼び出しは順番待ちの仕組みで行う、という組み合わせも珍しくありません。
来客管理・受付システムは、オフィスを訪れた来訪者の受付や入館対応を担う仕組みで、主な対象はアポイントのある来客です。会議室予約システムは、社内の従業員が会議室や設備を予約する社内ファシリティ向けの仕組みになります。いずれも「誰かを迎える」「社内の場所を割り当てる」ことが目的で、不特定多数がその場で並ぶ順番待ちとは要件が異なるのです。順番待ち・受付システムは、当日その場で発生する順番の整理と呼び出しに特化する領域だと整理できます。
| 項目 | 順番待ち・受付システム | 事前予約/来客管理 |
|---|---|---|
| 主な場面 | 来店したその場で順番を待つ | 日時を先に指定する/来客を迎える |
| 時間の決め方 | 当日その場で順番を整理 | 事前に枠を確保 |
| 中心となる目的 | 行列と待ち時間の解消・順番の管理 | 来店枠の確保・来客対応の効率化 |
| 要となる機能 | 整理券・番号呼び出し・待ち時間表示 | 予約枠・カレンダー・入館証や通知 |
これらは組み合わせて使う場面もありますが、要件の重心が異なります。当日の順番待ちを主眼に置くなら、その場の受付と呼び出しに沿ったシステムを選ぶことが実務的です。
機能要素——整理券・呼び出し・待ち時間表示・混雑の可視化
順番待ち・受付システムを選ぶ際は、次の4つの機能要素をどの程度満たすかを見比べると判断しやすくなります。自社の来店特性や運用体制に照らし、必要な要素に優先順位を付けていきましょう。
整理券の発行——店頭発券とモバイル発券を使い分ける
起点になるのは、受付時に順番を確定させる整理券の発行です。発行の方法は大きく2通りあります。店頭に置いた発券機やタブレットで紙の番号札を出す店頭発券と、利用者が自分のスマートフォンで番号を取得するモバイル発券です。店頭発券は誰でも直感的に使え、モバイル発券は利用者がその場を離れて待てるという特性があります。両方を用意し、来店者の層に合わせて選べるようにする構成も可能です。番号の付与ルールや、受付内容(用件・人数など)を一緒に記録できるかどうかも、現場の使い勝手を左右します。
番号呼び出しと表示・音声案内——順番を漏れなく伝える
発行した番号を、順番どおりに呼び出す機能が中核になります。担当者が管理画面から次の番号を呼び出すと、待合のディスプレイやデジタルサイネージに番号が表示され、あわせて音声で案内する、という流れが一般的です。窓口が複数ある場合は、どの番号がどのカウンターに呼ばれているのかを示す必要があります。呼び出しに気づかず順番を逃した利用者への再呼び出しや、後回しの扱いをどう設計するかも、運用の分かれ目になるでしょう。番号表示は、遠くからでも読み取れる視認性が求められます。
待ち時間・順番の表示——「あとどれくらい」を見せる
待つ側の不安をやわらげるのが、現在の待ち組数や、おおよその待ち時間を見せる機能です。自分の番号の前に何組が待っているのか、目安としてどのくらいで呼ばれそうなのかが分かれば、利用者はその場を離れる判断もしやすくなります。待ち時間の目安は、直近の対応ペースや過去の実績データから推定するのが一般的な考え方です。あくまで推定値であり、実際の進み具合とずれる場合がある点は、表示のうえで断っておくとよいでしょう。モバイル発券と組み合わせれば、呼び出しが近づいたときにスマートフォンへ通知する運用も考えられます。
混雑状況の可視化と分析——データで運用を見直す
受付と呼び出しのデータがたまると、時間帯や曜日ごとの混雑状況が見えてきます。どの時間帯に来店が集中し、どこで待ち時間が伸びるのかが分かれば、人員配置や受付方法を見直す材料になります。混雑の可視化は、来店前の情報提供にもつながる領域です。Googleマップでは、周辺エリアがふだんより混雑しているかを確認でき、ピーク時に近い混雑度のエリアがハイライト表示されます。これらの情報は差分プライバシーを用いて個人が特定できないように処理され、正確かつ匿名の情報が十分に集まらない場合は公開されない、と説明されています*4。自社システムで蓄えた実データと、こうした外部の可視化を併せて見ると、混雑対策の精度を高めやすくなるでしょう。
開発を外注する前に確認したい点——連携範囲・呼び出し方式・データ
順番待ち・受付システムを自社向けに開発して外部委託する場合、既製のサービスをそのまま使うのとは違い、自社の受付フローや既存の設備、業務システムに合わせて作り込める利点があります。一方で、要件のすり合わせが甘いと、現場で定着しないおそれもあるのです。委託前に確認しておきたい点を挙げます。
第一に、連携範囲です。発券機やタブレット、待合のデジタルサイネージ、音声案内、利用者のスマートフォンへの通知のうち、どこまでを一つの仕組みとしてつなぐのかを最初に決めます。既存の予約システムや基幹システムと受付データを連携させるのか、あるいは単独で完結させるのかによって、開発の範囲は大きく変わってきます。行政の窓口であれば、書かない窓口を支える窓口DXSaaSのような基盤との関係も整理が必要でしょう*5。
第二に、呼び出し方式と運用ルールです。誰が呼び出しを操作するのか、複数窓口でどう番号を割り振るのか、呼び出しに気づかなかった場合の再呼び出しや後回しをどう扱うのか。ここを曖昧にしたまま作ると、現場の運用と噛み合わなくなります。第三に、データの扱いです。受付時に用件や連絡先を取得するなら、その保管と削除の方針、アクセスできる担当者の範囲を要件定義の段階で詰めておくことが望ましいでしょう。混雑分析のために蓄えるデータについても、利用目的をあらかじめ明確にしておきます。
加えて、委託範囲を要件定義から設計・構築、運用・保守までのどこまでとするかを明らかにし、元請(プライムベンダー)として一貫して担える体制かどうかを見極めることが、選び方の実質的な分かれ目になります。発券機やサイネージなど連携先が増えるほど、障害時の切り分けや変更対応をまとめて任せられるパートナーの価値は高まっていきます。
まとめ:順番待ち・受付システムの選び方で押さえる3つの視点
本稿では、順番待ち・受付システムの選び方を、行列と待ち時間への不満という観点から整理しました。要点は次の3つです。第一に、順番待ち・受付システムは来店したその場で整理券を発行し、番号で呼び出して対応する「当日その場の順番待ち」に特化した領域であり、日時を指定する事前予約やオフィスの来客管理とは役割が分かれます。第二に、待ち時間は満足度の弱点になりやすく、厚生労働省の令和5年受療行動調査(確定数)でも外来患者が最も「不満」と答えた項目は「診察までの待ち時間」の25.5%でした*1。第三に、整理券の発行・番号呼び出しと表示・待ち時間や混雑状況の可視化という機能要素と、連携範囲・呼び出し方式・データの扱いをどこまで担えるかが、システムと委託先の見極めどころになります。自社の来店特性と受付の実態を棚卸ししたうえで、必要な機能に優先順位を付けて検討することをおすすめします。
よくある質問
順番待ち・受付システムと、事前予約システムは何が違いますか。
事前予約システムは、来店・来院の日時をあらかじめ指定して枠を押さえる仕組みで、時間を先に決めます。順番待ち・受付システムは、来店したその場で受付を行い、当日の順番を整理して番号で呼び出す仕組みです。予約なしの飛び込み来店や、予約と当日受付が混在する現場では、当日その場の順番管理が中心になります。両者を組み合わせて使うこともできます。
整理券は紙とモバイルのどちらがよいですか。
来店者の層と現場の運用によります。店頭の発券機で出す紙の整理券は誰でも直感的に使え、利用者のスマートフォンで番号を取得するモバイル発券は、その場を離れて待てる利点があります。両方を用意し、選べるようにする構成も可能です。モバイル発券では、呼び出しが近づいたときに通知を送る運用も考えられます。
待ち時間の目安はどのように表示するのですか。
直近の対応ペースや過去の実績データをもとに、あとどれくらいで呼ばれそうかを推定して表示するのが一般的な考え方です。あくまで推定値であり、実際の進み具合とずれる場合があるため、目安である旨を添えて表示するとよいでしょう。現在の待ち組数のように、確定した情報とあわせて見せると、利用者は判断しやすくなります。
混雑状況の可視化にはどんな方法がありますか。
自社システムに蓄えた受付・呼び出しのデータから、時間帯や曜日ごとの混雑を集計できます。来店前の情報として、外部の可視化を参照する手もあるでしょう。Googleマップでは、ふだんより混雑しているエリアがハイライト表示され、これらは差分プライバシーで個人が特定できないよう処理されると説明されています。自社の実データと外部の傾向を併せて見ると、混雑対策の精度を高めやすくなります。
順番待ち・受付システムの開発を外部に委託する場合、何を確認すればよいですか。
発券機・サイネージ・音声案内・スマートフォン通知のどこまでを一つの仕組みとしてつなぐかという連携範囲、複数窓口での呼び出し方式と再呼び出しの運用ルール、受付時に取得するデータの保管・削除やアクセス範囲をまず確認します。あわせて委託範囲を要件定義から運用・保守までどこまでとするかを明確にすると、導入後の定着につながります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:厚生労働省「令和5(2023)年受療行動調査(確定数)の概況」( https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jyuryo/23/kakutei.html )
- *2 出典:デジタル庁「自治体窓口DX」( https://www.digital.go.jp/policies/cs-dx )
- *3 出典:Google ビジネス プロフィール ヘルプ「混雑する時間帯、待ち時間、滞在時間のデータについて」(https://support.google.com/business/answer/6263531?hl=ja)
- *4 出典:Google マップ ヘルプ「混雑エリアに関する情報を Google マップから入手する」(https://support.google.com/maps/answer/11323117?hl=ja)
- *5 出典:デジタル庁「自治体窓口DXSaaS」( https://www.digital.go.jp/policies/cs-dx/dxsaas )