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iPaaS・システム連携基盤の選び方|内製と外注の判断
LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム連携基盤の設計・開発・運用を受託
この記事のポイント
- iPaaSはSaaSや基幹システムをクラウド上でつなぐ連携基盤で、Gartnerは内外のアプリ・データを統合するベンダー管理型のクラウドサービスと定義しています。
- RPA(画面操作)・ETL(データ移送)・EDI(商取引)とは目的が異なり、まず用途で使い分けを整理することが選定の起点になります。
- ノーコード連携で足りるか、スクラッチでAPI開発が要るかは、連携本数・変換の複雑さ・エラー時の要件で分かれ、内製と外注の判断軸にもなります。
目次
iPaaS・システム連携基盤とは——SaaSと基幹をつなぐクラウド型の統合基盤
iPaaS(Integration Platform as a Service。アイパース)とは、社内外のアプリケーションやデータソースをクラウド上でつなぐ連携基盤を指します。Gartnerは、iPaaSを組織の内外にあるアプリ・サービス・データ間の統合をエンドユーザーが実装できる、ベンダー管理型のクラウドサービスと定義しています*1。SaaSと基幹システムの間でデータを行き来させる土台、と捉えると輪郭がつかみやすいでしょう。
クラウドは、いまや業務の前提になりつつあります。総務省の令和7年版情報通信白書によると、2024年に何らかのクラウドサービスを利用している企業(全社利用と一部利用の合計)は80.6%で、通信利用動向調査の結果として示されています*2。SaaSが増えるほど、それぞれに散らばったデータをどうつなぐかという連携の課題が浮かび上がってきます。
iPaaSはこの課題に、あらかじめ用意されたコネクタとGUIベースの設定で応えます。APIを使ってシステム間のデータを抽出し、フォーマットを変換して連携先へ受け渡す一連の処理を自動化することで、個別開発の負担を抑えられる点が特徴です*6。オンプレミスとクラウドに分散したデータを、連携・実行・管理する土台と言い換えてもよいでしょう。
RPA・ETL・EDIとの違い——4つの連携手法をどう使い分けるか
「システムをつなぐ」技術はiPaaSだけではありません。似た文脈でRPA・ETL・EDIが挙がるものの、狙う目的はそれぞれ別物です。まず用途の軸で整理しておくと、選定の議論が空回りしにくくなります。
RPA(Robotic Process Automation)は、人がPC画面上で行っている操作をソフトウェアで再現し、定型作業を自動化する技術です*4。API連携ではなく画面操作を模倣する点が本質で、APIが用意されていないシステムにも適用しやすい反面、画面レイアウトの変更に弱いという側面もあります。ETL(Extract/Transform/Load)は、大量の構造化データを抽出・変換・格納する手法で、データウェアハウスやBI分析への集約を主目的とし、バッチ処理型で動きます*3。
EDI(Electronic Data Interchange。電子データ交換)は、企業間の商取引に軸足があります。JIPDECは、平成元年の通商産業省による定義として「異なる組織間で、取引のためのメッセージを、通信回線を介して標準的な規約を用いて、コンピュータ間で交換すること」を紹介しています*5。注文書や請求書といった定型帳票を、合意された規約に沿って自動でやり取りする仕組みです*5。これに対しiPaaSは、SaaSや基幹をリアルタイムに近い形で継続的につなぐクラウドネイティブな連携基盤として位置づけられます*6。
4つの手法の違いを整理すると、次の通りです。
| 手法 | 主な目的 | つなぎ方の特徴 | 向くケース |
|---|---|---|---|
| iPaaS | SaaS・基幹の継続的な連携 | API・コネクタでクラウド上を連携*6 | 複数SaaSを跨ぐデータ同期・自動化 |
| RPA | 定型作業の自動化 | 画面操作を再現*4 | APIのない画面の入力・転記 |
| ETL | 分析基盤へのデータ集約 | 抽出・変換・格納のバッチ処理*3 | 大量データのDWH集約・分析 |
| EDI | 企業間の商取引 | 標準規約で帳票を交換*5 | 取引先との受発注・請求 |
実務では、これらは排他ではなく組み合わせて使われます。EDIで受け取った取引データをiPaaS経由で基幹へ流し込み、APIのない旧システムへの入力だけRPAで補う、といった構成も現実的です。まずは「何を、どこから、どこへ、どの頻度で」流したいのかを言語化することが出発点になります。
連携の仕組みを分解する——コネクタ・データマッピング・イベント駆動・再送
iPaaSを評価するには、内部で何が起きているかを分解して見ると判断しやすくなります。ここでは代表的な4つの要素を取り上げます。
コネクタとデータマッピング——接続とデータの読み替え
コネクタは、各SaaSや基幹システムのAPIにあらかじめ対応した接続部品です。国産のiPaaSは国内クラウド、海外産は海外クラウドへの対応が厚い傾向があり、自社が使う製品のコネクタが揃っているかは選定の実務的な確認点になります*6。データマッピングは、送り元の項目名と送り先の項目名を対応づける作業で、「取引先コード」と「顧客ID」のように名称や桁数が異なる項目を読み替えます。ここが連携設計の中核であり、項目差異の多さが工数を左右します。
イベント駆動とポーリング——いつ動かすか
連携のきっかけには大きく2通りがあります。ひとつはデータの発生を契機に即時で動かすイベント駆動、もうひとつは一定間隔で送り元を確認しにいくポーリングです。EAI寄りのリアルタイム連携は在庫や受発注などデータ整合性が重要な用途に向き、バッチ寄りの処理は更新頻度が低く量の多いデータに向くとされています*4。要件が「即時である必要があるか」を見極めると、設計と費用のバランスが取りやすくなります。
エラーハンドリングと再送——止まらせない設計
連携はどこかで失敗するものと考えておくのが現実的です。連携先のメンテナンス、通信断、想定外のデータ形式など、原因はさまざまです。そこで重要になるのが、失敗を検知して自動で再送する仕組みと、再送しても解決しない場合に担当者へ通知する監視の設計になります。誰が異常に気づき、どこまで自動で立て直すのか——この線引きが、運用フェーズの安定性を大きく左右します。
APIゲートウェイと認証——つなぐ相手をどう守るか
外部と接続する以上、認証とアクセス制御は避けて通れません。連携先ごとにAPIキーやOAuthトークンをどこに保管し、どう更新するか。APIゲートウェイを介してアクセスを集約し、ログや流量を管理する構成も検討対象です。データを社外のクラウドに預ける場面では、通信の暗号化や保管場所のリージョンといった条件も、要件として早い段階で押さえておきたいところです。
ノーコード連携とスクラッチAPI開発——どこで線を引くか
iPaaS(一般名詞であり、特定製品の優劣をここで断じるものではありません)を使ったノーコード連携と、自前でAPIを実装するスクラッチ開発は、どちらが上ということではなく適材適所です。判断軸を持っておくと、社内の議論が進みます。
ノーコード連携が向くのは、標準的なSaaS同士をつなぐケースです。コネクタが揃い、データマッピングがGUIで完結し、変換ロジックが複雑でないなら、iPaaSの初期投資の低さと導入の速さが効いてきます*3*6。一方でスクラッチ開発が検討対象になるのは、コネクタが存在しない独自システムを含む場合や、複雑な業務ロジック・大量トランザクション・厳密な性能要件が絡む場合です。標準機能の枠に収まらない要件ほど、作り込みの余地が価値になります。
両者は二者択一とも限りません。定型的な連携はiPaaSに任せ、独自要件の強い部分だけスクラッチで作る折衷も、よく採られる構成です。判断の目安を挙げておきます。
| 判断軸 | ノーコード連携(iPaaS)が向く | スクラッチAPI開発が向く |
|---|---|---|
| 連携先のAPI | コネクタが提供されている*6 | APIが無い/独自仕様が多い |
| 変換の複雑さ | 項目対応が中心でGUIで足りる | 複雑な業務ロジックを伴う |
| 立ち上げ速度 | 早期に立ち上げたい*3 | 要件確定と設計に時間をかけられる |
| 運用の担い手 | 現場部門が設定を保守しやすい | 開発体制で継続保守できる |
外注時に確認したい4つのポイント——連携要件・監視・認証・既存API
連携基盤の構築を外部に委託する場合、見積もりの前に固めておきたい確認点があります。ここが曖昧なまま進むと、後工程での手戻りが大きくなりがちです。
第一に、連携要件とデータマッピングです。どのシステムのどの項目を、どちらの方向へ、どの頻度で流すのか。項目定義書レベルまで具体化できているかで、見積もりの精度は大きく変わります。第二に、エラー時の再送と監視です。失敗をどう検知し、どこまで自動で再送し、解決しない場合に誰へ通知するのか。運用設計まで委託範囲に含まれるかを、契約前に確認しておきます。
第三に、認証とセキュリティです。APIキーやトークンの保管方法、通信の暗号化、データの保管先や取り扱いの範囲を、委託先とすり合わせておく必要があります。第四に、既存システムのAPI有無です。連携したいシステムにそもそもAPIが用意されているか、無い場合にどう代替するのかは、方式選定そのものを左右します。この4点を「連携要件・監視/再送・認証/セキュリティ・既存API」として押さえておくと、提案内容の比較がしやすくなります。
内製と外注の分かれ目——連携本数と運用体制で判断する
iPaaSはGUIで扱える部分が広いため、連携が少数で標準的なら、情報システム部門が内製で立ち上げられる場合もあります。判断が分かれてくるのは、連携本数が増え、独自システムやリアルタイム性・大量データが絡んでくる局面です。設計・実装だけでなく、稼働後の監視や障害対応まで含めた総量で考えることが大切になります。
内製の利点は、要件変更に自部門で即応でき、業務知識を社内に蓄積できる点です。ただし、通常業務と並行して連携の設計・検証・運用を担うと、監視や再送設計に割ける時間が細切れになりやすいという実情もあります。外注では、連携要件の整理からデータマッピング、エラー時の再送・監視、認証設計、稼働後の保守までを一括で任せられるかが、委託先選定の分かれ目です。連携基盤は「作って終わり」ではなく、つなぎ続ける限り運用が続く資産だという前提で、体制を設計しておきたいところです。
連携する本数、リアルタイム性の要否、独自システムの有無によって、必要な工数は変わってきます。現状のシステム構成と連携要件を棚卸ししたうえで、内製・外注の切り分けを検討することが実務的です。
まとめ:iPaaS・システム連携基盤の選定で押さえる3つの判断軸
本稿では、iPaaS・システム連携基盤の選び方を、公的情報や各社の解説をもとに整理しました。要点は3つに集約できます。第一に、iPaaSはSaaSと基幹をクラウド上でつなぐ連携基盤であり、RPA(画面操作)・ETL(データ移送)・EDI(商取引)とは目的が異なるため、まず用途で使い分けを整理することが起点になります*1*4*5。第二に、コネクタ・データマッピング・イベント駆動/ポーリング・エラー再送/監視・認証といった要素に分解して評価すると、要件との適合を見極めやすくなります*6。第三に、コネクタの有無・変換の複雑さ・運用の担い手によって、ノーコード連携とスクラッチ開発、そして内製と外注の判断が分かれます*3。連携基盤はつなぎ続ける資産であり、運用まで見据えた体制設計が成否を分けます。
よくある質問
iPaaSとETLはどう使い分ければよいですか。
ETLは大量の構造化データをバッチで抽出・変換・格納し、データウェアハウスやBI分析へ集約する用途に向きます*3。一方iPaaSは、SaaSや基幹を継続的につなぐクラウド型の連携基盤で、複数システムを跨ぐデータ同期や業務自動化に向きます*6。分析基盤へまとめたいならETL、業務システム同士を日常的に連携させたいならiPaaS、という軸で切り分けると整理しやすくなります。
RPAがあればiPaaSは不要ではないですか。
RPAは人の画面操作を再現して定型作業を自動化する技術で、APIが無いシステムにも適用しやすい反面、画面変更に弱い性質があります*4。iPaaSはAPIやコネクタでシステム間を連携するため、対応システム同士なら安定して継続連携できます*6。APIのある連携はiPaaS、APIが無い画面はRPA、と補完的に使い分ける構成が現実的です。
連携したいシステムにAPIが無い場合はどうなりますか。
連携先にAPIが無いと、標準コネクタでの接続はできません。この場合はスクラッチでの連携開発や、ファイル連携、画面操作を代替するRPAなど別の方式を検討します*4。既存システムのAPI有無は方式選定そのものを左右するため、外注前に対象システムのAPI提供状況を棚卸ししておくことをおすすめします。
連携が途中で失敗したときのデータはどうなりますか。
連携は通信断や連携先のメンテナンスなどで失敗し得ます。そのため、失敗を検知して自動で再送する仕組みと、再送しても解決しない場合に担当者へ通知する監視の設計が重要です。二重登録や欠落を防ぐ制御も含め、エラーハンドリングと再送・監視をどこまで委託範囲に含めるかを、契約前に確認しておくとよいでしょう。
iPaaSの導入や連携基盤の構築を外注する際、何を確認すればよいですか。
連携要件とデータマッピング(どの項目を、どの方向へ、どの頻度で流すか)、エラー時の再送と監視の設計、認証・セキュリティ、既存システムのAPI有無の4点をまず確認します*6。あわせて、稼働後の保守までを委託範囲に含められるか、現場部門でも設定を保守できるかを、提案内容の比較軸として押さえておくと選定しやすくなります。
著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑
ご不明な点はお問い合わせフォームからもご連絡いただけます。
- *1 出典:Gartner「Definition of Integration Platform as a Service (iPaaS) – Gartner Information Technology Glossary」(Gartner IT Glossary)
- *2 出典:総務省「令和7年版 情報通信白書|クラウドサービス」(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd111210.html)
- *3 出典:primeNumber「iPaaS・EAI・ETL/ELTの違いとは?機能・用途・導入コストの違いをまるごと解説」(https://primenumber.com/blog/ipaas_etl_eai/)
- *4 出典:Reckoner「iPaaS EAI ETL/ELT RPA それぞれの違いをユースケースごとに知り、適切なサービスを選ぶ」(https://reckoner.io/rec_blog/developer-blog/difference-between-ipaas-eai-etl-elt-and-rpa/)
- *5 出典:一般財団法人 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)「EDIとは」(https://www.jipdec.or.jp/project/kcode/edi/about.html)
- *6 出典:IIJ「iPaaS(アイパース)とは?ETLやSaaS・PaaS・IaaSとの違い、仕組みやメリット、選定のポイントを分かりやすく徹底解説」(エンタープライズIT COLUMNS)(https://ent.iij.ad.jp/articles/6836/)