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工期は工数の3乗根とは、工数10倍でも月数は2.1倍
監修・編集責任者:牛尾 昭昌(株式会社LASSIC 執行役員)
この記事の結論
- 工期は工数の3乗根に近い:近似曲線はy=0.57x^0.32*2。
- 工数10倍で月数2.1倍:曲線上の値で計算しました*2。
- 改良開発では曲線が無い:相関が0.40と小さいためです*2。
※ 本記事は2026年9月時点の公式情報(省庁・公的機関・ベンダー公式ドキュメント)に基づきます。
遅れている案件で、期限までにどこまで詰められるかを聞かれたとき、根拠のある答えを持てるでしょうか。
手がかりは、工数と工期の関係が公開された資料に近似曲線として示されていることです。
IPAの資料では、新規開発の工期は工数の3乗根に比例する傾向があると記されています*1*2。
式も示されています*2。プロジェクト全体ではy=0.57x^0.32で、決定係数は0.43です*2。
この曲線に値を入れると、工数が10倍になっても月数は2.1倍にとどまります*2。
目次
どこまで詰められるかは分布に出ている
期限までに間に合わせられるかという問いには、比べる先が必要です。同じ規模の案件がどれくらいの期間で終わっているかという形の数字です。
その形を示した資料があります*1。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」で、公開は2022年9月26日、最終更新は2025年8月28日と記されています*1。
規模も示されています*1。これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析したと書かれています*1。
性質を先に書きます*1。この資料には「事業終了に伴い今後の発行予定はございません」と明記されています*1。最新の調査ではありません*1。
構成も確かめられます*4。本編のほかに業種編3編、サマリー版、マンガ解説版、グラフデータが公開されています*4。
沿革も書かれています*4。IPAは2005年からエンタプライズ分野の開発データを収集し、2020年に書籍版の名称を変えて現在の形になったとされています*4。
業種編の対象も示されています*1。プロジェクト数の多い金融・保険業、情報通信業、製造業の3業種について、本編と同一の分析を行ったとされています*1。
対象の条件が図に添えられています*2。開発5工程がそろっていること、開発プロジェクトの種別が新規開発であること、実績工数と実績月数がどちらも0より大きいことの4つです*2。
範囲の注記もあります*2。プロジェクト全体を対象にした図では、開発5工程に加えてシステム化計画と、発注した側が確認する総合テストの工程のデータも含む可能性があるとされています*2。
数値の扱いを書きます*2*3。近似曲線と決定係数は本編の図に示された値をそのまま引き、曲線に値を入れた計算は筆者が行いました*2*3。
グラフデータの著作権はIPAが保有しています*3。使用条件に従い、著作権表示としてCopyright 2022 IPAを記します*3。
照合もしました*3。グラフデータには曲線の値と信頼幅の系列が列として入っており、図と同じ構成であることを確認しています*3。
先に読み方の線も引きます*2。これは案件どうしの関係を表す曲線で、1つの案件に人を足したときの動きを示すものではありません*2。
単位も押さえます*2。xは実績工数の人時、yは実績月数の月で、どちらも実績値です*2。
まず式そのものを見ます*2。
プロジェクト全体はy=0.57x^0.32
本編の図A3-3-1は、新規開発のプロジェクト全体での実績工数と実績月数の関係を示しています*2。
近似曲線が添えられています*2。y=0.57x^0.32で、xが実績工数、yが実績月数です*2。
当てはまりも示されています*2。決定係数、つまりRの2乗は0.43です*2。
本編の読み方も書かれています*2。新規開発のプロジェクト全体の工期は、工数の3乗根に比例する傾向があるとされています*2。
時系列にも触れています*2。この傾向は2014年度から2019年度と同様であると記されています*2。
指数の0.32は3分の1に近い値です*2。3乗根は0.333なので、そこにほぼ重なります*2。
図には幅も描かれています*2。信頼幅50%と95%が上下に添えられ、点のばらつきが見える形になっています*2。
ここで前提を確認します*2。決定係数0.43は、ばらつきの半分以上がこの曲線では説明されないという意味です*2。
つまり個別の案件が曲線どおりに動くわけではありません*2。曲線は分布の真ん中を通る線にすぎません*2。
資料も同じ趣旨を書いています*2。プロジェクト特性によるバラツキはあるとしたうえで、傾向として示されています*2。
図表の対応も添えられています*2。この図は過去のデータ白書2018の図表に対応すると注記されており、同じ形の分析が続いていることが分かります*2。
工数の見積りそのものを外に任せる進め方は別に整理されています。工数見積り技法を外注で精度向上が参考になります。
次に、範囲を狭めた図を見ます*2。
開発5工程に絞ると当てはまりが上がる
本編の図A3-3-2は、同じ新規開発を開発5工程だけに絞って示しています*2。
近似曲線はy=0.40x^0.33です*2。指数が0.33で、3乗根にさらに近づきます*2。
決定係数は0.55でした*2。プロジェクト全体の0.43より高い値です*2。
読み方が決まります*2。範囲を狭めるほど、工数と月数の関係が見えやすくなる並びです*2。
理由は資料に書かれていません*2。なぜ範囲を絞ると当てはまりが上がるのかは説明されていません*2。
ただし範囲の違いは明記されています*2。プロジェクト全体にはシステム化計画などの工程が含まれる可能性があるとされています*2。
本編の記述も同じです*2。プロジェクト特性によるバラツキはあるが、工期は工数の3乗根に比例する傾向が見られると書かれています*2。
こちらも2014年度から2019年度と同様とされています*2。2つの図で同じ記述が繰り返されています*2。
実務での使い分けはここです。開発5工程だけを対象に見積るなら0.33乗の式、企画から含めるなら0.32乗の式が近い形になります。
ただし式の係数も違います*2。開発5工程は0.40、プロジェクト全体は0.57で、同じ工数でも出る月数が変わります*2。
両方を並べて使う必要があります*2。どちらか一方だけで期間を語ると、範囲の違いを取り違えます*2。
同じ工数で比べると差が出ます*2。10,000人時では開発5工程の式が8.4か月、プロジェクト全体の式が10.9か月になります*2。
次に、この式が意味する算数を出します*2。
工数が10倍でも月数は2.1倍
プロジェクト全体の式に値を入れます*2。以下は筆者が計算した値です*2。
1,000人時では5.2か月になります*2。y=0.57x^0.32にxを1,000として計算した値です*2。
5,000人時では8.7か月です*2。工数が5倍でも月数は1.7倍にとどまります*2。
10,000人時では10.9か月でした*2。工数が10倍で月数は2.1倍です*2。
50,000人時では18.2か月、100,000人時では22.7か月です*2。工数が100倍でも月数は4.4倍にとどまります*2。
これが3乗根の性質です*2。工数が8倍になっても、8の0.32乗は1.95なので月数は約2倍です*2。
逆向きにも計算できます*2。曲線上で月数を半分にするには、工数が約9分の1の規模でなければ届きません*2。
ここで線を引きます*2。これは規模の違う案件が曲線上のどこに並ぶかという話です*2。
1つの案件で人を増やしたときに月数がこう動くという意味ではありません*2。資料はその集計を持っていません*2。
言えるのは目安の作り方です*2。残りの工数が分かれば、曲線上の月数を比べる先として置けます*2。
逆に期限が曲線から大きく外れているなら、工数を減らす側の検討が必要になります。
工程ごとにどこを自社に残しているかの分布は別に集計しました。工程別の内製化|設計開発テストだけ委託が34.4%で扱っています。
本編が書いている「工期短縮限界」
資料には短縮の限界についての記述もあります*2。
図A3-3-1の説明にこう書かれています*2。10万人時以上で工期が信頼区間95%の下限値を下回ったプロジェクトがないと記されています*2。
そこから続きます*2。中規模以上では信頼区間95%の下限値が工期短縮限界の一つの目安となると考えられるとされています*2。
言葉づかいに注意します*2。断定ではなく「考えられる」「一つの目安」という書き方です*2。
それでも実務では強い材料になります。期限を詰める議論で、下限の存在を一次情報として示せます。
条件も押さえます*2。10万人時以上という規模の話であり、小規模な案件について同じことは書かれていません*2。
下限値そのものの数値は本文に書かれていません*2。図の系列として示される値なので、読み取りには図が必要です*2。
グラフデータには系列が入っています*3。信頼幅の上下の値が列として並んでおり、図と同じ構成です*3。
系列の名前も確かめました*3。中央の値と、50%と95%の上下の値がそれぞれ別の列として並んでいます*3。
使い方はこうなります。自社の残り工数を式に入れ、その位置で下限がどのあたりかを図で確かめる形です。
ただし個別の案件が下限に届くとは限りません*2。資料が示すのは、そこを下回った案件が見られなかったという事実です*2。
短期間で仕上げる体制の作り方は別に整理されています。アジャイル開発を外注する進め方が参考になります。
次に、この読み方が使えない場合を書きます*2。
改良開発では曲線が示されない
同じ集計が改良開発についても用意されています*2。
ただし結果が違います*2。図A3-3-3と図A3-3-4には近似曲線が描かれていません*2。
理由も明記されています*2。改良開発では工数と工期の相関係数Rが0.40で、Rの2乗が0.16と小さいため、信頼幅や近似曲線を示さないとされています*2。
層別の条件も違います*2。開発プロジェクトの種別が改修・保守または拡張のいずれかという指定です*2。
新規開発の決定係数と並べると差が見えます*2。プロジェクト全体で0.43、開発5工程で0.55に対し、改良開発は0.16です*2。
読み方が決まります*2。改良開発では、工数から工期の目安を出すという使い方ができません*2。
資料は理由を説明していません*2。なぜ改良開発で相関が弱いのかは書かれていません*2。
実務での意味は分岐です。新規の案件なら曲線を目安にでき、改修や拡張の案件では別の根拠が必要になります。
改修や拡張では、対象システムの状態が期間を左右する要素として残ります。ただしそれは資料が示した内容ではありません。
体制の相場そのものは別の指標で測れます。外部委託工数比率とは、中央値63.4%が示す体制の相場で同じ資料の別の指標を扱っています。
4つの図の関係を整理します*2。新規開発が2つ、改良開発が2つで、それぞれプロジェクト全体と開発5工程に分かれています*2。
曲線が示されているのは新規開発の2つだけです*2。
4つとも対象の条件は共通しています*2。開発5工程がそろっていることと、実績工数と実績月数がどちらも0より大きいことです*2。
立て直しの順番
ここまでの内容を、自社の手順に落とします*2。
| 対象 | 範囲 | 近似曲線 | 決定係数 |
|---|---|---|---|
| 新規開発 | プロジェクト全体 | y=0.57x^0.32 | 0.43 |
| 新規開発 | 開発5工程 | y=0.40x^0.33 | 0.55 |
| 改良開発 | プロジェクト全体 | 示されていない | 0.16 |
| 改良開発 | 開発5工程 | 示されていない | 0.16 |
1段目は残りの工数を出すことです。人時の単位で、これから消化する量を書きます。
2段目は曲線上の月数を読むことです。新規開発なら、範囲に合わせてどちらかの式に入れます。
3段目は期限との差を見ることです。曲線上の月数より短い期限を置いているなら、その差を作業量の側で埋めます。
ここで人数を増やす発想が先に来ないようにします。曲線は案件どうしの関係であり、増員で月数が縮むことを示していません。
4段目は減らせない量に人を当てることです。範囲を削っても残る量が明確になってから、人数の話に移ります。
順番を逆にすると進みません。人数を先に決めると、曲線から外れた期限をそのまま前提にしてしまいます。
改良開発の案件では、この手順の2段目が使えません*2。相関が弱く曲線が示されていないためです*2。
その場合は自社の過去案件から目安を作ることになります。資料が使えるのは新規開発の側だけです*2。
実務では、範囲を削る作業と開発を同時に進めることになります。削る判断は社員に残し、残る量の実装を外部の要員に任せる形が取れます。
期間を区切って入れるなら、フリーランスを含む業務委託の使い方が合います。山を越えるまでの数か月だけ人を足し、落ち着いたら戻す形にします。
この集計から読めないことも押さえます*2。人を足すと工期がどう動くか、工程ごとの人数、改良開発の工数と工期の関係は含まれていません*2。
時点の限界もあります*1。この資料は2022年の公開で、事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されているため、それより後の傾向は読めません*1。
まとめ:曲線を目安に置く
第一に、資料の性質です。IPAの「ソフトウェア開発分析データ集2022」は公開が2022年9月26日、最終更新が2025年8月28日となっており、これまでに収集した5,546プロジェクトの定量データから分析されています。事業終了に伴い今後の発行予定はないと明記されているため、最新の調査ではありません。近似曲線と決定係数は本編の図に示された値で、曲線に値を入れた計算は筆者が行いました。グラフデータの著作権はIPAが保有しており、著作権表示としてCopyright 2022 IPAを記します。第二に、式です。新規開発のプロジェクト全体はy=0.57x^0.32で決定係数0.43、開発5工程はy=0.40x^0.33で決定係数0.55でした。xが実績工数、yが実績月数です。第三に、本編の読み方です。工期は工数の3乗根に比例する傾向があるとされ、この傾向は2014年度から2019年度と同様であると記されています。第四に、算数です。プロジェクト全体の式に値を入れると1,000人時で5.2か月、10,000人時で10.9か月、100,000人時で22.7か月になります。工数が10倍でも月数は2.1倍、100倍でも4.4倍にとどまります。第五に、短縮の限界です。本編は10万人時以上で工期が信頼区間95%の下限値を下回ったプロジェクトがないことから、中規模以上では信頼区間95%の下限値が工期短縮限界の一つの目安となると考えられると記しています。断定ではなく目安という書き方です。第六に、使えない場合です。改良開発では相関係数Rが0.40でRの2乗が0.16と小さいため、信頼幅も近似曲線も示されていません。工数から工期の目安を出す使い方はできません。第七に、限界です。曲線は案件どうしの関係であり、1つの案件に人を足したときの動きは示していません。工程ごとの人数、改良開発の関係、2022年より後の傾向も今回の内容には含まれていません。
よくある質問
工期と工数の関係はどう示されていますか。
IPAのソフトウェア開発分析データ集2022の図A3-3-1では、新規開発のプロジェクト全体について近似曲線y=0.57x^0.32が示され、決定係数は0.43です。xが実績工数、yが実績月数です。本編は工期が工数の3乗根に比例する傾向があると記しています(確認日2026年9月4日)。
工数が増えると工期はどれくらい伸びますか。
曲線に値を入れると、1,000人時で5.2か月、10,000人時で10.9か月、100,000人時で22.7か月です。工数が10倍でも月数は2.1倍、100倍でも4.4倍にとどまります。ただしこれは規模の違う案件が曲線上のどこに並ぶかという話で、1つの案件に人を足したときの動きではありません。
工期を詰められる下限はありますか。
本編は図A3-3-1の説明で、10万人時以上で工期が信頼区間95%の下限値を下回ったプロジェクトがないことから、中規模以上では信頼区間95%の下限値が工期短縮限界の一つの目安となると考えられると記しています。断定ではなく目安という書き方で、10万人時以上という規模の話です。
改良開発でも同じ目安が使えますか。
使えません。図A3-3-3と図A3-3-4では、改良開発の工数と工期の相関係数Rが0.40でRの2乗が0.16と小さいため、信頼幅も近似曲線も示されていないと記されています。新規開発の決定係数0.43や0.55と比べて大きく低い値です。
プロジェクト全体と開発5工程はどちらを使いますか。
対象範囲に合わせて選びます。開発5工程は基本設計から総合テストまでで、式はy=0.40x^0.33、決定係数0.55です。プロジェクト全体はこれに加えてシステム化計画などの工程を含む可能性があり、式はy=0.57x^0.32、決定係数0.43です。係数が違うため同じ工数でも出る月数が変わります。
出典
- *1 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/metrics2022.html)。公開日・最終更新日・5,546プロジェクト・事業終了に伴う発行予定なしの記述の一次情報として(2026年9月確認)
- *2 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022」本編(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000102171.pdf)。図A3-3-1から図A3-3-4の近似曲線・決定係数・層別定義・工期短縮限界の記述として(2026年9月確認)
- *3 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集2022グラフデータ」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/hjuojm000000c6it-att/000103288.zip)。曲線の値と信頼幅の系列の確認として。著作権はIPAが保有(Copyright 2022 IPA)(2026年9月確認)
- *4 参考:IPA「ソフトウェア開発分析データ集」(https://www.ipa.go.jp/digital/software-survey/metrics/index.html)。業種編3編・サマリー版・グラフデータという構成の記述として(2026年9月確認)