LASSIC Media らしくメディア
法定三帳簿とは|労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の管理
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託
この記事のポイント
- 法定三帳簿とは、労働基準法が調製・保存を義務づける労働者名簿・賃金台帳・出勤簿(労働時間の記録)の総称で、それぞれ根拠条文と記載事項が異なります。
- 保存期間は労働基準法第109条に基づき、書類ごとに起算日が定められています。法改正の経緯があるため、最新の規定を公式情報で確認する姿勢が欠かせません。
- 多拠点・多人数の企業では、記載事項の網羅・保存期間の管理・電子保存要件の充足を仕組み化する必要があります。
なお本記事は、打刻や労働時間の集計を主眼とする勤怠管理システムの解説とは異なり、労働基準法が求める帳簿そのものの記載事項・調製・保存を仕組みとして整えるという観点に絞って解説するものです。
目次
法定三帳簿とは-労働者名簿・賃金台帳・出勤簿の位置づけと調製義務
法定三帳簿とは、労働基準法が使用者に整備を義務づける労働者名簿・賃金台帳・出勤簿(労働時間の記録)の総称です。労働基準法第107条は労働者名簿の調製を、第108条は賃金台帳の調製をそれぞれ使用者に義務づけています*1。出勤簿については三帳簿という独立した条文があるわけではなく、第109条が定める「賃金その他労働関係に関する重要な書類」の一つとして扱われ、労働時間を客観的に記録した書類としての整備が求められます*1。
3種類の帳簿はいずれも事業場ごとに調製する必要があり、本社で一括管理していても各拠点の実態を反映していなければ調製義務を果たしたことにはなりません。労働者名簿は労働者個人の属性と雇用の経緯を、賃金台帳は賃金計算の根拠を、出勤簿は労働時間の実績をそれぞれ記録する書類であり、目的も記載事項も異なります。次章以降では、それぞれの記載事項を個別に確認していく構成です。
法定三帳簿の早見表
3帳簿の根拠条文・主な記載事項・更新のタイミングを整理すると、次のとおりです。
| 帳簿名 | 根拠条文 | 主な記載事項 | 更新のタイミング |
|---|---|---|---|
| 労働者名簿 | 労働基準法第107条・同法施行規則第53条*1*2 | 氏名・生年月日・住所・従事する業務の種類・雇入れ年月日・退職の年月日及びその事由等 | 入社・退職・異動・氏名や住所の変更等が生じた都度 |
| 賃金台帳 | 労働基準法第108条・同法施行規則第54条*1*2 | 氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外/休日/深夜労働時間数・賃金の内訳・控除額 | 賃金計算期間ごと(通常は毎月の給与計算のタイミング) |
| 出勤簿(労働時間の記録) | 労働基準法第109条*1 | 始業・終業時刻、労働時間の実績を客観的な方法で記録した内容 | 日々の勤務実績に応じて随時 |
労働者名簿と賃金台帳は記載事項が条文で細かく定められているのに対し、出勤簿は様式こそ自由ですが、労働時間を客観的に記録するという運用面の要件がより重視される点に違いがあります。3帳簿を別々の担当者・別々のシステムで管理していると、この更新タイミングの違いが把握しづらくなり、記載漏れや更新遅れの温床になりがちです。
労働者名簿の記載事項-氏名から退職事由まで正確に記録する
労働者名簿の記載事項は、労働基準法施行規則第53条に定められています。氏名・生年月日・履歴・性別・住所・従事する業務の種類・雇入れの年月日・退職の年月日及びその事由(解雇の場合はその理由を含む)・死亡の年月日及びその原因が対象です*2。パート・アルバイトを含め、日々雇い入れられる労働者を除く全労働者が対象になる点は見落とされがちです。
常時使用する労働者が30人未満の事業場では、従事する業務の種類の記載を省略できる規定があります*2。ただし省略規定はこの1項目に限られており、他の記載事項まで省略できるわけではありません。人事異動や結婚による氏名変更、住所変更があった場合は、その都度更新する運用が前提になります。
更新を止めると不整合が生じる
労働者名簿は一度作成して終わりの帳簿ではなく、履歴事項の変更をそのつど反映する必要があります。拠点ごとに異なる書式・保管場所で管理していると、退職者の記載事項に抜けが生じたり、同一労働者の情報が拠点間で食い違ったりする事態が起こりやすくなります。特に退職の年月日及びその事由は、後日の助成金申請や労務相談で確認を求められる項目であり、記載漏れがあると対応に時間がかかりやすいでしょう。
賃金台帳の記載事項-労働時間数と賃金内訳を漏れなく記録する
賃金台帳の記載事項は、労働基準法施行規則第54条に定められています。氏名・性別・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外労働時間数・休日労働時間数・深夜労働時間数、基本給や手当等の種類ごとの金額、そして控除額が対象です*2。時間外・休日・深夜のそれぞれの時間数を分けて記録する必要がある点は、集計を誤りやすい箇所と言えます。
賃金台帳は毎月の賃金計算期間ごとに作成する帳簿であり、労働者名簿と違って更新の頻度が高くなります。給与計算システムから出力した帳票が施行規則の記載事項を満たしているかは、システム導入時に一度確認しておく価値があるでしょう。手当の種類ごとの金額を分けて記載しているか、控除額の内訳が明確かは、後から給与明細と突き合わせる際に重要な確認ポイントになります。
出勤簿(労働時間の記録)と客観的な把握の考え方
出勤簿そのものの様式は労働基準法上定められていません。ただし労働時間を記録した書類として、保存義務の対象になる重要書類の一つに位置づけられます*1。厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を策定しており、始業・終業時刻の確認・記録は、使用者が自ら現認するか、タイムカード・ICカード・パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として行うことを原則としています*3。
やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合には、労働者への十分な説明、実態調査の実施、適正な自己申告を阻害する措置を講じないことなど、追加の措置が求められます*3。出勤簿を紙の押印方式のまま運用している企業では、実際の労働時間との乖離が生じやすく、監督署の是正勧告につながりやすい領域の一つです。
打刻・集計の仕組みと帳簿としての保存は別の論点
勤怠管理システムによる打刻・労働時間の集計は、労働時間を客観的に把握する手段として有効です。ただし打刻データを集計しただけでは、法定三帳簿としての調製・保存義務を果たしたことには直結しません。氏名・退職事由といった労働者名簿固有の記載事項、時間外・休日・深夜の内訳を含む賃金台帳固有の記載事項は、打刻集計とは別に充足状況を確認する必要があります。集計の仕組みと帳簿としての整備・保存は、目的が異なる別の論点として切り分けて捉えることが大切です。
保存期間・起算日の管理と電磁的記録での保存要件
労働基準法第109条は、労働者名簿・賃金台帳・出勤簿等の重要書類について保存義務を定めています*1。保存年数は法改正の経緯があり、起算日も帳簿ごとに異なる考え方が採られているため、断定的な年数だけを覚えるのではなく、労働基準法・同法施行規則の最新の規定を厚生労働省やe-Govの公式情報で確認する運用が欠かせません*1*2。2020年(令和2年)4月施行の労働基準法改正では保存期間の考え方が見直された経緯があり、厚生労働省が公表する改正関連のQ&Aでも保存期間の取り扱いが解説されています*5。
起算日の一般的な考え方としては、労働者名簿は労働者の退職・解雇・死亡等の日、賃金台帳は最後に記入をした日、出勤簿等その他の重要書類は当該書類に関する完結の日(最後の出勤日等)を起点とする整理がされています*2。拠点や労働者ごとに起算日が異なるため、システムやルールで一括管理していないと、保存すべき期間内の書類を誤って廃棄してしまうリスクが生じます。
電磁的記録で保存する場合の要件
労働者名簿・賃金台帳等は、書面ではなく電磁的記録によって調製・保存することも認められています。厚生労働省の公式見解では、必要な事項を画面に表示し書面に出力できる状態であること、記録の内容が改ざんされない状態で保存され続けることなどが要件として示されています*4。単にファイルサーバーへ保存するだけでは、これらの要件を満たしていると言い切れない場合があるため、保存方式そのものの検証が必要になります。
多拠点・多人数管理における帳簿整備のシステム化要件
拠点数や従業員数が増えるほど、法定三帳簿の整備は属人的な管理では追いつかなくなります。整理すべき要件は、大きく分けて次の4つです。
- 帳簿マスタと記載事項の網羅:労働者名簿・賃金台帳それぞれの記載事項を施行規則の要件と突き合わせ、拠点ごとの様式差異をなくす仕組み
- 保存期間の一元管理:労働者名簿・賃金台帳・出勤簿ごとに異なる起算日を管理し、保存期限前の誤廃棄を防ぐ仕組み
- 電子保存要件の充足:画面表示・書面出力・改ざん防止・確実な保存という要件を満たすシステム設計
- 監督署対応の記録:臨検の際に求められる帳簿の提示に速やかに応じられる検索性と、対応履歴の証跡管理
労働基準監督官は、事業場に臨検し帳簿及び書類の提出を求める権限を持っています*1。整備の不備は是正勧告につながりかねないため、複数拠点を抱える企業ほど、帳簿ごとの記載事項・保存期間・保存方式を横断的に点検できる体制を、平時から仕組みとして持っておくことが望ましいでしょう。人事システムや給与計算システムを個別最適で導入してきた企業では、まず三帳簿の記載事項がどのシステム・帳票でどこまでカバーされているかを棚卸しすることが、整備の出発点になります。
まとめ:法定三帳簿を仕組みとして整備する3つの視点
本稿では、労働基準法が定める法定三帳簿(労働者名簿・賃金台帳・出勤簿)の記載事項・調製義務・保存期間・電磁的記録での保存要件を、厚生労働省・e-Govの公式情報に基づいて整理しました。要点は次の3つに集約されます。第一に、労働者名簿は施行規則第53条、賃金台帳は同第54条が記載事項を定めており、帳簿ごとに求められる項目が異なります*2。第二に、保存期間は帳簿ごとに起算日の考え方が異なるうえ法改正の経緯もあるため、最新の規定を公式情報で確認し続ける必要があります*1。第三に、多拠点・多人数の企業では、記載事項の網羅・保存期間の管理・電子保存要件の充足・監督署対応の記録を仕組み化することが、整備・保存の負担を抑える鍵になります。担当者の異動や退職によって整備のノウハウが属人化しやすい領域でもあるため、判断基準そのものを仕組みとして残しておく視点が重要です。
よくある質問
出勤簿にはどのような様式が定められていますか。
出勤簿そのものの様式は労働基準法上定められていません。ただし労働時間を記録した重要書類として保存義務の対象になるため、厚生労働省のガイドラインが示す客観的な記録による把握を踏まえた運用が求められます*3。
法定三帳簿はどのくらいの期間保存する必要がありますか。
労働基準法第109条に保存義務が定められており、書類ごとに起算日の考え方が異なります。保存年数は法改正の経緯があるため、労働基準法及び同法施行規則の最新の規定を厚生労働省・e-Govの公式情報で確認することをおすすめします*1*2。
労働者名簿・賃金台帳をパソコンやシステムで保存しても構いませんか。
書面ではなく電磁的記録による調製・保存も認められています。必要な事項を画面表示・書面出力できること、改ざんされない状態で保存できることなど、厚生労働省が示す要件を満たしているかを確認する必要があります*4。
常時使用する労働者が30人未満の事業場でも、記載事項の省略はできますか。
労働者名簿については、常時使用する労働者が30人未満の事業場に限り、従事する業務の種類の記載を省略できる規定があります。それ以外の記載事項や、賃金台帳の記載事項に省略規定はありません*2。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:e-Gov法令検索「労働基準法」(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049)
- *2 出典:e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」(https://laws.e-gov.go.jp/law/322M40000100023)
- *3 出典:厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudouzikan/070614-2.html)
- *4 出典:厚生労働省「労働基準法関係の帳簿等をパソコン等で作成して保存することはできますか、できませんか。」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/faq_kijyunhou_33.html)
- *5 出典:厚生労働省「改正労働基準法等に関するQ&A」(https://www.mhlw.go.jp/content/000617980.pdf)