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人月の計算方法|人日との換算式と見積書を読むときの注意点
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)

この記事の結論
- 人月は1人が1か月働いた作業の量で、工数は人数×月数、費用は人月×単価で計算します。
- 1人月を何時間とみるかは会社で違うため、見積書を比べる前に時間数と精算の決まりを確かめます。
- 単価と人月の合計だけで比べず、工程・役割・工数の根拠がそろった行どうしで比べます。
※ 本記事は2026年10月時点の公式情報(省庁・公的機関、および製品やサービスを提供する事業者が公開している資料)に基づきます。
見積書に「設計 3人月」とあるけれど、何時間分の作業なのかが分からない。2社の見積もりを人月と単価で比べたら、安いほうに決めてよいのか迷う——。システム開発を外部に頼む担当者のあいだでは、こうした戸惑いが起こりがちです。人月とは、1人が1か月働いた作業の量を1とする数え方で、システム開発の工数(作業にかかる量)や費用を表すときに広く使われます。
人月の計算そのものは、掛け算と割り算で済みます。ただし万能ではなく、1人月を何時間とみるかや、どの役割の人の作業かによって、同じ数字でも中身が変わります。本記事では、発注する側の担当者に向けて、人月の計算式、人日や人時との換算、見積書の人月を読むときの注意点、そして外部に頼むときに確認したい点を整理します。
人月とは
人月は、システム開発の工数を表す単位の一つです。IPA(情報処理推進機構)の「ソフトウェア開発分析データ集2022」も、企業から開発の実績を集めるときに、工数の単位を人時と人月から選んでもらう形をとっています。*1 よく使う単位は次の3つです。
- 人時(にんじ):1人が1時間働いた作業の量
- 人日(にんにち):1人が1日働いた作業の量
- 人月(にんげつ):1人が1か月働いた作業の量
このデータ集は、人時を人月に直すときに1か月160時間を使っています。160時間は、労働基準法で定められた1日8時間の法定労働時間に、1か月の平均の実労働日20日を掛けた値だと説明されています。*1 つまり「1人月=20人日=160人時」が、人月の計算の出発点になります。
人月の計算式
人月の計算でよく使う式は、次の表の5つです。例の数は計算の仕方を示すための仮の数で、実際の案件の規模や金額ではありません。

| 計算したいこと | 式 | 例(仮の数) |
|---|---|---|
| 工数(人月) | 人数×月数 | 3人×4か月=12人月 |
| 一部だけ加わる人の工数 | 人数×稼働の割合×月数 | 2人×50%×6か月=6人月 |
| 人日から人月へ | 人日÷1か月の稼働日数 | 60人日÷20日=3人月 |
| 人時から人月へ | 人時÷1か月の時間数 | 800人時÷160時間=5人月 |
| 費用 | 人月×人月単価(役割ごとに計算して合計) | 〇人月×〇円+〇人月×〇円 |
公的な資料の数字でも試してみます。データ集2022では、開発プロジェクト全体の工数の中央値は7,395人時で、集計した件数は1,444件です。*1 これを160時間で割ると約46人月になり、10人で割れば4〜5か月分の量にあたります。ただし、人数を増やせば期間がその分だけ縮むわけではありません。データ集は、工期は工数の3乗根に比例する傾向が見られるとしています。*1 人数と期間の関係は工期と工数の関係を扱った記事で詳しく見ています。
1人月の時間数の違い
1か月160時間は計算のための目安で、どの会社でも同じとは限りません。データ集の調査票は、工数を人月で出す会社に、1人が1か月フルに働いた場合の時間数を書いてもらう欄を設けています。*1 集計でも、人月で届いた工数はその会社が出した換算の値で直しています。*1 項目の説明には、換算の例として、1人日を7人時、1人月を140人時とした欄もあります。*1
| 作業量 | 1人月=160時間とみる場合 | 1人月=140時間とみる場合 |
|---|---|---|
| 1,600人時 | 10人月 | 約11.4人月 |
| 800人時 | 5人月 | 約5.7人月 |
表のとおり、1人月を短い時間でみるほど、同じ作業量でも人月の数は大きくなります。見積書の人月を比べる前に、1人月を何時間とみているか、実際の作業時間がそれを超えたり下回ったりしたときにどう精算するかを確かめておくと、数字の食い違いを避けられます。
見積書の人月の読み方
デジタル庁の標準ガイドライン解説書は、国の情報システムの見積もりについて、内訳を「一式 ○○円」のように書くのではなく、金額の妥当性を確かめられる細かさで書くよう求めています。*2 作業を委託する場合は、成果物ごとに作業内容、作業工数、作業者の種別とレベル、人件費単価を明らかにし、工数の根拠となる数値と算定方法も書くとしています。*2

| 見積書の欄 | 確かめること |
|---|---|
| 作業内容 | 要件定義・設計・開発・テストのどの工程が入っているか |
| 作業工数(人月) | 1人月を何時間とみているか。成果物ごとに分かれているか |
| 作業者の種別とレベル | SE(システムエンジニア)やプログラマなど、役割ごとの人数 |
| 人件費単価 | 役割ごとの単価か、全員を同じ単価で数えているか |
| 工数の根拠 | 画面数・帳票数・LOC(プログラムの行数)・ファンクションポイント(機能の量を数える尺度)など |
単価と人月の合計だけで2社を比べると、こうした違いが見えなくなります。比べるのは、同じ工程・同じ成果物の行どうしです。運用や保守の見積もりでは、実際に作業する人数と各人の稼働時間が分かる形で受け取ることも、解説書は求めています。*2
公開データを見積もりの正解として当てはめるのも避けます。データ集自身が、回帰式はあくまで分析の例で、現実の見積もりにそのまま使えるものではないと書いています。工数500人月の案件の工期には、約11〜21か月の幅があるとも示しています。*1 公開データは、見積もりが極端に外れていないかを確かめる目安にとどめるのが無難です。
外部に頼むときに確認しておきたい点
人月で見積もられた開発や運用を外部に頼むときは、金額の交渉より先に計算の前提をそろえておくと話が早く進みます。見積もりの依頼や受け取りの段階で、次の点を確かめておきます。
- 1人月の時間数:何時間を1人月とみるか。超えた場合と足りない場合の精算の決まり
- 役割ごとの人数と単価:誰が何か月加わり、役割ごとの単価はいくらか
- 工数の根拠:画面数や機能の数など、人月を出した元の数字と算定方法
- 含まれる工程と成果物:テストや移行、操作の説明まで入っているか
- 体制の変更と引き継ぎ:担当者が交代するときの引き継ぎの期間を工数に含めるか
この5点がそろえば、2社の見積もりを同じ物差しで比べられます。見積もりの技法は工数見積り技法の記事、開発費用の内訳はWebシステム開発の費用の記事で扱っています。
まとめ:人月の計算で確かめておきたい3つの点
人月の計算で見積書を読むうえで、確かめておきたい点は3つに整理できます。第一に、工数は人数×月数、費用は人月×単価という基本の式を押さえ、人日や人時は1か月の日数や時間数で割って人月に直すこと。第二に、1人月を何時間とみているかと、時間が超えたり足りなかったりしたときの精算の決まりを確かめること。第三に、合計額ではなく、工程・役割・工数の根拠がそろった行どうしで見積もりを比べることです。この3点を踏まえておけば、「安い見積もりを選んだら、必要な工程が入っていなかった」という事態を避けやすくなります。見積もりの読み方や体制の組み方に迷いがあれば、外部の手を借りるのも一つの選択肢です。
よくある質問
1人月に満たない短い作業はどう計算しますか
人日や人時で数えてから、1か月の日数や時間数で割って小数の人月にします。たとえば仮に10人日の作業なら、10人日÷20日で0.5人月です。見積書では、小数の人月と人日のどちらで書かれているかをそろえてから比べると、読み違いを防げます。
人月で見積もる契約と成果物で見積もる契約は何が違いますか
人月で見積もる場合は、作業した時間や期間に応じて費用を払う考え方になります。成果物で見積もる場合は、完成した成果物に対して費用を払う考え方で、内部の計算に人月を使っていても、支払いの条件は契約で決まります。どちらの形になっているかは、契約書の支払いと検収の条項で確かめてください。
見積もりの人月が多すぎるかどうかはどう判断しますか
工数の根拠になった画面数や機能の数を出してもらい、ほかの会社の見積もりと同じ成果物の行で比べるのが基本です。公開されている統計は目安になりますが、統計を作った側も、回帰式をそのまま見積もりに使うのは適当でないとしています。*1 根拠の数字と前提がそろえば、多い少ないの理由を質問できるようになります。
見積もりの確認と開発体制のご相談
人月の見積もりの読み解きから、工程ごとの体制づくり、開発・運用の実施まで、元請(プライムベンダー)としてご提案します。
2006年の創業以来、一次請けのシステムインテグレーターとして、企業のシステム開発と保守・運用を受託してきました。
出典
- *1 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編(PDF)(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。出典:1.3.4 工数(プロジェクト全体の工数の中央値)、SLOC生産性の定義(1人月=160時間を代用)、付録の工数の定義(160時間の根拠、提出された変換係数の使用)、回帰式の妥当性(500人月の工期の幅)、A5.2.10 工数(コスト)と調査票の換算係数の欄を参照(2026年10月確認)
- *2 参考:デジタル庁「DS-110 デジタル・ガバメント推進標準ガイドライン解説書」(PDF)第3編第3章 予算及び執行(https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e2a06143-ed29-4f1d-9c31-0f06fca67afc/50952dae/20260715_resources_standard_guidelines_guideline_03.pdf)。出典:4. 経費の見積り(積算内訳の明確化、作業工数・作業者種別及びレベル・人件費単価、工数算定の根拠、運用・保守の稼働者数と稼働時間)を参照(2026年10月確認)
- *3 参考:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「ソフトウェア開発分析データ集2022」公開ページ(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。出典:公開日(2022年9月26日)と最終更新日(2025年8月28日)を参照(2026年10月確認)