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2026.07.23 らしくコラム

自治体システム標準化|移行期限とガバメントクラウド外注

LASSIC IT事業部|元請(プライムベンダー)としてシステム保守・運用を受託

自治体・行政システムのイメージ

この記事のポイント

  • 地方公共団体情報システムの標準化に関する法律に基づき、住民基本台帳や戸籍など基幹20業務は、標準仕様に準拠したシステムへガバメントクラウド上で移行する取組みが進められています。
  • 移行期限は原則2025年度が目標とされる一方、対応が困難なシステムは「特定移行支援システム」として個別に期限が設定される仕組みがあり、2026年3月末時点で全体の約3割がこの対象です。
  • 移行作業ではデータ移行・文字同定・独自施策の整理といった実務が発生するため、内製と外注(ベンダー支援)のどちらで進めるかを体制とスケジュールの両面から判断する必要があります。

自治体システム標準化とガバメントクラウド移行とは

行政データ管理のイメージ

地方公共団体情報システムの標準化とは、自治体ごとに個別最適化されてきた基幹業務システムを、国が定める標準仕様に準拠したシステムへ統一していく取組みです。根拠となるのは、令和3年に成立した「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)で、国民が行政手続きにおいて情報通信技術の便益を享受できる環境を整え、持続可能な行政運営を確立することを目的として定められました*3

図
図:自治体システム標準化移行の流れ(現行システム→データ移行・文字同定・独自施策の整理→標準準拠システム→ガバメントクラウド上で運用)

同法第5条に基づき国が策定した「地方公共団体情報システム標準化基本方針」では、標準化の意義として、地方公共団体の人的・財政的負担の軽減、地域の実情に即した住民サービスの向上、新たなサービスの迅速な展開を可能にすることが挙げられています*4。あわせて進められているのが、標準準拠システムの基盤となるガバメントクラウドへの移行です。ガバメントクラウドとは、政府共通のクラウドサービスの利用環境であり、迅速・柔軟でセキュアかつコスト効率の高いシステム構築を可能にする狙いで整備されています*2

本稿で扱う標準化・ガバメントクラウド移行は、住民向け窓口手続きのオンライン化(電子申請)や、汎用的なオンプレミス環境からクラウドへの移行とは異なる、国の法律・基本方針に基づく特定のプログラムです。対象範囲や期限が制度として定められている点を踏まえたうえで、進め方を確認していきましょう。

標準化の対象となる基幹20業務とガバメントクラウドの仕組み

デジタル庁が公表している標準化対象事務は、児童手当、子ども・子育て支援、住民基本台帳、戸籍の附票、印鑑登録、選挙人名簿管理、固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税、戸籍、就学、健康管理、児童扶養手当、生活保護、障害者福祉、介護保険、国民健康保険、後期高齢者医療、国民年金の20業務です*1。住民の生活に直結する記録・税・福祉領域が中心となっており、多くの自治体で長年運用されてきた基幹系システムがそのまま対象に含まれます。

これらの業務については、各府省が業務ごとの標準仕様を策定し、自治体はこの標準仕様に準拠したパッケージシステム(標準準拠システム)を採用したうえで、ガバメントクラウド上で稼働させる形が想定されています。ガバメントクラウドは特定の1事業者ではなく、国が示す要件を満たす複数のクラウドサービス事業者の環境から選択して利用する仕組みであり*2、自治体はその中からベンダーが提供するサービスを選定していくことになります。

移行期限のスケジュール感:原則2025年度目標と特定移行支援システム

移行期限について、デジタル庁は、地方公共団体は原則2025年度(令和7年度)までに標準準拠システムへ円滑に移行することを目指す方針を示しています*1。一方で、移行の難易度が極めて高いなどの事情により2025年度末までの移行が困難と具体化したシステムは「特定移行支援システム」と位置づけられ、概ね5年以内を目安に移行できるよう国が支援する仕組みが設けられています*1。総務省も自治体向けの進捗把握・情報提供を行っています*5

デジタル庁の公表によると、2026年3月末時点で移行対象となる全34,366システムのうち、10,013システム(29.1%)が特定移行支援システムに該当しています*1。約3割のシステムが原則の期限内での移行を終えられていない状況がうかがえますが、この数値や個別システムの移行完了時期は今後更新される見込みのため、最新の状況はデジタル庁・総務省の公式情報でご確認いただくことをおすすめします。標準準拠システムへの移行完了後は、運用経費についても2018年度比で少なくとも3割の削減を目指す目標が掲げられています*1

移行の進め方①データ移行とデータ整形の実務

標準準拠システムへの移行では、現行システムに保存されている住民記録・税情報・福祉情報などを、標準仕様が定めるデータ形式に合わせて新システムへ移し替える「データ移行」が発生します。現行システムの項目構成や設計思想は自治体ごとに異なるため、標準仕様との差分を洗い出し、必要に応じてデータを整形し直す作業が伴います。

移行対象データの量は自治体の人口規模や現行システムの運用年数によって大きく異なり、庁内の複数部署にまたがる情報を扱う点も負担を増やす要因になります。データ移行のスケジュールを甘く見積もると、後工程の並行運用テストにしわ寄せが及びかねません。

移行の進め方②文字同定という固有の作業

住民の氏名や地名には、標準的な文字コード体系に含まれない「外字」が使われている場合があります。総務省は、こうした自治体独自の外字と、国が整備する文字情報基盤の文字との対応関係を整理する取組みについて資料を公表しており*6、標準化に伴う移行作業では、この対応関係を1件ずつ確認する「文字同定」という固有の工程が発生する場合があります。

対象となる文字数が多い自治体ほど確認作業の負荷は高くなり、専用ツールの活用や外部委託を組み合わせて対応するケースも見られます。文字同定の精度が不十分なまま移行を進めると、氏名の表示崩れや検索不能といった住民サービスへの直接的な影響につながりかねないため、軽視できない工程と言えるでしょう。

移行の進め方③独自施策・条例対応の整理

多くの自治体は、国の標準事務に加えて、独自の子育て支援給付や税の減免制度など、条例に基づく独自施策を運用しています。地方公共団体情報システム標準化基本方針では、標準準拠システムの機能範囲を基本としながら、地域の実情に応じた対応をどのように扱うかという考え方が整理されていますが*4、対応可否や実現方法はシステムや事務ごとに異なります。

独自施策を移行後も継続する場合は、標準仕様の範囲内でどこまで実現できるのかを、ベンダーや国の公表資料をもとに個別に確認する必要があります。確認を後回しにしたまま設計を進めると、移行直前になって独自施策が実装できないことが判明する事態にもなりかねません。

移行を進めるうえでの課題:並行運用とスケジュールのリスク

新旧システムの並行運用や移行リハーサルは、本番移行前に処理結果の整合性を確かめる重要な工程です。ただし、全国の自治体が同時期に移行時期を迎えることで、対応できるベンダーや技術者の確保が難しくなる状況も想定されます。移行スケジュールに遅れが生じた場合に備え、住民サービスへの影響を避けるための代替策をあらかじめ検討しておくことが望ましいでしょう。

庁内の体制についても、情報政策部門だけで全ての工程を完結させるのは容易ではありません。データ移行・文字同定・独自施策の整理・並行運用テストは、それぞれ異なる専門知識を要するため、どの工程を庁内で担い、どの工程を外部に委託するかを早い段階で切り分けておくことが、スケジュール遅延のリスクを抑える鍵になります。

内製と外注(ベンダー支援)の判断軸

自治体システム標準化を内製で進める場合と、外部パートナー(ベンダー)に支援を委託する場合では、必要となる体制やリスク対応の重心が異なります。以下の表に主な違いを整理しました。

比較項目 内製で進める場合 外注(ベンダー支援)
必要な専門知識 標準仕様の読み解き・データ移行設計・文字同定作業のノウハウを庁内で蓄積する必要があります 標準化案件の実績を持つベンダーが、仕様確認から作業設計までを支援します
スケジュール管理 全国的な移行集中期にも体制を維持する負荷が大きくなります 複数自治体の支援実績に基づき、工程を切り分けて並行対応しやすくなります
独自施策への対応 条例に基づく独自施策の要件整理を自庁で行います 標準仕様との整合を踏まえた実現可否の判断を、専門家に相談しながら進められます
移行後の運用 ガバメントクラウド上の運用・保守体制を自庁で構築します 移行後の運用・保守まで一貫して委託できます

まとめ:自治体システム標準化を着実に進めるための3つの視点

本稿では、地方公共団体情報システムの標準化に関する法律とガバメントクラウド移行の基本的な枠組みを、デジタル庁・総務省の公式情報に基づいて整理しました。要点は次の3つに集約されます。第一に、基幹20業務は標準仕様に準拠したシステムへ、ガバメントクラウドを基盤として移行する取組みが法律に基づき進められています*1。第二に、移行期限は原則2025年度が目標とされる一方、特定移行支援システムとして個別に期限が設定されるケースもあり、最新の状況は公式情報で確認する必要があります*1。第三に、データ移行・文字同定・独自施策の整理といった実務は専門性が高く、内製と外注のどちらで進めるかを体制・スケジュールの両面から早期に判断することが、移行を着実に進める鍵になるでしょう。

LASSICに相談するメリット

LASSIC IT事業部は、元請(プライムベンダー)としてシステムの構築・保守・運用を受託しています。自治体システム標準化の対応でも、標準仕様との差分整理やデータ移行の作業設計、移行スケジュールの調整など、専門知識を要する工程を支援できる体制を整えています。自庁での対応に不安がある場合は、まずは現行システムの棚卸しからご相談ください。

よくある質問

自治体システム標準化とガバメントクラウド移行は、どの法律に基づいていますか。

令和3年に成立した「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)に基づき、国が策定する標準化基本方針に沿って進められています*3

標準化の対象となる業務はどのくらいありますか。

児童手当や住民基本台帳、戸籍、各種税、介護保険など、住民の生活に直結する基幹20業務が対象とされています*1

移行の期限はいつまでですか。

原則として2025年度までの移行が目標とされていますが、対応が困難なシステムは「特定移行支援システム」として個別に期限が設定される場合があります。最新の期限や進捗は、デジタル庁・総務省の公式情報でご確認ください*1

文字同定とは何ですか。

自治体が住民の氏名等に使ってきた独自の外字と、国が整備する文字情報基盤の文字との対応関係を確認する作業です*6。移行作業のなかでも専門性の高い工程の一つとされています。

移行作業は内製と外注のどちらで進めるべきですか。

データ移行・文字同定・独自施策の整理といった工程は専門性が高いため、庁内の体制とスケジュールを踏まえ、外部パートナーへの委託も含めて早期に判断することが望ましいでしょう。

著者:テレリモ総研編集部 鈴木 亮佑


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  1. *1 出典:デジタル庁「地方公共団体情報システムの標準化」公式ページ(https://www.digital.go.jp/policies/local_governments/
  2. *2 出典:デジタル庁「ガバメントクラウド」公式ページ(https://www.digital.go.jp/policies/gov_cloud
  3. *3 出典:e-Gov法令検索「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」(令和3年法律第40号)(https://laws.e-gov.go.jp/law/503AC0000000040
  4. *4 出典:デジタル庁「地方公共団体情報システム標準化基本方針」(令和5年9月)(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/c58162cb-92e5-4a43-9ad5-095b7c45100c/f6ea9ca6/20230908_policies_local_governments_outline_03.pdf
  5. *5 出典:総務省「自治体情報システムの標準化・共通化」(https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/chiho/jichitaijoho_system/index.html
  6. *6 出典:総務省「『文字情報基盤』の自治体業務・システムにおける活用性について」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000567412.pdf


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